金曜日, 10月 23, 2020
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《邑から日本を見る》64 すべては1人から始まる

【コラム・先﨑千尋】この18日、私はまずインターネットで、政府与党は検事総長や検事長らの定年延長を可能にする検察庁法改正案の今国会での成立を断念するということを知り、おやと思った。そのとき、とっさに思い浮かべたのは、本田路津子の「一人の手」(One man’s hands)という歌。澄んだ彼女の声が耳元によみがえってくる。

一人の小さな声 何も言えないけど
それでもみんなの声が集まれば
何か言える 何か言える
(訳詩:本田路津子 作曲:ピート・シーガー)

今月8日に30代の女性がツイッターで「検察庁改正案に抗議します」と投稿した。それが瞬く間に広がり、これまで政治的な発言をしてこなかった俳優の小泉今日子さんら芸能人らも加わり、最初はバカにしていた安倍首相も無視できなくなった。

15日と18日には、松尾邦弘元検事総長ら検察OBも反対の意見書を法務省に提出。世論調査でも反対が多く(朝日新聞では反対が64%)、国会での野党の反対の声も大きく、追い込まれた官邸は白旗を上げざるを得なくなった。ツイッターデモが始まってわずか10日のことだ。

「火事場泥棒」

「火事場泥棒」という言葉がある。混乱に乗じて、用心が手薄になったすきに他人の物を盗む輩のことだ。日本だけでなく、世界中が新型コロナウイルスの対策に追われており、いつ収束するか見通せない。ただでさえ対策で後れを取ったと批判されている我が国は、この際患者の救済や感染防止対策に全力を注ぐべきではないのか。そんなときに「不要不急」の法案をぶつけてくる。

そもそものきっかけは、報道されているように、今年1月に安倍内閣が、翌月に定年退官になる黒川弘務・東京高検検事長を8月まで定年延長したことに始まった。安倍首相は、黒川さんを次期検事総長にしたかったから。しかし検察庁法にはその規定はない。

折しも、国家公務員の定年を65歳まで延長する法案が検討され、どさくさに紛れ検察庁法も自分に都合のいいように変えてしまおう、そうすれば黒川さんの件も開き直れる、と安倍官邸が考えたことが混乱の大本である。

公務員の定年延長はだれも反対しない。問題なのは、当初はなかった「検事長などを内閣が認めればそのポストに留まれる」という特例規定が盛り込まれたことだ。時の政権に都合のいい幹部は続投させるというみえみえの「政権への忖度(そんたく)」条項。国会審議では、その基準はこれから作るという答弁しかなかった。

安倍政権は、これまで憲法や法律の解釈を自分に都合のいいように変え、とどめは準司法官と言われる検察官まで意のままに操ろうと考えた。それにストップをかけたのは、1人のツイッターでのつぶやき。本田路津子の歌が現実になった。

文春の衝撃的記事

話はそれで終わらない。21日発売の「週刊文春」は、やり玉にあげられている黒川東京高検検事長が新聞記者と、今月に入って2回も賭けマージャンをしていたという衝撃的な記事、写真を載せている。さらに同誌は、森雅子法相の近くでもきな臭いことが起きている、と伝えている。

安倍政権は末期症状。のたうち回り、悪あがきしているようにみえる。賭博を認めた黒川さんが辞めても、定年延長を強行した安倍首相の任命責任とこれから法案処理をどうするのかが問題として残る。小泉さんらの閣僚は、閣議で何も発言しなかったのかということも知りたい。

私たちも声をあげよう。主権者なのだから。(元瓜連町長)

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