【相澤冬樹】農地所有適格法人株式会社の看板のあるヴィンヤード(Vineyard、ブドウ農園)で育ったブドウは10月、すべての収穫を終え、果実酒醸造免許の交付を受けて醸造所の看板を掲げたワイナリー(Winery)での初仕込みを済ませた。ほぼ一人で切り盛りするTsukuba Vineyard(つくばヴィンヤード、つくば市栗原)代表の高橋学さん(65)は息つく間もなく、枝葉の剪定(せんてい)と土づくりに取り掛かった。ワイン造りの正念場である。
11月中旬にも初出荷
「ワイン・フルーツ酒特区」に認定されたつくば市で第1号となるワイナリー。酒類の製造免許を申請する際の最低製造数量の基準が6000リットルから2000リットルに緩和され、「つくば産ワイン」と銘打って販売できる。(19年度産から販売を始めたカドヤカンパニーのワイナリーは特区制度に拠らない)
高橋さんが、栗原地区の再生された耕作放棄地約7000平方メートルを借りたのは2014年のこと。産業技術総合研究所(つくば市)で岩石や岩盤の力学試験などに携わっていたが、農地の土壌研究とは無縁、ことさらワイン党でもなかった。「定年後の生き方を探していた時、故郷の北海道を訪れ、ブドウ栽培とワイン醸造をしている農家を見学した」のがきっかけでワインづくりを学んだ。
最初は1000平方メートルの農地に「プティマンサン」という品種の苗150本を植え栽培をスタート、6年目のことしまでに約2.3ヘクタールに拡大した。15種類のブドウを栽培し、つくばの気候と土壌に合った品種を模索してきた。これまで醸造は筑西市の酒造会社に、販売はつくば市の地酒専門店に委託していたが、ようやく2000リットルの生産にめどが立ち、自前のワイナリー「栗原醸造所」を設置した。
ところが今季の収量は4トンの見込みの半分以下、2トンを割りこむ不振となった。「7月末まで続いた長雨、日照不足が響いた。カビが発生するべと病などに悩まされ、ワインの品質に影響しないよう、選果ではじくブドウも多かった」という。

このため、ワイナリーの初稼働に喜ぶ暇もなく、ヴィンヤードの手入れにいそしむ日々が続いている。枝葉の剪定が始まった農場には、新たに土壌センサーを設置した。地元のIT事業者の協力で、土壌のデータ(伝導率・保水率・温度)を継続的に計測するセンサーを5カ所に埋設した。低電力で低価格の無線バンドでデータを送信してくる。「センサーのバッテリーは2年ほど持つ。これで土壌の経験値を可視化できることになる」(電脳郷・河合通之社長)そうだ。
高橋さんは「産総研の退職金は早々に使い果たした。雇用延長も来年3月末まで。本当の正念場になってきた」という。仕込んだワインは赤、白、ロゼとプティマンサンの4種。11月中旬にもロゼのヌーボーから販売を開始する。
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