【川端舞】市民団体「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」(事務局・水戸市)が主催し、今年5月改正されたバリアフリー法のオンライン学習会が27日、市民向けに開催された。国内のバリアフリー制度が進んだことを歓迎する一方、県内の障害者団体からは、バリアフリーがより浸透するよう、バリアフリーに関する促進方針(マスタープラン)を策定するように市町村に働き掛けていきたいなどの意見が聞かれた。
スロープ設置方法の習熟を義務化
学習会には、県内外の障害者団体や大学関係者、県選出の参議院議員など40人が参加した。主催した同つくる会は今月5日にも、県議会と県内市町村議会の議員向けバリアフリー法学習会を開催している(8月8日付)。
27日の市民向け学習会では、改正バリアフリー法の要点や、国内のバリアフリーの現状について、障害者の全国組織であるDPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長の佐藤聡さんが説明した。佐藤さんは自身も車いす利用者であり、バリアフリー法改正や、東京オリンピック・パラリンピック会場のバリアフリー化にも関わった。
今年のバリアフリー法改正で、公立小中学校を改修・新設する場合はバリアフリー化が義務になった。しかし既存の学校は対象ではない。学校は避難所や投票所としても利用されるため、バリアフリーは重要だ。各自治体で学校のバリアフリー化計画を策定する必要があると佐藤さんは指摘した。
改正法ではさらに、スロープを積んでいるユニバーサルデザイン(UD)タクシーに、車いす利用者が乗車を断られる事態が全国各地で報告されていることを受け、タクシーやバスなど公共交通事業者がスロープの設置方法を習熟することも義務化された。
学習会に参加した車いす利用者からは、道端ではスロープを出せないという理由でUDタクシーに乗れなかったこともあるという意見も出た。佐藤さんは「これからも障害者側から声を上げていくことで、状況は変わっていくだろう」と語った。
障害者が動けば社会は変わる
障害者が声を上げたことで東京オリンピック会場も変わったと佐藤さんはいう。新国立競技場は当初の設計案では、障害者団体が設計に関わることはなく、8万ある観客席のうち車いす席は120しかなかった。しかし、当初設計案が白紙撤回された後は、DPI日本会議を含めた多様な障害者団体や高齢者団体が基本設計から関わり、車いす席が500設けられた。車いす席を一段高い位置に設置し、前席の観客が立ち上がっても、フィールド手前まで見えるように造られた。
佐藤さんは参加者に対し、「まだまだ社会には不便なことがあるが、障害者が動けば社会は変わる。一緒に声を上げていきましょう」と訴えた。