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つくばこそ「社会実装のモデルに」 筑協新春講演会

【鈴木宏子】つくばの産官学連携組織「筑波研究学園都市交流協議会」(会長・永田恭介筑波大学長)の新春講演会が10日、つくば市内で開かれ、内閣府で科学技術・イノベーションを担当する松尾泰寿・政策統括官が講演した。つくばの役割については「(研究成果を実社会で展開する)社会実装のモデルになってほしい」などと語った。

国が提唱する未来の超スマート社会のコンセプト「Society (ソサエティー)5.0の実現に向けて(我が国の科学技術・イノベーション政策)」と題して、AI(人工知能)や情報科学によって社会がこれからどう変わり、国は今後どのような科学技術政策に取り組むのかなどについて講演した。

これからの社会については、今の子供の6割以上は、現在は存在していない職業に就くとという米国の研究者の予測を紹介し、AIやロボットに代替される仕事とのすみわけが求められ、そのためにどういう社会をつくっていくか、どういう教育をしていくかが課題だと話した。

講演する内閣府の松尾泰寿・政策統括官=同

一方、日本の科学技術の現状に対しては、研究論文の質や量に関し国際的地位が大幅に低下しており、諸外国に比べて創業を通じて研究成果を実社会で実現する力が低調だと危機感を示した。

日本の研究者を取り巻く状況についも、大学の修士課程から博士課程への進学率の減少、40歳未満の国立大教員の任期付きの増加、国立大の若手教員採用割合の低下など課題を指摘し、「日本の大学は民間資金の獲得が乏しいため、大学の基金の規模が米国と比べけた違いに小さく諸外国との格差が拡大している」などと話した。

若手研究者が厳しい環境に置かれている問題に対しては、若手研究者の支援総合パッケージを策定するとし、具体的には、競争的研究費を一体的に見直し、7~10年間、700人~1000人規模で研究者を支援する仕組みをつくること、米スタンフォード大などを例に、大学や国立研究機関が出資して外部化法人を立ち上げ、大学や国立研究機関の共同研究機能を外部化することなどが目玉になるとした。

AI、バイオ、量子技術など強化

日本の産業についても、世界と日本の創業の動向を比較し、日本は国際比較で開業率、ベンチャー投資額、成長企業の創出が低く「周回遅れになっている」と強調。国としての科学技術・イノベーション政策について、政府や民間の集中支援により起業家の聖地になる拠点都市を形成する、AI、バイオ、量子技術、環境エネルギーなどを強化分野にすると話した。

そのための人材育成政策としてAI分野では、小中学校、高校では児童・生徒全員が一人1台の端末を活用する授業を実施する、大学では文系と理系を融合するAIの基盤的・融合的な中核研究プログラムの立ち上げなどに取り組むなどした。

さらに健康・医療、農業、国土強靭(きょうじん)化、交通インフラ・物流、地方創生(スマートシティー)の5分野でAIの社会実装に取り組み世界をリードしたいと話した。

地方創生と大学の役割についても触れ、日本は企業の東京一極集中度が他国と比べても大きいことから、地方大学と自治体が連携し、産業の振興や人材育成を行うなど様々なことに取り組んでいくことが重要だと述べた。

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