日曜日, 7月 6, 2025
ホームつくば防災ヘリ 7月から医師乗せ補完運航 つくば・土浦の3病院がチーム組織

防災ヘリ 7月から医師乗せ補完運航 つくば・土浦の3病院がチーム組織

【山崎実】県は今夏の7月から、ドクターヘリの補完的運航として、医師及び看護師(医療チーム)を乗せた防災ヘリの運航を開始する。

既に昨年10月からドクターヘリの搭乗訓練(OJT)、防災ヘリ搭乗訓練等を実施している。重複要請等でドクターヘリが出勤できない場合、防災ヘリが医療チームを乗せて救急現場に向かい、速やかに治療を行い、救命率向上を図るのが狙い。

補完運航に先立ち、県は2月、この運航に協力して医療チームを組織、提供する土浦協同病院(土浦市、酒井義法病院長)、筑波大附属病院(つくば市、原晃病院長)、筑波メディカルセンター病院(同、軸屋智昭病院長)の3病院と「防災ヘリによる補完的運航に関する協定」を締結した。

「防災ヘリによる補完的運航に関する協定」締結式の様子(同)

これにより、防災ヘリに出勤要請があれば、防災航空隊基地(つくば市上境)から医療チーム提供3病院のいずれかの病院ヘリポートに立ち寄り、チームを乗せ現場に急行する。

2010年7月、水戸済生会総合病院(水戸市)と、水戸医療センター(茨城町)の2病院を拠点として運航を開始した現行のドクターヘリは、出動要請が年々増加し、重複要請から対応できないケースが目立っている。

県医療政策課のドクターヘリ運航実績によると、2010年度から17年度までの総出動件数は7079件、年度別では10年度の362件から17年度には1147件と3倍以上に急増。さらに重複要請も20件から8倍弱の156件に増え、全体では588件に上る。

防災ヘリをドクターヘリの補完として運航させることについて大井川和彦知事は、第1回定例県議会で県議の質問に「重複要請で(ドクターヘリが)出動できない場合や、多数の傷病者が出た際などに、防災ヘリが協力病院から医師と看護師を搭乗させ、救急現場に向かう体制が確立する。1人でも多くの県民の命を救うため、運航体制の充実、医療提供体制の強化に全力で取り組みたい」と、その意義を強調した。

ドクターヘリは、県境を超え、栃木、福島両県と相互に要請・利用できる体制を構築しているほか、千葉県のドクターヘリとも共同利用している。防災ヘリの補完的運航が、ドクターヘリの重複要請の負担軽減につながることは間違いなく、自治体関係者などからも「医療過疎地域にとっては心強い朗報」と、早期運航に期待している。

茨城県ドクターヘリ運航実績
年度 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
総要請件数 362 724 1090 956 986 884 930 1147 7079
出動件数 289 581 852 703 672 628 678 728 5131
未出動件数のうち重複要請 20 37 76 53 94 57 95 156 588

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つくば市議会が6月定例会議で、県立竹園高校の募集定員を8学級から10学級に増やすことを知事に求める意見書を全会一致で可決したことを受けて(6月27日付)、黒田健祐市議会議長らは4日、県庁を訪れ、庄司一裕県教育庁学校教育部長に意見書を手渡した。これに対し県高校教育課高校教育改革推進室の片見徳太郎室長は「学級増が必要といえる状況ではない」と話し、竹園高の学級増に否定的な見解を示した。 片見室長は「県全体で5年後までに中学卒業者が2000人減少し、10年後までに5600人を超える減少が見込まれている。つくば市は2030年まで生徒数増が見込まれていることを承知しているが、県立高校改革プランを策定した際、子供たちにどのくらいの通学時間なら大丈夫かと聞いたところ、一番多かったのが1時間程度だった。つくば市周辺地域では、つくば市の増加分以上に生徒数が減少すると推計している(24年10月24日付)。今年度はつくばサイエンス高校に普通科を設置し大学進学を打ち出して、志をもった中学生にたくさん入ってきていただいたが、サイエンス高校と筑波高校併せてまだ117人の欠員がある。県としてはサイエンス高校と筑波高校の欠員解消を中心に取り組んでおり、学級増が必要といえる状況ではない)と話した。 「落としどころ見いだしたい」 4日は、つくば市議会の意見書提出と併せて、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」の片岡英明代表が、同じ竹園高校の2学級増を求める要望書を手渡した。ほかに、篠塚英司つくば市副市長、つくば市選出の鈴木将、山本美和、うののぶこ、ヘイズ・ジョン県議4人らが同席した。 黒田議長は「(2013年に県立並木高校が閉校し並木中等教育学校に移行した後の)10年ほど前から『ちょうどいい県立高校の受け皿がない』といった声が出て、ここ最近、切実な声が大きくなっている。つくば市の県立高校は(中学卒業者数で比較し)水戸市の3分の1しかないというデータもある。市内には小中学校がたくさん新設されているが高校はそのまま。教育環境の充実は重要なこと」だなどと話し、理解を求めた。 これに対し県の庄司部長は「貴重なご意見としてお受けさせていただきたい」などと答えるにとどまった。 意見交換の席で、考える会の片岡代表は「(中高一貫により)土浦一高が(高校入試の募集枠が)8学級から4学級になって1年目の2024年は、県立高校志願者の波が土浦二高と竹園高に行き、両校とも志願者が100人以上オーバーした。2年目の25年は牛久栄進高校の志願者が137人オーバーになった。この波は2026年にどこに向かうのか。受け皿はあるのか」と迫り「県立高校改革プランに沿って学級増をやってほしい。オールつくばの願いを受け止めてほしい」と要望した。 同席した県議からは「子供たちのために何ができるか、ぶつかり合いながらも落としどころを見いだしていきたい」(山本県議)などの意見が出された。(鈴木宏子)