月曜日, 7月 6, 2026
ホームつくば原発事故を超えて つくばの原木シイタケ生産者 全国サミット開催へ奔走

原発事故を超えて つくばの原木シイタケ生産者 全国サミット開催へ奔走

【相澤冬樹】茨城県の原木シイタケ生産量は2016年に401.6トン、福島第一原発事故後の出荷制限・自粛下にありながら静岡、鹿児島、群馬に次ぐ第4位となったことはあまり知られていない。さらに年間150トンを出荷するという生産者がつくば市にいることはもっと知られていない。「おそらく日本一のはず」と胸を張るのは、なかのきのこ園(つくば市中野、飯泉厚彦社長)の創業者、飯泉孝司さん(71)。事業を子息に任せ、自身は全国の生産者らに参集を呼び掛けて、8月につくばで「原木しいたけサミット」を開催すべく東奔西走の日々を送っている。

県内19市町で続く出荷規制

2011年東日本大震災時の原発事故に伴う放射性物質の影響により、県内産原木シイタケは大打撃を受けた。19市町で出荷制限・自粛の規制がかかり、10市町村で一部解除になったものの、現在も19市町すべてで継続中だ。「規制と風評被害に耐えかねて廃業してしまったものも多く、生産者が再出荷に向け線量検査など申請手続きを行わなければ出荷規制だけが残ることになる」(飯泉さん)。事故当時県内に約500人いた原木シイタケ生産者は150人ほどになった。

被ばく線量の基準値を下回ったつくば市は規制の対象から外れたものの、飯泉さんは原木のホダ木約200万円分を廃棄処分にした。このため丸1年、生産できない時期が続いたが、再開には次のハードルが待ち受けていた。原木の高騰である。

きのこ園では原木にコナラとクヌギを用いているが、つくば周辺の生産者5人で共同購入グループを組んで、調達先を福島・阿武隈山地に確保していた。1本の木からホダ木7本が取れる。グループの年間使用量40万本のためには1ヘクタール約7000本として、60ヘクタール分が必要。植林から伐採まで約20年かかるのを見込み、1200ヘクタールもの広さを手当てしていた。福島県内の、その調達先が消えた。

当座は在庫でしのぎつつ、長野県産に切り替えるなどの措置をとった。7センチ径で長さ70センチの原木1本が事故前は200円だったのが、今は倍の400円以上している。東電の震災復興基金からの助成が入るが、これも19年度までで打ち切りとなる。この先原木調達が生産コストを押し上げるのは必至だ。

「今後の活路見出す」

川上に自前の原木調達先を持たず、川下に安定した流通経路を確保していない産地には苦境が待ち受けている。飯泉さんは、生産、販売に関わる課題と情報を共有し、今後の活路を見出すべく、全国の産地に連携を呼びかけた。

所属団体の東日本原木しいたけ協会(古河市)を社団法人化する過程で知り合った大分県の阿部良秀さん(現日本椎茸農業協同組合連合会長)らと協議を重ね、実行委員会形式で初のサミット開催を打ち出した。行政に協力を求める一方、消費者も巻き込んで、森林や山村の豊かな環境を保全するなかで成長戦略を描く道筋を考えた。「全国規模となると原発問題は扱えないし、第1回とも打ち出せない。しかしSDGs(持続可能な開発目標)に懸ける思いは強くある」という。

「原木しいたけサミット」は8月29、30日、つくば市小野崎のホテルグランド東雲をメーン会場に開催。全国から約150人の参加を見込み、パネルディスカッションや6分科会での討議を予定している。2日目の現地視察はなかのきのこ園が会場、付属のレストランでシイタケ料理の試食会を行う計画でいる。

1年を通じ出荷作業の行われる原木シイタケ=同

菌床栽培全盛の中で

スーパーなどに並ぶシイタケには、生(なま)と干しの2種類あるのはご存知だろうが、生産の仕方でも2通りに分けられる。短く切った樹木に菌を植え付けて林地やハウスに並べて栽培する原木栽培と、粉砕した樹木のオガクズなどから作る菌床を用いてハウス栽培する菌床栽培である。人工的なシイタケ栽培が始まったのは大正年間で、そんなに古いものではないが、昔からの手間ひまかけて作るのが原木栽培で、近代化されたオートメーション促成型が菌床栽培といえる。

シイタケ菌を植え付けた原木をホダ木といい、これを寝かせて生育を待つだけで1年以上を要するのに対し、菌床なら3~4カ月で収穫でき、同じ面積のハウスなら4倍以上生産可能という。だから、今日では両者の生産量に圧倒的な差がついた。林野庁統計によれば、16年の生シイタケ生産量は全国で6万9707トン、うち原木栽培は7322トンに過ぎない。天候や気温の影響を受けやすい原木栽培は生産量が上下しがちだが、概ね全体1割前後にとどまっている。

1975年から一貫して原木シイタケ栽培に取り組んでいる飯泉さんによれば、見た目はもとより、食品成分を調べても両者の間に明確な差は認められないそうだ。それでもなぜ原木栽培を続けるかといえば、「食べれば分かる」という味覚へのこだわりにほかならない。大口出荷先の生協からも、飲食店からも原木シイタケ以外の取引はしないと言われている。

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人のために頑張る、目に見えない力がチーム支えている 土浦日大・小菅勲監督【高校野球展望’26】㊦

高校野球強豪校の名監督インタビュー2人目は土浦日大。春の茨城大会を制し、春季関東大会では1勝を挙げ、続く準々決勝では強豪の関東一を相手に互角の戦い(3対4)を演じた。この夏、第1シードとして茨城の頂点を目指す小菅勲監督に、チームの現状、投手陣の陣容、そして甲子園という舞台へ向かう姿勢について、率直な思いをうかがった。 春からさらにワンランクアップ ―まず、今年のチームの仕上がり具合については、現時点でどのように評価されていますか。 小菅 非常に自信となった春でした。その春からもさらにワンランクアップしようということで、この6月を過ごしてきました。力強さは間違いなく増しています。夏は体力勝負ですので、かなりハードなトレーニング、特にフィジカル面の強化を重点的に行ってきました。選手もそれに一生懸命ついてきてくれましたので、必ずこの夏、その成果が出るだろうと期待しています。 何よりも、ピッチャー陣が安定してきたことが最大の強みです。打線は調子の波があるため読めない部分も多いのですが、投手が安定していることは勝利のベースとして非常に大きいです。 ―県内の高校野球ファンの間でも、プロ注目の小池陽斗投手をはじめとした土浦日大の今年の投手陣は盤石だと評判です。具体的な顔ぶれを教えてください。 小菅 右の本格派である小池と島悠希、そして左の板橋悠希。あとは、2年生左腕の園山祐平も台頭してくるでしょう。この陣容には信頼を置いています。 6月は課題に徹底的に向き合った ―春の大会を振り返って、課題や収穫はどんな点にありましたか? 小菅 まず優勝を目標に掲げて、それを達成できたことが最大の収穫です。やはり目標は言葉に出して掲げることに意味があります。選手たちが持てる力を存分に発揮できたということが、何よりの結果でした。 一方で課題は、走攻守全てにおいて細かいミスがまだ見られる点です。特に関東大会を経て、それを痛感しました。効率的な連打が出ない中でも、いかに得点力を上げていくか。6月はこの課題と徹底的に向き合ってきました。ランナーを動かす作戦や、右打ち、バントを確実に決めること。これらは野球の土台です。ただ打つだけではなく、どうやって得点力を高めるかという戦略を磨いてきました。 ―春の試合を拝見して、簡単にバントをしない印象を受けました。 小菅 それは私の中で、場面ありきというより、人ありきだからです。できる者に、できることをやらせる。それを重要視しているだけで、無理にセオリーに縛られる必要はないと考えています。 甲子園4強の代と、実力遜色ない ―チームの戦力層についてはいかがでしょうか。 小菅 チームの成熟度に関しては、3年前の甲子園4強入りした代と比べても、持っている実力そのものは遜色ないレベルにあると感じています。大舞台を経験した代と同様に、今のチームにも大会を通じて急激に成長していく素養は十分に備わっています。 ―選手の役割分担や、控えの存在について教えてください。 小菅 うちはベンチウォーマー(控え)ではなく「ベンチスターター」と呼んでいます。試合の中盤以降に出て、流れを変えたり、勝利を確実なものにしたりする存在です。6月はレギュラー争いも活発で、春よりも戦力層が確実に厚くなっています。彼らがケースバイケースで役割を果たすことで、夏を通じてさらなる成長を見せてくれると確信しています。 井上記録員を甲子園のベンチに ―チーム全体の士気や雰囲気はいかがでしょうか? 小菅 士気は非常に高まっています。「春の優勝は過去のもの。夏は夏で、このメンバーで初めて目指す優勝なんだ」と選手たちには言い聞かせています。第1シードだからといって守りに入るのではなく、チャレンジャー精神で意気揚々と臨む雰囲気です。 ―チームの強みや武器はどこにありますか? 小菅 練習の量と質への自信、そして何よりチームワークです。今年の3年生は特に仲が良い。試合後にベンチ入りメンバーとスタンド応援組が一緒になって喜び合う姿を見ても、今まで見たことがないほどです。 そして、記録員の井上という生徒の存在が大きいです。彼は昨年、悪性リンパ腫という大きな病気と闘い、1年間の療養生活を経て今年戻ってきました。4月にベンチ入りしてから、チームの中で「井上を甲子園のベンチに座らせてやろう」というスローガンが自然と生まれました。人のために頑張れる、そんな目に見えない力がチームを支えています。 キーマンは投の小池と打の吉田 ―注目すべき選手、あるいはキーマンを教えてください。 小菅 あえて言うなら、投の小池と打の吉田惺南です。特にエースの小池が先発であれ抑えであれ、相手打線をしっかり抑えることが勝ちへの最大のポイントです。4番を打つ吉田も当然警戒されますが、その前後を打つ打者がどうつなぐか。彼らが中心となって機能することが鍵です。 ―キャプテンとしての吉田選手はいかがですか? 小菅 声が出ますし、クレバーな部分もある。何よりチーム愛が強く、甲子園に出るのにふさわしいキャプテンです。過去の代と比較するのではなく、「自分たちで指標を決める」という姿勢を自ら持てる点は大変素晴らしい。 甲子園を見て入ってきた世代 ―「甲子園を見て入ってきた世代」と言われますが、彼らへの思いは? 小菅 周囲からはそう言われますが、青春時代のチャンスをつかみ取ろうとする思いは毎年同じです。ただ、春に成果を出してくれたことで、「甲子園に行くのにふさわしいメンバーだ」という確信はより強まりました。「甲子園に出場する」ことにこだわりすぎるのではなく、「仲間と最後までやりきる」こと、その延長線上に結果があると伝えています。 7回制は議論のすり替え ―DH(指名打者)制導入の影響についてどうお考えですか? 小菅 現場では大歓迎です。打線の切れ目がなくなり、守備に不安があっても打撃でアピールできるチャンスが生まれる。相手ピッチャーによって左右のDHを準備しておき、試合展開によっては走塁とバントのスペシャリストも必要になってくる。その分、選手の出場機会が増えるので、選手のやる気を引き出す好影響しかありません。 ―一方で7回制については? 小菅 個人的には反対です。野球の妙味が損なわれます。試合時間短縮の議論が「7回制」にすり替わっていると感じます。本来の問題は炎天下にあるはずなので、ナイター設備や開催時期の見直しなど、他に解決策はあるはずです。 応援に応え感動を与える ―最後に、応援してくださっている皆様へ一言お願いします。 小菅 最近は球場に足を運んでくださる方が増えていると感じます。高校野球は若者が青春を賭けて挑む舞台です。温かい目で見守っていただければ幸いです。また、OB会をはじめ関係者の皆様の支えには感謝しかありません。選手たちには「皆さんからの応援に応えること、感動を与えることが大事な要素だ」と伝えています。皆様と共に、この夏、甲子園を目指して努力を続けていきます。 【取材後記】小菅監督の言葉から強く感じられたのは、このチームが持つ「温かい結束力」だ。特に、闘病生活を経て復帰した記録員を「甲子園のベンチへ」という全員の共通目標が、技術以上の強い一体感を生んでいる。技術や戦術の緻密さだけでなく、こうした「人のために」という純粋な思いが、土浦日大の底力となっていると感じた。第一シードとして迎えるこの夏、彼らがどのようなドラマを見せてくれるのか、今から期待で胸が高まる。(伊達康) 終わり ※毎年、高校野球3強監督インタビューを掲載していますが、本年は諸般の事情により霞ケ浦高校 髙橋祐二監督のインタビューを見送らせていただきました。