【伊藤悦子】土浦市の中心市街地などで9日から、市民手作りの催し「重陽(ちょうよう)いばらきの菊の節句」が始まった。土浦駅周辺の商店や銀行、公共施設など約90カ所の店頭に、菊の花と、ハスの花托(かたく)で作られたひな人形「霞連雛(かれんびな)」が飾られている。
五節句のひとつ「重陽の節句」=メモ=にちなんだ健康長寿を願う行事で、同市の同好会「菊被綿(きくのきせわた)文化を守る会」(木村恵子会長)が2014年から毎年、店頭に飾っている。今年は展示場所に市立博物館、市立図書館も加わった。
例年なら、赤、白、黄の綿を菊の花の上にかぶせて展示するが、今年は綿をかぶせていない。守る会会長の木村さんによると「綿は体につけて長寿を願うという意味があるため、不特定多数の人が触る恐れがある。今年は新型コロナウイルス感染拡大予防に考慮した。菊の花そのものを見て楽しんで」と話す。
菊の花と併せて霞連雛が飾られているのは、重陽の節句では、3月3日に飾ったひな人形を再び飾る「後(のち)の雛」という江戸時代から伝わる風習があるため。
霞連雛は、守る会のメンバーや市内商店街のおかみさんたちが、日本一のレンコンの産地をPRして土浦を盛り上げたいという思いを込めて一つひとつていねいに手作りした。
木村さんは「健康や長寿、若返りを祈る重陽の節句は、個々人はもちろん、企業や社会にも通じる。コロナウイルス感染拡大で大変な今だからこそ大切にしたい」と語った。
◆展示は10月25日まで。展示場所や霞連雛についての問い合わせは菊被綿文化を守る会(電話029-821-1607=すがた美容室)まで。
※メモ
【重陽の節句】「菊の節句」とも呼ばれる五節句のうちの一つ。中国では奇数を「陽」、偶数を「陰」とし、陽は縁起の良いものと考えられた。そのため陽数で最も大きい「9」が重なる9月9日は大変縁起のよい日とされた。
日本に伝わったのは平安時代。宮中では菊被綿という行事も行われていた。8日の晩、夜露が降りる頃に菊に赤、白、黄の真綿をかぶせる。翌朝、夜露を含み菊の香りが移った真綿を体につけると元気になり、若返る、長寿になるとされた。