【鈴木宏子】「つくばエクスプレス(TX)沿線は急激に人口が増加しているのに、地域交流センターや図書館、児童館などの公共施設がない。都市基盤が欠落している」。住民団体「新しい街・研究学園駅周辺を住みやすくする会」事務局長の山本進二さん(73)はこう指摘する。「つくば駅周辺と比べて、あまりに差があり過ぎる」という。
同会は、研究学園駅周辺のマンションや一戸建て住宅などに新たに転居してきた住民らでつくる。地域を住みやすくしたいと、2018年から「市長と語る会」を2回開き、参加者から出された意見や疑問を質問書にまとめ、市に要望してきた。市地区相談課を窓口に2年間やりとりを続け、市から計4回の回答があったが、満足のいく回答は得られず、山本さんは「らちが明かない」と嘆く。
要望は、地域交流センター、図書館、児童館の建設のほか、公立の保育所や幼稚園の開設、公立幼稚園の送迎バスの運行、通学路交差点の右折規制、とりせん前交差点の立体交差化、通りの愛称の命名など多岐にわたる。
国基準は中学校区単位
このうち地域交流センターの建設要望に対する市の回答は「市役所コミュニティ棟1階や、高齢者支援としての空き店舗活用、他用途公益施設の共用など、市全体として施設を増やしていくことを検討する」だった。
山本さんは「市役所のコミュニティ棟を利用してほしいということだが、コミュニティ棟は市役所の会議室も併用している。毎週定期的に利用できなかったり、制約が多い」と語り、「国の公民館設置運営基準は、中学校の通学区域単位で設置することが実態に即して望ましいとなっている。研究学園駅周辺は春日学園、学園の森と、研究学園(建設予定)と中学校が3校なので、3カ所以上が適切な配置」だと指摘する。
2館目となる図書館を建設してほしいという要望に対しても市の回答は「自動車図書館の市役所への巡回を今年度から2週間に1回から毎週巡回に増便した」「市役所に設置していたブックボックスを午後10時まで開館しているコミュニティ棟に移した」など、木で鼻をくくったような回答だった。
山本さんは「TX沿線の守谷市、千葉県流山市、柏市と取手市の4市と比較すると、つくば市の図書館は個人貸出登録率、蔵書数、利用者数、貸出冊数で劣っている。国の制度に図書館設置及び運営上の望ましい基準というのがある。図書館サービス対象地域の人口分布、人口構成、交通網の変化を考えて、つくば市は設置基準を見直すべき」だという。
2項目に絞り議会に
市に要望を続けても進展が見えないことから、同会は今年7月、要望項目のうち住民の関心が高い、地域交流センターと図書館の2項目について、市議会各会派に公開質問状を出した。各会派からは概ね好感触が得られており、同会の室生勝会長(84)は「市と、やりとりを今後も続けたい」と話す。
TXが開業して15年。全国的に高齢化や人口減少が課題となる中、つくば市の人口はTX開業時の19万人(2005年5月)から現在は24万4000人と5万人以上増加し、来年にも25万人に迫る勢いだ。人口増に合わせて個人市民税や固定資産税などの市税収入も増え、05年度は338億円だった市税収入が18年度は453億円と120億円増えた。
TX沿線開発区域の土地利用計画には、公共施設建設用地が確保されている。が、今のところ地域交流センターや児童館、図書館などを建設する計画はない。(つづく)