水曜日, 4月 29, 2026
ホームコラム《沃野一望》18 伊東甲子太郎の2 新選組の甲子太郎

《沃野一望》18 伊東甲子太郎の2 新選組の甲子太郎

【ノベル・広田文世】

灯火(ともしび)のもとに夜な夜な来たれ鬼
我(わが)ひめ歌の限りきかせむ とて

元治元年(1864年)11月、常陸国筑波山の麓、志筑村出身の伊東甲子太郎(いとう・かしたろう)は、婿入りしていた江戸深川佐賀町の伊東道場を見捨て、門弟7人とともに、京へ出立した。東下してきた新選組局長近藤勇の熱心な勧誘に応じ、新選組に加わるためだった。

余談になるが、元治元年11月といえば、この欄で前々回まで連載した藤田小四郎たち水戸藩天狗党が、常陸国大子町より西上の途についた秋、時代はまさに沸騰点。

新選組は、無理やりおしつけられるかたちで就任した京都守護職会津藩主松平容保(まつだいら・かたもり)の支配下におかれた武闘殺戮集団。伊東甲子太郎が、近藤局長に入隊を誘われたころになると、あまりに過激な戦闘の日々に、戦死、負傷、切腹、逃亡があいつぎ、隊士が60人ほどに減っていた。成り上がり者集め集団の組織力・機動力は、いちじるしく低下していた。近藤勇は、勢力回復のため、やみくもに人材をもとめていた。

そこへ、伊東甲子太郎たちが入隊する。

入隊時の約束通り甲子太郎は、副長土方歳三(ひじかた としぞう)と同格扱いの「参謀」に処遇されると、隊内でその存在感をめきめきと発揮してゆく。

剣の冴えはもとより、尊王攘夷思想にうらうちされた明晰な弁舌、さらには、それまでの新選組気風になかった、ひとりひとりの配下隊員の活動を尊重する組織作りで、古参隊員の信頼さえ獲得していった。

新興理論派VS正統武闘派

いつしか新選組は、伊東甲子太郎派(新興理論派)とアンチ伊東派(正統武闘派)という二極構造の組織になっていった。アンチ伊東派の筆頭は、土方歳三。あらゆる局面で、議論を毛嫌いした。尊王攘夷の是非を論ずる以前に、論ずること自体を受け入れない武骨だった。

「斬って、斬って、斬りまくれ、それが、すべてだ」。土方の猪突猛進は、それはそれで、殺人集団新選組本来の目的を実践してゆく本流であり正論だった。日ごとに、伊東と土方の対立は深まってゆく。

戦闘で敵を討ちもらし負傷を負った隊士に土方は、隊規にのっとり切腹を命じたが、甲子太郎は、隊規を無視してかばった。「傷をなおして、また活躍すればよい」。一命を救われた隊士は、甲子太郎に心酔し、以後の行動をともにしてゆく。

局長の近藤勇は、両者をそれぞれに都合よく使いまわした。本来の武闘の場面では土方を、殺戮(さつりく)戦にかりたてる一方、ひそかにあこがれる学問、論説の静の分野では甲子太郎を尊重した。

伊東甲子太郎に増長の勇み足があった側面は否定できない。次第に、隊の本流から遊離してゆく。新選組をのっとってしまうのか、新選組と訣別(けつべつ)するのか、はたまた土方に斬られるか。甲子太郎に、進退の決断がせまられていた。折から、孝明天皇が崩御。御山陵が東山に築かれる。(作家)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

水戸市とつくば市の今年度予算を比較《水戸っぽの眼》12

【コラム・沼田誠】3月議会が議了を迎え、新しい年度の予算が固まりました。みなさんの税金が、どの事業にいくら配分されるか、自治体ごとに一斉に決まる季節。元広報担当としては、個々の項目よりも、市のトップが市民に向けて予算をどう語ったかが、とても気になります。 今回は、水戸とつくばの市長が2026年度予算をどのように語ったのかを見ていきます。その前に、両市の一般会計当初予算の大枠を確認します。水戸は1308億円で、2年連続して過去最大となりました。つくばは1227億円で、7年連続で更新してきた「過去最大」が止まることになりました。 ただ、つくばの市税歳入は593億円(+4.5%)と過去最大を更新しており、総額の減少は税収の頭打ちではなく、大型投資が一段落した結果に見えます。具体的には、TX沿線の教育施設整備が一段落しました。詳細は本サイトの記事「…つくば市26年度当初予算案」(1月30日付))をご覧ください。 対照的な両市長の「語り口」 では、両市はこの予算をどのように語っていたでしょうか。その語り口は対照的です。水戸市長は、最重要課題に「人口減少問題」を据えた上で、「選択と集中」の下、限られた財源を「みとっこ未来プロジェクト」と「若い世代の移住・定住加速プロジェクト」に重点配分すると宣言しています。 具体的には、「医療・福祉」「教育」「救急体制」「防災・減災」などの言葉が並びます。減りゆく人口に抗うために、暮らしの「今」の基礎を厚く守る構えと言えるでしょう。 一方、つくば市は「未来への持続可能な投資」をテーマに、「量的拡大から質の高いサービスへ」「誰一人取り残さない」と理念を掲げた上で、児童発達支援センター、陸上競技場、スマートモビリティ、芸術文化創造拠点などの事業を将来の果実として説明しています。 会見で市長は「新規事業に大胆な投資をするというよりは、これまで行っている事業を着実に未来へつなげていく」とし、「査定は非常に厳しくし、予算要求からはかなり削らなくてはいけなかった」とも述べました。「未来」を掲げ、「量から質への転換」として語り直す姿勢が印象的です。 事業のビルド&スクラップ さて、「SIMふくおか2030」という、自治体財政について体験するシミュレーションボードゲームをご存知でしょうか? このゲームは、福岡市を舞台に参加者が担当部長役となり、話し合いで事業を選び・削り、傍聴者のジャッジを受けながら破綻しないように予算を組むというものです。福岡市の元財政課長が各地で開いていた「出張財政出前講座」が7年前に土浦であり、私はその際に体験しました。 そこで印象に残っているのは「ビルド&スクラップ」という言葉でした。自治体の財政規模は無尽蔵ではなく、社会の変化や災害などの緊急事態に対応するには、既存事業を止めざるをえない状況もありえます。ある政策を行うということは、別のある政策を行わないということと、意識的に判断しているのです。 「今を守る」vs.「未来を強調」 「今」を守る水戸市、「未来」を強調するつくば市。その結果、予算に載らなかったものは何か? 予算を見るとき、そのことにも想像力を向けてみる必要があると思います。(元水戸市みとの魅力発信課長)

おおい、ツバメよ 来てくれないのか《鳥撮り三昧》12

【コラム・海老原信一】築48年の我が家。古くなり傷んではきたが、それなりに心地よく暮らせている。玄関の右隅上方にベニヤ板の棚が取り付けられている。設置してから7~8年は経つが、ツバメに来てほしくて用意した営巣用棚だ。 だが来てくれない。なぜなのかと思いながら、毎年見ては寂しくなる季節がやってきた。家主はそれなりに心地よく暮らせているが、ツバメには気に入ってもらえないようだ。 庭先の電線に止まっては、ジュリ、ジュリと鳴く姿は見えるのに、あと3メートル先のこの物件で営巣してほしい。確かに、巣作りに必要な泥を採れる場所がこの近くにはない。田んぼとか、湿地のような湿った土がないと、巣作りは難しいようだ。諦めるより仕方がないのか。 巣立ち間もない子ツバメ 17年ぐらい前、花室川中流域でのこと。川の途中に石を敷き詰め、流れに変化をつけてある場所が一定の距離ごとに設置されている。その一つの下流に橋が架かっており、暑い盛りの季節、その上に通い詰めたことがある。 敷き詰めた石が流れを変化させると、そこにはいろいろな堆積物が集まる。ごみなどもあるのだが、小さな生き物たちもおり、魚がそれを目当てに集まってくる。その魚を狙ってサギが飛来する。敷石の上で水面を見つめ、くちばしを水中に打ち込み魚を捕らえる。 空振りになることの方が多い。だからだろうか、納得するまで頑張る。似たようなものかと思いながら、観察と撮影を続ける私。 それにしても暑いとつらくなり、少し動いてみようかと川下側に歩き出したとき、1本のヨシが揺れるのに違和感を覚えた。おや何だろうと視線を凝らす。そこに、3羽の巣立ち間もない子ツバメが止まっている。 1本のヨシに3羽も止まれるなんて、鳥の体は軽くできている。ヨシも細い見掛けとは違って柔軟なんだと、感心をしながら眺めていた。急に子ツバメたちが騒がしくなったと思ったら、すぐに親ツバメが現れた。 くちばしの先には虫を捕らえている。そうか、そういうことか。親の飛来をいち早く察知し、我先に食べ物を受け取ろうとアピールする子ツバメたち。そこに遠慮は存在しない。親は公平に与えようとするのだろうか、それともアピール度の強い子に傾くのだろうか。 希望を捨てない家主 自然界のおきては私たちが考える以上に厳しく、それでもうまく収まる柔軟さもあると思わせる一幕を見ることができた。そこへ誘導してくれた暑さにも感謝だ。 そんなやり取りを身近で見たいと設置した玄関先の棚。自身がツバメならどうだろうか? ここでしばらく暮らしてみようと思える場所なのだろうか? それでも希望を捨てたくない家主なのだが…。(写真家)

柵が倒れ女子児童けが つくばカピオ前広場

26日午後1時30分ごろ、つくば駅近くの同市竹園、市の複合施設、つくばカピオ前の広場で、広場に設置されたスロープと広場を隔てる鉄製の柵に女子児童(8)が手を掛けたところ、柵がスロープ側に倒れ、児童は足などを打ってけがを負った。 市芸術文化推進課によると、倒れた柵は高さ79センチで、長さ4.35メートルにわたって3ブロックが倒れた。女子児童は市内から家族と遊びに来ていて、柵に体を向けて手でにぎっていたところ、柵と一緒に正面から倒れたという。同課によると、柵に腐食はみられず、溶接部分がはがれたことが原因とみられるという。 柵はカピオと同じ1996年に建築された。指定管理者のつくば市文化振興財団(同市竹園)が施設の管理などを実施し、定期的に点検などを実施しているが、柵がぐらついていたなどの異常は確認されていなかったという。 市文化振興財団は、女子児童の保護者に謝罪した上、施設の点検や安全確認を改めて実施した。倒れた箇所や同様の柵がある箇所については現在、カラーコーンを設置し、近寄らないよう注意喚起する張り紙を掲示している。 市は、当該施設の点検を徹底し、安全対策や注意喚起を行うなど再発防止に努めるとしている。

障害者の余暇活動充実へ つくばで新団体スタート 

地域のネットワークで課題解決 障害者の余暇活動の充実を目指す「つくば市障害者の余暇活動を考える会」の発起式が26日、同会の実行委員会によってつくば市内で開かれ、福祉事業者や障害者のスポーツ団体、行政職員、支援者、当事者や家族らが参加した。実行委員会には、市内で障害者の余暇活動や運動・スポーツ活動、生活支援に取り組む福祉専攻科シャンティつくば、障害者のスポーツ事業や余暇活動支援を行う一般社団法人ウルラ(ULURA)、NPO法人ユアフィールドなどが名を連ねる。今後も行政を含めた地域のネットワークづくりや課題解決に向けた取り組みを進めていく。 2025年初頭、関係者間で課題を共有したことをきっかけに準備を進めてきた。世話人の一人、ウルラ代表で筑波大学准教授の澤江幸則さんによると、障害者の余暇を取り巻く環境には、家族の負担の大きさ、当事者のニーズに合った福祉サービスの不足、活動の場や情報のマッチング不足などが課題に挙げられ、特に「(活動の)場」「移動」「時間」の3点が大きな壁となっているという。 同会は現時点で実行委員会形式でのスタートとなるが、今後は行政や支援団体、当事者や家族などの活動への参加を想定している。発起式には会場定員の60人を上回る約80人の申し込みがあり、オンライン対応も行われた。澤江さんは「関心の高さを感じる一方で、その期待に応える責任も感じている」と述べた。今後は6月に初のセミナーを予定しており、当事者や家族、相談員の声を反映しながら、具体的な施策づくりを進めていく考えだ。 余暇は労働と同じくらい大切 発起式で澤江さんは「余暇とは単に余った時間ではなく、人生や生活を豊かにする重要な要素」だと強調した。かつては労働中心の価値観が主流だったが、現在はワーク・ライフ・バランスの考え方が広がり、「労働と同じくらい余暇が大切な時代になっている」と指摘した。余暇活動が心身の回復や人とのつながりを生むとする理論にも触れ、「社会との接点を広げ、人生を豊かにするための大切なツール」だと語った。 一方で、障害者の余暇を取り巻く環境には課題も多いと指摘する。澤江さんによると、当事者家族への調査では、外出や余暇の満足度は「満足している」と「満足していない」がほぼ半々だった。 活動の場自体は一定数存在するものの、情報が十分に共有されておらず、活用されていないケースも少なくない。移動手段についても既存の支援制度だけでは対応しきれていない現状があると話す。また、施設職員の勤務体制などの影響で、平日に比べて休日の活動が乏しい点も課題とされる。 こうした状況を受け、同会は、行政、民間団体、支援者、当事者らが緩やかにつながる「ネットワークづくり」を重視する。澤江さんは「一つの主体だけで解決できる問題ではない。みんなで考える必要がある」と語った。 今後の取り組みとしては、定期的なセミナーやワークショップの開催、ホームページやSNSを活用した情報発信、寄付の呼びかけなどを計画する。多様な関係者の参加を促し、「市全体で障害者の余暇活動を支える仕組みづくり」を目指す。 また、学校卒業後の学びの機会が限られる現状を踏まえ、生涯学習の視点から余暇の充実を図る必要性も強調する。「学びの場を広げることが、余暇をより豊かなものにする」と話した。 課題出し合えたのは重要な一歩 実行委員会の世話人で、シャンティつくば代表の船橋秀彦さんは「地域で地道に取り組んでいる人たちが初めてこういう場で交流し合い、障害のある人たちの余暇活動に関する課題を出し合えたのは重要な一歩。さらに、そこに行政の参加があったことは大きい。シャンティつくばでも余暇活動を進めてきたが、より一般に広げるためには行政も含めた取り組みが必要になる。市が余暇活動に視点を当てた取り組みである『余暇活動支援事業』を始めたことは高く評価しており、障害のある人たちの余暇活動の発展につながる第一歩になると感じている」と語った。(柴田大輔)