木曜日, 9月 18, 2025
ホームつくば【どう考える?免許返納】12 返納者同士助け合う術を模索 つくば市茎崎の住宅団地

【どう考える?免許返納】12 返納者同士助け合う術を模索 つくば市茎崎の住宅団地

【橋立多美】入居者が一斉に高齢化しているつくば市茎崎地区の住宅団地住民が、市中心部へ向かうコミュニティバス「つくバス」の発着時間に合わせ、高齢者を自宅からバス停まで送迎する術を模索している。免許を返納した高齢者が運転できる送迎車があれば、シニアボランティアが団地ぐるみで送迎を担えるのではないかというアイデアだ。

片岡三郎さん=つくば市宝陽台

発案者は同市宝陽台に住む片岡三郎さん(76)。宝陽台は1978年に入居が始まった住宅団地で世帯数は約550世帯。入居から40年を経た今、夫婦だけの世帯か独居の高齢者が目立つ。65歳以上の高齢化率は同市で最も高い55%(4月1日現在)だ。

片岡さんは宝陽台自治会の街づくり委員として高齢者の交通アクセス問題に取り組んでいる。遠くの店や病院に行かざるを得ないのに、車しか手段がない。バス停までのスムーズな移動手段があれば、免許を返納した高齢者が引きこもりになるのを防げるのでは、と考えている。

団地内に牛久市のコミュニティバス「かっぱ号」のバス停が2カ所設置され、牛久駅までの足はある。しかし、市中心部に向かう「つくバス」のバス停までは距離があって高齢者には使いづらい。バス停から最も遠い街区だと、重い荷物を持った高齢者は10分近くかかるという。

考えた末の結論が「つくバス」の発着時間に合わせて自宅とバス停間に送迎車を走らせること。送迎車は運転免許がなくても運転できることが条件になる。今後、免許を返納する人がもっと増えても運行に支障がでないためだ。

情報を集める中で「グリーンスローモビリティ」と呼ばれる環境に配慮した移動手段を知った。ゴルフカートをベースとした電動車両で時速20キロ未満で公道を走り、乗員は4人以上。狭い路地も通行が可能で、国土交通省は公共交通から取り残された地域の新たなスタイルとして各地で実用化に向けた試験を進めている。

東京大学とヤマハ発動機が共同研究したスローモビリティ(ヤマハ発動機提供)

ところが、スローモビリティは免許保有者でなければ運転できないことが分かって断念した。現在は運転免許不要で歩道を通行できる1人乗り電動車両「シニアカー」(最高時速6キロ)を、2人乗りにできないかと思案する。「つくばには多くの研究機関がある。望みを託してみたい」と話す。

市や警察は着想に否定的

片岡さんは宝陽台独自の交通システムを考え始めてから市高齢福祉課やつくば中央警察署交通課に相談に行った。着想に否定的で、警察署では自動運転車を紹介された。「自動運転車の普及は2020年代以降。今の高齢者には間に合わない」と不満を募らせる。

また「移動する方法はゼロではないが、さまざまな規制があって自由度が低い」という。一例が「つくタク」だ。移動範囲が決められ1時間単位の予約で時間が読めないことから「行きはいいが帰りが怖い」と指摘する。

片岡さんは「誰もが余生は自由に送りたいと思うもの。好きな時に外出できるよう送迎を実現させたい。突破口は免許を返納した人が運転可能な車。諦めることなく模索していく」と揺るがない。(免許返納シリーズ 終わり)

➡【どう考える?免許返納】の過去記事はこちら

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民有林に防除対策費を補助 ナラ枯れ被害拡大防止へ つくば市

ナラ枯れなどによる森林被害の拡大を防ごうと、つくば市は今年度新たに、市内に森林を所有する民間地権者を対象に、防除対策費用の2分の1を補助する制度を創設した。 筑波山周辺の森林や公園など市有地のナラ枯れ被害に対してこれまで同市は、防除対策に取り組んできた。一方、筑波山周辺など市内の民有地の森林でも被害が出ており民有地で対策を施さないと被害拡大を防ぐことができないことから新たに補助を実施する。 同市鳥獣対策・森林保全室によると、現時点での申請者はゼロで、市が相談を受けている地権者が一人。市はホームページや市報などで広報してきたが、補助制度や防除方法を知らない地権者もいると見られる。 ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(通称カシナガ)という体長5ミリほどの昆虫の被害を受けたコナラやクヌギなどが、昆虫の体に付着した病原菌、ナラ菌の繁殖により水分が枝葉に行き渡らなくなり、紅葉前の7~8月頃に急速に葉の色が赤褐色に変色し枯死する被害。幹が太く樹齢を重ねた樹木が被害を受けやすいとされ、枯死した樹木は早期に対策をとらないと、翌年以降、被害が拡大するとされる。2020年9月に県内で初めて、つくば市内で被害が確認され、以後、拡大し、県林業課によると現在、県内44市町村中36市町村で被害が確認されている。 筑波山系では2022年に朝日トンネル付近で確認されたのが最初。翌23年には筑波山や周辺の森林でナラ枯れが目立つようになる中、つくば市では23年、南麓の同市臼井、市有地の筑波ふれあいの里で、ナラ枯れが確認された32本を伐採し、薬剤によるくん蒸処理を実施した。翌24年には観光拠点の筑波山梅林奥の市有地の林道、四季の道周辺に被害が広がり、市は13本を伐採しいずれもくん蒸処理した。 一方、今年は筑波山の林道沿いの市有地に関しては新たな被害は確認されていないという。昨年、四季の道沿いで、被害を受けやすいとされる幹が太く樹齢を重ねた樹木をあらかじめ伐採などしたことなどが被害の拡大を防いだとみられている。 つくば市で補助対象となるのは①幹にあらかじめ殺菌剤を注入し行き渡らせておく殺菌剤を樹幹に注入する方法(補助額は1回当たり上限5万円。カシナガに入り込まれ木くずが出た時点で注入しても効果は期待できない)②成虫が飛来する5月ごろから約半年間、樹木の幹に粘着剤やビニールシートを巻き付けカシナガが入り込むのを防ぐ方法(同5万円、粘着剤にとらえられたカシナガを生きたまま放置すると仲間を呼び寄せることがあるので、粘着剤と殺虫剤を併用する方法もある)③被害を受けた樹木を伐採し薬剤で燻蒸処理または焼却処理する方法(同15万円)。今年度予算は165万円で、市は1件につき平均20万円程度、8~10件の申請を想定している。 市鳥獣対策・森林保全室の石塚正巳室長は「市として、ふれあいの里や四季の道など市の施設で、伐倒しくん蒸処理するなどの対策をしてきたが(被害が)全て無くなったわけではない。個人の土地については広報するのみで、(市が)直接的な対策をしていないので根絶はなかなか難しい」という。 一方土浦市は2024年、ナラ枯れ被害に遭った朝日トンネル付近のコナラ16本を伐採した。費用は、運搬、処分、交通封鎖の人件費を含み計583万だった。同市はナラ枯れに対応できる補助金として小規模森林整備補助金があり事業費の70%を補助できるとしている。 ナラ枯れの被害については、全国で毎年調査が実施されている。県林政課によると23年度に被害が確認された市町村は33市町村、24年度は34市町村、25年度は36市町村と市町村数は徐々に増えている。県全体の被害面積はつくば市内で初めて確認された2020年が200平方メートル、21年も200平方メートルだったが、22年に3000平方メートルと15倍に広がり、23年はさらに前年の2.3倍の6700平方メートルに拡大した。24年度の被害面積は6100平方メートルと前年度の91%だが、同課は、森林の奥の広葉樹まで調査が及んでいないなどから、被害は前年と同程度とみている。(榎田智司)

つくつくつくばの七不思議の旅《映画探偵団》92

【コラム・冠木新市】2009年、「つくばの映画・演劇を作ろう」をテ一マにNPO主催の講演会で30人を前に語った。当時、映像のロケ地に誘致する運動は盛んだったが、地元の文化・歴史・伝説を活用して、自ら作る動きは少なかった。 つくばにも面白い素材がいくつかあった。その一つが、茨城県出身の童謡詩人・野口雨情が1930(昭和5)年に作詞した「筑波小唄」「筑波節」で、元は一つの歌をなぜか二つに分けた新民謡だ(映画探偵団22)。 2010年、その理由を「雨情からのメッセージ」と題して講演、朗読劇、踊り、演奏で表現した。新築の筑波銀行ホ一ルに300人ほど集まった。好評だったこともあり、つくばの7地域の話を「つくつくつくばの七不思議」として再創造しようと考えた。 2012年春、北条を竜巻が襲い町を破壊したころ、水戸で「筑波小唄」「筑波節」の幻のSPレコードが見つかった。いろいろな方の協力を得てCDに復刻、また、つくば市の観光物産課の応援で踊りの講習会を5期まで開催した。 同年秋、詩劇「北条芸者ロマン~筑波節を歌う女~」を上演。北条街づくり振興会との縁を深めた。このとき、植田利浩さんが作曲した曲を「筑波恋古道」と名付けた。 2015~16年、「つくつくつくばの七不思議/サイコドン」をACCSケ一ブルテレビで放映。「筑波恋古道」の作詞もでき、歌い手を募集するが、応募はなかった。踊りのイベントでは、植田さんの歌うデモテ一プを使用した。2023年の「金色姫伝説旅行記」のときに、声楽家・大川晴加さんが新たに吹き込んだ。 「はじまりのうた BEGIN AGAIN」 「北条芸者ロマン」に取り組んでいたころ「はじまりのうた BEGIN  AGAIN」(2013)という映画が製作された。オ一プニングはバーのステ一ジ。無名の女性シンガ一が歌い、1人の中年男性が身を乗り出して聞く。そして「その日の朝」とクレジットが出て回想となる。 男は、音楽プロデューサーで5年間失敗続き、妻と別居中。娘に煙たがられ、自分が創立したレコード会社からもクビを宣言され、地下鉄で自殺を考えバーに来る。男は、無名シンガ一の背景にピアノやベースが加わる幻想を見る。 次に女性の回想がはじまり、楽曲を提供した恋人歌手との関係がこじれ争いとなる中、バーでプロデューサーの男と出会ったことが描かれる。 2人は作品を企画する。会社からデモテ一プを要求されるが、録音費用のない男は、デモよりもアルバムを作ろうと考える。路地裏やビルの屋上などで録音する。演奏者には後払いで、才気あふれる無名の若者を集める。さらに女性歌手の誘いで、男の娘をギターに採用。完成したアルバムは高評価を受ける。 エンドクレジットが流れる中、女性がレコード会社と契約したくないとの訴えに男はあっさり了承し、最後にはネットを使い1ドルで売ることにする。アルバムは大ヒットするが、男は元の会社から再びクビになる。そうした時代を先取りした作品だった。 「筑波山 恋うたつづり」 2025年8月27日、「筑波小唄」「筑波節」「筑波山唄」「筑波恋古道」を収録した「筑波山 恋うたつづり」が恩田鳳昇監修で日本コロムビアから発売された。企画から15年かかった。つくつくつくばの七不思議の旅は「はじまりのうた」をヒントにまだまだ続きそうである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家) ※つくつくつくばの七不思議セミナー(お話と懇談会)のお知らせ:2025年9月27日(土)午後1時~、カピオ小会議室、参加費無料。