金曜日, 1月 22, 2021
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《続・平熱日記》76 娘がいる東京の美容院に行った

【コラム・斉藤裕之】今日は次女のいる美容院に行く。次女の休みの日を使ってカミさんがカットしてもらいに行くというので、ノコノコついて行く。実はこれが2度目である。最初は今年の夏。長い間坊主頭でセルフカットしていたために、床屋というところへ行くのも10数年ぶりのことで、恐らく最初で最後だと思っていたのだが、再び訪れることとなった。

このにぎやかな街には思い出がある。故郷から受験のために出てきて、最初に滞在したのがこの街にある先輩のマンションで、次女のいる美容院はそのすぐ目と鼻の先だった。ゼロイチゼロイチ? 駅のそばにあるそのデパートを丸井と読むことを知り、快速や特別快速という電車があることも知った街だ。その後も何度かこの街には来ているが、10数年ぶりに訪れた街の変わりようは私をまごつかせた。

子供に頭を触られるという経験。この私でさえちょっとした幸福感を味わえる。いわんや、母親にしてみるとこれほどの孝行もないだろう。

まあ、私の方は座ったとたんにバリカンで刈り上げられて、それでも1000円カットよりはさすがに丁寧に切ってもらって、30分というところか。カミさんは髪を染めている。あと小1時間かかるというから、懐かしき街を散策することにした。夏に来たときは確かとても暑い日だったが、今日はダウンを着てちょうどいい。店はほとんど変わっているのだが、それでも角を曲がるたびに、少しずつ記憶のピースがはめ込まれていく。

「インチキアーティストカット!」

それからカミさんのカットも終わり、3人で昼飯を食べた。人気のカレー屋さんということで、遅い時間にもかかわらず混んでいた。「私にはサンタさんは来ないのかなあ?」と次女はカミさんに冬のコートをねだったようだ。

夕方に子供たちがアトリエに来るので、私は一足先に帰ることにした。茨城は実に平坦で高い建物もないと思っていたが、車窓から見える東京こそ地平線まで家並みが続く、平らな街であることに改めて驚いた。今日、「私はこの街が好き」と次女が言った言葉を思い出した。いろいろ大変だろうが、その一言で多分幸せに暮らしているのだろうと思った。

ところで、この髪型には名前があるのか? 次女曰く「インチキアーティストカット!」なるほど。髪型がインチキなのか、本人のせいか、それともアーティストそのものがインチキなのか。はたまたそのすべてか。

夕方には子供たちが来て、ボール紙と松ぼっくりでクリスマスリースを作った。お迎えのお母さんに「先生、素敵な頭ですね!」と社交辞令を言われた。冷たい風が刈り上げた後ろ頭を横切った。(画家)

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