月曜日, 8月 25, 2025
ホームつくば【つくば市教育長インタビュー】方針を転換 「5校目の義務教育学校はつくらない」

【つくば市教育長インタビュー】方針を転換 「5校目の義務教育学校はつくらない」

【鈴木宏子】施設一体型小中一貫校を新設してきたつくば市の教育方針が大きく転換する。門脇厚司教育長は「5校目の義務教育学校はつくらない」と表明し、人口が急増するつくばエクスプレス(TX)沿線に今後新たにつくる小中学校は、施設一体型の一貫校とはしない方針を示した。つくば市の教育はどこに向かうのか、門脇教育長にインタビューした。

大規模校になってしまう

―人口が急増するつくばエクスプレス(TX)沿線にさらに2校を新設する計画が発表された19日の市議会全員協議会で、門脇教育長は「5校目の義務教育学校はつくらない」と明言されました。つくば市の小中一貫校を検証した市教育評価委員会の調査報告書「つくば市の小中一貫教育の成果と課題」(2018年7月)でも「小中一貫教育の効果は小中分離校でも発揮されている。施設一体校では中一ギャップは解消しているが、新たに小6問題が顕在化している」などの課題が出されています。義務教育学校、つまり施設一体型の小中一貫校はつくば市ではもう止めるということでしょうか。

門脇 小中一貫の義務教育学校がつくば市にはすでに4校あり5000人が在籍している。小中学生約2万人のうち4分の1になる。小中一貫教育の義務教育学校を止めるとは言えないが、5校目以降はつくらない。すでにある4校の義務教育学校については、これからはできるだけ小学部と中学部の分離を意識した学校運営をやりたい。

例えば、今は小学6年生を終えても卒業式もないし、中学生になる際に入学式もない。これからは小学部1年生から6年生、中学部1年生から3年生の区切りとし、小学部の卒業式も中学部の入学式もきちんとやるようにしたい。

―義務教育学校をこれ以上つくらない理由は何ですか。

門脇 これからTX沿線につくる新設校を義務教育学校にすると、大規模校になってしまう。それから2018年7月の「小中一貫教育の検証と課題」で指摘されたように、同じ小中一貫教育でも、小学校と中学校が分離していた方が教育効果が高いということなら、高い効果が現れる方を選んだ方がいい。

つくば市で子供の数が増えるのはこれから10年間か15年間。15年後には減ってしまう。これからつくる学校は、将来、何に転用するか考えてつくらないととんでもないことになる。将来どういう施設として活用するかを今から考えながら設計をしていく。

子育て世代 想定以上に増えた

5月30日につくば市が発表した「今後の人口増加地域の児童生徒数の推計値」によると、新たに学校をつくったとしてもTX沿線では引き続き過大規模校のままとなってしまう学校が複数あります。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。

門脇 想定より多い子育て世代がどんどん入ってきている。前任者もこうなると思ってなかったのではないか。前任者が「教育日本一」を大々的に掲げたこともある。保護者は、教育日本一とは学力日本一だと考えて、つくば市の学校に入れればわが子の学力が上がると考え、想定以上に増えたのではないか。できたばかりの新しい学校は立派できれいなので、うちの子もこんなすばらしい学校で勉強させたいと、わざわざ引っ越してきた親御さんもいる。

「世界のあした」のトップランナーに

―つくば市の教育はこれからどういう方向を目指すのかを示す教育大綱を今、策定中です。つくば市の教育はこれからどう変わっていくのですか。

門脇 子供たち一人ひとりを徹底的に大事にする教育を目指す。どの子にも、自分はこういうふうに生きていきたいと願う気持ちがあるわけで、それを実現させる教育にしたい。

つくば市は五十嵐市長が「世界のあしたがみえるまち」を掲げている。ならば、つくば市は「世界のあしたの教育」のトップランナーになると言ってきた。これまでどこでもやってない教育をやりたい。

そもそも現在の公教育制度は、150年前に、産業社会を発展させるために必要な人間を育てることを目的に作った制度で、極めて不自然なことを無理を重ねてやってきた。

一例をあげれば、その国に生まれた子供は誰もが一定の年齢になったら必ず学校に行くことを強制されるし、同じ年齢の子でクラスを作り、全員が同じ教科書で同じことを一斉に教わる。学期が終わると必ず競争試験があって、できる子と出来ない子を分けて、できる子にはもっと勉強させて新しいモノを創り出すことができる能力を高め、できない子には先生や経営者の言うことを守ればいいと教える。こんなやり方はいやだ、自分のペースで学びたいと言っても許されないというふうに、今の公教育は経済成長を最優先させるため不自然な教育を無理を承知でやっているというのが実態。

だから、新しい教育大綱をつくって、つくば市がこれから目指す教育をはっきり示さなくてはならない。学力競争の教育から抜け出して社会力を育てることを基本にすえる。社会力とは人と人がつながって社会をつくる力、さまざまな人と人がよい関係をつくり、協力しながらよりよい街をつくる力のこと。子供も大人も社会力を育てるのがつくば市の教育の将来になる。

新設校は固定観念を一新する

―これからできる新しい学校は、つくば市が目指す新しい公教育の在り方を先取りしたものになるのでしょうか。

 

香取台小学校(仮称)建設予定地

門脇 例えばいま設計に取りかかっている香取台小学校(仮称、2023年4月に万博記念公園駅近くに開校予定)は、学校に対する固定観念をぶち破る学校にしたい。

職員室はつくらないで、1年生の教室が並んでいる真ん中あたりに1年生の担任の先生たちの授業準備室をつくる。先生が授業の準備をしたり、お茶を飲んで雑談したり休憩したりする。全教職員が一カ所の部屋に集まる今の職員室は同調圧力のもとで、互いに監視し合ったりする。仕事が終わったので早く帰りたいと思っても隣の先生はまだ帰らないので残っているということになる。

カフェテリアをつくり、勉強に使っている机で給食を食べるのではなく、カフェテリアで食べることで食事そのものを楽しんでほしい。

プールはつくらず、プールの敷地に保育所や児童クラブや、大人が集う市交流センターなどをつくって、学校を小中学生だけの施設でなく市民が集える複合施設にするとか、演劇や音楽や美術の発表を楽しむホールや大勢で遊べる遊び場は作っても、「全体回れ右!」といった軍隊式の集団行動を訓練する体育館は作らないというふうに、学校とはこういうものだというこれまでの固定観念を一新するような学校を作ってみせたい。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

TXが開業20年 「多くの方に支えられ成長できた」 

24日 秋葉原駅で記念イベント つくばエクスプレス(TX)は24日、開業20周年を迎えた。TXを運行する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区、渡辺良社長)は同日、東京・TX秋葉原駅で記念イベントと、特別ラッピング列車「ユニール号」(23日付)の出発式を行った。渡辺社長は20周年を迎えた感想を「多くの方に支えられ、成長できた20年間だった」と述べた。 イベント会場では、ユニコーンをモチーフとした新マスコットキャラクター「ユニール」がお披露目され、同社のプロモーションパートナーであるJ1柏レイソルからサッカー日本代表に選出された垣田裕暉選手らが登壇、大勢の鉄道ファンらがステージを囲んだ。 出発式では、約1500人の応募者の中から選ばれた4人の小学生による1日駅長が「出発進行!」と合図。午前11時30分、ユニール号がつくばに向けて出発した。 1日駅長を務めた東京都府中市の光井駿仁さん(7)は、祖父母が暮らす茨城県那珂市を訪ねる際にこれまで5回ほどTXを利用した。今回の応募は、電車が大好きな駿仁さんのことを思った那珂市の祖母が、募集案内を見つけて知らせてくれた。「1500人の中から選ばれてすごくうれしかった。3歳くらいから電車が大好き。TXは形やデザインがかっこいい。出発式では自分たちの合図で『出発進行』した。駅長さんの大変さを知った。夏休みのいい思い出になった。今日のことは日記に書きたい」と笑顔を見せた。 「沿線と共に発展させたい」 首都圏新都市鉄道の渡辺社長は今後について「20年、30年先を見据え、沿線の方々と共に鉄道と沿線を共に発展させる中で、安全、安心、サービスの向上を引き続き最優先にしていく」と語った。沿線の人口増加で課題となっているラッシュ時の混雑の対応については「現在進めている車両の8両編成化事業をできるだけ早期に運用開始できるよう取り組む。ホーム延伸化工事の推進に加え、通勤通学時間帯に集中する利用の分散も呼び掛けていきたい」と話した。 インバウンド対策については「海外から観光に来る方にも沿線を楽しんでもらえるようトリップウォーク(ウオーキングイベント)を毎年開催していきたい。改札でのQRカード方式や、クレジットカードのタッチ方式であれば海外の方もそのまま利用できる。対応できるサービスを充実させ、通勤通学を基本にしつつ、土日や日中の利用も促進していきたい」と展望を示した。TX延伸については「交通政策審議会で『秋葉原から東京へ』の位置づけがあるが、整備主体・運営主体は未定。茨城県内の延伸を含めて、現段階でコメントできる立場にない」とした。(柴田大輔) ◆「ユニール号」は、8月24日から2026年3月下旬までの期間で運行し、25日(月)は午前5時台から午後11時台までの間に、上下線で計19本の運行が予定されている。詳細は首都圏新都市鉄道の公式ホームページで確認できる。 ➡TX20年の過去記事はこちら(7月31日付、6月2日付、4月12日付、2月26日付、1月28日付)

“雑草”にも栄枯盛衰はあるのか《文京町便り》43

【コラム・原田博夫】猛暑が続いている。線状降水帯の局地的な襲来はあれど、全国的には、継続的な高温、降水量の不足などで、各地のコメ、果樹、農作物の収穫が減り、食料品価格が全般的に値上がりの可能性が出ている。そんな中で一人気を吐いているのが“雑草”である。 植物学者・牧野富太郎博士の言葉「雑草という草はない」を待つまでもなく、この世の一木一草に至るまで生命の神秘が込められているので、地球上のあらゆる生命体には敬意を払わなくてはならないのだが、正直、“雑草”には悩まされる。道路際・駐車場隅の植え込みばかりか、わずかな隙間を突き破って立ち上がってくる生命力・繁殖力には舌を巻く。 拙宅の狭い庭先にも、しっかりと繁茂してくる。表門から玄関先にかけては何とか刈り取るのだが、1時間程度の暑さと屈み込み作業に音を上げて切り上げると、2週間程度で同じような光景が再現する。要するに、きりがないのである。 高温下で雨量が少ないためか、他の庭木はあまり元気がないが、“雑草”だけはお構いなしに繁茂してくる。そこでふと気づいたのだが、いわゆる一般的な庭木や食糧作物(コメ、果樹、農作物)と“雑草”は、氏素性が違うのではないか。 われわれは、植物を一括して天然・自然そのものだと思い込んでしまうが、庭木や食糧作物は人間の活動・生活に適するように手を加えられた植物である。要するに、動物でいえば家畜(牛、馬、豚、鶏など)に似ている。 対して、“雑草”は、そうした人間の活動・生活を活用し潜り抜けて勝手に、したたかに生き延びてきた植物である。したがって、多少の環境・天候変化に対しても、それを物ともせずに生き延びてしまう生命力が、遺伝子に組み込まれているに違いない。より野生に近い生命体である。 道路・交通事情も影響? 改めて、拙宅の“雑草”に目をやると、そこには十年一日のごとく同じタイプの“雑草”も繁茂しているが、10年前とは少し異なるタイプの“雑草”もあるようである。 私にはこうした植物の名称や種別・系統には何の知識のないのだが、こうした意図せざる変化(繁茂・分布の拡大・交流による栄枯盛衰)は、天候・気象条件の変化だけではなく、道路・交通事情によってもたらされている可能性があるのではないか、と愚考する次第である。交通量の激化や交通インフラの充実などが“雑草”の繁茂あるいは栄枯盛衰の、前提条件あるいは促進剤になっているのではないか。 われわれは、至便な交通事情を享受する以上、こうした負の影響(“雑草”の繫茂・栄枯盛衰)も受け止め、対処する必要がありそうである。(専修大学名誉教授)

ラッピング列車「ユニール号」24日から運行 TX開業20年

つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区、渡辺良社長)は開業20周年を迎える24日から、新マスコットキャラクター「ユニール」をデザインした特別ラッピング車両「ユニール号」を来年3月下旬まで期間限定で運行する。 20周年の節目を祝い、利用客への感謝の気持ちを込めて企画された。運行開始を前に23日、つくばみらい市筒戸のTX総合基地で報道関係者にユニール号がお披露目された。 ユニール号はつくば-秋葉原駅間を運行する。最新の3000系の車両で6両編成。車両の前面に「ユニール」をあしらった特製ヘッドマークが装着され、車体の側面に敬礼やスマイルなどさまざまなポーズをとる縦横70センチのユニールのステッカーが計88枚貼られている。車両全体でにぎやかで楽しい雰囲気を表現しているという。 車内には、TXのロゴと20周年の文字が焼き印された木製の特製吊り手が取り付けられている。 ユニール号は24日午前11時30分、秋葉原駅を出発する。24日は上下線各6本、25日は上り9本、下り10本を運行する。今後の1日の運行本数は保守点検の関係上、未定だが、運行時間は1週間単位で首都圏新都市鉄道のホームページで公表するという。 新マスコットキャラクターのユニールは、幸運を呼ぶといわれているユニコーンがモチーフで、初代キャラクター「スピーフィ」に憧れて2025年4月に入社し、角を触ると幸せになれるという噂が広がり、全国からファンが集まるという設定になっている。 記念乗車券を2000セット限定販売 24日には併せて、開業20周年記念乗車券2000セットが限定販売される。つくば、流山おおたかの森、八潮、秋葉原駅からの硬券乗車券4枚(計1200円分)を専用台紙に入れた記念乗車券で、乗車券には8月24日の日付けと開業20周年記念乗車券の文字が印刷されている。専用台紙には2005年8月24日の開業から20年間の歴史を振り返る年表や、過去の周年ヘッドマーク車両の写真などがデザインされている。 価格は1セット1200円(税込み)。販売場所はつくば、守谷、北千住、秋葉原駅4駅の定期券売り場で、販売時間はつくばと秋葉原駅が正午~午後8時、守谷と北千住駅が午前7時~午後8時。 販売期間は9月30日までだが、無くなり次第、終了する。1人5セットまで購入できる。

酷暑でもにぎやかな里山《宍塚の里山》127

【コラム・及川ひろみ】人が酷暑にあえぐ中、宍塚の里山は緑の木々のトンネルが続き、暑さをしのげます。そして、さまざまな生き物にも出合えます。今年はいつもの夏より種類も多いようです。 この里山は関東平野有数の広さ。広葉樹林、針葉樹林、田んぼ、湿地、小川、大池…。さまざまな自然があり、さまざまな生き物が息づいています。草むらに、木々の間に、木の上に、川辺に、湿地に、水面に、水中に、足元に、大小色とりどりの生き物が飛び交い、環境に溶け込んでいます。 今年はカブトムシやクワガタムシも多く、ヤマトタマムシ(茨城県準絶滅種)もいます。クヌギ、コナラの根元には、カブトムシの羽根が散らばっています。昔なら、カブトムシを食べる犯人はフクロウの仲間、アオバズクでしたが、今、犯人はカラスです。カラスはカブトムシのほか、ヤママユガの幼虫など、大型昆虫の捕食者です。 今ベビーラッシュを迎えているのはバッタ。歩を進めるたびに草の間から飛び出します。そして、小さなバッタがたくさんいるところには、彼らを食べるカエルたち。草の間から飛び出すのはアカガエル、それほど目立たず動くのはヌマガエル。ヌマガエルは至るところで見られます。 カエルが多いということは、生き物が豊富な証しです。カエルが増えれば、それを狙うヘビ。小さな生き物からヘビ―生き物のつながりを感じます。 ここで確認されたトンボは59種 空を切るように飛ぶトンボ。その種類が多いのもこの季節。野原、湿地、谷津田では、ショウジョウトンボ、シオカラトンボ、大シオカラトンボ、ナツアカネが見られます。小川にはオニヤンマ、草むらにはイトトンボがいます。宍塚でこれまで確認されたトンボは59種。全国のトンボの4分の1です。 今、宍塚大池の水面はハスの花で覆われています。大池にこれほどたくさんのハスの花が咲くのは6年振り。霞ケ浦沿岸に広がる蓮田のハスの花は白ですが、宍塚大池の野生種のハスはピンクで、とてもきれいです。 また、池で見られる胴体が短いチョウトンボの羽根は幅広で、遠目にはチョウのようです。羽根の一部が透き通り、オスはきらりと光ります。トンボは飛行の名手。特にチョウトンボは素早く飛び、ハスの上をたくさん飛んでいます。 しばらく酷暑が続きそうです。暑さしのぎに宍塚の里山、大池に足を運んではいかがでしょう。子どもたちには、自然体験の場として絶好です。(NPO法人宍塚の自然と歴史の会 会員)