【鈴木宏子】「エリアマネジメント団体のビジネスプランはどうなっているのか。どういう経営収支で成り立つか分からないと、議会としても判断ができない」。6月に市がホームぺージ(HP)で示した「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」をめぐり、9月議会一般質問で、山中真弓市議が経営収支計画を示すよう迫った。
エリアマネジメント団体とは、来年3月に市が主導して設立する予定のまちづくり団体だ。つくばセンタービル1階を改修して新たにつくる「多様な働き方を支援する場」を運営するほか、中心市街地のまちづくりを担うとされる。市は同団体に6000万円を出資する。加えて市所有のアイアイモールと地下駐車場の床の区分所有権の一部を渡し、現物出資することも検討している。
センタービルの改修案は、センタービル1階アイアイモールの一部に多様な働き方を支援する場をつくり、ノバホール西隣のつくばイノベーションプラザなどに吾妻交流センター、市民活動センター、国際交流、消費生活などの機能を集めた市民活動拠点をつくるとされる(6月26日付)。
併せてセンター広場に屋根を掛け、エスカレーターを設置することも検討されている。概算工事費は約13億6000万円。1983年に建設されて以来初の大規模改修工事になる。(6月28日付)。
一般質問では、改修計画自体が市民に周知されていないこと、さらに屋根を掛けることに対し「(つくばセンタービルは建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した建築家の代表作の一つであるなどから)磯崎新氏の思いを壊してしまうことにならないか」(山中氏)との疑問も出された。
一般質問を受け、市がようやく明らかにしたのは、▽エリアマネジメント団体の初期の必要事業費として4~6億円を想定している▽出資額割合や具体的収支は秋ごろには整理する▽次年度以降、市は運営費を負担する予定はない▽同団体の主な事業として、オープンカフェ、不足しているイベントの開催、シェアオフィスやコワーキングスペースの運営、情報発信をする▽市民活動拠点を含め、配置図案を11月ごろ市ホームぺージで公表し、12月ぐらいにオープンハウス等で市民の意見を聞くーなど。肝心の経営収支計画は明らかにされなかった。
市民説明会の予定なし
センタービル1階をなぜ貸しオフィス(シェアオフィスやコワーキングスペース)にするのかについては、山中市議と五十嵐立青市長の間で論戦が交わされた。
五十嵐市長は「つくば駅前にはオフィスが不足している。つくばで生まれた企業が、成長段階でオフィスがないことで他の自治体で移ってしまうことが起きている。市がまちづくり会社のような適切な家賃で場所を提供することが求められている。雇用を生み出すことで市民がわざわざ他県に行かないで、働く場所を生み出す」と強調。エリアマネジメント団体をつくる理由については「なぜ中心市街地が発展してこなかったのか。覚悟をもって本気でまちづくりに取り組むプレーヤーがいなかった。この段階で動き出さなければ、いよいよつくば駅前は人がいなくなる場所になる。今まさにターニングポイント。つくばに雇用を生み出すことを強い危機感をもって取り組んでいる」とした。
これに対し山中氏は「2017年の市民アンケートでオフィスを希望していた人はほとんどいなかった。センタービルはつくば市の一等地にあり市民の財産。オフィスになると一部の市民しか使えない。つくば駅周辺には民間のオフィスがたくさん用意されている。補助金制度を充実させて、民間オフィスを借りた場合、家賃補てんをするなど市が援助することも可能」とし、図書館機能を分散させたり、子供たちが雨の日も遊べる場所をつくるなどを提案。「つくば駅周辺と研究学園駅周辺のすみわけが必要。つくば駅周辺は文化芸術機能が集まっており、センタービルは文化芸術の拠点になる」などと主張、議場での議論は平行線に終わった。
センタービル改修をめぐり論戦が交わされたのは、今のところ山中氏の9月の一般質問、一度きりだ。市民が共に意見を交わし、共にまちをつくる機会となる市民説明会が開催される予定は、現時点で無い。