【相澤冬樹】土浦市中央の亀城公園で飼われている2匹のニホンザルが厳寒の冬を過ごしている。オスのリョウタとメスのスミレ、つがいとは言い難い奇妙な同居生活を送っているサルで、ともに生年は不明、公園での飼育は2001年にスタートしているから18歳を超えて老境に入った。生気のないリョウタ、脱毛のひどいスミレ、見かねたひとりのお年寄りが日参して、その生活を観察中で「もう少し幸福な老後にならないものか」と手だてを探っている。
サルの観察のためだけに連日公園を訪れているのは同市大岩田の無職、坂入保男さん(73)。昨年秋、同公園を訪ねた際、サルの園舎前を通りがかり、消耗した風体にショックを受けた。「あまり幸せそうに見えない」印象が気になった。
「感情に任せて市役所に怒鳴り込んだところで何も解決しないと調べてみることにした」そうで、園舎は毎日清掃され、きちんとエサやりもされているのも分かった。園舎のサイズなど飼養状況は獣医師ら専門家から適正と診断され、脱毛に対する投薬処方も行われていた。
それでも毎日観察してみると、園舎の前で立ち止まる者はいない。公園の南側は遊具が置かれ就学前の幼児らを連れた親子の遊び場になっているが、誰も近寄ってこない。サル園舎の前身であるミニ動物園の設置目的だった「子供たちの教育の一環」の要素はどこにも見出せなかった。
周囲から隔離された空間のなか、2匹のサルの間にも冷たい時間が流れる。毛づくろいをしたり、身体を寄せ合って暖をとるようなシーンはまったく見られないのだ。「一種のコミュニケーション不全。僕が毎日見に来るようになって、心なしか人間に関心を向けるようになった気がする」(坂入さん)
同市公園街路課によれば、2匹がやってきたのは2001年のこと。石岡市の野猿公園で群れから排除されたオスのはぐれザルと、笠間市で農作物を荒らし回っていたメスザルが捕獲された。ニホンザルの習性から元の群れに戻すのは難しく殺処分もできないため、県動物指導センターの仲介で同公園が引き取ることになった。同公園では昭和30年代にミニ動物園を設置、サルやタヌキ、クジャクなどの鳥類を飼っていた施設があったためだ。
2001年当時サルは飼われていなかったが、空いていた園舎を間仕切って2匹を収容した。以来、同センターの指導や獣医師、動物愛護団体等のアドバイスを受けながら健康・飼育管理をしてきた。県の飼養許可を受ける「特定動物」扱いである。
しかし、これ以降、2匹のサルの扱いをめぐっては再三クレームが市に寄せられた。動物虐待ではないか、施設を改修すべきだなどの声。市はその都度、適正に管理している旨返答をしてきたが、2匹の高齢化で、このまま収束に向かう考えを否定しない。「健康面のチェックはしつつも、万一死亡ともなれば致し方ない。次のサルを受け入れることはない」(市公園街路課)という。
坂入さんは今のところ、アクションは起こしていない。自身のFacebookで、サルたちの「幸福論」を語っている程度。「おサルさん友の会」の名称で賛同者を集め、50人程度の規模になったが、陳情や請願までは考えていない。先進的な取り組みをしている動物園の事例などを参考に、2匹に合った飼い方の研究をしているところ。「1年間様子を見て、それでも生きているようなら、何か具体的な提案をしていきたいと思う」と語っている。