【伊藤悦子】土浦で開業して100余年、2018年に閉院した産科病院とゆかりの画家を取り上げるテーマ展「土浦病院と小川芋銭(おがわ・うせん)展」が1日、土浦市立博物館で始まった。10月11日まで。
土浦病院に残された芋銭の作品は今回初公開になる。作品のほかに、土浦病院新築工事の棟札など貴重な資料も合わせて30点展示されている。
土浦病院は、1914(大正3)年石島ゑいが内西町(現在の土浦市中央1丁目)に開業した産婦人科を専門にした病院。ゑいは茨城県初の女性医師だ。石島家は3代にわたって地域医療を支えたが、2018年閉院した。
小川芋銭は、1868(慶応4)年江戸赤坂で牛久藩士の家に生まれた画家。挿絵画家として名声を高め、のちに日本画に取り組んだ。また俳人としても活躍した。
交流のきっかけは人とのつながり
ゑいの夫、績(いさお)が芋銭と交流があったことから、土浦病院には芋銭の作品が保管されていた。芋銭は病院の患者というわけではなく、何が交流のきっかけとなったかなど分かっていないことも多い。
同館学芸員の野田礼子さんは「芋銭は全国に応援してくれる人が多く、芋銭を介して人と人がつながっていった。その輪の中に績、ゑいもいたのではと考えられる」と見ている。「今の時点で分かることは限られているが、展示をすることで芋銭と績、ゑいなど人のつながりが新たに分かるのでは」という思いから企画した。
病院の閉院に際し、芋銭の作品の一部は市に寄贈されたが、ほかに個人所蔵で今まで紹介されていない作品もあった。これらをまとめ博物館で紹介する。野田さんは「石島家の寝室や客間に飾ってあったものは初公開だが、病院のエレベーターホールや玄関にずっと飾られていた作品も展示しているので、入院や通院したことがある方は見たことがあると思うかもしれない。そういったものを一堂に展示するのは初めて」という。
会期中は、小川芋銭研究者の北畠健による記念講演「土浦と芋銭」(9月20日)や市立博物館学芸員による講座「土浦病院と小川芋銭―石島家に残る作品の整理」(10月10日)などの行事が予定されている。
◆「土浦病院と小川芋銭」10月11日まで。開館時間は午前9時から午後4時30分。入館料は一般105円、小中高校生50円(税込み)。休館日は月曜と9月23日。問い合わせ電話029-824-2928(同館)
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