【相澤冬樹】「ゲリラ豪雨」に代表される水害や洪水の被害から住宅を守ろうと、さまざまな対策を施した「耐水害住宅」が開発され、2日、つくば市の防災科学技術研究所(林春男理事長)の大型降雨実験施設で実証実験が行われた。
住宅を作ったのは、一条工務店(本社・東京、岩田直樹社長)。同実験施設に幅30メートル×長さ40メートル×深さ3.5メートル、周長120メートルの水槽を設け、2階建て延床面積110平方メートルの住宅2棟を建設した。1棟は通常の在来工法住宅だが、もう1棟は枠組壁工法による耐水害住宅。基礎や耐震性能に差異はないが、外壁のサイディングや窓ガラスなどを強化仕様とした。
天から豪雨、地には濁流のなか1時間浸かる
実験では、国内で観測された10分間の最大雨量の50ミリ、1時間当たり300ミリの豪雨を再現したほか、洪水を想定して1万トン以上の水が6基のホースから注入された。濁流渦巻く状態で水位が上がると、通常の住宅では床下や玄関扉から水が易々、建物の中に侵入した。
しかし、耐水害住宅には浸水せず、周りの水位が1メートル以上になっても建物の中に変化は見られなかった。また、屋外の電気設備も水につかることはなく、約1時間の降雨実験が終わった後も、家の中はつけっぱなしのエアコンが効いて、快適性能が保たれた。
同社によれば、耐水害住宅は過去の水害のデータなどから、さまざまな場面を想定して工夫が施された。大きく浸水、逆流、水没の対策を講じており、床下換気口に外部から水が入ると内蔵のフロート弁が作動して、床下への水の流入を防止している。風呂場やトイレの排水管にも逆流防止弁が設けられている。
水の侵入路になりやすいドアには自動車に用いるドアパッキンが使われた。エアコンの室外機や給湯器などの電気設備は、水没対策、感電対策から約1.5メートルの架設台を置くなどして設置されている。
一条工務店の萩原浩さんは、「洪水被害に関してはまず逃げるのが先決だが、水は1日、2日で引く。避難から戻ったとき、家が水害にあっていたら金銭的損害以上に精神的、肉体的に参ってしまう。すぐに暮らせる住宅、災害に耐えて長く住み続けられる住宅が必要になっている」という。
同社では、コンピューターを使ったシミュレーションで、設計上の安全性を確保していたが、「超防災住宅」実現のため、実際の住宅を用いた実験にこだわった。耐震住宅の開発で協力関係にあった防災科研と昨年11月から官民共同研究を進めてきた。同実験施設戦略室長の酒井直樹さんは「浸水リスクを自分事ととらえることができた。膨大なデータが得られたのでさらに研究を進め、社会実装に役立てていきたい」と語った。