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霞ヶ浦監督に聞く
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【茨城 高校野球展望’19】8 球数制限は流れ断ち切る 霞ケ浦監督に聞く㊦
2019年7月5日
-今話題になっていることを2つ、お聞きしたい。まず球数制限について考えをお聞かせ願いたい。 高校野球でもプロ野球でもピッチャー交代が一番大変な作業です。監督としてはエースで勝ったり負けたりすることほど楽なことはないですよね。エースが壊れようが何しようが、エースでいって勝てば当然、エースが打たれたから負けたというのでは監督は楽ですよね。楽なんですけど私はそれはやりません。最初から2枚、3枚投手を用意して戦います。その根底にはやっぱり肩は消耗品なので、将来性がある子に無理をさせたくないという思いが多分にあります。 とはいっても、松坂大輔のようなピッチャーに延長17回250球を投げた翌日にも投げさせることをおかしいとは思わないし、実際に松坂大輔が投げ過ぎたことでプロでは活躍できなかったかというとその逆で大活躍しました。肩を壊したことがありますが、あれは高校の時に球数を制限していたら故障しなかったのか、因果関係が説明できません。 私自身は、球数制限というルールがあってもなくても決まったことをやっていくだけです。練習から本番にかけて様々な要素やメニューを考えて自分で制限をして試合で使っているので、統一ルールとして球数は制限しなくてもいいと思います。 だからと言って、例えば今年、藤代との夏の試合で1対0の試合をやって、寛人がグズグズになりながらも6回終わって160球投げたとします。でもボールの力は落ちていない。1対0で勝っている。あと3イニング。9回まで行ったら200球にいってしまうことが明らかだという時でも、たぶんそのままゲームの流れの中で9回まで投げさせると思うんですね。流れがあるからしょうがないと思うんです。1対0で勝っていても代えたほうがいいという時もあるし、代えることが間違っている時だってあるわけで、そこを考えるから投手交代のタイミングが面白いし、大変な作業なのす。100球だから降板ですというのは試合の流れを断ち切るような気がして面白くなくなるので、別に今のままでもいいと思うんですよね。 ―最後に、センバツでも話題になりましたサイン盗みの問題をお聞きします。 うちは一切やっておりませんが、相手がやっていると見ると、こちら側はやらせないような防御策を持っていないといけませんよね。センバツでは優勝候補である星稜がサイン盗みでバタバタしてしまった。星稜の林監督とは面識があり、しっかりした野球をしている印象ですが、サイン盗みの防御・ケアに関しては対応できなかったことが不思議にすら思いました。まあサイン盗みは、スマホのながら運転やスピード違反みたいな交通違反なんかと同じですよね。罰則を厳しくしたってバレなければいいという人は必ずいるんですよ。自己防衛こそが大事だと思います。 ―本当に興味深いお話をありがとうございました。 (聞き手・伊達康) 春の大会ではエースの福浦太陽が明秀学園日立に対して6回から登板し、3安打3四死球を絡めて7回に一挙5失点の炎上をしたが、その遠因が何となく分かったような気がする。この夏はプロ注目の鈴木寛人の大躍進が楽しみだが、福浦太陽の復活劇と人間ドラマにも大いに期待したい。大会まであと数日という押し迫った時期にもかかわらず、インタビューを快諾していただき、貴重なお話をたくさんしてくれた髙橋祐二監督に心から感謝申し上げたい。 =終わり ➡【茨城 高校野球展望’19】はこちら
【茨城 高校野球展望’19】7 常総はタレントぞろい 霞ケ浦監督に聞く㊥
2019年7月4日
―髙橋監督が気になっている相手チームはありますか。 毎年各学校の監督さんのカラーが出ますよね。藤代の菊地一郎監督、石岡一の川井政平監督、常総の佐々木力監督と、監督のカラーが出ていて、そこの選手がどのくらいの能力であるかを足していけば、大体チーム力が分かります。監督それぞれの野球が急に変わることはないので、何をしてくるかは概ね察しがつきます。 ただ、土浦日大の小菅勲監督は何をしてくるか分からない。つかみどころがなくて負けたのは土浦日大だけなんです。何をしてくるか分からなくて常総も負けてしまうし、茨城を2年連続で勝ってしまうという本当に面白い状況なので、土浦日大にだけはちょっと負けたくないという思いはあります。 あと、藤代と石岡一はよく似たチームだと思いますが、藤代の方が精度が高くて選手層も厚い。藤代の方が強いようですが、そこを岩本大地投手(石岡一)の力で一気に超えてしまうかもしれない状況にあります。藤代とは中山航投手と寛人の投げ合いと野手同士の戦いの中で面白い試合になると思っています。 ―常総学院打線についてはどのように分析されていますか。 常総学院はいろいろな雑誌を見ても分かるように、創部以来3本の指に入る選手層、強さと言われていますしタレントがそろっています。とにかく打線はすごいですよ。先日の土浦市高校野球招待試合で常総学院は春季関東大会優勝の東海大相模とやりました(4対5で東海大相模の勝利)けど、試合後に東海大相模の門馬敬治監督から「常総ってこんなにメンバーそろってるんですね」と電話がありましたよ。日本一になっている門馬監督がわざわざ連絡してくるくらいですから、それだけ常総に脅威を感じたんでしょうね。でも、そのくらいタレントぞろいのチームであっても、秋の関東大会や春の県大会準決勝で負けているというのが興味深いですよね。 ―今大会とは別の話になりますが、霞ケ浦には毎年好選手がそろっています。選手のスカウティングについて、言える範囲でお願いします。 うちは他の私立高校よりもスカウティングに力を入れていないと思います。8月後半に1回あるオープンスクールの体験入部に来てくれた選手の中で、目立つ子には声をかけています。私立高校でありながら今の段階で1人も決まっていませんので、他の高校には遅れを取っていてスカウティング力は弱いですし、もっと力を入れないといけないと思っています。昔は特待を使って多少のところは目をつぶって多く集めた時期もありましたが、今は学力が伴って野球の技術が高くなければ特待の条件を出したくありません。後は、霞ケ浦でやりたいといって来てくれた子を叩き上げれば何とかなるだろうとこの20年やってきましたし、実際に何とかなってきたのかなと思います。根性がなくて決勝でいつも負ける戦いをしてしまっているのであまり偉そうなことは言えないですが、無理なスカウティングはしていないですね。 付属中の快挙、OBの活躍 ―霞ケ浦高校付属中硬式野球部がボーイズリーグの全国大会出場を決めました。 創部4年で県大会優勝、全国大会出場おめでとうございます! 素晴らしい快挙です。柴崎、竹内、木村各スタッフの指導の賜物だと思います。これを機に、部活動、学習面での起爆剤になり、付属中学校全体が益々飛躍することを願っています。 ―大学野球に進んだOBの試合はご覧になっているようですね。 大学野球を4年間一生懸命やるのであれば、1回くらいプレーは見てあげたいと思っています。大正大4年の大場駿太は最後のシーズンということで、ちゃんとした球場でやるときは見に行くよと約束していたので、一昨日は休みを取って、神宮球場で大正大と東農大の東都大学リーグ2部3部入替戦を見てきました。また、先日は全日本選手権の東洋大(3年・小川翔平、2年・木村翔大がスタメン出場)を見てきましたが、大学関係者に対する進路のお願いですとか、顔つなぎなどをやっておかないと後輩たちも入れないので、そういうものも含めての大学の試合会場に行っているわけです。OBが頑張っている姿を見るのもいいですけれども、それだけが目的ではありません。(続く) (聞き手・伊達康) ➡【茨城 高校野球展望’19】はこちら
【茨城 高校野球展望’19】6 プロ注目の右腕「完成形に近い」 霞ケ浦監督に聞く㊤
2019年7月3日
【伊達康】毎年安定して好投手を輩出する霞ケ浦だが、今年は、鈴木寛人(3年)という最速148キロを誇るプロ注目の本格派右腕を擁しその戦い方が注目されている。綾部翔(横浜DeNA)や安高颯希(桜美林大4年)を擁して初優勝を果たした第97回大会以来4年ぶりの甲子園出場に向けて心血を注ぐ髙橋祐二監督に、夏の大会に向けた思いや決意を語ってもらった。 ―春季県大会では乱打戦の末に明秀学園日立に7対10で敗れ、夏の大会はDシードで臨むことになりました。秋の準々決勝で敗れたAシードの藤代ゾーンに入ったことについて、所感をお聞かせ下さい。 今回、春に初戦で負けてシードを獲れると思っていなかったので、いきなり強いところと当たる可能性もあると心の準備はしていました。藤代ゾーンに入ったことについては一度負けている相手なので是非勝ちたいと思っています。藤代と常総学院を倒さないと甲子園は手に届きません。もし藤代を倒したとしてもBシードの石岡一が待ち受けているので正直言ってきついですね。Bシードの中でも石岡一が一番同じゾーンになりたくない相手でした。 ―春の敗戦以降、夏に向けて特別に取り組んでいることがあれば教えてください。 例年、本校は投手力を中心とした守備が売りのチームを作っています。そこに少しでも攻撃力を付けて戦うのがうちの戦法です。実際、投手力や守備力は県内で常総学院や明秀学園日立よりも上だと評価された年が何度かありました。でも、今年のチームはとにかく守備力が弱く例年のレベルに到達していません。守備のイージーミスがよく見られるので、守り負けるもろさをはらんでいます。しかし、鈴木寛人というピッチャーは、先輩でプロ入りした綾部翔(横浜DeNA)や遠藤淳志(広島)を超えるようなピッチャーにまとまってきた感があるので、もしかしたら優勝できるかもしれないという手応えをつかんでいます。 ―守備の方では中心選手が抜けた穴が大きかったでしょうか。 中心選手は毎年入れ替わる中で、それでも毎年、二遊間に関しては県内でも1、2位と言われるチームを作ってきました。昨年は能力の非常に高いセカンドの小礒純也(日体大1年)とショートの森田智貴(桜美林大1年)がいましたが、今年は二遊間に限らず全てにおいて守備力が弱いですね。 ―打撃に関しては天野海斗選手が中心になるのかなと思いますが、ほかにこの選手に期待したいというのはありますか。 新チームになってずっと天野と黒田悠真を使い続けてきましたけれど、思ったようなリーダーシップが取れないというか、結果が出ていません。うちにはいわゆる4番バッターはいませんが、1年生を入れて打線を組んだことによって、どこからでも点を取れるような打線になりつつあると思います。期待する選手としては仕黒大樹です。茨城出身(土浦三中)の選手ですし頑張って欲しいと思っています。 ―1年生とはどの選手でしょうか。 飯塚恒介と宮崎莉汰は練習試合でもスタメンで使っています。特に宮崎は見かけによらず力があって勝負強いので中軸を打たせています。1年生に期待すること自体が悲しいことなのですが、打線の幅はできたように思います。 成長うかがわせるプロ注目右腕 ―ピッチャーについて。プロ注目右腕の鈴木寛人投手は春の大会まで背番号はエースナンバーではありませんでしたが、仕上がりはどうですか。 実績がないので自信を持って投げてはいませんが、プロのスカウトからは綾部・遠藤ら2人の先輩よりもボールの質が上だという評価をもらっています。春季大会は早々に負けたので4月下旬から6月第2週までは東海大相模、花咲徳栄、桐蔭学園、作新学院、春日部共栄、東海大甲府といった強豪校との練習試合をどんどん入れ、鈴木寛人にはどんなに打たれようが、点を取られようが9回を投げきるというノルマを課しました。その結果、花咲徳栄には滅多打ちにされ、東海大相模にはもっとボコボコに打たれ、「ああ、この子はピッチャーとしてまとまらないで終わってしまうかな」と思いながらも試練を乗り越えて一本立ちして欲しいという一心で起用し続けました。そうしたら、5月終盤にきて桐蔭学園を8回1安打完封、作新学院を完封、東海大甲府には失点1と着実に結果を出して来ています。この期間、ずっと完投させてきて、マウンド上の立ち姿に大きな変化というかオーラを感じるようになりました。 この状況が夏大(なつたい)になっても変わらなければ、たとえ相手が強力と言われる常総学院打線であったとしても、寛人ならやってくれるのではないかと楽しみです。それくらいの成長を感じています。ロースコアのゲーム展開になったとき、うちの守備にほころびが出る不安はつきまといますが、完成形に近い状態になったと言っていいほど寛人は良くなりましたね。1年秋の関東大会で2試合とも先発させて打たれて負け投手になり、次の春怪我をして、2年夏も棒に振って、秋も結果が出ないという状況の中でほとんど投げていません。ですが、4月から6月にかけて一生懸命やってきたことによって、これだけ成長できた訳です。寛人には昨日、「夏は寛人が中心でいくからな。これだけ成長できたのだから自信を持って存分にやってくれよ」と話したところです。 ―これまでエースナンバーを背負ってきた福浦太陽投手はどうですか。 福浦は背番号1にあぐらをかいた状況で、寛人に抜かれることに焦りも感じたと思いますが、やっておかないといけないストレッチをおろそかにして体が鉄のように硬くなってしまいました。柔軟性の数値が1カ月前に比べて驚くほどで悪くなってしまい、こんなに硬くなるかと。胸が張れない。えび反り、いわゆるブリッジができないくらい胸郭が詰まってしまっています。あまりにもひどい状態で今は最速125キロくらいしかで出ません。肩肘はどこも痛くない。でも肘に張りがある。当然ですよ、もともとそんな投げ方はしていましたが、胸を張れないから体を開いて腕を引っ張り上げるしかないので。エースとしての自覚が足りない。昨日は「もしも寛人の成長がなくて山本もいなかったらお前はエースとしてどんな責任をとるんだ」という話をして自覚を促しました。 ―それでは春の明秀学園日立戦で先発した左腕の山本雄大投手(2年)が2番手格になるのでしょうか。 福浦のことは突き放してはいますけれど、そうはいってもエースとして今まで君臨してきたわけですから、何とかはい上がって欲しいと期待しています。ただ、今は一切ボールを投げさせていません。ストレッチの数値が元に戻るまでは投げられないことにしているので、1日に3~4時間をストレッチに費やしています。どこまで戻るかは分かりませんが、戻らなければ、寛人と山本、それにもう一人3年生ピッチャーがいるので、この子とうまくつないでいければと考えています。もうトーナメントの組み合わせが分かりましたし、このカードは誰が投げるというのは全試合で想定しています。そうは言ってもやられるときはあっさりとやられますから。(続く) ➡【茨城 高校野球展望’19】はこちら
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