月曜日, 7月 7, 2025
ホームつくば【シルバー団地の挑戦】6 自治会がごみ出し支援 利用広がらず 心理的抵抗感課題

【シルバー団地の挑戦】6 自治会がごみ出し支援 利用広がらず 心理的抵抗感課題

【橋立多美】つくば市茎崎地区の森の里自治会(倉本茂樹会長)は、ごみ出しなどの生活支援をする「高齢者支援隊」を結成して弱者支援を行っている。相互扶助の先駆的な取り組みだが、思ったほど利用世帯が集まらない。加齢で支援隊員を辞退する例も後を絶たず、さらに高齢化が進んで利用世帯が増えたときの対応が懸念されている。

高齢などで自力でごみを出せなくなった「ごみ出し困難世帯」は、朝日新聞の調査によると全国で少なくとも5万世帯に上るといわれる。中でも独り住まいの高齢者はごみ屋敷になる可能性があり、内閣府はごみ屋敷の予備軍は1万人以上と予想する。

結成6年 利用世帯もボランティアも減少

40年前に開発された森の里団地は世帯主の多くが団塊世代で、1300世帯中2割が高齢の1人暮らし。このうちの3割超を75歳以上の後期高齢者が占める(2016年10月1日現在)。

同自治会は高齢化に伴う弱者対策として燃やせるごみと粗大ごみのごみ出し、電球など簡易な器具の交換をする「高齢者支援隊」を12年に結成した。隊員は住民からボランティアを募った。高齢者は利用券1枚100円でごみ出しを依頼できる。支援隊員には、森の里自治会有償ボランティア規則に基づいて謝金(時給700円)が支払われる。利用券収入との差額は自治会が補てんしている。

開始からの利用は6世帯と広がりに欠け、現在は歩行困難な80代の独り住まい1世帯のみだ。支援隊員の担当は斉藤一夫さん(74)。週1回、燃やせるごみを玄関から集積所まで運ぶ。毎回利用者に署名捺印してもらう決まりで「何か変わったことはないか、安否確認に役立っている」と斉藤さんは話す。

ごみ出し支援を受けている人がいる一方で、老々介護の90代の男性は重いごみ袋を持つことが大変で、台車に載せて集積所まで運んでいる。近隣住民が手伝いを申し出るが「おむつが入っているごみ袋を人に頼むのを妻が嫌がる」。ある女性は「半透明のごみ袋はスナック菓子の袋や封筒などが透けて見える。暮らし向きが分かるし遠慮もあって団地住民に頼みたくない」と打ち明けた。ごみを見られることへの抵抗感が相互扶助システムの広がりを阻んでいるようだ。

自治会長の倉本さんは児童の登下校を見守る防犯パトロール隊の団長を兼務し、児童の安全を見守りつつごみ集積所を丹念に見て回る。ごみ出しに台車を使うなど自力でのごみ出しが困難な高齢者に支援隊の利用を呼びかけてきたが、「動けるうちは自分で」と返されることが多いという。一方で、加齢による体調不良などで支援隊員4人が活動できなくなり、現在は前出の斉藤さん1人になった。

来年4月「プラ容器分別が心配」

倉本さんは「今は(ごみ出しを)頑張る人が多くて支援隊員1人で足りているが、もっと高齢化が進むとみんなが支援を受けたくなる。その時、支援する側とされる側のバランスはとれるか」と眉を曇らせる。

民生委員でごみ出し支援の窓口を担当する浅田紀子さん(64)の心配は、来年4月から同市で始まるプラスチック製容器包装の分別収集だ。「資源の有効活用という趣旨は分かるが、認知症でなくても高齢者には細かい分別収集は大変だと思う。できない人には緩やかな収集方法を考えてほしい」と話した。

つくば市におけるごみ管理の課題を調査する国立環境研究所の鈴木薫研究員

国立環境研究所(つくば市小野川)資源循環・廃棄物研究センター循環型社会システム研究室の鈴木薫研究員は、超高齢化社会におけるごみ集積所管理のサポート手法を解明することを目的に、同市内全域の自治会(区会)にごみ集積所の課題についてヒアリング調査を行っている。「地縁血縁でごみ出しを助け合う旧集落と比較すると、組織ぐるみで支援する森の里は取り残される人が少ない。利用を左右する心理的要因を考慮する必要はあるが、『ごみ出し支援はこれから考える』という区会もあり、森の里の支援システムに学ぶことは多い」という。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

背水の陣で臨む 今年の土浦の花火《吾妻カガミ》208

【コラム・坂本栄】昨年の土浦の花火(正式名は土浦全国花火競技大会)は、予定日(11月2日)が降雨予報で中止になり、代替日(同3日と9日)に延期しようとしたところ、周辺道路や会場周辺の警備体制が両日とも確保できず、全日程で中止に追い込まれた。実行委員会(委員長・安藤真理子土浦市長)の運営体制に花火ファンや関係業者から批判が出たことから、土浦市は今年の大会(11月1日、代替日8日)は背水の陣で臨む。 昨年大会では3つのミス 私はコラム198「…欠けていたリスク管理」(2024年12月16日掲載)で昨年の大会運営上の問題点を三つ指摘した。「曖昧だった延期日の警備手配」「無駄だった花火興業中止保険」「実行委に呼ばれなかった議長」の3点だ。詳しくは上の青字部をクリックしてもらうとして、以下のように要約できる。 ▼警備体制の不備:予定日2日の警備体制は警備会社と契約して500人近く確保してあったものの、代替日の警備については契約しておらず、延期になった場合は「相互に協議する」と曖昧になっていた。警備会社は人手不足で市の確保要請に応えることができず、市としてもプロの警備抜きでの大会は危険過ぎると判断、代替日への延期を見送った。 ▼中止保険が不発:この種のイベントには興業中止保険をかけ、悪天候などで中止に追い込まれた場合、その準備などに使った経費を損害保険会社に払ってもらうのが常識。土浦市もこの保険に入っていたが、契約には「延期日有り」条項が入っていた。ところが、市は代替日に延期せず全日程を中止にしてしまったため、イベント保険を受け取れず、市は多額の追加出費を迫られた。 ▼議長抜きの決定:大会中止(11月1日午前発表)を決めた実行委(10月31日夕方開催)に、実行委メンバーの市議会議長が呼ばれなかった。混乱の中、事務局が議長に連絡することを忘れたからだ。決定プロセスから外された議会はこれに怒り、定例議会で市側のミスを追求した。 今年は失敗が許されない 今年の土浦の花火は第94回になる。同時に市は「土浦の花火100周年記念」とも謳(うた)っており、今年の大会にはかなり力が入っている。昭和14年(1925)の第1回から数えると確かに1世紀。先の大戦や市街地洪水などで6回中止されており、通算ではその分マイナスになる。100周年と大見えを切った手前、土浦市としては昨年のような失敗は許されない。そこで、土浦市・花火のまち推進室長の菊田さんに準備状況を聞いた。 警備体制は、予定日(1日)だけでなく代替日(8日)についても警備会社と契約を結び、代替日の要員も確保する。このため、昨年は1日分だった警備会社に払う経費(約1800万円)が今年は2倍になる。代替日を従来の2日でなく1日に減らしたのは、警備費用を抑えるためだ。一方、記事「順延は1日のみ…」(5月26日掲載)にあるように、有料観覧席の値上げで収入増も図る。 また、予定日に大会を実施でき、代替日の警備が不要になった場合、契約額の一定割合を減額するよう警備会社と交渉している。警備会社は代替日用に確保した要員を別の仕事に回せることを理由に挙げ、市としては割引率の最大化を図る。経費節約のために代替日の割引率をいかに大きくするか。予定日の契約額も含め、警備会社との交渉は面白くなりそうだ。 花火興業中止保険については、「延期日有り」を踏まえ、予定日中止の場合は代替日にトライする。今回大会の予算書を見ると、役務費(保険料、ゴミ処理費など)が昨年大会の2倍以上計上されており、抜かりはないようだ。また、大会中止などの重要事項は、市長+副市長+市議会議長+商工会議所会頭(観光協会会長)の4人に必ず諮ると運営マニュアルに明記した。議会対策は万全らしい。(経済ジャーナリスト)

土浦湖北、初戦を突破【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は2日目の6日、ひたちなか市民球場で1回戦が行われ、土浦湖北は磯原郷英と対戦、3ー0で勝ち初戦突破を果たした。  6日 1回戦 第3試合 ひたちなか市民球場磯原郷英 000000000 0土浦湖北 00200001× 3 土浦湖北は先発したエース矢野陽仁が持てる力を発揮し、磯原郷英打線を完璧に抑え、3回までランナーを許さなかった。打線は3回裏1死後、2つの四球とヒットで1死満塁のチャンスに、高橋颯太郎が変化球を上手く転がしセーフティースクイズを決め先制。続く奥畑優梧がライトへの犠牲フライを放ち2点をリードした。 矢野は、5回に初ヒットを許すも、カーブ、カットボール、フォークを巧みに使い分け要所を抑える。8回には1死1、2塁とこの試合初めてのピンチを迎えるが、後続をきっちり抑えた。 その裏、8回2死2塁で斎藤大樹がタイムリーツーベースを放ち1点追加。矢野は「最初から完投するつもりでいた」と9回もマウンドに上がり、2死2塁でセンター前ヒットを許すも、センター高橋の見事な返球で2塁走者をホームで刺し試合終了。2年ぶりに初戦を突破した。  土浦湖北の土佐一成監督は「矢野は3年間で1番出来が良かった。最後まで投げられたのが勝因。守備も含めて、ランナーを出しても粘り強く守ってくれた」とエース矢野をたたえた。 柿沼颯馬主将は「昨年はエラーもあり初戦敗退して悔しい思いをしたので初戦に勝てて良かった。次の対戦は関東大会に出場した藤代。力は向こうの方が上だが初戦を勝った勢いのまま挑む」と力を込めた。 9回を1人で投げ抜いた矢野は141球を投げ、被安打5、10奪三振を奪った。矢野は「調子が良く、追い込んでからはスライダーとフォークで三振を取りに行きコースを意識して投げた。3年生最後の大会で勝つことが出来てうれしい。次の藤代戦も自分の持てる力を発揮して勝ちたい」と意気込みを語った。 スタンドでは土浦湖北のチアリーダーと応援団50人、OBらが熱い声援を送った。(高橋浩一)

土浦一、初戦突破できず【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は2日目の6日、J:COMスタジアム土浦の第1試合で土浦一が茨城と対戦。土浦一は2-6で敗れ、初戦を突破できなかった。 6日第1試合、J:COMスタジアム土浦茨 城 200 110 020 6土浦一 001 001 000 2 土浦一は9四死球4失策とミスが目立ち、ミスが失点に直結した。打線は相手投手の130キロを超える直球とスライダーに対応できなかった。荒木理行監督は「相手のミスのない守備と投手力に、チャンスをつくらせてもらえなかった。守備の強化が課題。この経験を次に生かしたい」と唇をかんだ。 土浦一の先発は2年生の松橋隆太郎。土浦一付属中の出身で、去年まで中学生を指導していた荒木監督とは付き合いが長く、厚い信頼関係で結ばれている。「今日は緊張して汗もかいていたので、長いイニングは難しいかもと思っていた」と荒木監督。「初回はコントロールが定まらず、思ったところへ投げられなかった。割り切ってど真ん中へ投げられればよかったが、真っ向勝負にひるんでしまった」と松橋。初回、3四死球で1死満塁から、適時打で2点を先制された。 3回裏には土浦一が反撃。8番・日下部勇の右越え二塁打と9番・星田侑希の送りバントで1死三塁とし、1番・清遠健二の遊ゴロで1点を返した。「ショートとセカンドが下がっていたので、低く強い打球で間を抜き、確実に1点を返そうと考えた。打ったのは真ん中低めのスライダー。ヒットで出られれば良かったが最低限の結果を出せた」と清遠。 しかし4回表は茨城が足でかき回して追加点。1死二塁の場面、左前打からのバックホームで走者はいったん三塁にストップするが、打者走者が二塁を狙ったため捕手が二塁に送球、この間に三走が再スタートを切り、本塁を陥れた。茨城はこの後二死満塁からも、二走が飛び出して牽制を誘うが、松橋は落ち着いて対処し、ホームに送球して三走のホームスチールを封じた。 6回裏、土浦一は相手投手の乱れに乗じて2死一・二塁とし、5番・増田勇翔の適時二塁打で1点を追加。増田は前の打席でストレートを打ちあぐねたので、この打席ではスライダーに狙いを切り替えたという。「真ん中のスライダーを迷いなく振り抜いた。左翼ライン際に落ちたので一気に二塁へ向かった」との振り返り。 その後土浦一は、7回と9回に走者を出すがどちらもダブルプレーでチャンスを潰し、得点を伸ばせず。8回表には3人目の白根大輝が捕まり、茨城に2点を加えられ大勢が決した。「最後まであきらめない気持ちはあったが相手が一枚上だった。スタンドから支えてくれた1・2年が胸を張れるようなプレーがしたかった」と清遠。増田は「この大会を目標に全員が練習の成果を出そうと取り組んできた。最後までこの仲間でやれて良かった」と振り返った。(池田充雄)

「戸籍」作り14年間調査 シジュウカラの暮らし知る企画展 筑波実験植物園

国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保、遊川友久園長)で5日から、企画展「シジュウカラの社会ー鳥の眼で見る植物園」が始まった。同園内のシジュウカラの暮らしをつぶさに知ることができる展示で、餌となる昆虫や天敵の蛇、タカなど、園内に生息する多様な生き物との関係を通じて、同植物園を新たな視点で見るきっかけとなる展示でもある。園内で14年間、調査が続けられてきた。企画を担当する同館の濱尾章二名誉研究員は「2012年から続けてきた研究の成果を見ていただきたい」と思いを込める。 ひなから生涯を追う シジュウカラは体長14センチ、体重14グラムほどの大きさ。手のひらに乗るくらいの小型の鳥で、市街地、住宅地など全国各地で見ることができる。近年の研究では、異なる意味を持つ鳴き声を⽂法に従って組み合わせ、⽂章をつくりコミュニケーションをとっていることが知られている。 同園では濱尾さんが中心となり、2012年から園内に30個の巣箱を設置しシジュウカラの観察をスタートさせた。現在は36個の巣箱を約50メートル間隔で設置し、つがいから生まれたひなを1羽ずつ把握しながら「戸籍」をつくり、それぞれの成長の過程と共に、次の世代を生み出す様子を観察し続けている。 死別により伴侶変える シジュウカラは、オスとメスがつがいとなり子育てをする「一夫一妻」。他の鳥類でも見られる繁殖形態で、オスとメスが協力して巣を作り、抱卵、餌やり、ひなの世話などをする。主に3月から5月にかけて繁殖期を迎え、中には年に2回、繁殖するつがいもいる。一度の産卵で8から10個の卵を産む。ひなは40日ほどで巣立っていく。 これまでの研究でわかったのは、「一夫一妻」のシジュウカラが伴侶を変えることがあることだと濱尾さんはいう。生まれてから生育の過程で毎年半数の個体が、天敵の蛇やタカに襲われるなどして死んでいく中で、死別によって相手を変えていることがわかったのだと話す。これまで観測してきた中で最も長く生きた個体は7年だった。大半が、卵や孵化して間もなく、巣の中で天敵に食われるなどして1歳未満で死んでしまう。近年は、増え続けるアライグマも天敵の一つに加わった。 園内に二つの「名家」 こうした過酷な環境を生き抜く中で、4代にわたり、95羽を巣立たせた2つの家族がいる。約8年前から継続して観察している植物園が誇る「名家」だ。2024年には両家の間でつがいが生まれ、親族関係になったことが確認されている。 濱尾さんは、「シジュウカラは身近なところにたくさんいて、非常に調べやすいのが特徴。特に巣箱を使うと、生態を細かく観察できる。見るほどに、つがい関係や親子関係などを追跡できるのも魅力」と話す。また「今回は、植物園で開催する鳥の展示。鳥が好きな方だけでなく、植物に関心がある方、研究に関心がある方などにも見てもらえるような展示にした。展示をきっかけに、お子さんにも研究の面白さを知ってもらいたい」と思いを込める。 教育棟と研修展示館1階、2階の3会場で企画展が開かれている。教育棟では植物園での14年間にわたるシジュウカラ研究の成果を記したパネル展、研修展示館1階ではパネルや標本、実際に生きている昆虫の展示などを通じてシジュウカラと関わる植物園内で見られる動植物の生態について展示している。同2階では、中高生による鳥研究ポスターや、研究者の研究方法などが紹介されている。(柴田大輔) ◆企画展「シジュウカラの社会―鳥の眼で見る植物園」は5日(土)から13日(日)、つくば市天久保4-1-1、国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時から午後4時30分(入園は午後4時まで)。入場料は一般320円、高校生以下と65歳以上、障害者などは無料。会期中、7日(月)と13日(日)午後2時からは、濱尾さんによる鳥類学研究にまつわる講座が開かれる。研修展示館2階の「観察、研究への誘い」は8月31日まで開催される。詳細はイベント公式ホームページへ。