金曜日, 5月 14, 2021
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《遊民通信》3 オンライン講義の本当の意味と影響

【コラム・田口哲郎】
前略
コロナ禍でオンライン授業を受けた体験から、IT技術が大学の学知に及ぼす根本的価値転換について前回お話しました。では、学生がキャンパスに通わなくなることでどのような影響が出ると考えられるでしょうか?

キャンパスに通えないことで、学生は他の学生と従来のような対面交流ができなくなりました。オンライン授業では言語情報のやり取りはできますが、人間のコミュニケーションは言語情報だけで成り立っているわけではありません。臨床心理学では、人間の交流にラポール(rapport)が必要だとされています。ラポールは言葉以外の情報から人同士の間に生まれる信頼関係を指し、交流の前提です。

まだオンライン化元年ではありますが、オンラインでラポールを築くのは、対面よりかなり困難だなというのが率直な印象です。コロナ禍以前、大学生は仲間とつるんで、無駄なことをしゃべるゆとりがありましたが、それは実は無駄ではなかったのではないかと思います。

テレビでよく見るタレントに実際会ったこともないのに親しみを感じ、その訃報に接して落ち込むことがあります。例えば、志村けんさんのように。だから、オンラインでもラポールは築けるのではないか? という疑問がわきます。しかし、志村さんと私の間に信頼関係は当然ありません。逆に、オンライン化によって、大学で親しみを感じるけど、信頼関係がない仲間が増えるかもしれません。

学園の起源 プラトンのアカデメイア

学園の起源は紀元前387年にアテナイ近郊にプラトンが開いたアカデメイアです。師匠と弟子達は寝食を共にし、議論し、独自の学説を作り上げました。プラトンの師ソクラテスまでは哲学者は無派閥でした。アカデメイア以後、明確な学派が生まれるのです。

ソクラテスは市民の耳に痛いことを平然と述べ、倫理を説きました。結果、裁判で無実の罪を着せられ服毒処刑されました。プラトンは衝撃を受け、哲学者の身を護(まも)る意図もありアカデメイアを造ったと言われます。学園には学生の表現の自由を保障する役割があったのです。

もしそうなれば、人類が2000年以上かけた進歩が元の木阿弥(もくあみ)です。それはあまりにも悲しいですね。でも、嘆いてばかりもいられません。これからのことについては、次の便で。ごきげんよう。
草々(散歩好きの文明批評家)

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