月曜日, 9月 14, 2026
ホームつくば2種類の演算加速装置で性能アップ 筑波大学10代目のスパコンCygnus登場

2種類の演算加速装置で性能アップ 筑波大学10代目のスパコンCygnus登場

【相澤冬樹】性格の異なる演算加速装置を2種類組み合わせた、世界で初めてのスーパーコンピューターが26日、筑波大学計算科学研究センター(つくば市天王台、梅村雅之センター長)で報道陣にお披露目された。4月から運用を開始するCygnus(シグナス)は、同センターにとって10代目のスパコン。会見で梅村センター長は「世界最速でも純国産でもないけれど、限界の見え始めたスパコンの開発競争に新たな方向性を提案するものだ」と胸を張った。

スパコンは、多くのコンピューターをつなげて、並列処理により高速の演算を実行するシステムで、1台1台をノードという。Cygnusは各計算ノードに、CPU(中央処理装置)に加え、計算処理を行う半導体チップのGPUを搭載、さらに一部のノードにはプログラマーが現場で論理回路を再構成できる集積回路FPGAを組み込んだ。いずれも市販品だが、2種の演算加速装置を合体させた例は世界初という。

一般にスパコンは、GPUの集積度を上げることで処理性能の高速さを競ってきた。巨大データの処理は得意だが、計算を進める際に分岐条件が出現するケースなどで性能が十分に発揮できず、実効スピードが落ちる弱点があった。FPGAはプログラムを書くのが大変だが柔軟性があり、接続すると装置内の高速通信も可能になる。GPUとFPGA、それぞれの特徴を組み合わて、性能の最適化が図るのが開発の狙いだった。

医療や気象研究に4月から運用開始

同研究センターは2016年度から3カ年、本体に約8億4000万円を投じてCygnusを完成させた。合わせて160基のCPU、320基のGPU、64基のFPGAで構成される。運用期間は6年の予定。「処理スピードだけなら他に早いものはいくらでもあるが、柔軟性を生かして高い演算性能と効率的な並列処理を持たせた。今後に新たな方向性を提供するものだ」(梅村センター長)という。

Cygnusのネーミングは、星座のはくちょう座に由来する。本体2台のノードは、それぞれはくちょう座のアルファ星デネブとベータ星アルビレオになぞらえられ、2種の演算加速装置を合体したノードは二重星アルビレオにちなんでいる。

スパコンを使った計算科学は、数値シミュレーションによるイメージング(可視化・映像化)に用いられることが多い。宇宙進化の謎に迫るなど、基礎物理での利用が盛んだが、近年は睡眠診断や手術ナビなど医療分野での応用に期待が広がっている。4月から約1カ月の試験期間を経て、5月に全国共同利用プログラムとして本格稼働する。すでに公募による19年度分の利用受付は終わっており、70件が採択された。気象やAIなどの研究テーマが決まっている。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho





spot_img

最近のコメント

最新記事

高校生の思いが本に 土浦一高哲学部が「放課後の哲学」出版記念イベント 

土浦一高哲学部がNEWSつくばで3月から4月にかけて連載したコラム「放課後の哲学」が、あっぷる出版社から書籍として刊行された(8月20日付)。これを記念する出版記念イベント「『放課後の哲学』ができるまで」が13日、土浦市のがばんクリエイティブルーム(同市中央)で開かれた。執筆を担った哲学部員や卒業生、顧問教諭ら9人が登壇し、書籍が生まれるまでの道のりや部の活動、それぞれが哲学や対話に寄せる思いを語った。会場には20人余りの参加者が集まり、耳を傾けた。 土浦一高哲学部は、もともと同校の文芸・弁論部内の一班「哲学班」として始まり、2025年に独立した部として成立した。哲学カフェを中心に、哲学書の読書会や哲学史の勉強会に取り組んでいる。2024年からは、がばんクリエイティブルームを会場に、市民も交えた哲学カフェ「語るカフェ」を開催。企画・運営はすべて生徒自身が担い、これまでに6回を数える。 書籍には、2026年3月から4月にかけてNEWSつくばに掲載された哲学部員9人と顧問教諭によるリレーコラム全10本のうち8本を収録。これに新たに執筆を希望した部員や卒業生らによる書き下ろしを含む22本を収録した。部員たちは8月、つくば、土浦市内の書店を実際に訪ね、自らの手で本をPRして回った。9月7日から全国の書店への配本が始まった。 一人で考えていたこと 文芸部でも活動する2年の岡田陽菜さんが手がけたコラムは「なぜ私はフィクションを求めるのか」。普段から小説を書いているという岡田さんは、執筆のきっかけについて「自分がなぜ小説を書くのか、きちんと考えてみたかった」と話す。「まさか本になるとは思っていなかった。現物が8月の終わり頃に届いて手に取った時に重みを感じた。頑張って書いてよかった」と振り返った。 「友だちを定義できるか」を書いた2年生の入江春香さんは、小学生の頃から「クラスメートって本当に友達なんだろうか」という疑問を抱いてきた。「自分一人で考えていたことを文章にするのはとても大変だった。それが人に読まれることに緊張や怖さもあったが、今はうれしい気持ちもある。哲学部に入ってよかった」と語った。 問いを共有する 文芸部の活動に哲学を取り入れるきっかけをつくったのは、卒業生で、現在大学3年の石田彩恵さんだった。中学生の頃、校外の哲学カフェに参加した経験が原点だという。高校入学後、飯島教諭に哲学カフェの開催を持ちかけたことで文芸部内に哲学班が生まれ、校内での哲学カフェが始まった。石田さんは「高校生はもやもやを抱えても、それを発散できないことがある。私自身も個人的な感情をうまく処理できず、内面的な問いも増えていた。疑問を声に出し、みんなで問いを共有する。言葉にならないような問いも取り入れていけたことが、哲学カフェの意義になった」と話した。 哲学班の活動を校内に広めた、大学2年の松間夕華さんは「大きな悩みだった人間関係について、対話することで自分が救われる場に哲学班はなっていた。友達や趣味のつながりとは違う形で人とつながれる場所。在学中は活動を知ってもらいたくて、自分でフライヤーを作って各クラスを回るなど、がむしゃらに動いていた」と当時を語った。 市民向けの「語るカフェ」を始めるきっかけを作った大学1年の神谷和奏さんは、哲学カフェの魅力について「相手のことを否定しないというルールがあること。討論とは違うし、意見の優劣を決めるものでもない。ここなら自分について素直に話すことができる」とし、「精神的につながれる場所が高校生の時にあったことは、自分にとって本当にありがたかった」と振り返った。 「語るカフェ」の会場となっているがばんクリエイティブルームを立ち上げた葛西紘子さんは、神谷さんとの出会いが哲学カフェにつながった経緯を紹介した。「日常の中に、自分を表現できる自由な場所があるといいと思って始めたのが、がばんクリエイティブルーム。ここで開いた別のイベントに遊びに来てくれた神谷さんとの出会いが、『語るカフェ』が始まるきっかけになった。これからも面白い企画をしてもらえたら」と語った。 高校生だからこそ感じる視点 書籍化を実現したあっぷる出版社の渡辺さんは、NEWSつくばに掲載されたコラムを読んだことが出版のきっかけになったとし、「コラムを見て、これは本にできるんじゃないかと思った。偉い人や、たくさん経験を積んだ人だけでなく、若い人にもどんどん本を出してほしいと思っていた。今後、この本がどう広まっていくのか、すごく楽しみ。より多くの読者に届けていきたい」と話した。 顧問の飯島一也教諭は、哲学カフェを続ける中で「哲学は個人の作業ではなく、共同作業だということに気づいた」と語る。「『対話』という対等な関係性だからこそ促進されるのが、哲学カフェ。哲学部の活動は、哲学と対話に基づく関係性を学校内外に広めていくことを主な目標としている。生徒と一緒に歩む中で、活動の焦点が定まっていった」と話した。今回の書籍については「哲学カフェのライブ感や、生徒一人一人の問題意識の切実さを描いている」と評した。 哲学部部長で2年生の大和田哲汰さんは、自身が執筆したコラムについて「深夜までかかって書き上げたが、自分の言葉になりきれずに何度も見つめ直し、書き直した。自分が書いた原稿が本になることに驚いている」と話した。8月に書店を訪れた際には「本の前で立ち止まった方が手に取ってくれたのを見た」といい、「迷いながら書いた中で、友人から感想をもらえたこともうれしかった」と振り返る。「生徒が向き合う切実な問題を取り上げている。高校生だからこそ感じる視点が盛り込まれているところに独自性があると思っている。多くの方に新しい考え方や気づきを与えられたら、とてもうれしい」と締めくくった。(柴田大輔)

開館40周年 累計来館者700万人に つくばエキスポセンター

つくば科学万博の翌年に開館し、今年40周年を迎えた科学館「つくばエキスポセンター」(同市吾妻、中原徹館長)の来館者が13日、累計700万人になった。中原館長は「40周年の節目に700万人というひじょうにいい数字を達成できたことをうれしく思っている。年間20万人を目標に据えているが、24年度と25年度は20万人を上回り、多くのお客様に来ていただいた。子供たちに科学のおもしろさや楽しさを伝え、子供たちの科学の気付きを少しでも進めていければ」と話している。 同館はもともと、1985年開催の科学万博第2会場に建設された日本政府出展施設だった。万博終了翌年、万博開催を記念する科学館として開館した。施設は、体験しながら科学の面白さを体感したり最新の研究成果を分かりやすく紹介する展示場のほか、ドーム型プラネタリウムや、高さ約50メートルのH2ロケット実物大模型(25年12月11日付)などがある。科学万博の資料も保存、展示している。運営はつくば科学万博記念財団(中原理事長)。 近年は、コロナ禍の2020年と21年に延べ4カ月間、臨時休業を余儀なくされたが、コロナ後の24年度の来館者数は約21万8000人、25年度は約23万9000人と回復した。 中原館長は「新しい展示に向け努力しているほか、つくば市の人口が増え、転居してきた小中学生の子どもをもつ若い世代が、何度も訪れてくれている」と分析する。例えば「小学3~5年生を対象に実験や工作などをするエキスポ科学クラブなどは大変好評で、定員80人のところ数百人の応募がある」という。さらに25年度は、大阪・関西万博の開催とつくば科学万博40周年の相乗効果で、来館者が増えたとみる。 28年度にプラネタリウムをフルリニューアル 2026年度は同財団の中長期計画(2022-26年度の5年間)の最終年に当たり、年間入館者数20万人などの数値目標はすでに達成した。次の27年度から5年間の中長期計画の目玉について中原館長は「2028年度にプラネタリウムをフルリニューアルする。光学機器、デジタル機器、音響システムなどを全部更新する。星空に限らずいろいろな番組ができると思うので、ぜひ見に来てほしい」と話す。 一方、建築から40年たったことから、科学万博の記念施設でもある建物を将来にわたってどう維持していくかなどの課題もある。 万博キャラクター「コスモ星丸」を贈呈 13日は同館で、累計来館者700万人達成記念セレモニーが催され、700万人目の来館者となった千葉県船橋市の会社員、早坂知宏さん(43)らに、中原館長から、つくば科学万博のマスコットキャラクター「コスモ星丸」のぬいぐるみ2体が贈呈された。 早坂さんはこの日、妻の真衣さん(42)、長女で小学3年の優那さん(7)、長男で小1の恒希さん(7)の家族4人で初めて来館した。子供たちがNHKの教育番組「ピタゴラスイッチ」が好きで、同館で現在、からくり装置や仕掛け装置を集めた企画展「からくりコロコロ」が開催されていることをSNSで知り来館した。700万人目になったことについて優那さんは「びっくりした」、恒希さんは「うれしい」と話していた。(鈴木宏子)

福雷橋と金村別雷神社《ご近所スケッチ》25

【コラム・川浪せつ子】つくば市には、隠れたスポットがいろいろあります。フィルムコミッション(FC)に登録され、ロケ地として映画やテレビドラマ、CMなどでよく使用されている福雷橋(小貝川)。上の絵はそこから見た風景です。FCは地域や観光振興のために運営されています。ですが、小貝川はいつも水量が多く、橋自体はなかなか絵にできませんでした。 橋の上からは、隣接しているつくば市上郷の「金村別雷神社」(かなむらわけいかづちじんじゃ)の鳥居が小さく見えました。面白い名前ですが、雷よけの神様で、関東雷三神社だそうです。雷は雨も伴うので、作物を育てる御利益もあるそうです。 どこかに100円募金してください 長雨の合間、神社を訪ねましたが、道に迷いました。誰かに聞こうと思っていたら、1台の車が来たので手を上げました。「私のこと呼びましたか?」「まぁ、誰かに道を聞こうと思いまして…」「誰かが困っているから、神社に来なさいと、神様に言われて来ました。案内します」。はてな?と思いましたが、案内してもらいました。 神社に着いたら一緒にお参り。「あなた疲れていませんか?」「夏バテ、そして頭も疲れています」「拝んであげます。心の中で『ありがとうございます』とだけ唱えてください。私は料金も何もいただきません」。一瞬ひるみましたが、何となくその方を信じたいと拝みました。「拝みました? 私には何もいりませんから、100円でいいので、どこかに募金してください」 とても不思議な出来事。そして、私の目的だった「福雷橋」は、下のような姿を見せてくれました。(イラストレーター)

2027年度高校入試を展望する《竹林亭日乗》44

【コラム・片岡英明】9月は中学3年生が受験高校の選択を迫られる時期である。今回は2026年度(私学就学支援初年度)の全日制高校入試の流れを分析し、受験生を応援したい。2025年度(県立高無償化初年度、所得制限なし)に続き、私学も今年度から年45万7200円(月3万8100円)の支援が行われた。これによって受験の流れに変化が生まれた。 県立960人減、私学365人増 今春(2025年度)の県内中学卒業者は2万4555人で、前年より637人(2.5%)減少した(高校審議会資料)。高校入学者数は、県立高が1万4741人(前年度比960人、6.1%減=県教委入試報告書)。一方、私立高入学者は6939人(同365人、5.1%増)となった。単純に考えると、私学就学支援効果で、受験生の1.5%が新たに私学に入学したと言える。 ところが、私学には危機感が高まっている。確かに、1月の推薦入試では、私学23校(AO中心の江戸川取手を除く)で前年比460人増だったが、一般入試の受験者が約1000人減少したからだ。最終的な入学者数は私学24校で365人増えたものの、推薦が460人増だったので、一般入試の入学者は前年比約100人減少した。 これは、中学卒業者数減に加え、今までよりも受験生が私学の推薦に流れ、県立の入試倍率が低下したからである。県立の不合格者減に伴い、私学も県立合格発表後の入学手続きが減少したのだ。私学側も、今年1月の入試から入学者数確定までの生徒の流れの変化に驚いている。 就学支援金による新たな流れに伴い、私学の戦略は「推薦で入りたい魅力ある学校」を目指すことになる。今まで以上に地域に必要な学校、「マイブーム」として積極的に入る生徒を増やす―そんな学校づくりを見せる必要がある。これは公私共通のテーマである。受験生は、大学進学やスポーツの実績だけでなく、学びの場としての魅力を見定めてほしい。 受験者と保護者の動向 県立高受験者にも新たな流れがある。県立高の定員は昨年度より80人減の1万7150人。一方、応募者は1万5714人と、前年度比1341人減だった。ここから、応募者減の背景として、生徒637人減と私学推薦470人増に加え、もう一つの流れがあることが分かる。私学の県立併願合格者の単願への切り替えだ。 さらに、今年の県立入試で応募者と受験者の差が221人ある。これは昨年より34人多い。ここでも県立への応募後に私学の単願への切り替えがある。私学の多様なコース設定のなかで、当初は県立高併願の生徒・保護者が、2月末の県立高入試と3月の合格発表まで待たずに、特に県立高の志願先変更前後に、単願に切り替える生徒が増えている。 「私学への波」は続くか? 就学支援初年度は、確かに私学への波が生まれた。しかし波は必ず引く。本物の波はこれからだ。1回限りの波か本物かを見てほしい。受験生は、2026年度入試の新たな流れを参考にして、自分のこだわりを大切にして、志望高校を調べ、価値のある青春・学び・進路を見つけてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会 代表)