【橋立多美】つくば市の古書店、ブックセンター・キャンパス(同市吾妻)で、「紙の宝石」と言われ収集の対象になっている蔵書票を紹介する「日本の蔵書票展」が1日から始まった。
蔵書票は本の見返し部分(表紙の内側)に貼って、その本の所有者を記す小紙片のこと。木版や銅板、石版などが用いられ、著名な芸術家が制作を手掛けている。単なる紙片ではなく、版画技法で制作された趣のある小さな芸術品だ。
日本に蔵書票が広がったのは1900年ごろ。当時の文芸雑誌「明星」が西洋の蔵書票を紹介したのがきっかけ。それまでは本の持ち主を示すものとして朱肉による蔵書印が用いられていた。現在では書物に貼るという本来の目的よりも、小版画としてコレクターの間で交換による交流が行われている。
店主の岡田富朗さん(83)は「蔵書票は本の所有者が作家の得意な絵柄に任せて依頼し、数百枚単位で作成されていたと思う。一色刷りからカラフルな多色刷りまであるが、いずれも趣のある作品ぞろい」と話す。当初の大きさは、切手大からシガレットケースほどだったが、人気が出てからは大きなサイズの蔵書票が見られるという。
同店は会津の木版画家斎藤清(1907ー1999)、版画や彫刻など多彩に活躍した池田満寿夫(1934ー1997)など、高名な作家45人による382点の蔵書票を所蔵している。今展では12人の作家の木版と銅版18点を見ることができる。
前身は古書店街の1軒
岡田さんは、筑波研究学園都市の形がほぼ整った1990年代初め、同市天久保にあった古書街の1店舗を経営していた。5店の古書店が軒を並べ、文系、理系、美術系の古書がそろい、学生と多くの市民でにぎわった。
その後、岡田さんの店は閉店。4店舗のうち残った1店舗が昨年3月に閉店して、つくばから古書店街は姿を消した。
家族の勧めもあり、岡田さんは「つくばに古書店を再び」と思い定めた。今年、新刊本を売っていたブックセンター・キャンパスで20年ぶりに店舗営業を再開した。広さ約160平方メートルの店舗に江戸や明治、大正、昭和期の古書数万冊が顔をそろえている。
◆「日本の蔵書票展」の会期は12月30日(月)まで。営業は午前10時~午後4時、火曜日定休。同店はつくば市吾妻3-10-12(北大通り沿い)。店舗の裏に駐車場有り。電話は029-851-8100。