木曜日, 3月 26, 2026
ホームつくば【総合運動公園用地問題】つくば市の売却方針に異議相次ぐ イーアス規模の商業用地に懸念 住民説明会で

【総合運動公園用地問題】つくば市の売却方針に異議相次ぐ イーアス規模の商業用地に懸念 住民説明会で

【鈴木宏子】住民投票で白紙となったつくば市の旧総合運動公園用地(同市大穂)を一括売却し、商業施設や物流倉庫などとして利活用する民間企業の事業提案=8月19日付=に対する住民説明会が6、7日の2日間、地元の大穂交流センター(同市筑穂)と市役所で計3回開かれた。参加者からは民間企業に同用地を一括売却するという市の方針に異議を唱える意見が相次いだ。事業提案にある商業用地がイーアスつくば(同市研究学園)と同規模であることから、交通渋滞対策や既存商業施設への影響について懸念の声も出された。

6日午後2時から大穂交流センターで開かれた第1回目の説明会には22人が参加した。地元区長らの姿も目立った。「上郷高校跡地に計画がある陸上競技場を(総合運動公園用地に)つくるべき」「企業のためでなく市民のために土地を生かしてほしい」など全部を一括売却する市の方針に反対し、一部でも公的に利用してほしいと要望する意見が相次いだ。一方「事業提案(の土地取得価格)は高値。できるだけ早く、高く売って市民負担を少なくしてほしい」と、売却に賛成する意見も出された。

同日午後7時からの第2回説明会には15人が参加した。イーアスつくばと同規模の大規模商業施設計画に対し、つくば駅周辺の市中心市街地に都市機能を集積するという市立地適正化計画との整合性を問う声や、イーアスつくば並みと予想される買い物客の交通渋滞対策、既存商業施設へのマイナスの影響を懸念する声が出た。

7日午前10時から市役所で開かれた第3回説明会には11人が参加した。前日に引き続いて市の一括売却方針に疑問を投げかける意見が相次いだ。参加者が少なく、説明会開催自体を知らない市民も多かったとして、市民の声を聞く姿勢を問う意見も出た。

3回の説明会に市側から中根祐一都市計画部長、岡田克己公有地利活用推進課長らが出席し、岡田課長が参加者の質問に答えた。説明会の主なやりとりは以下の通り。

※   ※   ※

「市民のためがなく企業のため」「提案は高値、早く売却を」

―6日午後2時から開かれた第1回説明会の主なやりとり。

参加者 総合運動公園の土地は市体育協会や関係者などが大変な尽力をして取得した。購入の経緯をご存知か? 陸上競技場を上郷高校跡地につくるということだが、つくば市にとって恥ずかしい。これだけ広い土地があるのだから見直してもらって(旧総合運動公園用地に)陸上競技場をつくってもらった方がいい。

課長 庁内で跡地の公的利用をとりまとめたところ(市内部で利用したい意向が)無かったこともあり、こういったこと(売却)を検討している。上郷高校跡地は決まったことではなく今後検討していきますということ。

参加者 総合運動公園は白紙撤回となったが、市民の憩いの場をつくっていただきたい。

課長 ご意見をいただいたことを庁内で共有したい。

参加者 事業提案の募集要件に、市民のためにどう土地を生かすかということが入っていない。企業が収益を上げるための募集だ。総合運動公園計画は白紙になったが、事業提案の募集に市民のために生かすということが加えられるべき。

課長 市も財政的に余裕のある状況ではない。(今回の事業提案募集は)市の負担ができる限りない形で土地利用するというベースがあった。ご理解いただきたい。

参加者 提案事業者の名前を出せない理由は何か。

課長 (提案事業者の)土地取得が決定したわけではない。今の段階では今後の進捗(しんちょく)に影響を及ぼす可能性もある。

参加者 66億円で買った土地を(五十嵐立青現市長が2016年の市長)選挙で「URに買い戻させる」と言ったのはただのパフォーマンスだったと思う。(今回の事業提案の)40億円は随分高値で買ってくれると思う。(事業提案の)商業施設の面積(13.5ヘクタール)はイーアスつくば(14.5ヘクタール)と同規模。市は4月の募集開始時点で大型ショッピングセンターはお断りなどという条件を付けすぐに見直したが、できるだけ高く、できるだけ早く売って、市民負担を少なくするよう努力していただきたい。そのためにも(土地利用の)制限を付けること自体おかしい。

課長 用途は準工業地域への変更を考えている。土地利用が決まらないと進まないので計画をつくっていきたい。

参加者 総合運動公園計画に代わる将来像は今つくば市にあるのか。つくば市はもうすぐ25万都市になる。日立市にも水戸市にもアリーナがある。つくば市に今ある体育館は雨漏りしている。子供たちの育成や若者たちの練習の場を今後も与えなくていいのか。

課長 担当部署に意見を伝えたい。

参加者 取得金額と金利は今いくらになっているのか。今はひじょうに低金利の時代だが利息軽減に向けどんな努力をしてきたのか。

課長 取得額は約66億1000万円、利息は年3500万円くらいで累計は約1.7億円。合計67.8億円。公的、民間の利活用が決まらない中、利息を払わなくてはいけないので、この状態は好ましくないと、今年春から事業提案を募集し、本日、結果を説明している。

参加者 今回の提案に「公園、スポーツジムや運動場、市民の憩いの場」というのが入っているが、具体的にどのようなものか。

課長 事業者にヒヤリングし、どういった内容か質問したが、正確な答えをいただけておらず把握できてない。

参加者 以前、市の試算では基盤整備に46億円くらいかかるということだったが、今回の提案事業者は30億円くらいと見込んでいるという報道があった。市の負担はないということでいいのか。

課長 市の負担がないよう進めたい。この金額(30億円)で造成することを確認している。

参加者 40億円からという事業提案だが、売却価格の設定は再度し直すのか。

課長 市として不動産鑑定をとらないといけない。やり方は内部で検討している。価格は不動産鑑定と市場動向を踏まえて設定する。

参加者 これだけ(広い)の土地はなかなかない。一部でも市が使う予定はないのか。

課長 全部購入するのが事業提案の条件となっている。今の段階で公的利用は考えてない。

参加者 全部売却する決定はだれが決めたのか。

課長 売却する方向で進めている。最終的には議会の理解を得て売却という流れになると思う。

参加者 (取得費と利子を含め)67.8億円ということは(40億円で売却すると)28億円が損金になる。市民の税金で買ったものだ。処分する場合できるだけ高く、67.8億円に近い金額で売却していただきたい。

課長 40億円はあくまでも事業提案の額。市の方は不動産鑑定をして市場の動向を踏まえ売却価格を決めていく。

参加者 市長は総合運動公園に反対して当選した。自らトップセールスで動いてほしい。

参加者 事業提案をベースに土地利用計画をつくるとのことだが、市として(事業提案に対し)どの程度柔軟性があるのか。

課長 上水道、下水道、雨水、調整池などインフラ関係に注意して土地利用計画を考えたい。

参加者 10年、20年先のまちづくりに禍根を残さないようにしてほしい。(同用地は)市北部の拠点になる。大曽根地区は地元の人が土地を手放しながら商業をつくった。イーアスつくばと同程度の商業施設をつくると既存の商業がどうなるか、慎重に考えてほしい。

課長 市の各種計画との整合性は必要。そういうことを踏まえて土地利用計画をつくる。

参加者 担当課がいないので答えられないというのではなく、市長が出てきて明確な答弁を出すべき。市民に(28億円の)マイナスを強いるのではなく、(用地の)半分は市が使っていきしょうということを考えてもいい。しっかり考えて結論を出すべき。

課長 大事な意見として承って、市の中で話をしていきます。

6日午後7時から大穂交流センターで開かれた第2回住民説明会

「つくば市は不動産屋ではない」「倉庫で地域が活性化するのか」

―6日午後7時から開かれた第2回説明会の主なやりとり。

参加者 取得費、利子など重要な情報が(説明資料に)示されてない。URの返還交渉が失敗して前提条件が違っている。こんなやり方で来年の市長選、市議選は大丈夫なのか。

課長 取得費は66.1億円、利子分は累計1.7億円で合計67.8億円。不動産鑑定しさらに市場動向を踏まえて売却価格を決める。URの返還交渉は2回交渉したが結局返還に至らなかった。その後の経緯の中で、庁内のニーズ調査、民間へのサンプリング調査をしたが、土地利用が決まらない中、今年春に市に負担のない土地活用として、全体を一括購入していただき、合わせて整備していただく事業提案を受けた。最終的には公募して売却したい。

参加者 (同用地の)土地利用は都市計画マスタープランや立地適正化計画にそもそもどう位置付けられているのか。郊外型の大型商業開発が現状の市街地に与えるインパクトをどう考えるのか。イーアスつくばと同程度の大型商業施設計画を進める市のスタンスをうかがいたい。

課長 都市計画マスタープランや立地適正化計画を策定し、中心市街地と身近な日常生活圏が連結したまちづくりを考えている。当該地は北部地域の拠点であり、研究、産業、商業が複合的に機能する場所と位置付けている。周辺への影響は、特に商業施設の立地がにぎわい創出、雇用創出、利便性につながる。一方で既存商業施設の環境の変化も考えられ、その辺は市としても考えないといけない。今日はあくまでも提案者の計画を示したが、具体的な店舗計画は示されていないので今後ヒヤリングしながら検討していきたい。

参加者 検討するプロセスが違う。土地利用ありきではなく、本来、市の方針があって、このようなものがほしいからと持ってくるべき。そうではなく民間提案ありきでそれに沿って進めるのはまちづくりとしてどうなのか。つくば市は不動産屋ではない。

課長 皆さまの意見をうかがって市としての土地利用計画を検討していく。

参加者 もともと前市長が購入したが、購入した以上、人任せにしないで、市長選を抜きに、市が主体になってどういう地域をつくるかという土地活用ビジョンをもってほしい。先ほど「市は不動産屋じゃない」という意見が出たが、ここをこうしたいのでこういう人集まれ、という夢のある持って行き方をしてほしい。

課長 ご意見として承ります。

参加者 上郷高校跡地に陸上競技場をつくる計画がある。適地を比較分析していたが、学校跡地だけしか比較候補になっておらず、なぜ(総合運動公園用地が)比較対象になってないか不思議でしょうがない。前市長の計画に反対した人たちが勢いに乗っているから戻れる状況でなくなっているのか。市のスポーツ推進計画はスポーツを振興しましょうといっている。「前市長に反対したから戻れません」というのではなく、地域が活性化する元気の出る施設を大穂につくろうとなってほしい。

課長 陸上競技場の調査の中に(旧総合運動公園用地が)入ってないのは、基本的に市が所有している未利用地を対象にしたため。(同用地は)土地開発公社がもっていて、サウンディング調査(民間意向調査)をやっているため比較対象に入れなかったと聞いている。

参加者 市の費用負担が発生しない計画だというが、68億のものを40億で売ったら市は28億円負担することになる。さらにイーアスつくばと同規模のものができたら、この周辺も影響を受ける。(事業提案があった会社は)倉庫会社だと思うが、倉庫をつくって地域が活性化するのか。(誘致するとある)商業施設はだれがつくるのか、撤退したらどうなるのか、倉庫になるのか。北側の道路整備は幅員20メートルという計画だがだれが整備するのか。イーアスつくば程度の車が集まるとすれば、現状でも渋滞があるのに、交通処理はどうするのか。

課長 道路は市の負担がない形で事業者にやっていただく。渋滞は今も国道408号が渋滞しているのを認識している。今後、土地利用を検討する中で考えていき、道路整備をさらに推進していかなくてはいけない。

参加者 ここが開発されるとやらなくてはいけないことを整理すると、全体でいくらになるのか。(68億円と40億円の)差し引きだけの話ではない。(事業提案では)大手ショッピングモール、スーパー、ホームセンターを誘致するとあるが、例えば筑穂のホームセンターが撤退することになったら空き地はどうなるのか、マイナスのコストも含めて考えるべきだ。

7日午前10時から市役所で開かれた第3回説明会

「反対票には計画見直しも入っていた」「買い戻させる公約果たせない責任は」

―7日午前10時から市役所で開かれた第3回住民説明会の主なやりとり。

参加者 (11~12月に事業者を公募するなどのスケジュールが示されたが)こんな早く進めてしまって大丈夫か。全部売らなくても一部陸上競技場にして、幹線道路沿いを高く売ればいい。(16年の市長選で)五十嵐市長は選挙を有利にしようと思ったのだと思うが、対立軸を鮮明にして何でも悪者にするので、(前市長が購入した用地を)積極的に活用しようとしないで処分するという考えになってしまう。市長は「会える市長」と言っていながら、なぜ(今日の)大事な会に来ないのか。(五十嵐市長の政治手法は)やるか、まったくやらないかの両極端だ。住民投票の反対票の中には計画見直しも入っていた。

課長 今後の進め方はご意見を踏まえてスケジュールを考えているところでもある。一部を公的利用にという案をいただいたが、これまでの経緯は、住民投票での白紙撤回後、公的ニーズ、民間サウンディング調査をしたが利活用に至らず、今現在はこうした進め方で進めている。皆さんのご意見を承り庁内で共有したい。

参加者 市の活性化になるよう、老朽化している県の保健所と笠間にある動物指導センターをもってきたらと思う。

課長 ご意見として承ります。

参加者 市長派とか反市長派ではない(ことを前提に発言しているが)、現市長は白紙撤回を掲げた。反対意見がある人は代替案をもっていると思うが、民間に丸投げなのか。URに買い戻させると公約したがこれもできなかった。政治的な責任はないのか。66億円で購入した土地を26億円の差損を覚悟で40億円で売却してしまうのは反対だ。利息は年間3400万円と聞く。10年で3億4000万円。40億円で売却するのはあまりにも拙速な考えだ。多額の差損を覚悟して売却する別の理由があるのかと不信感を招きかねない。差損の26億円は今つくば市に住んでいる人のために使われるべき。つくばは上下水道が来てないところがある、道路はでこぼこ、道路排水は十分でない、保育所も少ない。市民生活を優先させないと「世界のあしたがみえるまち」は実現できない。(もし事業計画が採択されたとすれば)周辺道路に配慮することを求める。物流倉庫が全体面積の48%を占め大型トレーラーがどんどん来て大変なことになる。差損を覚悟して進めなくてもよい。

課長 総合運動公園の白紙撤回後、公的利用やサウンディング調査の中で、利活用がなかなか図れなかった。市の負担を考えて事業提案をいただいた。URの買い戻しは2017年5月と6月に交渉したがURの最終的な回答として市の要望にお応えできないという結論になってしまった。40億円で売却が決まったわけではない。今後売却する場合、不動産鑑定をし市場動向をみて設定する。道路の混雑は周辺の国道408号と北側の県道の混雑を認識している。今後土地利用計画をつくるがそういったことを踏まえて考えなくてはいけない。北側の道路は延伸計画があり、推進して道路ネットワークを構築しなくてはいけないと考えている。

参加者 3回の説明会で皆さんから心配している意見が出た。こんなに早く売却しなくてもいい、20何億も損金出してまでも処分しなくていい、住民投票の反対票には総合運動公園計画の見直しも含むという意見もあった。20何億円の損金は財政調整基金にまともにくる。来年度の市の財政に大変な負担がかかる。財政部門との話し合いはしているのか。

課長 売却金額そのものが決まっておらず財政部との具体的な調整は行っていない。

参加者 今の経済状況の中で、不動産鑑定が40億円より低かった場合は考えているのか。

課長 今の状況ではお答えできない。

参加者 たった一つの事業提案だけで都市計画を変更するのか。いくつかの案が出てから、じっくり考えて変更するのが筋ではないか。

課長 土地利用計画が固まってからでないと(都市計画変更の)手続きに入れない。今の段階で手続きに入るわけではない。

参加者 3回の説明会があり、きのう午後は20人くらい、夜は10人くらい、今日は10人くらい。それだけで市民の意見を吸収できたと言えるのか。9月の広報つくばに説明会のことが3行くらい(実際は6行)書いてあった。市民が何人見たのか。地域で聞いたら、皆さん、説明会のこと知らなかった。2~3週間前に知らせてくださいという意見もあった。つくば市には(合併前の)旧町村がつくった施設はあるが、敬老会を開くにも市民が一堂に集まれる場所が必要。大事な市有財産を市民のために使う構想が必要。こんな土地がほかにあるわけではない。業者の提案で販売することには賛同しかねる。

課長 説明会の案内は市報の後ろの小さい記事になってしまった。回覧では終了するまでに時間がかかってしまう。できる限り届く広報誌が有効。財政的なことはあるが人が集まる場所という意見は担当部署と共有したい。

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国立科学博物館は、つくば市天久保、筑波実験植物園に隣接する筑波研究施設の資料収蔵施設「標本・資料棟」1階に見学スペースを設け、24日から公開を始めた。2023年に新設された地上8階建ての同施設は、12年竣工の自然史標本棟と合わせ、同館が所蔵する標本・資料の9割以上にあたる約520万点を保管する。すでに見学可能な自然史標本棟に続く公開となる。大型化石などを保管する1階の保管の様子をガラス越しに見たり、職員の作業の様子を見学することができ、バックヤードの雰囲気を味わうことができる。 見学スペースからは、生命の成り立ちを研究する生命史研究部が保管する化石や古植物、恐竜化石のレプリカなどの収蔵状況を、ガラス越しに間近に見ることができる。さらに、昨年導入された大型X線CT装置の稼働の様子も公開し、最新の研究と厳重な保存環境の両方を知ることができる。 現在もほんのり木の香りが残る、約9万年前に阿蘇山の火砕流で埋没した直径2.5メートルのスギの木のほか、幅1.7メートルのヒノキ科の樹木メタセコイアの化石、かつて同博物館上野本館で展示されていた恐竜カンブトサウルスの全身骨格復元標本なども並ぶ。 CT装置は、自動車や航空宇宙分野で使われてきた非破壊検査技術を応用したもの。壊せない化石や希少標本の内部構造を、そのままの状態で解析できる。450kVの高出力により、これまで撮影できなかった大型標本や重い元素を多く含む岩石の撮影にも対応できる。また、最大で高さ約1メートル、幅約6メートルの試料に対応し、絶滅哺乳類の頭骨の内部構造解析や、江戸時代の地球儀の内部調査などにも活用されてきた。 未来につなぐ 同研究施設で生命史研究部の研究主幹を務める木村由莉さんは「ここは未来の人に標本を残すための施設。温度や湿度を厳密に管理し、免震構造も備えている」と保存環境の重要性を話す。また、外観に窓が少ない建物について来園者から「一体なんだろう?」と不思議がる声もあったと言い、「ここで何が行われているのか知ってもらい、博物館の裏側にも興味を持ってほしい。『今から(展示会場に)出てくぞ!』という、展示に出る前の化石がどのように保管されているのかも知ってもらえたら」と話すと、「私たちが力を入れるのが試料保存。CT装置で標本を記録し、まさに今、この場所で行われている未来へつなぐ取り組み間近に感じることができる。科学がいかに標本を未来へ残すことを重視しているか。次世代へどう残すかを一緒に考えるきっかけになればうれしい」と語った。(柴田大輔) ◆標本・資料棟1階見学スペースは、筑波実験植物園から入場する。開館時間は午前9時~午後4時30分。入場料は、植物園入場料として大人320円、高校生以下・18歳未満と65歳以上は無料。障害者手帳所持者は当事者と介護者一人まで無料。 ◆24日(火)~4月5日(日)は、同博物館の松原聰名誉研究員らが2月に日本で初めて確認した青い鉱物のラピスラズリが展示される。29日(日)午後1時からと2時から、見学スペースで大型X線CT装置を使った作業の実演と、担当研究員による現場解説が行われる。時間は各20分程度、事前予約不要。

今の幸せと将来の幸せ、どちらを追い求める?《土浦一高哲学部「放課後の哲学」》2

煩悶(はんもん)させる幸福 【コラム・2年 S.Y】今、あなたは草むしりをして泥だらけである。目の前には浴室がある。あなたはシャワーを浴びたくてたまらないけれど、ある人が言う。「今はシャワーしか使えない。2時間待てば、シャワーに加えて湯船に浸かれる」。あなただったら、どちらを選ぶだろうか。 私であれば、真っ先に後者を選ぶだろう。私は、未来に取りつかれている。先のことばかりを考えて行動する。先のことばかり考えるがために、苦しくなることもしばしばある。例えば、夕飯に家族で外食に行くとなれば、私は昼食をほとんど食べない。なぜなら、お腹を空かせて夕食を最大限に楽しみたいからだ。しかしこの作戦にはデメリットがある。それは、午後の空腹に耐えなければならないということだ。夕食まで何もしなくてもいいならまだしも、私の場合午後に予備校に行かなくてはならないことが多いので、空腹に耐えながら小テストと3時間の授業を受けねばならないことになる(さらに悲しいことに私の通う予備校は家から電車で2時間かかる場所にある。この耐久レースは想像を絶する辛さなのだ。こうして私は美味しい食事の代償として空腹と戦う)。 将来の幸せを求めるという傾向は、私だけでなく、今コラムを読んでくださっているあなたにも当てはまることかも知れない。弘前大学の鈴木将晃さんが卒業研究として2017年に実施した、同大の学生75人を対象に実施した質問紙調査によると、「現在は不幸せである」と感じる人には、「将来は今よりも幸せになる」と予想する人の割合が圧倒的に多い一方、「現在は幸せである」と感じる人には、「将来は現在よりも不幸せになる」と予想する人の割合が最も多いという結果が出ている。 将来的に幸福を感じるために、今あえて苦痛に向かうことは、果たして幸せと言えるのか−。 私が本コラムへの参加を決めたのは、私が日々切実に感じてきた葛藤から脱したいという、他ならぬ理由がある。と言っても、そう簡単に解決できる事柄ではないため、今回は、将来の幸せと未来の幸せについて私自身が考えを整理するために、幸せとは何か?という根本的な部分を、時間観とからめつつ述べたい。 キリスト教世界の人々は、死後の世界に幸せを求めた。キリスト教では、世界の終末にキリストが再び現れ、「最後の審判」が行われるとされる。人々はこの最後の審判に向かって、人生をプログラムしていくのである。古代哲学を振り返ってみよう。プラトンによる「洞窟の比喩(allegory of the cave)」をご存知だろうか。彼の著書「国家」第7章で用いられる有名な例えである。人々は出生時から、洞窟の中で入り口に背を向け、縛られた状態で閉じ込められており、彼らは目の前の壁だけしか見ることが出来ない。実際は彼らの背後には火が灯されており、皆その火によって目前の壁に映し出される人の影を実在だと思い込むのである。ある日、1人の囚人の拘束が解かれ、その囚人は今まで自分が見てきたものが影に過ぎなかったことに気付く。そして洞窟の外、太陽の光の下に連れ出されてやっと、真の実在を目にし、その存在を確信するに至る−。 永遠不変の本質に即した世界である「イデア界」なるものが存在し、私達が普段目にしている世界のあらゆるものは、映し出されたイデアの像の集合に過ぎない。簡単ではあるが、これがプラトンのイデア論の概略である。イデア論の下では、人々が死後に行くのはイデア界であり、その像の世界である現世よりも、死後の世界の方が高い価値を有すると評価されていた。このような、ユダヤ教のプラトン的解釈が、キリスト教の原型となっている。キリスト教的世界観に立ってみると、幸せが神やイデアのように絶対的な概念として捉えられていること、そしてそれは内面の充実と同値関係にある(等しい)ことがわかる。 しかし、この神を中心とする価値観は、ニーチェによって決定的に破られることとなる。「神は死んだ」という言葉に表されるように、ニーチェは、神を絶対的な価値基準に置くことを否定し、自ら価値観の創造に努めることの重要性を説いた。実存主義で有名なサルトルは、人間は自らを作り上げる自由を持つと考えた。つまり、幸せの定義は、絶対的な「神」ではなく、相対的な「個人」に委ねられたことになる。そして人々は、死後の「最後の審判」ではなく、(肉体的に)生きている間の、自らが設定した目標に向けて、人生を設計するようになったのである(*脚注1)。 では、ここでいう「目標」とは何だろうか。目標とは、個人が幸せを得られる何かであるはずだ。私は、幸せは二つのベクトルで測られると思う。 一つ目の区分は、動物的なヒトとしての幸せと、社会の中の「個人」としての幸せである。前者は、寝食など生理的な欲求を満たすことである。一方後者は、成立に必ず他者が必要な幸せのことで、例えば家族からの愛や社会的な承認(「記号」の消費(*脚注2)とも言えるかもしれない)などである。 二つ目の区分は、絶対的な幸せと、相対的な幸せである。ここでは、前者をキリスト教的幸せ、後者を仏教的幸せと呼びたい。キリスト教的幸せは、神という絶対的存在の元で成り立つ、幸せのイデアだ。一方、仏教的幸せは、神を絶対的存在として想定せず、輪廻や煩悩から解脱を求める。つまり苦しさから逃れることで得られる差異による相対的な快適さである。私がコラム冒頭で示した例を思い出していただきたい。おいしい食事は、いつ食べてもおいしい。これは認めるにある程度妥当である。それにも関わらず、私が夕食まで必死に空腹と対峙するのはなぜか。それは、あえて空腹という苦痛を感じた状態を経ることで、相対的な幸福を最大値まで持ってゆきたいためなのだ。つまり、この場合に私が求めているのは、まさに「仏教的幸せ」と言えるであろう。 では、これら二つのベクトルで測られる幸せを得ることが「目標」なのだとしたら、それにどう向かっていくのか、という議論は避けられない。私は、この点において、コロナ以前と以後で、アプローチが変わったのではないかと考える。そしてこのことは私達の世代にとっても非常に切実なのである。新型コロナウイルス感染症が世界に影を落とし始めた時、私は小学5年生であった。その時突然、対面で授業を受けられなくなり、旧友との交流も絶たれ、学校行事も中止か変更を余儀なくされた。当たり前だと思っていたことが、この時を境にがらりと変わってしまったのだった。だからこそ、私達若者世代は将来が、不安で不安でたまらないのだと思う。 当たり前はいつなくなるかわからないという現実を突きつけられた私たちは、長期的な目標を持つことが難しくなっていると感じる。今までは、人生の終わりを最終到達地点として長期的目標に向けて人生設計を行うことができた。それに対し、今を生きる人々は、未来に取りつかれているが故に、短期的な目標を一つずつ達成していき、階段状により高度の幸せを求めるようになったのではないか。短期的な目標を達成する方が、自分が期待していた未来を得ることは容易になるからだ。一方で、一つの目標を達成すれば、次に設定する目標と一つ下の目標との高さの差は、指数関数的に広がっていくように感じる(図1)。(まるでガウス記号のグラフのよう…)私は今まさに、そんな状態だ。不透明な将来の中で、確約される幸せを求めて一歩一歩、階段を踏みしめながら進んでいる。それでもしばしば踏み外したり、段を飛ばしてしまったりする。上に行くほど次の段を登ることが難しいために、圧倒されたり、無気力になったりする。それでも、私は私なりの幸せを見つけ、もがきながら進んで行くのだろうし、それが、今まさに将来の岐路に立っている私達高校生の特権だとも、私は思う。 *脚注1 ニーチェの永劫回帰(*1-2)とは異なる進化論的な終末観が形成されたと言っても良いだろう。ここで言う進化論的な終末観とは、いわゆる「神の死」以降、キリスト教的世界観に自然科学的な解釈が加わり変形してできた世界観である。ニーチェが否定したのは、このような終末観を含めたキリスト教的世界観全体である。ただし、神の死以降の幸福観も様々であったことを追記しておく。 1-2 ドイツの哲学者であるニーチェの思想。ものごとが全く違わずに永遠に繰り返されること。始まりも終わりもなく変わらぬ人生が永遠に繰り返されれば、生の目的も意義も失われてしまうように思われるが、それでも永劫回帰を受け入れ肯定することが、「力への意志(平たく言えば向上心)」であるとニーチェは説いた。 2 記号とは、ある社会集団が制度的に取り決めた「しるしと意味の組み合わせ」のこと (内田樹「寝ながら学べる構造主義」より) 。ソシュールが定義したもので、その後もバルトなどの哲学者の思想に影響を与えた。ここで「記号の消費」が意味しているのは、例えばブランド品の購入など、社会的なステータスを提示するためだけの行為のこと。

2億円超の復旧費用めぐり 運営管理事業者がつくば市を提訴 ごみ焼却施設

市は反訴へ つくば市のごみ焼却施設、つくばサステナスクエア(同市水守)で2022年12月、高圧線から電気を受け取り低圧に変換する受電設備が故障し、施設に電気が供給できなくなった事故をめぐって、当時、市から施設全体の包括的運営管理業務を受託していた事業者が昨年末、同市を相手取って、受電設備の復旧費用約2億2300万円の支払いを求める訴えを東京地裁に起こしていたことが分かった。 これに対し市は反訴する方針で、25日開かれる同市議会で議決されれば、事業者を相手取って損害賠償請求を起こす。 つくば市を訴えたのは、NKKS・NSES・KSE特定業務共同企業体(代表・日本管財環境サービス、東京都港区)。当時、市のごみ焼却施設、リサイクルセンターなどの運転管理、補修、一部機器の更新工事を含めた維持管理業務を請け負っていた。当時2020年度から24年度まで5年間の委託料は約50億円弱。 事故は2022年12月12日に発生した(22年12月23日付)。受電設備が故障し、12日から約1週間、ごみ焼却炉が停止し、市内から収集された可燃ごみは、一時的にごみをためる「ごみピット」にためられた。 12月18日に仮設の発電機を設置し、19日からごみ焼却炉の運転を一部再開。翌23年1月12日に復旧した。 ごみの量が増える年末年始に重なったこともあって、この間、市は可燃ごみの一部の処理を外部に委託した。焼却炉の停止により蒸気の供給を停止したことから、隣接のスポーツ施設「つくばウエルネスパーク」の温水プールと温浴施設の営業も一時停止。さらにごみを燃やして発電できなくなったため市の公共施設への電気の供給や売電もストップした。 復旧後の2023年8月、復旧にあたった事業者から市に対し、復旧費用の支払い請求があった。双方で話し合いが行われたが折り合いがつかず、24年7月からは双方とも弁護士を付けて示談交渉が行われが折り合わず、昨年12月26日、事業者側が市を提訴するに至った。 受電設備が故障した原因をめぐって、市が事業者と締結した包括的運営管理委託業務の範囲内に復旧工事が含まれるか否かで見解が分かれているとみられる。 故障の原因について市サステナスクエア管理課は「今後の裁判に影響する恐れがあるので(言及を)控えたい」としている。 市が提起する反訴については、ごみ焼却炉が停止したことにより市が負担した▽可燃ごみ処理の外部委託費約740万円▽ウエルネスパークのプールと温浴施設が休業したことに伴う指定管理者への運営補償金約250万円など計約1090万円を事業者に損害賠償請求する方針だ。(鈴木宏子)