月曜日, 12月 5, 2022
ホーム スポーツ 【高校野球代替大会】日大 小菅監督に聞く㊤ 練習する姿、泣けてきた

【高校野球代替大会】日大 小菅監督に聞く㊤ 練習する姿、泣けてきた

【伊達康】茨城県の高校野球代替大会が11日開幕した。出場を間近に控えた有力校の監督インタビュー第2編は、2017年と18年の夏に茨城を連覇した土浦日大の小菅勲監督に話を聞いた。

春季大会中止に落胆

—春季大会の中止を聞かされた時はどのようなお気持ちだったでしょうか。

小菅 本校は東京、千葉、神奈川など緊急事態宣言が先に出たところの出身者がいますもので、寮で選手を預かるという判断をしました。

勉強はオンライン授業で、練習は集まって自主練習で行いました。フィジカル的なことはつらいことなのでみんなでやろうということで、1日2時間程度は練習できていたんですね。ですから春はまだやれるという気持ちでいたしチーム状態も非常に良かったんですよ。

3年生を中心に練習への取り組みもよく、心技体ともにすごく良い状態で調子が上がってきていたんですね。それで3月下旬に春季大会がないという判断が発表されたときは本当に落ち込みました。

—3月中に全体練習はできていたのでしょうか。

小菅 全体練習ではなく個人練習や学年練習ですね。チームとして組織立って練習はできていませんが練習を欠かすことはありませんでした。随分良い状態でしたから私も選手も春季大会をやりたかったし、本当に春の関東大会に行きたかったという思いです。

春先の土浦日大桜グラウンド。この時にはまだ紅白戦が行えた

—3月上旬に取材にお邪魔した時にエースの中川竜哉投手の体つきが見違えるように分厚くなっていてびっくりしました。

小菅 昨秋から努力を重ねました。2学年上でエースだった富田卓を見習って自分も体を大きくしたいという思いで食トレと筋トレを継続しました。彼はパワーピッチャーではありません。持ち味であるボールのキレも増し、非常に良い状態で冬を越せたと思います。

エースの中川竜哉投手。冬トレの成果で最速142キロに到達した

オンライン授業と自主練

—4月16日に全国が緊急事態宣言の対象地になりました。その後はどのように過ごしましたか。

小菅 このまま寮で生活するのか、それとも自宅に戻って過ごすのか、選手本人と保護者に判断してもらいました。保護者の方で戻ってほしいとか、この際怪我を完治させるために自宅近くの病院に通いながら生活したいという選手がいて8人程度が自宅に戻りました。

残りの選手は寮で平日は午後3時30分頃まではオンライン授業を受け、終わったら自主練をして過ごす。緊急事態宣言が解除されるまではこのように過ごしていました。

オンライン授業を受けた後に気持ちを切り替えて「さあやるぞ」という気持ちに持っていくのはなかなか難しかったみたいですね。選手同士でモチベーションを維持するように話し合っていたようです。

—オンライン授業はいつから始まったのですか。

小菅 本校は緊急事態宣言が出た後、1週間以内にオンライン授業が始まりました。課題なども提出しないといけなくて、生徒たちもなかなか大変だったようです。

代替大会やっぱり「複雑」

—5月20日に夏の甲子園と地方大会の中止が決まりました。この日、監督はどのような言葉を選手にかけましたか。

小菅 5月20日よりも前に甲子園中止というリーク記事みたいなのが出ましたよね。あのタイミングでまず生徒にはフォローの声をかけて、5月20日には「これで仕方ないということではない。やりたかった大会だし、出たかった甲子園だし、1週間でも2週間でも落ち込んで悔やんでも良いから、悔みきれたらもう一度集まって次に向かって出発しよう」という話をしました。

—その後、茨城県の代替大会開催が決まりました。

小菅 やっぱり複雑ですよね。「やったぞ」というふうにはならないですよね。甲子園につながらない大会なんですから。選手のモチベーションは今でもアップしている訳ではありません。「とりあえず頑張れ」とか「最後に3年生らしくやれ」というのは押し付けになってしまいますよね。

私から無理やり言葉を弄(ろう)することは避けています。甲子園があっての高校野球なので、だから頑張れるというのがありますし、甲子園出場という志を同じくするからこそ指導者と選手という関係が築けているわけで、今まで味わったことのない不思議な数カ月を過ごしています。

これはどのチームもそうだと思いますよ。そこでやっぱり一番武器になるのが言葉だし、一番邪魔になるのも言葉だと思っています。不思議な空気感を感じながら今に至っています。

—3年生の士気は上がってきているのでしょうか。

小菅 確かに甲子園中止、地方大会中止と聞かされた頃よりは上がってきてはいますが、いつもの年のようにはいきません。このコロナ禍にあって野球を諦めた子もいますし、手伝いに回って受験勉強を一生懸命やっている子もいます。本当に一体感のない、モザイクがかかったような感じになっていますね。

例年ならモチベーションが下がった子がいたら「頑張ろうぜ。しっかりやろうぜ」とモチベーションを引き上げることができたんですが、今年はモチベーションの低い子には低いなりの言い分があるしそれが理解できる。強要することはできません。

—例年のように厳しく指導をしていない、できないということでしょうか。

小菅 例年も厳しくないとは思いますが(笑)。ここ数年は生徒の自主性を尊重した指導が大事なのではないかと思っていますし、今年はそれをより痛感していますね。またこれが興味深い臨床例というか、研究対象となって我々の腕も磨かれたと思います。コロナ禍が再来するのは望まないことですが、再来した場合は今回のことが生かせるのかなと思います。

3年生も精神的に大人になりましたね。彼らは「甲子園がない。君たちに夏はない」と叩きつけられたわけです。自分が高校生だったら間違いなくグレていたと思いますよ(笑)。けど、彼らはやっぱり野球が好きだっていう気持ちだけで甲子園がなくてもやっている。彼らが練習をやっているのを見るだけで感動して涙が出てくる時期もありました。本当に泣けてきましたよ。

常に空気を読みながらの毎日です(笑)。現代の高校野球は。部員たちの機微を察しながら、時代の風を感じながら、ですね。そうしていかないと、生徒たちからの信頼は得られません。

(続く)

誹謗中傷するコメントはNEWSつくば編集局が削除します。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー

注目の記事

最新記事

つくば洞峰公園問題をめぐる対立と分断 《吾妻カガミ》146

【コラム・坂本栄】つくば市にある茨城県営洞峰公園の運営方法をめぐり、県と市が対立、市民の間には分断が生じています。本欄ではこの問題を何度か取り上げてきましたが、今回は対立と分断の起因を整理して、県と市、市民が納得できる策を探ってみます。 維持管理費をどう捻出するか? 県の考え方は、▽園内にグランピングなどのレジャー施設を設けたい、▽その目的は、公園の維持管理費の一部を施設運営会社の収益で捻出することにある、▽同時に、新しい施設は県の観光振興策にも合致し、県の魅力度向上に寄与する、▽新施設を迷惑に思う利用者に配慮し、レジャー施設には利用ルールを設ける―と要約できます。 この計画に対し、公園の日常的利用者が、▽園内にレジャー施設ができると、自然公園の形が壊れる、▽そのような施設は公園になじまないので、公園の現状を変えないでほしい―と反対。市は日常的利用者の側に立ち、▽県の改修計画には賛成できない、▽維持管理費は、公園運営の民間委託でなく、体育館などの利用料引き上げで捻出したらよい―と主張。 要するに、公園運営に民間の知恵を導入し、県財政から出る維持管理費を浮かせ、公園にキャンプなどを楽しむ場としての役割も持たせたいとする県と、今の公園の形は変えず、維持管理費は県財政ではなく、施設利用者に負担させたらよいとする市の対立です。 市長対案を県知事は明確に拒否

列車内の無線Wi-Fiサービス 23日で終了 TX

つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区、柚木紘一社長)は、列車内での無線Wi-Fiサービスを23日で終了する予定だと発表した。駅構内での無料Wi-Fiサービスは継続する。NTTドコモのd Wi-Fiサービスの終了に伴うものという。 TXは、駅構内や改札付近だけでなく、列車内でも無料通信が利用できる体制を開業当初から早期に整えた先駆的な公共交通だ。列車内の無線Wi-Fiは、通勤ラッシュ時などは接続しにくくなっていた時もあるなど、利用者は少なくないとみられる。個人の端末通信を使用すればスマートフォンやパソコン通信は引き続き利用できる。 同社によると、これまで列車内では2つの無料Wi-Fiが提供されていた。エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(東京都千代田区)が運営し、TXの利用者全員を対象として提供されていたTX Free Wi-Fi(ティーエックスフリーワイファイ)と、NTTドコモ(東京都千代田区)が運営し、同社のdポイントクラブの会員向けに無料で提供されていたd Wi-Fi(ディーワイファイ)だ。どちらも23日に終了し、列車内での無料Wi-Fiの提供は無くなる。 同社は「d WiFiを提供するNTTドコモから、d Wi-Fiサービスの終了に伴って、つくばエクスプレスでも運営を終了したいとの申し出があった。それを受けて、TX FREE Wi-Fiも同時に終了することが決まった」と経緯を説明する。

台湾の地方選 与党・民進党の大敗《雑記録》42

【コラム・瀧田薫】11月26日、台湾で4年に一度の統一地方選が行われ、台北市長など多くの首長選で野党・国民党が勝利した。蔡英文総統が率いる与党・民進党は大敗し、蔡氏は直ちに党主席(党首)を辞任したが、総統の任期(2024年5月)は全うする旨表明した。 蔡氏は選挙戦を通じて、地域振興策とともに「抗中保台」(中国に抵抗し台湾を守る)政策を掲げ、それを争点化して選挙戦を勝ち抜こうとしたが、選挙は対中融和路線を標榜(ひょうぼう)する野党・国民党の大勝に終わった。これを受けて、中国政府は「平和と安定を求める民意の表れ」と国民党の勝利を歓迎するコメントを発表した。しかし、この選挙結果を見て、台湾の有権者の多くが中国との融和を望んでいると判断すれば、実態を見誤る。 台湾の選挙事情は独特で、国の基本政策(外交方針など)を争点にするのは総統選挙、国民生活の身近な問題(物価、景気など)は地方選の争点といった具合に、国民の意識の中で分けられている。さらに、地方選の場合、地域事情や候補者の地縁・血縁が選挙結果に大きく影響することもあって、対中方針といった国政上のテーマは争点になりにくいのである。 実際、今回の選挙で野党が大勝した理由は、与党の国内政策(コロナ、経済、社会保障など)批判が国民一般から支持されたことにあったわけで、野党の親中路線が国民一般の支持を得たわけではない。民進党としては、選挙結果をうけて、まず内政重視の姿勢を取らざるを得ず、野党・国民党としても与党の国内政策に攻撃を集中する方が党勢拡大のための最適解と考えるだろう。 つまり、対中国政策で与野党が正面切って火花を散らすのは次期総統選が事実上始まる来年夏頃からになると予想される。これまで対中国で強硬路線を続けてきた蔡政権は、当面、内政重視の姿勢を国民向けに見せることになるが、他方、欧米、日本などとの連携(対中国)方針について大きく変えることはないだろう。 次期総統選の行方に注目

ウクライナの動物支援 愛護団体呼びかけ つくばでチャリティーライブ

戦禍のウクライナの動物を支援する「クリスマス・チャリティー・ジャズライブ」が18日、つくば市春日の積水ハウスつくば支店で開かれる。演奏は、松戸市在住のジャズピアニスト、竜野みち子さんとベース、ドラムのトリオで、クリスマスソングや誰もが知っているジャズの名曲などが披露される。 竜野さんは主に東京、横浜を中心に演奏活動をしているが、カリブ海のハイチやカナダのモントリオールジャズフェスティバルへの参加など、国外での演奏も経験している実力派だ。 ライブを主催するのは、つくば市を拠点に保護猫の譲渡活動やTNR(捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元に戻す)活動を行っている動物愛護団体「Team.(チーム)ホーリーキャット」(2019年7月17日付)。 ロシアによる2月の軍事侵攻以降、ウクライナでは国民はもちろん、多くの動物が窮地に立たされている。国外脱出を余儀なくされた住民たちはペットをなんとか一緒に連れ出そうとしたが、多くの動物が残されているという。 代表の重松聖子さん(74)は東日本大震災が起きた2011年の10月、福島第一原発に近い警戒区域で置き去りにされた猫の救出作業を行った。ウクライナの惨状に、避難指示が出されて住む人のいない家で猫たちのむくろを見たことが思い出された。またウクライナの首都にあるキーウ動物園の餌がないという報道にも心を痛めた。 竜野さんは震災以降、被災地で動物たちの命をつなぐ活動を続けているグループを音楽活動を通して支援している。4年前、自宅近くの神社に住み着いた野良猫たちが地域猫として暮らせるよう、ホーリーキャットにTNR活動を依頼したことで、重松さんたちメンバーと親交を深めた。この出会いがつくばでのチャリティーライブ開催に結びついた。