土曜日, 5月 23, 2026
ホームつくば原発事故を超えて つくばの原木シイタケ生産者 全国サミット開催へ奔走

原発事故を超えて つくばの原木シイタケ生産者 全国サミット開催へ奔走

【相澤冬樹】茨城県の原木シイタケ生産量は2016年に401.6トン、福島第一原発事故後の出荷制限・自粛下にありながら静岡、鹿児島、群馬に次ぐ第4位となったことはあまり知られていない。さらに年間150トンを出荷するという生産者がつくば市にいることはもっと知られていない。「おそらく日本一のはず」と胸を張るのは、なかのきのこ園(つくば市中野、飯泉厚彦社長)の創業者、飯泉孝司さん(71)。事業を子息に任せ、自身は全国の生産者らに参集を呼び掛けて、8月につくばで「原木しいたけサミット」を開催すべく東奔西走の日々を送っている。

県内19市町で続く出荷規制

2011年東日本大震災時の原発事故に伴う放射性物質の影響により、県内産原木シイタケは大打撃を受けた。19市町で出荷制限・自粛の規制がかかり、10市町村で一部解除になったものの、現在も19市町すべてで継続中だ。「規制と風評被害に耐えかねて廃業してしまったものも多く、生産者が再出荷に向け線量検査など申請手続きを行わなければ出荷規制だけが残ることになる」(飯泉さん)。事故当時県内に約500人いた原木シイタケ生産者は150人ほどになった。

被ばく線量の基準値を下回ったつくば市は規制の対象から外れたものの、飯泉さんは原木のホダ木約200万円分を廃棄処分にした。このため丸1年、生産できない時期が続いたが、再開には次のハードルが待ち受けていた。原木の高騰である。

きのこ園では原木にコナラとクヌギを用いているが、つくば周辺の生産者5人で共同購入グループを組んで、調達先を福島・阿武隈山地に確保していた。1本の木からホダ木7本が取れる。グループの年間使用量40万本のためには1ヘクタール約7000本として、60ヘクタール分が必要。植林から伐採まで約20年かかるのを見込み、1200ヘクタールもの広さを手当てしていた。福島県内の、その調達先が消えた。

当座は在庫でしのぎつつ、長野県産に切り替えるなどの措置をとった。7センチ径で長さ70センチの原木1本が事故前は200円だったのが、今は倍の400円以上している。東電の震災復興基金からの助成が入るが、これも19年度までで打ち切りとなる。この先原木調達が生産コストを押し上げるのは必至だ。

「今後の活路見出す」

川上に自前の原木調達先を持たず、川下に安定した流通経路を確保していない産地には苦境が待ち受けている。飯泉さんは、生産、販売に関わる課題と情報を共有し、今後の活路を見出すべく、全国の産地に連携を呼びかけた。

所属団体の東日本原木しいたけ協会(古河市)を社団法人化する過程で知り合った大分県の阿部良秀さん(現日本椎茸農業協同組合連合会長)らと協議を重ね、実行委員会形式で初のサミット開催を打ち出した。行政に協力を求める一方、消費者も巻き込んで、森林や山村の豊かな環境を保全するなかで成長戦略を描く道筋を考えた。「全国規模となると原発問題は扱えないし、第1回とも打ち出せない。しかしSDGs(持続可能な開発目標)に懸ける思いは強くある」という。

「原木しいたけサミット」は8月29、30日、つくば市小野崎のホテルグランド東雲をメーン会場に開催。全国から約150人の参加を見込み、パネルディスカッションや6分科会での討議を予定している。2日目の現地視察はなかのきのこ園が会場、付属のレストランでシイタケ料理の試食会を行う計画でいる。

1年を通じ出荷作業の行われる原木シイタケ=同

菌床栽培全盛の中で

スーパーなどに並ぶシイタケには、生(なま)と干しの2種類あるのはご存知だろうが、生産の仕方でも2通りに分けられる。短く切った樹木に菌を植え付けて林地やハウスに並べて栽培する原木栽培と、粉砕した樹木のオガクズなどから作る菌床を用いてハウス栽培する菌床栽培である。人工的なシイタケ栽培が始まったのは大正年間で、そんなに古いものではないが、昔からの手間ひまかけて作るのが原木栽培で、近代化されたオートメーション促成型が菌床栽培といえる。

シイタケ菌を植え付けた原木をホダ木といい、これを寝かせて生育を待つだけで1年以上を要するのに対し、菌床なら3~4カ月で収穫でき、同じ面積のハウスなら4倍以上生産可能という。だから、今日では両者の生産量に圧倒的な差がついた。林野庁統計によれば、16年の生シイタケ生産量は全国で6万9707トン、うち原木栽培は7322トンに過ぎない。天候や気温の影響を受けやすい原木栽培は生産量が上下しがちだが、概ね全体1割前後にとどまっている。

1975年から一貫して原木シイタケ栽培に取り組んでいる飯泉さんによれば、見た目はもとより、食品成分を調べても両者の間に明確な差は認められないそうだ。それでもなぜ原木栽培を続けるかといえば、「食べれば分かる」という味覚へのこだわりにほかならない。大口出荷先の生協からも、飲食店からも原木シイタケ以外の取引はしないと言われている。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

詩劇「憎しみは愛によって止む」を終えて《映画探偵団》100

【コラム・冠木新市】5月16日、詩劇コンサート・つくばシルクロード2026「憎しみは愛によって止む」に、スリランカ大使とスリランカ仏教界を代表する僧侶を迎え、出席者128人(出演者も含む)の「満員御礼」で終了した。 2部構成の第1部「終わりの始まり」では、1951年に締結されたサンフランシスコ講和条約の背景と内容、その後のスリランカと日本の交流を映像と舞踊で表現した。第2部「平和の里を訪ねて」では、筑波山、桜川、北条大池を歌ったクリシャンタさんの新曲など6曲、大川晴加さんの「憎しみは愛によって止む」など2曲を披露した(コラム99)。 寄せられた感想では「歴史や社会に詳しい主人ですが、この事実(日本分割統治)を初めて知り、衝撃を受けていました」「始めから涙流しっぱなしでした。ジャヤワルダナさんに日本人として感謝です」など、たくさんの感動メールが届いた。 だが、内実は大変だった。ジャヤワルダナ氏の演説を日本語にし、AIで作成したのだが、リアルにできなくて13回やり直した。完成したのは開演2時間前で、やっと6分の演説を流すことができた。また、日本人の音響担当とスリランカ人の映像担当のやり取りが言葉の問題もあり伝わらず、映像と舞踊合わせはぶっつけ本番だった。 木下恵介監督「スリランカの愛と別れ」 翌日、疲れが残るなか、木下恵介監督「スリランカの愛と別れ」(1976年)を見直した。昨年、公開49年後に初めて見たが、あまり印象に残らなかった。ところが、今回のイベントを終えて見ると、まるで違って見えてきた。 時は1976年。舞台はスリランカ。4組の男女が出てくる。水産会社で働く青年(北大路欣也)と宝石商の女性(栗原小巻)の恋。国連の仕事をする松永(小林桂樹)とその妻(津島恵子)の夫婦愛。現地の娘ライラと結婚しようとする若者の恋。満月の夜、ホテルで過ごす謎の大富豪ジャカランタ夫人(高峰秀子)と身の回りの世話をする老僕。 この4組の愛が描かれるのだが、昨年見た時と印象がまるで違うのだ。26年間続く内戦前のスリランカの美しい景色と人々の貧しいが穏やかな生活が描かれる。物語の軸はジャカランタ夫人だ。インド人と結婚して何不自由はないが、がんを患っていて、日本に残した息子のことが気になる。インド人の夫は何者かに殺された。 昨年は日本人の視点で見ていた。今回はスリランカ人の視点で見ていたようだ。スリランカ人の日本人に対する反応がよくわかる。 国際交流とは一緒に活動すること イベントを通じて気づいたが、スリランカ人は控えめで、あまり意見を言わない。しかし意見は持っている。先に言ってくれたら対処できたことが幾つもあった。スリランカは450年間も植民地だった国。そのような歴史からきているのかもしれない。 3か月間、スリランカの方とイベントに取り組み、学ぶことが多かった。以前から感じていたが、国際交流とは、集まりに参加するだけではなく、一緒に活動することが大事と思う。同じ映画が違って見えたのは、体験がそうさせたのだ。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家) <つくつくつくばの七不思議の映画とお話>・日時:5月30日(土)午後1〜3時・場所:カビオ小会議室2、参加費無料・対象:次回作のイベント参加希望者・主催:一般社団法人スマイルアップ推進委員会

事業用軽自動車の課税に誤り 116台 56万円を返金へ 土浦市

土浦市は22日、黒ナンバーの事業用軽自動車の課税額に誤りがあり、本来より高い軽自動車税を課税してしまったと発表した。誤りがあったのは過去5年間で計116台。過大に課税した金額は計56万7600円。市は今後、所有者に返金するとしている。 市課税課によると、車のナンバープレートのひらがな部分が「り」と「れ」となっている軽自動車は本来、事業者用として登録すべきところ、市のシステム設定に誤りがあり、自家用として登録し、自家用の軽自動車税を課税したという。 システムは2012年ごろ設定され、少なくとも14年度分から誤っていた。一方、5年で時効となることから、市は5年前の2021年度以降に課税した事業用軽自動車を対象に、過大分を返金するとしている。 今年度の軽自動車税の納税通知書を受け取った車の所有者から問い合わせがあり、誤りが分かった。他の車も調査したところ、今年度は79台の課税額が誤っていた。過大だった金額は1台当たり年間で1000円~4700円。 市は対象者に対し22日付でお詫びの通知を出した。今後、返金手続きを進める。再発防止策として市は、システム設定の再確認やデータ確認の徹底、職員のチェック体制強化などを実施するとしている。

リアリズムをとことん追求 60人の水彩画と色鉛筆画200点一堂に 県つくば美術館 

「水彩画と色鉛筆画のアトリエ・ハートタイム展」が19日から、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれている。土浦一高OBで東京芸大出身の水彩画家、田中己永(みのり)さんが主宰する絵画教室のグループ展で、同教室で教える講師の作品と、教室の生徒60人の水彩画と色鉛筆画203点を展示している。TBSテレビの人気番組「プレバト」に出演している色鉛筆画講師の三上詩絵さんの作品も展示されている。24日(日)まで。 絵画教室「アトリエ・ハートタイム」は土浦や石岡に教室があり、水彩画を田中さん、色鉛筆画を三上詩絵さんが教える。コロナ禍で生徒が30人ぐらいまで減った時期もあったが、現在は60人を超えている。 出展作品は、風景画や人物画、リアリズムをとことん追求した作品など多彩だ。テーマは設けず自由だという。「ヤカン」を描いた、同教室生徒の南雅人さんは、ヤカンの金属光沢や立体感を見事に表現する。山本千さんの「静寂/しじま」は音を吸い込み張り詰めた静けさの雪景色と雲の合い間から現れる光を表現する。小野洋子さんの「クワガタの戦い」は主役のクワガタを引き立てるために背景をぼかした技術を使っている。 絵画教室主宰者で水彩画講師の田中さんは「作品を作るのに1カ月から3カ月という時間をかける人が多い。根気よく続ければ必ず納得できる作品になっていく」と話す。 講師の作品も展示している。田中さんが今回展示している水彩画「花・装束」は、みずみずしく繊細だ。「教室を開いているが、自分の絵は自己流」だとし「誰でも根気さえあれば描くことができる。誰よりもうまいとかいうことでなく、自分の表現を磨いてほしい」と語る。 色鉛筆画講師の三上さんは土浦市出身、つくば市在住。今回は色鉛筆画「スターダスト」1点を展示する。「長崎市で講演会があった縁で壱岐で展示会が決まり、作品200点が壱岐島に行っている」と語り「最初に描いたのは2011年で色鉛筆画はなかなか大変だったと気付いた。大変なものを克服して、大変だからこそはまっていったと思う」と話し、「作品はネットでも見ることは出来るが、原画を見てこそ本当の良さがわかるので、是非とも展示会に足を運んでもらいたい」と付け加えた。 ◆「水彩画と色鉛筆画のアトリエ・ハートタイム展」は19日(火)~24日(日)、つくば市吾妻2-8 県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは電話029-823-3132(アトリエ・ハートタイム)へ。

Bプレミアに向け連携強化 ロボッツが土浦市を表敬訪問

プロバスケットボールチーム、茨城ロボッツの川﨑篤之社長と鶴巻啓太選手が20日、フレンドリーダウンの土浦市を表敬訪問し、小林勉副市長や奥谷克二教育長と懇談した。2025-26シーズン終了の報告および支援・声援への謝意を伝えるとともに、スポーツを通じた地域活性化の取り組みなどについても語り合った。22日にはつくば市長を表敬訪問する。 ロボッツの今季最終成績は19勝41敗で東地区10位。Bリーグ1部(B1)での最多勝利数は2022-23シーズンの23勝なので、今季はこれを上回ろうと30勝を目標に掲げたが、序盤戦から苦しみ低位に沈んだ。だが後半戦は大きく伸び、特に最後の5試合は4勝1敗。最終的には昨年の成績を4勝だけ上回ることができた。 Bリーグでの10年間のうち、ロボッツは最初の5年をB2で、続く5年をB1で過ごしてきた。「この10年でBリーグの成長は著しく、またわれわれもB1昇格によって見える景色が大きく変わった」と川﨑社長。「ロボッツの今季売上高は約15億円。初年度の約4000万円に比べると非常に大きな成長を遂げ、県内の企業にも大変支えていただいた。だがB1に来てみると周りには50~60億円規模のクラブも多い」と現状を説明。鶴巻選手も「僕が子どもの頃は茨城にバスケットボールのプロチームがなかった。その点で、今の小学生や中学生に夢を与えられる環境をつくれたことはとてもうれしい」と語った。 今年9月に開幕する新シーズンを、ロボッツは新たな最上位カテゴリー「Bプレミア」で迎える。Bリーグにもロボッツにとっても大きな転換点だ。川﨑社長は「Bプレミア26チームの中で存在感を示すため、土浦市の力をますますお借りしたい。茨城には県域のテレビ局がないためスポーツを伝える力が他県よりも弱い。一度アリーナに来てくれれば絶対に面白いと思ってもらえる自信はあるので、その最初の一歩を踏み出してもらうには自治体経由の情報発信が重要と考えている」と継続的な力添えを求めた。 一方でロボッツとしても、地域の魅力を発信する活動をさまざま行っている。その例が陳岡流羽選手(つくば市出身、土浦日大高-白鴎大)による、土浦特産のレンコンを使ったレトルトカレーの開発だ。製品には陳岡選手の幼少期の思い出や地元愛が詰まっているという。 「地方創生の根っこにあるのは『この街って実はすごいよね』と思う気持ち。私の年齢だと土浦や水戸が元気だった頃を知っているから現状を何とかしたいと思うが、今の子どもたちはなかなかそうはならない。そこをひっくり返すことができるのがスポーツの力。例えば私たちが日本一になるとか、茨城出身の選手が活躍するとか、いろんな形で表に出るようになることで『俺、茨城なんだぜ』と誇る気持ちも育ってくると思う。地域のために土浦とロボッツで何ができるかをぜひ一緒に考えていきたい」と川﨑社長は言葉を結んだ。(池田充雄)