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障害者権利条約
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《電動車いすから見た景色》8 インクルーシブ教育って何だろう
2020年7月17日
【コラム・川端舞】日本が2014年に批准した国連の障害者権利条約では、国は障害児が一般的な教育制度から排除されないようにするとされている。日本には障害児が通う特別支援学校があるが、障害者権利条約では特別支援学校は一般的な教育制度の中には含まれない。障害のある子どもとない子どもが同じ場所で学ぶことを基本としている。 障害者権利条約が目指している教育を「インクルーシブ教育」と呼ぶ。私は障害を持ちながら、小学校から高校まで普通学校に通っていたが、インクルーシブ教育を受けたとは思っていない。特に小中学校の頃は、学校で周りに迷惑をかけないために、友達に手伝ってもらってはいけないと言われていたし、言語障害のある私の言葉を聞いてくれない先生もいた。誰かに直接言われたことは無いが、学校の雰囲気から「私は障害があるから、勉強だけはできないと普通学校に通えなくなるんだ」と思っていた。 障害者権利条約が目指すインクルーシブ教育は、障害の程度やどのくらい能力があるかを、障害児が普通学校に通える条件にしてはならないとされる。「授業についていけるなら」「一人でトイレに行けるなら」など、何かができるかどうかで、障害児が普通学校に通えるかどうかが変わる教育は、インクルーシブ教育に対して統合教育と呼ばれる。 一定の条件をクリアできないと、障害児は普通学校に通えないという考えが学校現場に広まってしまうと、障害のない子どもたちも、「周りと違うのは悪いこと」「できないことを手伝ってもらうのは悪いこと」というような息苦しい考え方になってしまうだろう。 すべての子どもが尊重される教育 反対に、障害のある子どもとない子どもが同じ教室で学び、できないことは友達同士で助け合う環境だったら、障害のない子どもも「できないことは周りに助けを求めていいのだ」と思えるようになるだろう。 そのような環境は障害のある子どもだけでなく、障害のない子どもも安心して必要なサポートを受けられ、自分の意見を表現でき、主体的に学校生活を送ることができる。インクルーシブ教育は、障害のある子どものためだけでなく、すべての子どもが互いに尊重し、価値を認め合うことが目的とされなくてはならないと、国連も述べている。 国連の考えでは、単に障害のある子どもを普通学校に通わせるだけで、現状の普通学校で行われているカリキュラムや指導方法を障害のある子どもでも参加しやすいように変更しなければインクルーシブ教育とはならない。学校のカリキュラムなどを変更するには長い時間がかかるだろう。しかし、普通学校が障害のある子どもにとって過ごしやすい環境になったら、障害のない子どもにとっても過ごしやすい場になるだろう。 子どもたちに関わる様々な立場の人が知恵を出し合って、障害の有無にかかわらず、全ての子どもが安心して過ごせる学校を少しずつつくっていければと思う。(つくば自立生活センターほにゃらメンバー)
障害当事者の全国集会が中止 つくばで国連審査課題を検討予定も
2020年5月6日
【川端舞】今月30、31日につくば国際会議場で開催予定だったDPI(障害者インターナショナル)日本会議の全国集会が、新型コロナの影響で中止になった。 DPIは、障害のある人の権利の保護と社会参加の機会平等を目的に活動をしている国際 NGO(非政府組織)で130カ国以上が加盟する。 同日本会議は日本の国内組織で、現在、全国で94の障害者団体が加盟している。毎年、各都道府県の加盟団体が持ち回りで全国集会を開催し、各地域特有の社会問題やその年に話題になっているテーマについて議論している。 2020年はターニングポイント 日本は2014年に障害者権利条約を批准し、16年に政府報告が国連に提出された。条約では、締約国は障害者の人権を保障するため、法律や規則などを修正するとされている。条約が適切に履行されているか、締約国は4年に一度、条約の監視機関である障害者権利委員会の審査を受けることになっていて、今年は日本が審査を受ける年だ。 そのため、今年の全国集会in茨城のテーマを「国連障害者権利条約初回審査へ―差別をなくし、みんなで生きていくべ」と題し、今年の審査のポイントや今後の日本の課題を検討する予定だった。 また、今年4月に県障害者権利条例「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例」の施行から5周年を迎えたため、条例に対する県内の取り組みの報告や、条例5周年を祝うパレードも行われる予定だった。 さらに、オリンピック・パラリンピックに向けての国内のバリアフリーの取り組みや、今年3月に被告に死刑判決が下された相模原障害者殺傷事件についても取り上げる計画もあった。様々な面からターニングポイントになるはずだった2020年に全国集会が開催できなくなったことに、県内の実行委員会のメンバーは肩を落としている。 今後の予定はまだ決まっていないが、再来年に改めて茨城県開催にできないか、DPI日本会議など関係団体で検討している。
「まちがいさがし」で子供たちにキャンペーン 県障害者権利条例5周年
2020年3月23日
【山口和紀】県障害者権利条例が4月1日、施行から5年を迎える。これを祝し、「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」(事務局・自立生活センターいろは)が同ホームぺージでキャンペーンを行っている。バリアフリーをテーマにした「まちがいさがし」で、正解した小学生に景品を贈呈する。 「まちがいさがし」には様々な障壁が人々を暮らしにくくしている状況が描かれる。例えば、タクシーに乗るためのスロープがあるかどうかだ。少しの段差がなくなるだけで、車椅子を使っている人などが多くの人が使いやすくなる。 少しの段差をなくしたり分かりやすく説明をしたりするなど、誰もが暮らしやすいように環境を変えることは「合理的配慮」と呼ばれる。キャンペーンの狙いは、社会を少し変えるだけで障害がある人や高齢者、ベビーカーを押す人など多くの人が暮らしやすくなることを子どもたちに知ってもらうことだ。 共に歩み幸せに暮らすために 県障害者権利条例(障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための県づくり条例) は2015年に施行された。障害者に対する差別的な取り扱いをなくすことを目的とした条例だ。つくば市にある障害者支援団体「自立生活センターほにゃら」と水戸市の「自立生活センターいろは」の2団体が2011年から条例をつくる活動を始め、12年に「茨城に障害をもつ人の権利条約をつくる会」が発足した。条例は議員提案という形で県議会に提案され、施行された。 条例に基づき、県は障害者差別相談室を設置。常駐する専門の相談員に「差別的取扱い」や「合理的配慮」について相談できる体制が整った。過去には視覚障害者から「工場見学に行った際に盲導犬の同伴を拒否された」という相談などがあったという。 現在つくば市では、店舗や地域団体などが、点字メニューを作成したり、筆談ボードなどの物品を購入したり、スロープを付けて段差を解消するなど工事施工に補助金を出す制度を設けている。水戸、取手、ひたちなか市も同様の制度がある。 ◆キャンペーンは「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」のホームページから、はがきで応募する。締め切りは4月13日。対象は小学生。正解者の中から抽選で10人にオリジナルクオカードをプレゼントする。 ➡県障害者権利条約の関連記事はこちら
《電動車いすから見た景色》2 障害者との対話を通して共生社会を
2020年1月29日
【コラム・川端舞】皆さんは、障害とは何なのか考えたことはありますか。「身体が不自由なこと」「何かができないこと」など、様々な答えがあると思います。障害とは何なのかを、実際に障害者と対話しながら考える「障害平等研修」(DET)が近年全国で広がっています。地方自治体の職員を対象に開催されたり、一般企業や小中学校でも開催されたりしています。 今まで、「障害」という問題の原因は障害者自身にあり、障害者が努力して解決するべきだという考え方が一般的でした。しかし、2006年に国連で障害者権利条約が採択され、「障害」は障害者個人ではなく社会の側にあり、「障害」という問題を解決するためには社会の在り方を変える必要があるという考え方が広がりました。 例えば、車いすの人が階段のあるお店に入れないのは、その人が歩けないからではなく、そのお店にスロープやエレベーターがないからだとする考え方です。 障害平等研修の特徴は、障害者自身が進行役になり、障害者との対話やグループワークを通して、新しい「障害」の考え方を参加者に持ってもらい、どうすれば障害者が暮らしやすい社会になるのかを考えてもらう研修です。スロープがあるお店は、車いすの障害者が入りやすいだけではなく、高齢者やベビーカーを押した親子にとっても入りやすいお店になります。 「DET(障害平等研修)いばらき」 このように、障害者が暮らしやすい社会は、高齢者や外国人、子ども連れの人など、多様な人にとって暮らしやすい社会になるはずです。障害平等研修では、「障害」を考えることを通して、全ての人にとって暮らしやすい社会の実現を目指しています。 NPO法人「障害平等研修フォーラム」がこの研修の進行役になれる障害者を養成しており、その養成講座を修了した障害者が茨城県内で5人になったことをきっかけに、2019年に「DETいばらき」が立ち上げられました。 「DETいばらき」は、茨城県内に障害平等研修を普及させることを通して、全ての人にとって暮らしやすい茨城をつくることを目標にしている団体で、現在、私を含め、研修の進行役を務める障害者4人と、団体の趣旨に共感するサポーター2人が活動しています。 昨年は、県内市町村の障害福祉課の職員を対象にした研修を県庁でやらせていただいたり、土浦市内の中学校で1年生を対象に研修をやらせていただいたりしました。これから活動の幅を広げていきたいと思っています。(つくば自立生活センターほにゃらメンバー) ➡川端舞さんの過去のコラムはこちら
「わたしが障害者じゃなくなる日」 つくばの自立生活センターが読書感想文コンクール
2019年7月7日
【鈴木宏子】夏休みを前に、つくば市の障害者自立支援団体「つくば自立生活センターほにゃら」(同市天久保、斉藤新吾代表)が、小学校3~6年生を対象に独自の読書感想文コンクールを開催する。課題図書は、NHK・Eテレ「ハートネットTV」などに出演している重度障害者、海老原宏美さんの「わたしが障害者じゃなくなる日―難病で動けなくてもふつうに生きられる世の中のつくりかた」(旬報社、税抜き1500円)。 著者の海老原さんは小中高校、大学と車いすで普通学校に通い、自分から「手伝ってほしい」と周りに話し掛けることで周りを変えていった。課題図書は、海老原さんの子どもの頃からの体験をつづり、子どものころ母親から言われた五つの教え、車いすを押してくれたクラスメートとの思い出、韓国で経験した野宿の旅などが記されている。海老原さんと子どもたちとの対話が各章にあり、海老原さんの体験を通して、障害とは何か、平等とはどういうことか、思いやりと人権との違い、人間の価値とは何かなどを、子どもたちと一緒に考える内容となっている。 コンクールは、ほにゃらと水戸市の「自立生活センターいろは」が共同で開催する。開催を前に両団体は、つくば、水戸、ひたちなか、那珂、龍ケ崎5市の教育委員会に同書を計100冊寄贈している。5市の全小学校の図書室などに置かれる予定だ。100冊の購入費などはクラウドファンディングなどを通して今後集めるという。 著書の海老原さんは斉藤さんの友人でもある。重度障害者の斉藤さんはつくばで、海老原さんは東京・東大和市でそれぞれ障害者の自立を支援する当事者団体を設立した。つくばのほにゃらが2016年に15周年を迎えたときは海老原さんが祝いに駆けつけ講演をしてくれた。 斉藤さん(44)は「障害者権利条約が批准され県障害者権利条例が施行された中、『障害』の定義が変わってきたことを、本を通して子供たちに知ってもらいたい」と話し、「著者の海老原さんは、障害をもっていても、人に手伝ってもらったり工夫しながら生活している。のびのびと生きることが難しくなっている状況の中で、生きるヒントとなり、子どもたちに自分らしく生きていていいんだよということが伝えられたら」と語る。 ◆応募締め切りは9月10日。読書感想文の字数は3・4年生が1200字以内、5・6年生は1600字以内。送り先は〒305-0005 つくば市天久保2-12-7 つくば自立生活センターほにゃら。審査委員は、「こんな夜更けにバナナかよ」の作者、渡辺一史さんなど4人務める。問い合わせは電話029-859-0590(ほにゃら)。
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