火曜日, 5月 30, 2023
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及川ひろみ

手と耳と鼻で楽しむ里山《宍塚の里山》96

【コラム・北村まさみ】風もなく、紅葉が美しい12月10日土曜日。目の不自由な方を含む『馬場村塾』の方たち7人が、宍塚に来てくれました。会員でもあり、2017年6月に実施した月例観察会「手と耳と鼻で楽しむ観察会」の講師、全盲の大川和彦さんが塾長を務める『馬場村塾』は、視覚障害関連の団体や施設が集まる高田馬場で、松下村塾のような、様々な人や情報との出会いの場、学び合う場として開かれています。 今回は里山歩き企画として訪れました。私たちの会からは6人が参加し、里山の案内と同行ガイドをしました。 大通りから宍塚の里山に入ると、コジュケイなど鳥の声がよく聞こえます。ふれあい農園のガッチャンポンプの井戸体験、脱穀作業で表に出ていた足踏み脱穀機と唐箕(とうみ)を、安全を確保しながら触っていただきました。クルミの木のごつごつした幹と枝先のかわいい冬芽、ふわふわのガガイモの種の綿毛、朽木に生える固いキノコ、むっちりしたカブトムシの幼虫など、冬の里山ならではのものを手で触れて観察。 また、草むらに埋もれて、目では見つけにくいクルミの実を足裏の感覚で探したり、モグラがごそっと持ち上げたモグラ塚、落ち葉のじゅうたんが敷かれた観察路など、足の感覚もフル稼働します。モグラの簡易はく製も用意し、ビロードのような毛並みとスコップのような手足も観察しました。 カモたちの鳴き声でにぎやかな大池を通り、こんもりしたゲンベー山を登り、中学生が竹の皆伐作業を進めた子パンダの森では、人が手入れをすることで保たれてきた里山を、一つのまとまり、生態系として保全することを目指していることなど、お伝えしました。  感覚をフルに使って感じる

百年亭再生プロジェクトが進行中 《宍塚の里山》95

【コラム・佐々木哲美】宍塚の自然と歴史の会では、2019年7月に里山に隣接した築100年以上の住宅を購入し、「百年亭」と名付け、修復作業に取り組んでいます。その資金集めに、クラウドファンディング(CF)を使いました。期間は9月5日~10月21日、目標額は300万円としました。 建物の完成には800万円程度が必要ですが、CFに並行して、助成金申込みや様々な手法で、宍塚の里山の重要性を伝えながら資金を集めます。 CFの結果、223名の方から317万5000円の寄付をいただき、目標を達成することができました。どんな方から寄付があったかまとめたところ、会員から27%、非会員から73%と、非会員の寄付が多くを占めました。居住地別では、つくば市32%、土浦市15%など、県内で62%を占めました。 県外では東京都が14%と多く、関東全体では28%を占め、関東以外は9%でした。宍塚から離れると人数は減少しますが、県外からの寄付者が全体の37%にもなり、宍塚の里山保全への支持が全国に広がったことを示しています。 寄付額は1万円が119名(59%)と最も多く、次いで5000円が65名(29%)と続きます。10万円という高額寄付者が4名もいました。今回の成功のカギは、もちろん、寄付していただいた方、知人・友人に働きかけていただいた方、プロジェクトメンバーの努力ですが、ホームページ(HP)の役割も少なくありません。仲介業者READYFORの方々の親身なサポートもありました。 百年亭の創建年と大工名が判明

変わりゆく里山の生態系 《宍塚の里山》94

【コラム・福井正人】最近の宍塚大池では、数年に一度、雨が少なく異常な渇水が起きた次の年に、アメリカザリガニが大繁殖し、水面を覆っていたハスやヒシがなくなってしまう現象が起きています。数年で回復してくるのですが、再び大渇水が起こると、また次の年には、アメリカザリガニが大繁殖するというパターンを繰り返しています。 雑木林のほうでは、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が媒介する菌によって、コナラなどの樹木が枯死してしまう問題(ナラ枯れ)が起きています。里山の生態系は、人々の生活様式と密接に結びついています。里山の樹木は建物の資材や燃料として、落ち葉はたい肥として、ため池の水は農業用水として利用されてきました。人々はこれらの資源が枯渇しないように気を付けながら管理してきました。 このような人々の働きかけが、里山のなかに様々なタイプの環境を生み出し、里山の多様な生態系を育んでいました。 ところが、戦後のエネルギー転換、機械化などにより、人々の生活は大きく変わりました。もちろん、それ自体は人々を重労働から解放することになったので良いことなのですが、里山の資源は利用されなくなってしまいました。ため池の水を引かなくても、河川や井戸からポンプでくみ上げて、田んぼに水を入れられるようになりました。 また、電気やガスの普及により薪(まき)は使われなくなり、建材としての樹木も外国からの輸入木材に代わっていきました。農業用水としての価値が低くなったため池では、池の水を抜いてヘドロを抜くなどの管理が行われなくなりました。 そのような状態で異常な渇水が起こると、毎年管理しているときには起こらなかった急激な環境変化が生じ、水の中の生き物のバランスが崩れ、アメリカザリガニの大繁殖のようなことが起こります。雑木林で起こっているナラ枯れも、被害を受けるのは主に老木で、薪炭林の利用がなくなり、老木になるまで伐採されず放置されたことが、被害の急拡大につながっていると思われます。

古民家再生とクラウドファンディング 《宍塚の里山》93

【コラム・佐々木哲美】認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」は、築100年ほど経過した古民家を修復する「百年亭再生プロジェクト」に取り組んでいます。その資金集めのためにクラウドファンディングが始まっています。期間は9月5日~10月21日、第1期修復工事の目標額は300万円です。 9月21日現在、170万5000円(目標の56パーセント)と、多くの方々から寄付をいただいています。その後、第2期工事=約200万円、第3期工事=約300万円、合計約800万円の費用が掛かります。目標達成への道のりは長いですが、達成を目指して最後まで頑張っていきたいと思います! スタッフ全員がクラウドファンディングに取り組むのは初めての経験です。将来、里山保全のための資金集めなども視野に入れ、この際、しっかりこの方法を学ぶことも意図しています。 クラウドファンディングは、インターネットの普及に伴い、米国で2000年代に始まり、日本でも2011年からサービスが提供され、急速に拡大しています。この資金調達の形式には、「寄付型」「購入型」「融資型」「株式型」「ファンド型」「ふるさと納税型」のタイプがあります。 選択できる購入型は、「All-or-Nothing(オール・オア・ナッシング)型」「All-In(オールイン)型」の2種類があります。「All-or-Nothing型」は、募集期間内に目標金額を達成した場合のみ、プロジェクトが成立する方式です。取り組みへの覚悟を示すために、こちらも考えました。しかし、今回のプロジェクトでは、資金が集まらないからと断念するわけにはいかないと、「All-In型」を選択しました。 多くの応援メッセージをもらいました

「百年亭再生プロジェクト」に着手 《宍塚の里山》92

【コラム・佐々木哲美】私たち「宍塚の自然と歴史の会」は、関東平野有数の規模と質を誇る「宍塚の里山」の保全、ここを活用した環境教育・自然調査などを、多様な主体に参加してもらい実施してきました。具体的には、観察路の整備、小川・林・湿地の保全、自然農田んぼの体験、里山内にある池の外来生物駆除などです。 ところが、これらの活動に参加する子供、母親、女子学生の着替える場所やトイレの確保が切実な問題でした。このため、3年前、里山に隣接した築百年以上の住宅を購入し、手を加えて、そういった場所として使うことにしました。 傷みが激しいですが、古民家に詳しい一級建築士に調べてもらったところ、里山の歴史や文化を伝える価値のある建物であることが分かり、「百年亭」と名付けました。そして、「百年亭再生プロジェクト」を立ち上げ、修復計画、資金調達、活用計画を立てています。修復はできるだけボランティアを募って行います。その活動は本サイトの記事、古民家「百年亭」再生プロジェクトがスタート(3月28日掲載)で紹介されています。 クラウドファンディングで300万円募集 今回、その資金集めの方法として、クラウドファンディングを活用することにしました。「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」方法で、新たな資金調達の仕組みとして注目されています。期間は9月5日~10月21日、第1期目標額は300万円です。 クラウドファンディングに並行して、助成金申し込みも受け付けます。建物の完成には800万円程度が必要ですが、様々な手法で宍塚の里山の重要性を伝えながら進めます。

太陽光発電に侵食される里山 《宍塚の里山》91

【コラム・片山秀策】地球温暖化対策として、二酸化炭素(CO₂)を発生する化石エネルギーから、太陽光や風力など再生可能な自然エネルギーに転換しようとする動きがあります。再生可能エネを利用する動きは、1970年代のオイルショックの後から始まっていますが、日本ではなかなか代替が進んでいませんでした。 ところが、2011年の福島第1原発事故の後、再生可能エネ利用を推し進める再エネ特措法による固定価格買い取り制度(FIT)で弾みがつき、あちこちで太陽光発電の建設が進んでいます。問題は、太陽光発電所は大きな面積が必要となるため、耕作放棄地や未利用地が使われるようになっていることです。 未利用の土地といっても、工場や住宅に使われていないだけで、大気中のCO₂を吸収する樹木が生育していて、多様な生物が生息する場所です。 樹木は10年単位で光合成により大気中のCO₂を固定しています。その樹木を大量伐採して、耐用年数が20年程度の太陽光発電所が建設されています。土浦市内にある大規模太陽光発電所を例に挙げると、約26ヘクタールの平地林を伐採して建設されました。もともとそこにあった林が何十年もかけて固定したCO₂は、燃やされたり廃棄されたりします。 再生可能エネの一つ、太陽光発電施設を造るために、大気中のCO₂を固定する森を破壊することは、本末転倒というか、大きな矛盾をはらみます。 1ヘクタール以上の太陽光発電所の設置は都道府県知事の許可、1ヘクタール未満の場合は市町村長の許可がそれぞれ必要ですが、発電量が50キロワット未満の小規模なものは届け出が要らないので、宅地のミニ開発のように、行政も住民も知らないうちに広がっていくことが心配されています。

「イナリヤツ」とよばれる谷津田 《宍塚の里山》90

【コラム・嶺田拓也】土浦市の宍塚大池の西側には約25アールの通称「イナリヤツ」とよばれる谷津田があります。谷津田とは斜面林(里山)に囲まれた盆地状の地形に展開している田んぼを指します。イナリヤツは5枚の田んぼから成る谷津田で、昭和初期から地元の青年会によって稲作が行われてきました。 戦後、青年会の人数が減ってからは、地元自治会により耕作されてきましたが、1954年からは宍塚大池の近隣に住むお1人の方によって、ほそぼそと耕作が続けられてきました。しかし高齢化などに伴い、2001年以降徐々に休耕する田んぼが増え、2008年にはすべての田んぼが放棄されるようになりました。 イナリヤツは耕作が放棄されたあとも、周辺の里山に降った雨が地下に浸透して谷津奥部や台地斜面の下部からしみ出すことで湿地状態を維持し、通称イナリヤツ湿地と呼ばれていました。この湿地には希少な湿生植物も見られたことから、宍塚の自然と歴史の会では茨城県自然博物館などと共同して、2012年から定期的に湿地内の植生を調査しています。 これまでのところ、湿地全体で150種以上の植物が確認され、マルバノサワトウガラシやミズニラなど、全国や茨城県で絶滅危惧種に指定されている希少な湿生植物10種の生育が確認されました。一方、外来種のセイタカアワダチソウやキショウブなどの定着も認められました。また、ヤナギ類やガマなどの大型で繁殖力も強い植物が繁茂し、何も手を加えないと小型の希少な湿生植物が生育しにくい環境に移行していくこともわかってきました。 絶滅危惧種などをモニタリング そこで、絶滅危惧種の保全を目的に湿地の維持管理作業も行っています。具体的には、数年おきに刈り払いを行ったり、トラクターなどで部分的に耕したりすることに加え、定期的にセイタカアワダチソウやキショウブなどの外来種の除去も実施しています。

みんなで楽しく田んぼづくり 《宍塚の里山》89

【コラム・阿部きよ子】私たち「宍塚の自然と歴史の会」では、1995年から里山の中の休耕地となった谷津田で稲作りを開始し、1999年以降、子どもから大人までを対象とした「田んぼ塾」を開いてきました。そして、2015年からは、新たな稲作方法を研究開発する「自然農田んぼ塾」と子ども中心の「田んぼの学校」に分かれて、谷津田の稲作に取り組んできました。 田んぼの学校は、年度ごとに家族単位で「生徒」を募集し、①稲作と稲作に伴う伝統文化を学ぶ食農教育、②里山の自然や田んぼの環境について学ぶ環境教育―をしています。 今年度は、定員越えで数家族お断りしましたが、33家族で発足しました。豊かな生態系を持つ宍塚の里山の入り口の休耕田を地主さんからお借りし、機械化以前の方法で、肥料は米ぬかだけ、完全無農薬で稲を育てています。伝統行事の「ならせもち」用に、白、赤それぞれ1種類の餅米の品種と藁(わら)細工用の品種を栽培しています。 子どもが田植えや稲刈りに参加する「田んぼの学校」は各地にありますが、私たちの学校には、以下のような特色があります。 a.子どもも大人も主体的に取り組む、b.種まきから食べるところまで継続して稲と関わる、c.里山の四季の変化の中で感性や知性を駆使し、自然環境を体験しながら学ぶ、d.毎回、作業の意味や稲作の変化について学習し、日誌もつけ、ときには「宿題」もする、e.経験も知識も出身地も異なる老若男女、大人子どもが交流し学び合う―。 子どもは泥んこを楽しむように

先月「ナラ枯れ」調査を行いました 《宍塚の里山》88

【コラム・佐々木哲美】3月10日の午前、ナラ枯れの調査を行いました。当会から4名が参加し、昨年同様、森林総合研究所の升屋勇人主任研究員に指導を仰ぎながら、宍塚里山を一周しました。昨年は立木11本と切株2本に対応しましたが、その後、5本の立木の伐採も終えました。伐採だけでなく、樹木防護、トラップ設置、定期点検などにも取り組んできました。 今回は、新たに約20本程度のナラ枯れを確認しました。ざっと回っての数ですから、詳細に調査したら、かなりの本数になると予想されます。そのような状況下で、何を目的に、誰が、どこまでやるのか―など今後の取組方針を決めなければなりません。 昨年は、①予防:被害区域の拡大を食い止める、②駆除:増加したカシノナガキクイムシの数を減らす、③森の若返り:被害を受けやすい高齢・大径木材の積極的な利用と更新管理―の3つの視点で取り組みました。 里山のナラ枯れ被害を食い止めるといっても、我々の力だけでは無理な話です。根本的な理由は、雑木林が利用されなくなって大木化し、樹勢が落ちた樹木にカシノナガキクイムなどの害虫が入り込むことにあるからです。ある意味、自然の摂理と言えますが、見ているだけにはいかないと思い、取り組んできました。 対応への労力やゴールが見えない 昨年1年間実施し、対応への労力やゴールが見えない大変さも分かっています。金銭的にも労力的にも限界がある当会が、何を目的にどのように進めばよいのか?...

春は「フナののっこみ」の季節 《宍塚の里山》87

【コラム・福井正人】私たちの会は毎月第3日曜日、地元農家と「田んぼさわやか隊」を結成し、宍塚の里山周辺の水田の整備活動を行っています。このエリアの農業水路には、春になると「フナののっこみ(産卵のための遡上=そじょう=)」が見られます。今回はそこで見られる魚たちを紹介します。 宍塚大池を水源とするこの水路は、大池から備前川までの約2キロ、宍塚の里山から北東に流れています。上流域は里山の谷津田の脇を流れる土水路で、昔ながらの水路の景観を残しています。中流域が田んぼさわやか隊の活動エリアで、圃場(ほじょう)整備された田んぼの脇を流れていますが、土水路のまま残されています。 下流域は三面コンクリートになっていますが、中流域から流出した土砂が堆積していることが生き物にはプラスになっているようです。残念ながら、上流域の里山内の水路と中流域の土水路の間には、コンクリートU字溝暗渠(あんきょ)と約40センチ水位差がある場所があります。このため、上流域と中流域の魚類の行き来、特に遡上を阻害しています。 会が地元の方のお話をうかがってまとめた聞き書きには、昔はウナギをはじめとして多くの魚類が下流側から宍塚大池まで遡(さかのぼ)っていたことが紹介されています。それを思うと残念ですが、里山内の水路には、いまでもドジョウやヨシノボリなどの魚類や多くの生き物を育んでいます。 備前川から産卵のために遡上 中流域に目を向けると、水路は里山の谷津田域のそれに比べると直線的ではあります。でも、土水路として残されているため、側面や底面にデコボコがあり、植物なども生えるため、水の流れに緩急ができ、隠れ場所もあって多くの生き物に生息する場を提供しています。

里山体験プログラム 《宍塚の里山》86

【コラム・森本信生】私たちの会は、33年前から地域の人々の理解を得ながら、生き物調査やボランティアによる里山保全活動を続けてきました。この活動を通して、多様な動植物が生息する貴重な里山が維持されています。訪れた方々は「美しい里山」「珍しい草花」「とても癒される」と言ってくれるようになり、各種観察会や子ども関連行事はたくさんの参加者でにぎわい、環境教育の大切な場となっています。 現在募集中のプログラムは、若い人をはじめ自然に興味のある方々に、里山にもっと気軽に来てもらい、保全活動に参加してもらうものです。参加者は自分に合った方法で活動プランを立て、ゆっくり実践してもらいます。各活動では、その道のベテランが丁寧に寄り添って指導します。 プログラムは、子どもが自然に興味を持ち楽しく体験できるように工夫。谷津田を利用した稲作りや、生き物との共存、生き物の多様性、里山の環境作り―体験のほか、経験豊かなスタッフとの交流もあります。 高校生や大学生も参加 また、環境省指定の「モニタリングコアサイト1000」の調査や土曜観察会では、専門家に貴重な動植物を紹介してもらいます。月例観察会では、専門家による話を聞くこともできます。 この春からは、高校生が自然農田んぼ作りに1年間の予定で来ます。自分が目指す進路に向けての主体的な学びです。つくば市の大学生も、進路をもっと具体的なものにしたいと、70時間もの里山体験をしています。

手と耳と鼻で自然を観察 《宍塚の里山》85

【コラム・森本信生】私たち「宍塚の自然と歴史の会」では、毎月、里山について学ぶ「土曜談話会」を開いています。昨年10月の談話会には、手話通訳者の北村まさみさんを招き、「障害者と里山」の題で話してもらいました。今回はその内容の一部を紹介します。 講演では、障害者と共に行う様々な行事についての話がありました。例えば、雄蕊(おしべ)と雌蕊(めしべ)や、受粉の様子を手話でどう表現するか―などです。植物の様子を的確に捉えていて、大変面白いものだったそうです。 また、暗闇の道を、目が不自由な人が目の見える人をリードする話。さらに、話をせずに情報をどのように他人に伝えるかを、言葉が不自由な人から教わる話。北村さんによると、このような活動を、つくば市の産業技術総合研究所など、いろいろな所で行ってきたそうです。 この流れで、北村さんに企画をお願いし、私たちの会でも「手と耳と鼻で楽しむ観察会」を開きました。木々を触り、植物の匂いを嗅ぎ、なめて味を確かめ、鳥の声を聞き、その気配を感じる―といった、他では体験できない観察会です。視覚以外で自然を感じる面白い観察会でした。 障害を持つ方も楽しめる里山 講演では、「障害は社会がつくる」という言葉が印象に残りました。車いすで移動ができないとか、視覚や聴覚が不自由なために危険を感じるのは、バリアフリーでないからです。社会の仕組みが、障害をより深刻化させているのです。そういったことは、仕組みを変えることで改善できます。

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異星人と犬 《短いおはなし》15

【ノベル・伊東葎花】若い女が、ベンチで水を飲んでいる。傍らには、やや大きめの犬がいる。「犬の散歩」という行為の途中で、のどを潤しているのだ。なかなかの美人だ。身なりもいい。服もシューズも高級品だ。彼女に決めるか。いやしかし、犬が気になる。動物は敏感だ。余計なことを感じ取ってしまうかもしれない。 私は、遠い星から来た。今はまだ体を持たない。水のような流体だ。ターゲットを探している。性別はどちらでもいいが、女の方に興味がある。すっと入り込み脳を支配して、地球人に成りすますのだ。そして我々の星にとって有益なデータを持ち帰ることが目的だ。誰でもいいわけではない。容姿は重要。生活水準も高い方がいい。あの女は、大企業に勤めている。申し分ない。犬さえいなければ。 私には時間がない。地球時間で5時間以内に入り込まないと、気体になって宇宙に戻ってしまうのだ。意を決して、女に近づいた。耳の穴から入り込む。一瞬で終わる。一気に飛び込もうとジャンプした私の前に、犬が突然現れて大きくほえた。 しまった。犬の中に入ってしまった。 「ジョン、急にほえてどうしたの?」女が、私の頭をなでている。どうしたものか。地球人については学習してきたが、犬についてはまったくの無知だ。逃げようと思ったが、首からひも状のものでつながれている。とりあえず、犬になりきって様子を見よう。そしてチャンスを狙って女の方に移るのだ。立ち上がって歩き出した私を見て、女が目を丸くした。「ジョン、2足歩行が出来るの? すごいわ。ちょっと待って、動画撮るから」しまった。犬は4本足だった。 それから私は「人間みたいな犬」として、ユーチューバー犬になった。ソファーでテレビを見たり、フォークを使って食事をするところをネットでさらされた。想定外だが、女と同じベッドで寝られることだけは、まあよかった。女は優しくて、いつも私をなでてくれた。「いい子ね」と褒めてくれた。女が眠っている間に、犬の体から女の体に移動することは易しい。しかし女の無防備な寝顔を見ると、なぜか躊躇(ちゅうちょ)してしまうのだ。

11カ国の出演者決まり制作発表 「世界のつくばで子守唄」コンサート

歌のコンサート「世界のつくばで子守唄 海のシルクロードツアー2023制作発表会」が28日、ホテル日航つくば(つくば市吾妻)ロビーで行われた。同市在住の脚本家、冠木新市さんの企画・プロデュースで、7月1日に開かれる。11カ国、15曲の子守歌をそれぞれの国や地域の出身者、約40人が歌や舞踊で披露し、コンサート後は各地域の交流会を行うという。 中国語の歌「祈り」を歌う劉暁紅さんと伴奏する大川晴加さん=同 制作発表会はコンサート会場となる同ホテルの「ジュピターの間」前で行われた。大川晴加さんのピアノ伴奏に合わせ、中国出身の劉暁紅(リュウ・ギョウコウ)さんが中国の歌「祈り」を歌い、披露した。「祈り」は日本の「竹田の子守歌」と同じ曲調で、中国だけでなくミャンマーでもよく知られる曲だという。演奏後はバングラデシュ出身のアナミカ・スルタナさんや台湾出身の潘頤萱(ハン・イガン)さんら出演者たちがそれぞれ自己紹介し、挨拶した。 挨拶する出演者の潘頤萱さん=同 つくば市在住で外国人サポートの仕事をしているアナミカさんは、コンサートで「アイアイチャンドママ」(日本語訳「来て、来て、ムーンおじさん」)という歌を披露する。この歌はアナミカさんが子どもの頃に母親から聞いた歌で、アナミカさんの母親も子どもの頃に聞き、代々伝わってきたという。「どのくらい古くから歌われているか分からない。子どもがよく眠ることを願う歌。バングラ語(ベンガル語)で歌います」と話す。

川遊び創出に海洋クラブ助け船 【桜川と共に】4

「最近の子どもたちは川に入ってはいけないと教わる。もっと川で遊んで、桜川の環境に興味を持ってほしい。そして澄んだ桜川を取り戻したい」。桜川漁協の組合員らは、大人が安全を重視するあまりに子どもたちが川から遠ざかっている現状を憂う。そんな中、子どもたちが川で遊ぶ機会を創出しようと、桜川に新しい風が吹き込んできた。 地元NPO、7月から本格的な活動へ 桜川での自然体験活動を先導するのはNPO法人Next One.(ネクストワン、つくば市研究学園)。筑波大学大学院で体育科学を修めた井上真理子さん(39)が代表を務める。桜川漁協の協力を得て今年から「B&G Next One.海洋クラブ」を発足させた。本格的な活動を7月から開始する。月1回、桜川での自然体験を行い、地域の人と交流しながら、環境問題についても学びを深めていく予定だ。 式で挨拶する山本杏さん=桜川漁協(つくば市松塚) 28日には、同クラブの活動拠点となる桜川漁業協同組合(つくば市松塚)でカヌーやライフジャケットなどの舟艇器材配備式が行われた。式では井上さんや器材を提供した公益財団法人B&G財団(東京都港区)の理事長である菅原悟志さんらが挨拶。市内外から訪れたクラブ員の児童ら16人とその保護者ら、つくば市環境保全課や観光推進課の職員も出席し、児童と漁協組合員らがクラブ発足を記念して桜の木2本の植樹を行った。式後は児童らが組合員やネクストワンのスタッフらから手ほどきを受けて釣りやカヌーの体験を行い、桜川の自然を満喫した。

土浦市立博物館が郷土史論争を拒絶!《吾妻カガミ》158

【コラム・坂本栄】土浦市立博物館と市内の郷土史研究者の間で論争が起きています。争点は筑波山系にある市北部(旧新治村の一角)が中世どう呼ばれていたかなどですが、博物館は自説を曲げない相手の主張に閉口し、この研究者に論争拒絶を通告しました。アカデミックディスピュート(学術論争)を挑む市民をクレーマー(苦情を言う人)と混同するかのような対応ではないでしょうか。 「山の荘」の呼称はいつから? 博物館(糸賀茂男館長)と論争しているのは、藤沢(旧新治村)に住む本堂清さん(元土浦市職員)。社会教育センターの所長などを務め、退職後は市文化財審議委員、茨城県郷土文化振興財団理事も歴任した歴史通です。「山の荘物語」(私家版)、「土浦町内ものがたり」(常陽新聞社)、「にいはり物語」(にいはりの昔を知り今に活かす会)などの著作もあります。 争点はいくつかありますが、主なものは現在東城寺や日枝神社がある地域の呼び方についてです。本堂さんは、同地域は古くから「山の荘」と呼ばれていたと主張。博物館は、同地域は「方穂荘(かたほのしょう=現つくば市玉取・大曽根辺りが中心部)」に含まれ、中世室町時代以前の古文書に「山の荘」の記載はないと主張。この論争が2020年12月から続いています。 博物館によると、この間、本堂さんは博物館を11回も訪れ、館長や学芸員に自分の主張を展開したそうです。そして、文書による回答を要求されたため、博物館は「これ以上の説明は同じことの繰り返しになる」と判断。これまでの見解をA4判3枚の回答書(2023年1月30日付)にまとめ、最後のパラグラフで論争の打ち切りを伝えました。 その末尾には「以上の内容をもちまして、博物館としての最終的な回答とさせていただきます。本件に関して、これ以上のご質問はご容赦ください。本件につきまして、今後は口頭・文書などのいかなる形式においても、博物館は一切回答致しませんので予めご承知おきください」と書かれています。博物館は市民との論争に疲れ果てたようです。