水曜日, 9月 3, 2025
ホームつくば差別をなくすために つくばの障害者団体が職員研修

差別をなくすために つくばの障害者団体が職員研修

【川端舞】障害者差別をなくすために、障害者と健常者の関係はどうあればいいのかー。差別を考えるオンライン研修会が6日と13日、2日間にわたり開かれた。障害者支援団体「つくば自立生活センターほにゃら」(つくば市天久保)が、主に内部職員向けに開催した。障害者と健常者が互いに尊重し合える関係のつくり方について、活発な議論が展開された。

自立生活センターは全国各地にあり、「障害者のことは障害者が一番理解している」という理念のもと、障害者が中心となって運営される。障害者主体の団体に、これまで健常者がどう関わってきたかを知ることで、センターで働く健常者の職員が「障害者支援を通して、自分も社会を変えていく一員なのだ」とより自覚できるのではないか。そのような思いから、センター設立当時からの職員、松岡功二さん(52)が今回の研修会を企画した。

「健常者は手足になれ」

参加したのは同センター職員のほか、かつて筑波大学で部落差別を中心とした差別問題を研究していた筑波大名誉教授の千本秀樹さん(71)、千本さんの教え子など約30人。

初日は、センターで介助のアルバイトをしている筑波大障害科学類4年の山口和紀さんが、自身の卒業論文をもとに「健全者手足論」について問題提起した。

1970年代、どんな重度障害者でも暮らしていける地域社会をつくることを目指す、障害者たちの社会運動「青い芝運動」が関西で広がった。重度障害者が社会運動を続けるためには、介助する健全者(=当時、現在は健常者)が必要だ。しかし当時は公的な介助制度もなく、ボランティアとして障害者を介助していた健全者は、青い芝運動の中で不安定な立場だった。当初は青い芝運動に共感していた健全者だが、立場の不安定さから障害者との関係がこじれ、障害者を見下す言動が出てきた。運動における障害者と健全者の関係を再確認しようとする中で、障害者から「健全者は組織運営に口を挟まず、組織の手足になれ」という「健全者手足論」が出てきた。「健全者は敵だ」とまで言い切ることもあった。

「健全者と障害者の関係がこじれた時に、『健全者は手足になれ』と主張するのではなく、互いに協働する道もあったのではないか」と、山口さんは問いかけた。

共に差別と闘う

2日目は、千本さんがこれまでの研究活動をもとに、健常者として障害者差別とどう向き合うのかについて論じた。

千本さんは、学生時代から部落解放運動などの反差別運動に関わる中で、障害者運動とも出会った。障害者とともに運動していく中で、自分自身の中にも障害者差別があることに気づく。当時、千本さんはともに運動していた障害者たちに、「自分が差別的な言動をしたら、指摘してほしい」と頼んだ。障害者と本音で語らないと、自分の中にある無意識の差別に気づけない。「自分の中の差別意識に気づくことは怖いかもしれないが、新しい考え方に気づくのは楽しかった」と、千本さんは当時を振り返る。

障害者差別が黙認されている社会では、全ての人間が、自分では自覚していなくても、無意識に「自分は障害者でなくて良かった」という差別的考えを持たされる。

全ての健常者は障害者差別をする側になりえるため、「健常者は敵だ」と考えたのが、青い芝運動の「健全者手足論」だ。そこには、反差別運動は、差別される者だけで行うものだという考え方がある。

しかし「障害者だけでなく、健常者も運動に加わらないと、差別はなくならない」と千本さんは主張する。差別される障害者と、差別する側になりうる健常者が、互いに尊重できる関係になり、差別を内包する社会と共に闘うことが重要だ。

介助者として関係を模索

研修会では、同センター職員による活発な議論も行われた。

現在の障害者介助では、かつての「健全者手足論」とは別に「介助者手足論」が広まっている。介助者は、障害者の手足のように、障害者が頼んだことだけを行うべきだという考え方だ。自分の手足を動かせない重度障害者にとって、自分のやりたいことをしていくために、自分の指示通りに介助員に動いてもらうことは欠かせない。

その共通理解のもと、「しかし、介助者は障害者の手足として、障害者の指示に従ってさえいればいいのだろうか」「障害者差別をなくすためには、まずは介助者が障害者と互いに尊重できる関係を作ること、そして障害者が介助者以外の健常者とも同じような関係を作れるように、両者をつないでいくことも大切なのではないか」など、日々、介助者として障害者と向き合っているからこその意見が多数出された。

障害者と介助者、健常者の関係はどうあればいいのか、つくば自立生活センターの模索は続く。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

紙を折って月に行こう《続・気軽にSOS》164

【コラム・浅井和幸】やりたいこと、やらなければいけないことがたくさんあるのに、ダラダラしてしまう。人生を変えるような大きなイベントがなぜ自分には起きないんだと思う。やる気を出すにはどうすればよいのか、自分のやる気スイッチの場所を知りたいと悩む人もいるでしょう。 そこまでやりたいことではないんでしょ?とか、やらなくていけないことをやらなくても支障がないんでしょ?という突っ込みは、今回は置いておきます。 今回は、素晴らしいこととか、大きなことを成すための動きはやる気が出てからという発想の、逆の方法を試してみてはいかがだろうかという提案です。その方法の一つは、やる気のあるなしではなく、それをやる構造を作る方法です(やらない構造を外す)。二つ目は、大きなまとまりではなく、小さく区切るという方法です。 やる気というのは、何か行動をしてからついてくるものです。大掃除をしようとしても、面倒だし時間もないし、体力も使うしと、行動しない理由が先に出て、掃除は後回しになってしまうものですが、机の上をちょっとだけ拭こうと動いたら、別の汚れも気になって広い範囲の掃除をしてしまうというようなことです。 これを一つ目で言うと、部屋のあちこちにごみ箱や掃除用具を置いておくことです。二つ目では、その掃除用具のある周りを少しだけきれいにするということです。 これだけで、普段見もしない奥の方に掃除用具を閉まっているよりも、ずっと掃除をする習慣がつきやすくなります。ギターの練習をしたい時は、いつも座っているところの脇にギターを置きすぐ触れるようにして、ちょっとだけでも触る構造をつくるというものです。 ダイエットのためにポテトチップを食べないという行動をするのであれば、食べないという行動がしやすいように目の前にポテトチップを置かないこと。手の届かない、取るのが少し面倒な棚の中にしまうだけでも、効果はあります。 ささいなことの積み重ねが大事 理論上、紙を42回折ると月に届くそうです。0.1ミリの厚さの紙を42回折ると、38万キロメートル(地球と月の間隔)を大きく超える暑さになる計算です。もちろん、そんな大きな紙もなければ、そんなにたくさん紙を折り返せないなど現実的には不可能なことらしいです。 今回伝えたいのは、ほんのささいなことの積み重ねが大きな変化になるということです。バットの素振りをする、絵を描く、小さな善行を行う、ささいな工夫をする、笑顔を向ける、知識を得る、筋トレをする、お金をためるなど、ほんのささいなことを続け積み上げることで、どれだけ大きな成果が得られるかは、はかり知れません。 宝くじに当たるなどの明確な大きな一回は感じやすいのですが、ささいなことの積み上げは感じ取りにくいので、ほとんどの人は行いません。ほとんどの人が行っていない、気づいていないからこそ、ささいな積み重ねを長年行うと大きな成果、特別な人というところに到達できる大きな要因になるのです。 不健康になる、不幸になる、嫌な人間になる、そんな積み重ねはしないようにしてくださいね。(精神保健福祉士)

下水道使用料引き上げなど提案 つくば市 水道料金に続き2年連続

9月議会が開会 つくば市議会9月定例会議が2日開会。五十嵐立青市長は、来年4月から下水道使用料を平均18.1%引き上げる条例改正案など議案32件、認定6件、報告12件の計50件を提案した。 下水道使用料の引き上げが議会で可決されれば、2006年8月以来、20年ぶりの引き上げになる。一方、同市では今年4月、水道料金が平均15%引き上げられたばかり(24年7月30日付、9月3日付、10月4日付)。市民は水道料金と下水道使用料を2カ月ごとに合算して支払っており、2年連続で上下水道料金が引き上げられることになる。 7月30日に市上下水道審議会(会長・白川直樹筑波大システム情報系准教授)から五十嵐市長に下水道使用料の引き上げを求める答申が出され、答申通りの額が議会に提案された。 引き上げ額は、利用者全世帯が一律で支払う「基本使用料」が現在の550円から3.4倍の1870円に引き上げられる。使用水量に応じて支払う「従量使用料」はこれまで三つの区分だったが、1人世帯など小口利用者の負担増を緩和するため10立方メートル以下の区分を新たに設けて区分を四つにし、1立方メートル当たりの従量使用料を10円ずつ(税抜き)引き上げる。 世帯別の引き上げ後の下水道使用料の目安は、1人世帯が2カ月分で現在の1980円から38.9%値上げとなる2750円、2人世帯が3410円から25.8%値上げの4290円、3~4人世帯が6270円から17.5%値上げの7370円になる見通しだ(いずれも消費税込み)。 同市では2024年10月に中長期の経営基本計画「市下水道事業経営戦略」を策定し、将来にわたり安定的に事業を継続していくため、26年度に平均20%、31年度に17%下水道使用料の引き上げを行うとしていた。 実際の引き上げ額の検討については25年1~7月に市上水道審議会を開催し、経営戦略の値上げ計画通り、来年4月からの値上げを答申した。ただし平均引き上げ額は経営戦略の20%から18.1%になるという。 市下水道総務課によると、2024年度の下水道事業の1年間の経営成績である収益的収入は105億1000万円、それに対し収益的支出は98億2000万円と6億9000万円の黒字だ。市によると黒字なのは、総務省が定める基準を超える6億9000万円を市独自に一般会計から繰り入れているためで、6億9000万円の基準外繰入金のうち5億円を削減したいとする。基準外繰入金の内訳は、汚水以外の雨水や地下水など不明水の処理費が4億4000万円、雨水施設の建設負担金等が2億5000万円。一方、下水道施設への投資である24年度の資本的収入は37億2000万円なのに対し、資本的支出は55億3000万円と、借金である企業債に頼っている状況があるという。 こうした状況から、市の下水道事業の課題として①経費の回収率が98.5%で、汚水処理費を下水道使用料でまかなえてない原価割れの状況がある②汚水処理は利用者の使用料でまかない、雨水処理は公費でまかなうという原則を超えて、汚水処理を一般会計からの繰入金に依存している➂施設への投資を企業債に依存しており、30年後には企業債残高が現在の350億円から2倍以上の766億円になるーなどの課題があり、今後さらに下水道未整備地区への敷設や、管路の老朽化対策などが求められることから、課題を解消するために引き上げが必要だなどとしている。 引き上げられれば、つくば市の下水道使用料は県内47団体(市町村ほか)のうち、10㎥の使用料は43番目だったのが28番目に高くなり、20㎥は9番目から4番目に高くなる。40㎥は21番目から6番目に高い使用料となる。(鈴木宏子)

ひろしまのピカ《くずかごの唄》151

【コラム・奥井登美子】私が宝物にしている絵本がある。丸木位里さんと丸木俊さんの、2人のサインの入った「ひろしまのピカ」だ。 「私には子供がいないから孫もいません。でも、これは、孫たちへの遺言なのです。描いたり、消したり、破ったり、ずいぶん長い間かかってしあげました。丸木俊」と、後書きにある。 丸木位里さんの故郷は広島市。広島に原子爆弾が落ちたという報道で、やっと手に入れた汽車の切符で、ふるさとについたとき、広島市は文字通り死の街となってしまっていた、という。 1945年8月6日。世界で初めての原爆は、想像を絶する放射性熱線と爆風によって、広島市民35万人のうち10万人以上の命を奪った。 一般の市民は、戦争中のあくどく強い報道規制で、写真機など、報道につながるものを持って行けなかった。カメラを持っていただけで、警察に連れていかれてしまう。 焼け焦げた残骸だらけの街。何もない中、放射線の熱線を浴び、心臓は細々と機能しているのに皮膚がベロベロに焼け、垂れ下がってしまっている人たち。顔の皮膚、手の皮膚、皮膚がたれ下がったまま、よたよたと歩いている人たち。 放射線を浴びた人間の究極の姿を、丸木位里・俊夫妻は、現実に、自分の目で見てしまったのだ。写真などない中、位里さんはやや抽象的な水墨画、俊さんはそれを油絵に描いた。 うちの2階で丸木位里・俊展 2人はその絵をぐるぐる巻きの巻紙にして、世界中を回って歩いた。土浦にも来てくださった。薬局2階の画廊で、「丸木位里・俊展」。お2人は我が家に泊まり、楽しい時を過ごすことができた。人間の究極の悲劇を見てしまった人の深い優しさは、格別の味がある。 私が霞ケ浦湖岸の葦(アシ)を刈り取って、その繊維で作った粗末な和紙をお見せしたら、俊さんが河童(カッパ)の絵を画いてくださった。私のコラムのイラストの元絵は、この河童たちなのである。(随筆家、薬剤師)

市役所の壁突き破り「つちまる」現る 土浦駅前

新たな撮影スポットに 土浦駅西口前の市役所1階の壁を突き破って1日、同市のイメージキャラクター「つちまる」が現れた。駅前の新たな撮影スポットにしてもらおうと描かれたトリックアートで、高さ3.2メートル、幅3.5メートルのつちまるが、壁を突き破って出てきたかのように描かれている。 トリックアートの制作で知られる企画制作会社エス・デー(栃木県那須町)のアートディレクター、赤塚博文さんが描き、1日お披露目された。赤塚さんは昨年、市役所1階のシャッターに、つちまるがシャッターを持ち上げているようなトリックアートを描いた。今回は2作品目で、つちまるは昨年の2倍の大きさ。駅前のバスターミナルや駅と市役所を結ぶペデストリアンデッキからも見ることができる。事業費は55万円。 中心市街地の活性化に取り組んでいる同市は2016年から、高校生らが空き店舗のシャッターに絵を描く取り組みを実施し、これまで5作品が描かれた。今年1月にはTBSテレビ「プレバト!!」の番組企画で、同市川口のショッピングモール「モール505」の空き店舗のシャッターに芸能人らが絵を描き、テレビ放送され「相当な人が見に訪れた」(市商工観光課)。 安藤真理子市長は「プレバトで芸能人の皆さんがモール505に描いたスプレーアートや、土浦駅前通りに高校生が描いたシャッターアートと併せて、駅前のつちまるのトリックアートを楽しんでほしい」と話す。 列車に乗るため駅に着き、完成したつちまるのトリックアートを見た市内に住む女子大学生は「つちまるがちゃんと飛び出しているように見える。かわいい」と話していた。