月曜日, 4月 27, 2026
ホームスポーツ【高校野球代替大会を終えて】㊦ 「野球の力を感じた」

【高校野球代替大会を終えて】㊦ 「野球の力を感じた」

【伊達康】今大会は優勝してもその先に甲子園がないことが前提で開催された。小さな頃から甲子園でプレーすることを夢見てきた球児たちにとって喪失感は筆舌に尽くしがたい。

3月から5月半ばまでの学校の休校措置により春季大会は中止となり、多くのチームが通常の部活動すら行えない期間を過ごしてきた。

代わりに用意された代替大会。体裁上、表向きはみな優勝を目指して頑張るとは言いつつも、気持ちの整理を付け、失ったモチベーションを取り戻すことは容易ではなかっただろう。むしろ、モチベーションを失ったまま最後の大会に臨んだ選手がいたとしても不思議ではない。

大会中、何度か球場で取材をした。夏の大会では敗者は泣き崩れることが常であるが、今大会は敗者もそれほど泣くことなく、どこか達観した面持ちで球場を去る光景が見られた。

通常は、敗戦によって、もうこいつらと野球ができない、勝ちたかった、悔しい、無念だという様々な感情が押し寄せて泣きじゃくる者もいるのだが、今回は最初から甲子園への切符がない。敗者の感情の起伏という面からも今大会が持つ独特の雰囲気が感じられた。

「今が一番野球が楽しい」

つくば土浦エリアのチームではないが、私学4強の一角である明秀学園日立の金澤成奉監督が準々決勝後の囲み取材で語った今大会が持つ意味や、コロナ禍がもたらした変化などについて紹介し、今大会の総括としたい。以下は金澤監督の言葉である。

残りアウト一つになってもベンチ内で激しく檄(げき)を飛ばす金澤監督(右端)=ノーブルホームスタジアム水戸

「今大会の意味として一つ言えることは、非常に考える時間を与えてもらったということ。親のことであったり、甲子園がなくなったのになぜ野球をやらないといけないのかと、自問自答しながら野球をやっていく中で、野球って楽しいんだなというのが分かったような気がする。

毎週、選手に日誌を出させているが、日誌に書かれた3年生の言葉の中で、『今が一番野球が楽しい』と、『仲間と野球をやれる喜びを感じている』といった声が非常に多かった。そういった時間を与えてくれたから意味があったと思う。

甲子園という目標があると、私自身もそうだが、どうしてもそちらの欲の方に目が行きがちで、本来の小さな頃から野球をやり始めた時の気持ちというのを失いかけたりする。

この大会は、何のために野球をやっているのだろうとか、やり遂げることの大切さだったり、今自分があるこの場所、この時間、どういった方々のお陰で今があるのか、そういったことを考えさせられ、思いをはせることができた。

特に高校野球というのは保護者の方々の力が大きいので、感謝っていうことはどういうことなのかとか、恩返しというのはどういうことなのかを感じられた大会だったと思う。

特別な大会だったので、特別な思いでずっと一試合一試合大切にやってきた。勝つことを前提にしながら、逆にどういう終わり方をするのかというのを常に頭に描きながらやってきた。やりきった後、終わりを遂げる時に、選手たちに何かを感じてもらいたいという思いで。

本音を言うと9回までやりたかったが、自分の中ではやれることはやれたのではないかなと思う。子どもたちも大変満足した終わり方ができたのではないかと思う。

大会を通して結果が出なくて悔しい思いをした子だっているでしょうし、ヒットを打って親御さんが喜ぶ姿が見られた子もいる。

いずれにしても、子どもたちが頑張る姿でお父さんお母さんがさらに勇気づけられる。子どもと親の絆が深まる。本来スポーツが持つべき姿というか、野球をやっていたからこそ感じられたそれぞれの思いを感じられる。

そういう意味では大変有意義な時間が過ごせた。親御さんたちも、普段は練習までは見に来ないけど、やっぱり子どもたちの姿を見納めたいということで、練習から見に来られている姿を見て、失ったこともあったけど、得たものもあると思う。

そういったいろんな意味を含めた大会だった。こういう年だからこそ1日でも長く1試合でも多く共に戦おうと。こういう年だからこそどの時代よりもお前たちとずっと長く野球をやりたいということを話して、ほぼそれが達成できた。モチベーションが下がった時もあったが、お互いが声を掛け合いながら、やりきるということはどういうことなのか、やりきったときにどんな光景が見えるのかということを、この試合で感じたと思う。

コロナ禍に見舞われた世代だが、様々なことに打ち勝ってきたのが人類なので、そこで野球の力というかそういったことをお前たちは感じたはずだから、これからいろいろ場面で野球で培ったこの乗り越える力、やりきる力を発揮し、今後も、この思い出を大事にしてほしい。思い出は作るものではなく、できるものなんだなということが分かったと思うので、そういう野球の力で人生のあらゆる局面で打ち勝ってもらいたいなと思う」。

追い込まれたらスリーフィンガー分短く持ち、相手にプレッシャーを与えることをチームの徹底事項としている明秀学園日立。4番の久保田翔太であっても例外なくスリーフィンガーにする

心から感謝

大会が始まってみれば、無観客で例年通りとはいかずとも熱く盛り上がり、高校野球の話題が新聞紙上をにぎわせた。一般のファンもラジオやテレビ、速報サイトなどで楽しむことができた。

夏の甲子園と地方大会が中止になり、代替大会の開催自体が不透明だった5月下旬のことを考えると、大会期間中、関係者から陽性判明者が出ることなく日程を消化できたことは奇跡に近い。

新型コロナウイルスのみならず天候までもが足かせとなり日程が進まなかった。運営側の苦労は想像に難くない。当初予定していた県のナンバーワンを決めることはできず異例の4校優勝という形で幕を閉じたが、裏で支えた人たちの尽力には心から感謝したい。

(終わり)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

片隅で咲く恋心、ままならない感情 《マンガサプリ》6

【コラム・瀬尾梨絵】SNSという広大な海から生まれ、多くの読者の心を静かに揺さぶり続けて書籍化に至った名作をご存知だろうか。それが、蒔(まき)先生による「おもいこみのノラ」(KADOKAWA、全1巻)だ。コンパクトな巻数の中に、私たちが忘れかけていた誰かを思うことの、みずみずしくも少しだけ苦い感触が、驚くほどの密度で閉じ込められている。 本作の舞台は、さまざまな動物たちが人間のように二足歩行し、服を着て生活している世界。その中でも、人生のモラトリアムとも言える大学が物語の中心となる。 主人公は、犬のノラ。彼女は派手なタイプではなく、どちらかといえば周囲の喧騒(けんそう)から少し離れたところでひっそりと、自分の日常を過ごしているような雑種犬。そんな彼女が胸の奥で温めているのは、同じ大学に通うオオカミのアルへの淡い恋心だった。 動物たちの世界といっても、そこに描かれるのはファンタジーな冒険ではない。講義の空き時間、学食での何気ない会話、放課後のちょっとした寄り道。私たちがかつて通り過ぎてきた、あるいは今身を置いている「学生生活」そのものの空気が、蒔先生の柔らかな描写で描かれている。 最大の見どころは、タイトルにもある「おもいこみ」というキーワード。恋をすると、私たちはどうしても臆病になり、相手の何気ない一言に一喜一憂し、深読みしすぎて自爆したり、逆に都合の良い解釈をして舞い上がったりと、自分でも想像することができない自分を垣間見ることになる。 ノラが抱える恋心は、まさにその「おもいこみ」の連続。自分の気持ちを伝える勇気が出ないからこそ、心の中の独白(モノローグ)は饒舌(じょうぜつ)になり、相手への思いは純度を増していき、その一方通行の熱量が、読者の胸を締め付ける。 動物たちが織りなす不器用な日常 ノラを取り囲む友人たちの描写も秀逸だ。それぞれに個性があり、悩みがあり、彼らなりの生活がある。動物の姿を借りているからこそ、キャラクターたちのささいな表情の変化や、耳や尻尾の動きといった「言葉にできない感情」がよりダイレクトに伝わってくる。それは言葉の解像度を超えた、非常に豊かな感情表現と言えるだろう。 全1巻という構成は、まるで1本の良質な短編映画を見終えた後のような、すがすがしい余韻を私たちに与えてくれる。物語は劇的な大団円を迎えるわけではないかもしれないが、ノラが過ごした穏やかで少しだけ切ない日々は、読者自身の記憶にある「大切な誰か」の面影を呼び起こさせてくれる。 「最近、心がささくれ立っている」「誰かを好きになる真っ直ぐな気持ちを思い出したい」。そんな方にこそ、この「おもいこみのノラ」を手に取ってほしい。動物たちが織りなす優しくて不器用な日常が、あなたの心の中に、温かな火をそっと灯してくれるはずだ。(牛肉惣菜店経営)

スペインに海外出張 五十嵐つくば市長 4泊6日

つくば市の五十嵐立青市長が26日から4泊6日の日程で、国際会議「ブルームバーグ・シティラボ2026」に出席するためスペインのマドリードに海外出張する。帰国は5月1日。市が負担する費用は8万円で、渡航費、宿泊費、会議期間中の食費は主催者が支払うという。 今年から市ホームページで事前公表するようになった目的や概要などによると、市長が加入するOECD先進的市長会議(OECDチャンピオンメイヤーイニシアティブ)から招待された。同国際会議はマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が創設した慈善財団と、米国の非営利研究・教育機関「アスペン研究所」が主催する。世界各国から100人以上の市長や専門家らが集うという。 五十嵐市長は、建築、計画、コミュニティの変革方法について話し合う会議や非公開のセッションに参加するほか、住宅問題について議論するパネルディスカッションに登壇する予定。 日程は、26日出国し、同日マドリード着、27日から29日まで3日間、同会議に参加する。30日マドリードを離れ、5月1日帰国する。 市長の海外出張は今年2月、イギリスとフランスに8日間出張(2月1日付)して以来、今年2回目。今年度は初めて。今年度当初予算では市長の海外出張費は計上せず補正予算で対応するとしていた(3月26日付)。(鈴木宏子)

学者肌の政治家・大塚耕平氏が逝去《文京町便り》51

【コラム・原田博夫】前参院議員の大塚耕平氏が2026年3月2日に急逝した(享年66歳)。大塚氏が勤めていた日本銀行の関係者の紹介で、大塚氏とは2005年ごろから学会活動に関連して交流があった。とりわけ思い出深いのは、あまり票につながらない学会での講演を引き受けてくれたことだ。 私の学会・研究会で講演 東日本大震災後の2012年、私が第4代会長をしていた公共選択学会の研究大会で、大塚氏に基調講演をお願いしようと私が提案したところ、政治学(専門は選挙論)系の専務理事(次期の会長)が「選挙が取りざたされている時期に、現職政治家は集票が見込めない会合には出てこないのではないか」と懸念を示した。 大塚氏は日銀在職時に執筆した「公共政策としてのマクロ経済政策:財政赤字の発生と制御のメカニズムに関する考察」(成文堂、2004年)で、2000年に早稲田大学から博士(学術)号を授与されている。 この業績を強調し、私は「政治(選挙)・経済・行政・政策を研究フィールドにしている公共選択学会にとっては、現場と理論を架橋する意味でも適任と考える」と主張し、大塚氏に講師を打診したところ、特に条件を付けず引き受けいただき、円滑かつ熱心な講演を展開していただいた。 先の衆院選は立候補辞退 大塚氏は2001年の参院選で初当選(民主党)、2007年の再選後、鳩山由起夫民主党内閣で内閣府副大臣に就任した。2011年1月の菅直人第2次改造内閣では厚生労働副大臣(医療・介護・年金・福祉担当)に就任し、大震災後の対策を主導した。 野党に転じたあとは、民進党第4代代表(2017年10月~18年5月)、国民民主党初代共同代表(2018年5月~9月)、同代表代行(2018年9月~23年4月)を歴任。2024年11月の名古屋市長選では、自民、公明、立憲民主、国民民主の推薦を受けながらも落選した。 2026年2月の衆院選では、国民民主党愛知県連の推薦擁立を受けたが、体調不良を理由に立候補を辞退していた。 最後のリポートで「本家帰り」 こうした政治経歴だったが、実に筆まめな方で、メールでの情報発信を熱心に行っていた。私のところに送られてきた最後のメールは、「政治経済レポート:OKマガジン」(Vol.569、2025年10月10日)だった。 そこには「いわゆる高市トレードで株価が高騰しています。株価高騰で日銀の金融政策も利上げがしやすくなったと言えます。…『出口』戦略の推進には好環境になっているとみるべきでしょう。次回の政策決定会合が注目されます」と記され、「日銀による国債購入」「日銀による例外的資産購入」「2025年9月の日銀政策変更」について意見が述べられていた。 それ以前には、取り上げるテーマや話題が、気候変動、貿易、新薬開発など実に多彩だったので、いつ選挙活動をしているのか不思議なくらいだったが、Vol.569は(おそらくは体調不良の中)自分のメーンフィールドに戻っていた―ある種の本家帰り―ようである。ご冥福を祈りたい。(専修大学名誉教授)

「ツル植物の女王」クレマチス 筑波実験植物園でコレクション特別公開

約250種類のクレマチスを集めたコレクション特別公開「クレマチス園公開」が、25日からつくば市天久保の国立科学博物館 筑波実験植物園(遊川知久園長)で始まった。今回で36回目を数え、例年2万人を超える来場者が訪れる企画展だ。華やかな色彩と多様な形を持つことから「ツル植物の女王」とも呼ばれるクレマチスの魅力と、歴史、保全の取り組みを体感できる。開催は6月7日まで。 クレマチスはキンポウゲ科の植物で、北半球の温帯地域を中心に約300種が分布している。日本にも約30種の野生種が確認されている。日本の代表的な野生種で大きな花をつける「カザグルマ」は、中国原産のテッセンなどとともに19世紀の植物学者 シーボルトがヨーロッパへ持ち帰り紹介したことで、現在の多様な園芸品種のルーツの一つとなったことが知られている。 ヨーロッパでは150年以上前から品種改良が始まり、約100年前にフランスで生まれた紅色の花弁と黄色の芯が特徴の「ビル・ド・リヨン」など園芸品種は現在までに数千種に及んでいる。日本では戦後に育種が進み、青紫色から薄青色の花色を持つ12から15センチの大輪を咲かせる「藤娘」など、海外へ輸出される品種が生まれている。園内では、クレマチスが歩んだ歴史を知ることができるように、「100年以上前の品種」「昭和の品種」「新しい品種」などの表示が株ごとにつけられている。 同園では、カザグルマをはじめとするクレマチスの野生種と園芸品種、350種以上を保有している。今回の展示は「約250種類のクレマチスが時期をずらして開花し、100種類ずつ花がバトンを渡しながらリレーするような形で咲き変わっていく。訪れる時期によって異なる景観が楽しめる」と、展示を担当する同園研究員の村井良徳さんは言う。 ゴールデンウィーク頃には早咲きの品種が見頃を迎え、会期前半と後半で全く異なる種類を見ることができるのも特徴だ。昨年発表された常陸太田市の大内園芸による世界で初めてとなる緑色の壺型の花をつける「シェンロン」や、個人育種家の廣田哲也さんによる淡いピンクが特徴の「咲良(さくら)の妖精」など、流通量が少ない品種もある。 絶滅危機の野生種も 多様な園芸品種がある一方で、深刻な個体数の減少に直面する野生種がある。地域ごとに花の色や形が異なるカザグルマや、四国の限られた場所に自生するシコクハンショウヅルなどは、宅地開発やダム建設、乾燥化などの影響で自生地が急速に減少し、絶滅危惧種に指定されている。茨城県内でも近年、複数の自生地が消失しているという。園ではこうした貴重な遺伝資源の保全に力を注いでおり、DNA解析による系統研究も進められている。 村井さんは「野生種が持つポテンシャルに人の手が加わって、色と形が爆発的に多様化したのがクレマチス。これだけの花の多様性を間近に見ることができるのは、筑波実験植物園だからこそ。一つ一つの花が持つ個性を、じっくり楽しんでもらえたら」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔) ◆コレクション特別公開「クレマチス園公開」は4月25日(土)~6月7日(日)、つくば市天久保4-1-1 国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。開館時間は午前9時から午後5時(入園は午後4時半まで)。月曜など休館、5月4日(月)は開館。入園は一般320円、高校生以下、65歳以上、障害者などは無料。5月4日(月)と19日(火)は入場無料。◆5月3日(日)、4日(月)、19日(火)、6月7日(日)はそれぞれ午前10時~、10時半~、11時~の3回、同園研究員の村井良徳さんによる「クレマチス園見学ポイント紹介」を開催。会場は同園内のクレマチス園。各回先着10人。◆5月4日(月)と19日(火)午後1時半~、午後3時~、村井さんによる栽培講座「はじめてのクレマチス栽培」を開催。会場はクレマチス園。各回定員12人。◆5月10日(日)午後1時半~、カザグルマ研究者の飯島眞さんによる特別セミナー「風車の多様性および保全と、テッセンを中心とした種間交配の成果と今後の育種の可能性」を開催。会場は同園研修展示場3階セミナー室。定員30人。◆5月17日(日)午後1時半から村井さんによる「日本のクレマチスの野生種や園芸品種の多様性を楽しむ」。会場は研修展示場3階セミナー室。定員30人。※講座とセミナーはホームページから事前予約が必要。詳しくは同園ホームページへ。