金曜日, 4月 3, 2026
ホームつくば【葬送】2 家族葬がもたらすもの 

【葬送】2 家族葬がもたらすもの 

【橋立多美】地域共同体が担ってきた葬儀は近年、葬祭業者に代替されるようになり、会場は自宅から斎場へと移行した。迎えた高齢化の現在は、家族葬や直葬など従来とは異なる葬儀スタイルを選択する家族が多くなった。長年葬儀をサポートしてきたセレモニースタッフに、つくばの葬儀事情を聞いた。

葬儀は「家」から「個」へ

農業者の組合組織の農協(JA)は「JA葬祭」として葬儀事業を展開している。JAつくば市谷田部から葬儀運営を委託されている葬祭業者、城東ユニオン企画推進室長の齋藤尚美さん(60)。「こすもす谷田部」の名称で地域の葬儀を受け持って40年になる。

入社当初は集落の組合員が寄り合って行う自宅葬が一般的で、喪主と組合が決めた葬儀委員長、寺の3者が葬儀の日程を決めた。

当時は間取りの広い和式の家が多く、庭に面した室に祭壇をつくり、縁側に焼香台を置いた。弔問客は庭に列を作って焼香した。料理は集落の女性たちが作った。齋藤さんは「弔問客の駐車スペースがなくて苦労した」と振り返る。

通夜から火葬、告別式まで執り行うことができる市営斎場「つくばメモリアルホール」(同市玉取)が1999年に完成。5年後に同JAの斎場「JA谷田部つくばホール」(同市榎戸)ができると自宅葬に陰りが見え始め、現在は全組合員が斎場を利用している。

遺体が運び込まれる斎場は迷惑施設として地域で反対の声が上がる。JA谷田部つくばホールは田んぼに囲まれた立地に建てられ、「俺たちのために造ってくれた」と地域に受け入れられたという。

高齢化による変化もあった。昔からのしきたりを重んじ、葬儀の手順を決めていた葬儀委員長たちが高齢化して力を失くし、持ち回りとなった。葬儀委員長の存在感が薄くなり、喪主が葬儀を自分で決めるようになった。齋藤さんは「葬儀が『家』から『個』に移り、これが家族葬を生んだ」と話す。

家族葬とは知人や近隣住民に知らせず、家族や親族、親しい友人で小規模に行うこと。弔問客の接待に追われず落ち着いて故人とのお別れができる。

昨年実績の約3割が家族葬

「メリットばかりではない」と齋藤さんはいう。葬儀が済んだことを知った人から「我が家の葬儀に来てくれたのに参列できず、(香典の)借りが返せない」といざこざが起きたり、遺族宅の敷地の雑草を非難されるなど、地域の風当たりが強くなったケースがある。

齋藤さんは家族葬を希望する遺族には「近所の人や知り合いに故人がお世話になってきたと思う。ほんとに家族葬で大丈夫か」と何度も念を押すそうだ。

家族葬であっても一般葬と同じ祭壇や棺が使われ、寺への布施や戒名料もかかる。一般葬なら親類や近所からの香典で葬儀費用と相殺できるが、参列者の少ない家族葬は遺族が葬儀費用を自前で払うことになると斎藤さんは指摘する。

こすもす谷田部は一般市民の葬儀にも対応し昨年の葬儀実績は約200件。このうち家族葬は61件、葬儀を行わず火葬だけを行う直葬は18件あった。市営斎場またはJA谷田部つくばホールでの葬儀となるが、全体の6割が火葬場が併設されて利便性の高い市営斎場を利用している。

葬儀の現場にはハプニングもあるようだ。齋藤さんが経験したのは、弔問客への挨拶に自信がない喪主が葬儀直前に雲隠れしたこと。もう1つは葬儀で無人の遺族宅に空き巣が入り、喪主が葬儀中に帰宅したこと。急きょ親族に替わってもらうことで切り抜けたという。

齋藤さんは「葬儀はやり直しがきかない。どんな葬儀の形式が望ましいか、葬祭業者が薦めるサービスが本当に必要か、よく考えて契約してほしい」と結んだ。

➡【葬送】1はこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

「小さな目標から一つずつ実現を」 日本国際学園大で入学式 つくば

3期生160人が入学 日本国際学園大学(橋本綱夫学長)の入学式が4日、同大つくばキャンパス(つくば市吾妻)で催され、3期生160人が入学した。同大は筑波学院大学から大学名を変更し一昨年4月に開学した。3回目の入学式となった2026度の新入生は昨年の約2倍になった。 式典で橋本学長は「大学に入った目的を思い出して欲しい。そして目的のために目標を立てることが必要。目標は小さな目標から一つずつ実現していくことで、最初の目的を実現させることができる」と話した。総代としてミャンマー出身のアゥンカゥンミャットさんが橋本学長から入学許可書を受け取った。 新入生を代表して安達歩夢さんは「自ら課題を見出し行動する主体的な姿勢が求められる。新たな環境の中で不安や戸惑いを感じることもあるかも知れないが、一つ一つの経験が将来につながると思う。これから知り合う仲間たちと切磋琢磨を重ね視野を広げるような交流をしていきたい」と語った。 在校生を代表して経営情報学部ビジネスデザイン学科4年生の八木翔平さんは、新入生に向けて「大学生活は高校までと異なり、自ら考え、選択し、行動することが求められる。授業も自分で選び、それが将来につながっていく。またこの大学は留学生が多いので、異なる文化や価値観を学び合うことができる。一人一人が可能性を広げ、挑戦を恐れずに様々なことに取り組んでほしい」とエールを送った。 同大は1990年、東京家政学院大の筑波短期大学として開学。96年に4年制の筑波女子大学に、2005年に男女共学の筑波学院大学になった。大学の運営は19年度に東京家政学院から学校法人の筑波学院大学に移り、23年からは学校法人名を日本国際学園に変更した。一昨年からは姉妹法人の東北外語学園(仙台市、橋本理事長)が運営する東北外語観光専門学校に日本国際学園大の仙台キャンパスを設置し、つくばと仙台にキャンパスがある。(榎田智司)

水戸市とつくば市の外国人居住者調査《水戸っぽの眼》11

【コラム・沼田誠】茨城県の外国人政策が変化している。その象徴が2026(令和8)年度予算案に盛り込まれた「通報報奨金制度」だ。外国人を不法に受け入れている事業者について、市民から具体的で根拠のある情報を募り、有益な情報には報奨金を支払うという。茨城は不法就労の摘発数が全国で最も多く、何らかの対策が必要だとしても、このような制度設計は都道府県レベルでは異例だ。その背景には外国人住民の急増がある。全国の在留外国人数は、2025年6月末で395万人に達し、この10年で約1.7倍に膨らんだ。茨城県の在留外国人数も5.8万人から10.6万人とほぼ倍増している。農業・建設・サービス業を中心に、外国人なしでは成り立たない産業構造が広がる一方、外国人居住者と日常的に隣り合わせになるという現実は、多くの県民にとって初めての経験だ。 県が「適正化」を強めるのであれば、市町村には「地域で暮らす外国人住民をどう支え、社会参加につなげるのか」という別の役割が問われる。水戸市やつくば市は、増加する外国人住民にどう向き合っているのだろうか?水戸50人に1人:つくば20人に1人 水戸市の在留外国人数は4772人。人口比では1.8%だが、県都としては無視できない規模だ。その対応策の相当部分は、外郭団体の水戸市国際交流協会が担っている。2022年に公表された市政モニターからの政策提言への回答では、同協会が運営する国際交流センターは、外国人市民の実態やエスニックコミュニティの状況をこれまで調査しておらず、具体的な課題をあまり把握できていないと認めている。 つくば市の在留外国人数は1万4650人と県内最多で、住民の20人に1人が外国人になっている。この10年で約5000人も増加しており、研究者や留学生に加え、就労目的の外国人が増えているとみられる。こうした変化を受け、市は2023年3月「第2次つくば市グローバル化基本指針」を策定、「すべての人にとって住みやすいグローバル都市」をゴールに掲げ、日本語学習支援を「都市インフラ」と定義した。 ただ、この指針の根拠となる「つくば市外国人市民意識調査」は、ウェブ方式で実施されており、情報アクセスが限られている層の声や実態が十分拾えていない可能性がある。これに対し大阪府豊中市の「外国人市民アンケート」(2023年3月)では、住民基本台帳から無作為抽出した対象者に、多言語の調査票を直接郵送する方式で行われ、孤立感・定住意向・子どもの教育環境まで可視化できている。解像度が異なれば、そこから導かれる施策も変わってくるはずだ。「見えない声」を拾う調査が必要 外国人居住者が安心して社会参画できる環境を設計することは、人手不足に苦しむ産業の持続可能性への回答であると同時に、人権上の要請でもある。その出発点は、泥臭く「見えない声」を拾い上げる実態調査にあるのではないだろうか。私たちは、隣人についてもっとよく知り、理解する必要がある。(元水戸市みとの魅力発信課長)

公募は仕切り直し 霞ケ浦土浦港周辺整備計画 3者が不合格

土浦市・茨城県 土浦市と茨城県が計画していた霞ケ浦土浦港周辺整備事業が仕切り直しになった。霞ケ浦に面する9.5ヘクタールの区画を「湖岸の観光・レクレーション拠点」にしようと、同市と県が民間事業者から整備計画を公募(1月3日付)したが、提案された複数の計画はいずれも必要な条件を満たさなかった。土浦市にとって長年の課題だった湖畔整備事業は延期となる。 土浦市都市整備課によると、公募型事業プロポーザル(提案)には3事業者が応じた。このうち2事業者は書類審査で落ち、残る1事業者に絞って提案企画を評価したところ、評価点が102.31点と最低基準点126点以下だったため、不合格と判定した。最終審査に残った企業名や、どの点が基準に満たなかったなどは明らかにしていない。 評価方法を変え再トライ 事業者を公募した整備区画は、▽A地区:湖底土砂浚渫(しゅんせつ)船などが利用する土浦港(県施設)▽B地区:マリーナ(ラクスマリーナのヨットなどの係留・管理施設)と広場(市施設)▽C地区:「りんりんポート土浦」(サイクリスト向け拠点施設)区画(市有地)▽D地区:プレジャーボートなどが停泊する土浦港(県施設)―で構成されるエリア。 土浦市は①「りんりんポート土浦」は指定管理者制度を活用して存続させる②市が保有する「ラクスマリーナ」の株式は事業者に有償譲渡する③マリーナ施設がある広場は事業者に賃貸する―案を事業者に示し、県は2つの港とその周辺を事業者に貸与する案を示していた。 都市整備課の担当者は、今回の公募結果にもかかわらず、湖岸のレクレーション拠点計画は破棄せず、公募型プロポーザルの枠組みを使って再挑戦するという。具体的には「評価方法を少し変えたり、今回応募した事業者とは別の事業者に声を掛けることを考えている。再トライをいつにするかはまだ決めていない」と述べた。 民間の力で湖岸を活性化 この事業予定区画には、2007年まで京成ホテルが建ち、同ホテルが撤退した跡地にはマンション建設計画があった。ところが08年のリーマンショックでマンション事業者が倒産したため、土浦市が用地を取得、有効活用法を探ってきた。今回の公募型プロポーザルは不調に終わったが、市としては民間事業者の資金力と企画力を使って、土浦港周辺の再活性化を図る。(坂本栄)

配偶者暴力相談支援センターを設置 つくば市 DV防止法に位置付け

配偶者や交際相手などからの暴力(DV)被害や夫婦関係、人間関係などの相談を受ける配偶者暴力相談支援センターを1日、つくば市が設置した。DV防止法に位置付けられた機関で、地域の身近な窓口として被害者支援の中心的役割を担う。DV被害の相談のほか、緊急時には被害者の安全確保や支援機関との連絡調整、自立支援を行うなどの役割がある。 設置により、通報への対応、保護命令への関与、県の配偶者暴力相談支援センター(女性相談センター)や警察など関係機関とより密接な連携協力を図ることができる。同センターは、2007年のDV防止法改正で市町村は設置が努力義務となっている。県内市町村での設置は、水戸、古河、かすみがうら、つくばみらい市に次いで5番目という。 センターの愛称は「まんまるつくば」で、具体的な業務は、DV被害の相談に応じたり、緊急時に一時避難所を利用するための相談を受けたり、福祉制度や住居など自立生活を送るための情報を提供したりする。本人が配偶者や交際相手などに対し接近禁止や電話禁止などを申し立てたい場合は、裁判所の保護命令について情報提供したりなどする。 同市はDVや夫婦関係、自身の生き方などの悩みに対し、これまでも電話や面談による相談を受け付け、女性向けの一般相談、心と生き方相談、法律相談のほか、男性向けの相談を曜日や日数を限定して実施してきた。センター設置後は受付日数を増やし、DV相談と女性相談は平日の午前9時~午後4時、女性の法律相談は第2と第4木曜の午後1時30分~4時、男性相談は第1と第3金曜の午前9時~午後4時に受け付ける。 同市がこれまで電話や面談で受け付けた相談件数は2024年度が計617件で、相談内容は離婚や別居に関する相談が最も多く43%、次いで夫からのDV相談が22%、自身の生き方に関する相談が18%、夫婦の在り方が14%だった。23年度は計523件で、相談件数は増加傾向にあるという。 担当する市ダイバーシティ推進室は「まんまるつくば(つくば市配偶者暴力相談支援センター)は、パートナーとの関係に関する相談や女性の抱える様々な課題に寄り添う窓口。DVに関する相談は性別を問わず受け付けているので、一人で抱え込まずどうぞお気軽にご連絡ください」と呼び掛けている。(鈴木宏子) ◆相談窓口の専用電話は029-856-5630。相談料は無料。電話代は自己負担。相談窓口の場所は相談者の安全確保のため非公開としている。