27日、土浦駅前に市立図書館と市民ギャラリーを併設した再開発ビル「アルカス土浦」がオープンする。日本図書館協会建築賞を受賞した千葉市中央図書館などの設計で知られる柳田富士男さん(62)=INA新建築研究所(東京都文京区)設計監理副本部長(当時)=が設計した。中心市街地の活性化が期待される新図書館について柳田さんは「駅前にまず立体公園をつくろうと考えた」と話す。設計に込めた思いを聞いた。
―どのように考え設計したかを教えてください。
この事業の大きな目的は土浦駅周辺を再生するというまちづくりです。にぎわう、人が集まる、集まってイベントをする場所と考え、まず駅前に立体公園をつくろうと考えました。1階から4階の屋上公園につながるステップガーデン(屋外階段)がそれです。
次に、図書館とギャラリーの機能を、にぎわいづくりに生かす配慮をしました。図書館(2~4階部分)ですが、2階と、3~4階の2層構成となります。駅のデッキから直接つながる2階は「ポピュラーライブラリー」で、にぎやかで楽しい場所。新聞、雑誌、旅行や趣味の本が置かれ、待ち合わせ場所としても気軽に利用できます。ベビーカーを押す子ども連れのお母さんも駅に来たついでに立ち寄ってほしいと思います。
2階には児童部門(児童書コーナー)もあります。楽しく、子どもが来たくなるしつらえで、天井が吹き抜けになっていて、壁には丸や三角、四角といろいろな形や色がある。遊園地みたいな、テーマパークみたいな場所です。
にぎやかな2階に対して、3階は専門書があり調査・研究をする「レファレンスライブラリー」となります。
4階はヤングアダルト(青少年)の場所。いま土浦駅のフードコートや市役所5階の県南生涯学習センターなどで、勉強しているたくさんの高校生の姿を見掛けます。これからは図書館の気持ちのいい学習環境で勉強してください。4階の青少年ラウンジには、壁の一面にホワイトボードを設定しました。交流の場として自由に使ってください。
1階ギャラリーは、オープンギャラリーとギャラリーの二つに分かれています。オープンギャラリーは展覧会が開かれていない時でも開放し、ワークショップや子供向けイベントを開いて、いつでもアートに触れ学べる場所として使ってもらえたらと思います。
―建物にはどのような特徴がありますか。
建物は重箱をずらして重ねたような構造になっています。重箱同士は吹き抜けでつながっていて、壁の代わりにガラスのスクリーンで仕切られているので、光が取り入れられ、どこにいても館内が見渡せる開放的な空間になっています。駅前広場も眺望でき、夜には街の灯りになるでしょう。
建物の中は図書館先進国である北欧の清楚な雰囲気をイメージしました。床と壁は白木のカバー材で仕上げ、従来の図書館の重厚なイメージとは違う、軽やかな、若い人たちが来たいと思う空間になったと思います。
ステップガーデンを昇った屋上公園には庭園があり、階段状の観覧席を設けコンサートもできます。
―外観の色やデザインにはどのような意味がありますか。
駅前ですから、土浦駅前の表情はどうあるべきか、土浦らしさは何かを考え、亀城公園のお城の瓦と白い漆喰(しっくい)をモチーフに、和のイメージとしました。さらに土浦の知の殿堂になるわけですから、未来に向け、シャープなデザインのシルバーメタルを入れ込んだデザインにしました。
―これから市民にどのように使ってもらいたいですか。
土浦は高校生が多い街ですよね。そういう子供たちがこの施設を使って成長し、街をつくり、未来をつくってほしい。大人の人たちも暮らしに役立つのでどんどん来てほしい。従来の図書館を超えた未来の図書館なので楽しんで交流して学んでほしいと思います。(聞き手・鈴木宏子)