【崎山勝功】東日本大震災から丸9年を迎えた11日、つくば市周辺で避難生活を送っている福島県双葉町からの避難者が、同市並木3丁目の国家公務員宿舎前で慰霊祭を執り行った。避難者の間では茨城県内各地に転居する動きが進んでいる。今回が同宿舎で開く最後の慰霊祭になるという。
慰霊祭は双葉町出身の中村希雄さん(78)方の宿舎の庭先に祭壇を設け、参列者約20人が1人ずつ線香をあげ、祭壇前で犠牲者の冥福を祈った。
地震発生時刻の午後2時46分ごろには、双葉町の方向に向かい犠牲者に黙とうを捧げた。黙とう後、時代劇「水戸黄門」の主題歌「ああ人生に涙あり」を合唱した。
慰霊祭を主催した中村さんは、11年10月から同市並木の公務員宿舎で避難生活を送り、震災から1年後の12年3月から毎月11日の月命日に宿舎の庭先で慰霊祭を開いてきた。17年3月までは毎月行っていたが、18年からは年1回前後の開催となっていた。今年は中村さん一家が3月中に転居し同宿舎を退去するのに伴い、同宿舎での最後の慰霊祭になる。
中村さんは取材に対し「晴れ晴れして、何か一区切りしたような感じ。こんなにたくさんの方に来ていただいて良かった」と語った。つくばでの日々を中村さんは「いいことづくめ。いじめに遭ったことは無く、みんなで楽しく日々を送ることができた」と振り返った。
慰霊祭には、筑波大体育系の長谷川聖修(きよなお)教授(62)と学生たちも一緒に参列した。長谷川教授らは、体操教室とグラウンドゴルフを通して避難者たちと交流を深めてきた。
長谷川教授は「慰霊祭に参加することで、メディアでは知ることのできない福島の実情、特に原発のことについて知ることができた。原発は自分、皆の未来のために考えなければならない」と語った。その上で「中村さんたちは辛い経験をされているはずだが、いつも明るく、逆に自分が元気をもらっている」と話した。国家公務員宿舎での慰霊祭は今回で最後となるが、体操教室やグランドゴルフへの参加により今後も交流は続くという。
転機を迎える避難者たち
並木の国家公務員宿舎にはピーク時で48世帯が住んでいたが、応急仮設住宅の供与期間が限られていることから、入居者たちの多くがつくば市や周辺市町村などに転居しているという。双葉町からつくば市内に移住した上原滋さん(75)は「あちこち回って、転居が8回目。(つくば市が)最後の住み家になると思う」と語った。
現在、土浦市に住む双葉町出身の新川義隆さん(73)は「土浦に永住する。土浦での生活も慣れてきた。地域の人が受け入れてくれたから」と新天地での生活を語った。新川さんの息子2人は仙台市に、3男は土浦市に住んでいるという。
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