木曜日, 7月 23, 2026
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原発事故を超えて つくばの原木シイタケ生産者 全国サミット開催へ奔走

【相澤冬樹】茨城県の原木シイタケ生産量は2016年に401.6トン、福島第一原発事故後の出荷制限・自粛下にありながら静岡、鹿児島、群馬に次ぐ第4位となったことはあまり知られていない。さらに年間150トンを出荷するという生産者がつくば市にいることはもっと知られていない。「おそらく日本一のはず」と胸を張るのは、なかのきのこ園(つくば市中野、飯泉厚彦社長)の創業者、飯泉孝司さん(71)。事業を子息に任せ、自身は全国の生産者らに参集を呼び掛けて、8月につくばで「原木しいたけサミット」を開催すべく東奔西走の日々を送っている。

県内19市町で続く出荷規制

2011年東日本大震災時の原発事故に伴う放射性物質の影響により、県内産原木シイタケは大打撃を受けた。19市町で出荷制限・自粛の規制がかかり、10市町村で一部解除になったものの、現在も19市町すべてで継続中だ。「規制と風評被害に耐えかねて廃業してしまったものも多く、生産者が再出荷に向け線量検査など申請手続きを行わなければ出荷規制だけが残ることになる」(飯泉さん)。事故当時県内に約500人いた原木シイタケ生産者は150人ほどになった。

被ばく線量の基準値を下回ったつくば市は規制の対象から外れたものの、飯泉さんは原木のホダ木約200万円分を廃棄処分にした。このため丸1年、生産できない時期が続いたが、再開には次のハードルが待ち受けていた。原木の高騰である。

きのこ園では原木にコナラとクヌギを用いているが、つくば周辺の生産者5人で共同購入グループを組んで、調達先を福島・阿武隈山地に確保していた。1本の木からホダ木7本が取れる。グループの年間使用量40万本のためには1ヘクタール約7000本として、60ヘクタール分が必要。植林から伐採まで約20年かかるのを見込み、1200ヘクタールもの広さを手当てしていた。福島県内の、その調達先が消えた。

当座は在庫でしのぎつつ、長野県産に切り替えるなどの措置をとった。7センチ径で長さ70センチの原木1本が事故前は200円だったのが、今は倍の400円以上している。東電の震災復興基金からの助成が入るが、これも19年度までで打ち切りとなる。この先原木調達が生産コストを押し上げるのは必至だ。

「今後の活路見出す」

川上に自前の原木調達先を持たず、川下に安定した流通経路を確保していない産地には苦境が待ち受けている。飯泉さんは、生産、販売に関わる課題と情報を共有し、今後の活路を見出すべく、全国の産地に連携を呼びかけた。

所属団体の東日本原木しいたけ協会(古河市)を社団法人化する過程で知り合った大分県の阿部良秀さん(現日本椎茸農業協同組合連合会長)らと協議を重ね、実行委員会形式で初のサミット開催を打ち出した。行政に協力を求める一方、消費者も巻き込んで、森林や山村の豊かな環境を保全するなかで成長戦略を描く道筋を考えた。「全国規模となると原発問題は扱えないし、第1回とも打ち出せない。しかしSDGs(持続可能な開発目標)に懸ける思いは強くある」という。

「原木しいたけサミット」は8月29、30日、つくば市小野崎のホテルグランド東雲をメーン会場に開催。全国から約150人の参加を見込み、パネルディスカッションや6分科会での討議を予定している。2日目の現地視察はなかのきのこ園が会場、付属のレストランでシイタケ料理の試食会を行う計画でいる。

1年を通じ出荷作業の行われる原木シイタケ=同

菌床栽培全盛の中で

スーパーなどに並ぶシイタケには、生(なま)と干しの2種類あるのはご存知だろうが、生産の仕方でも2通りに分けられる。短く切った樹木に菌を植え付けて林地やハウスに並べて栽培する原木栽培と、粉砕した樹木のオガクズなどから作る菌床を用いてハウス栽培する菌床栽培である。人工的なシイタケ栽培が始まったのは大正年間で、そんなに古いものではないが、昔からの手間ひまかけて作るのが原木栽培で、近代化されたオートメーション促成型が菌床栽培といえる。

シイタケ菌を植え付けた原木をホダ木といい、これを寝かせて生育を待つだけで1年以上を要するのに対し、菌床なら3~4カ月で収穫でき、同じ面積のハウスなら4倍以上生産可能という。だから、今日では両者の生産量に圧倒的な差がついた。林野庁統計によれば、16年の生シイタケ生産量は全国で6万9707トン、うち原木栽培は7322トンに過ぎない。天候や気温の影響を受けやすい原木栽培は生産量が上下しがちだが、概ね全体1割前後にとどまっている。

1975年から一貫して原木シイタケ栽培に取り組んでいる飯泉さんによれば、見た目はもとより、食品成分を調べても両者の間に明確な差は認められないそうだ。それでもなぜ原木栽培を続けるかといえば、「食べれば分かる」という味覚へのこだわりにほかならない。大口出荷先の生協からも、飲食店からも原木シイタケ以外の取引はしないと言われている。

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東日本大震災の記憶を継承 詩人・和合亮一さんらによる追悼企画

8月8日 つくば 詩の朗読や音楽を通じて15年目を迎える東日本大震災の記憶を継承する「15年目の『いのり』2011–2026『詩の礫(つぶて)』」が8月8日、つくば駅前のコンサートホール、ノバホールで開かれる。登壇するのは、自身も被災経験を持つ福島県出身の詩人で高校教員でもある和合亮一さん、震災以降、被災地への思いを込めた楽曲を作るロックバンド・アジアン カンフー ジェネレーションのボーカル後藤正文さん、筑波大出身の舞踏家で山海塾の岩下徹さん、土浦市で生け花教室を主宰する華道家の小春丸さん。ステージ上には、つくば市在住の写真家で、震災直後から東北や関東の被災地域の撮影を続けてきた齋藤さだむさんの作品がスクリーンに投影される。 主催団体で、県南地域で芸術文化活動を企画・運営するウォーミングアップアートプロジェクト代表(5月25日付)の野口修さんは「会場では、公募した詩を、作った方が登壇して朗読する市民参加のステージもある。8月は祈りの季節でもある。1000人を収容できる空間で、観客も参加する企画を通じて、会場にいるすべての人が祈りを通じて他者との時間を共有する機会になる。震災から15年がたつ中で、来場する観客を含めた空間そのものが作品になるはず」と思いを述べる。 「自分自身と向き合う場」  今回の企画の出発点について、野口さんは「震災後ずっと、いつか和合さんをつくばに呼びたいと思っていた」と振り返る。これまで何度も打診してきたが、実現には至らなかった。震災から15年という節目を迎えた今年、「今やらなければ難しい」と考え、本格的に企画を動かしたという。 「できるだけ多くの人に、自分自身の思いを持って会場に来てもらいたい。お盆の時期に、言葉を聞き、花を見て、身体の表現に触れ、音楽を聴く。その中で、自分のことを考える時間が生まれるんじゃないかと思った」 野口さんが重視したのは、震災を「知識として学ぶ」場ではなく、表現を通じて自分自身と向き合う場にすることだった。きっかけの一つは、水俣病に関するイベントに参加した経験だという。「水俣の話を聞いているのに、気づくと自分のことを振り返っていた。あれは何なんだろう、とずっと考えていた。震災についても、和合さんの朗読を聴きながら、聴く人が『自分も当事者として考える』ような時間をつくれないかと思った」 会場では、和合さんと後藤さんのセッションに加え、公募で集めた詩の朗読も行われる。応募者の中から選ばれた10人ほどが自ら登壇し、自分の詩を読む予定だ。「市民の声を聞きたい。プロの表現ももちろん大切だが、普通の人が自分の言葉を読むことも観客の心にしみいるのではないかと思っている」 朗読の間には、華道家の小春丸さんが花をいけ、背後のスクリーンには出演者や会場の様子、そして齋藤さんの写真が映し出される。最後には、出演者全員による即興のフリーセッションも予定されている。野口さんは、このイベントを「完成された作品の鑑賞会」ではなく、「会場にいる人全員でつくる空間」だと考えている。「お客さんが表現を見ながら、自分自身を考えることができればいい。記憶を振り返るだけでなく、これからどう生きていくか、その『いのり』につながってくれたら」と語る。 被災地に向き合う写真家・齋藤さだむさん 会場で、被災地を撮影した写真によるスライドショーを上映するつくば市在住の写真家・齋藤さだむさん(77)は、震災直後から東北沿岸の撮影を続けてきた。2011年3月、震災発生直後に県内の被災地を訪れ、その後、福島県南相馬市出身の詩人・若松丈太郎さんに関する書籍制作に関わり、福島県内から、さらに青森から千葉まで広範囲の被災地を巡った。「南相馬の原町駅から海の方へ向かっていくと、普通の風景だったものが、だんだん建物が減って、崩れていく。その変化が本当に衝撃的だった」と振り返る。テレビで見た津波の映像とは違い、現地では「人の目の高さ」で破壊を体感したという。 1977年から現在のつくば市に暮らす齋藤さんは、筑波研究学園都市の形成のほか、ダム、原発、石油備蓄基地など、国内外の巨大エネルギー関連施設を長年撮影してきた写真家でもある。人間がつくり上げた巨大構造物を見続けてきたからこそ、津波によって一瞬で消し去られた沿岸の風景は特別な意味を持った。「人間の力があれば何でもできる、という世界を見てきた。でも津波は、人間の意志とは関係なく、冷徹にすべてを消滅させてしまう。その対比を強烈に意識させられた」 震災から15年がたった現在も、撮影は続いている。今回の上映に向けて、15年間の写真を改めて見直していると話す。 野口さんは「観客を含めた空間そのものが作品になる」と語る。震災を直接経験していない世代も増えている。15年前に生まれた子どもたちは、今では中高生だ。「震災を経験していない人にとって、想像力の問題は大きい。東日本大震災という未曾有の出来事があり、その後の社会の中で私たちは生きている。だから何度でも『生きる』ということを考え直す必要があるはず」と語る。(柴田大輔) ◆「15年目の『いのり』2011–2026『詩の礫』」は、8月8日(土)午後6時から、つくば市吾妻1-10-1 ノバホールで開催。出演は、和合亮一さん(朗読/詩人)、後藤正文さん(ボーカル・ギター/アジアン カンフー ジェネレーション)、岩下徹さん(ダンス/元山海塾)、小春丸さん(生け花)、齋藤さだむ(写真)。入場は一般4000円、学生・障害者3000円、高校生以下2500円。チケット販売は、ノバホール窓口のほか、イープラス、主催団体のウォミングアップへ。また専用サイトでは7月21日(火)まで、震災にまつわる詩を募集している。詳細はイベント公式サイトへ。