金曜日, 4月 26, 2024
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「金色姫伝説旅行記」を終えて 《映画探偵団》70

【コラム・冠木新市】11月3日(金)、4日(土)、5日(日)、つくば市神郡(かんごおり)の石蔵Shitenで「金色姫伝説旅行記/つくばシルクロード2023」のイベントを開催した。3日は20人、4日は5人、5日は30人集まった。この10数年間、つくばで活動してきたが、神郡の地では始めてのイベントだった。 享和3年(1803)。常陸の海岸に髪の長い異国の女性が「うつろ舟」で漂着した。その事件は江戸の瓦版で紹介され話題を呼んだ。今年はその事件から220年目にあたるので、ぜひとも伝説が残る神郡でやりたかつた。 全体は「演劇仕立ての講演会」になっていて、「第1章 筑波恋古道」「第2章 天竺から来たお姫さま」「第3章 瓦版・うつろ舟事件」「第4章 金色姫と八犬伝」「第5章 金色姫からのメッセージ」と、過去、現在、未来へと旅する構成である。 会場を「うつろ舟」内部のタイムマシーンに見立て、時間旅行して「金色姫伝説」の変容を体験するというもの。もちろんフィクションだと誰もが考えるわけだが、話が進むにつれ、これは本当のことではないかと見えてくる仕掛けになっている。 「第4章」で、満州事変があった年、昭和6年(1931)に製作された無声映画「里見八犬伝の暗号」のガリ版刷りの台本が、神郡の蔵で発見された。「それがこの蔵であり、だからこの場所でやりたかったのです」と語ると、ほとんどの参加者がうなづいていた。信じきって帰った人も多くいた。すみません、これはフィクションです。 うれしかったことがある。13年前に作った歌「筑波恋古道」をソプラノ歌手で吹き込みし直したところ、以前にまして評判が良く、CDが欲しいと3人の方から言われたこと。また、この曲をテ一マにした映画「つくつくつくばの七不思議/サイコドン」第1話を上映したところ、興味を持つ人が多くいた。以前、映画を見てあまり受けなかった2人からも、「今回見たら面白かった」との感想が聞けたこともだ。 そして「第4章」では、18年前の「北斗七星伝」を絵本バ一ジョンで語ったところ、皆、食いつくような目で見て、スマホで撮影していた。 T・カ一チスの「グレートレ一ス」 イベントを終えて、アメリカ映画「グレートレ一ス」(1965)が無性に見たくなった。監督はブレイク・エドワーズ。主人公は、全身白ずくめの善玉グレート・レスリー(トニー・カ一チス)と、全身黒装束の悪玉フェイト教授(ジャック・レモン)。フェイト教授は、レスリーに対抗しニュ一ヨ一クからパリへの自動車レースに出場する。 無声映画風のドタバタ喜劇で、2時間40分の大作である。特に、前半40分、レ一スに入るまでが面白い。フェイト教授が奇妙なデザインの人力飛行機などでレスリーを襲うシ一ン。レスリーが女性を見つめると、キラリとマンガみたいに瞳が光るシ一ンなど、次から次へと楽しい場面が連続する。 イベントの最後で、金色姫伝説は、つくばが誇るべき財産だから、つくばから世界に向けてアピールしていきたいと、フェイト教授ばりに宣言した。後で、参加者から感激したとの声をいただいた。うーん、このレ一スは、まだまだ続きそうだ。サイコドン ハ トコヤン サノセ。(脚本家)

「金色姫伝説旅行記」を終えて《映画探偵団》70

【コラム・冠木新市】11月3日(金)、4日(土)、5日(日)、つくば市神郡(かんごおり)の石蔵Shitenで「金色姫伝説旅行記/つくばシルクロード2023」のイベントを開催した。3日は20人、4日は5人、5日は30人名集まった。この10数年間、つくばで活動してきたが、神郡の地では始めてのイベントだった。 享和3年(1803)。常陸の海岸に髪の長い異国の女性が「うつろ舟」で漂着した。その事件は江戸の瓦版で紹介され話題を呼んだ。今年はその事件から220年目にあたるので、ぜひとも伝説が残る神郡でやりたかつた。 全体は「演劇仕立ての講演会」になっていて、「第1章 筑波恋古道」「第2章 天竺から来たお姫さま」「第3章 瓦版・うつろ舟事件」「第4章 金色姫と八犬伝」「第5章 金色姫からのメッセージ」と、過去、現在、未来へと旅する構成である。 会場を「うつろ舟」内部のタイムマシーンに見立て、時間旅行して「金色姫伝説」の変容を体験するというもの。もちろんフィクションだと誰もが考えるわけだが、話が進むにつれ、これは本当のことではないかと見えてくる仕掛けになっている。 「第4章」で、満州事変があった年、昭和6年(1931)に製作された無声映画『里見八犬伝の暗号』のガリ版刷りの台本が、神郡の蔵で発見された。「それがこの蔵であり、だからこの場所でやりたかったのです」と語ると、ほとんどの参加者がうなづいていた。信じきって帰った人も多くいた。すみません、これはフィクションです。 うれしかったことがある。13年前に作った歌「筑波恋古道」をソプラノ歌手で吹き込みし直したところ、以前にまして評判が良く、CDが欲しいと3人の方から言われたこと。また、この曲をテ一マにした映画「つくつくつくばの七不思議/サイコドン」第1話を上映したところ、興味を持つ人が多くいた。以前、映画を見てあまり受けなかった2人からも、「今回見たら面白かった」との感想が聞けたこともだ。 そして「第4章」では、18年前の『北斗七星伝』を絵本バ一ジョンで語ったところ、皆、食いつくような目で見て、スマホで撮影していた。 T・カ一チスの「グレートレ一ス」 イベントを終えて、アメリカ映画「グレートレ一ス」(1965)が無性に見たくなった。監督はブレイク・エドワーズ。主人公は、全身白ずくめの善玉グレート・レスリー(トニー・カ一チス)と、全身黒装束の悪玉フェイト教授(ジャック・レモン)。フェイト教授は、レスリーに対抗しニュ一ヨ一クからパリへの自動車レースに出場する。 無声映画風のドタバタ喜劇で、2時間40分の大作である。特に、前半40分、レ一スに入るまでが面白い。フェイト教授が奇妙なデザインの人力飛行機などでレスリーを襲うシ一ン。レスリーが女性を見つめると、キラリとマンガみたいに瞳が光るシ一ンなど、次から次へと楽しい場面が連続する。 イベントの最後で、金色姫伝説は、つくばが誇るべき財産だから、つくばから世界に向けてアピールしていきたいと、フェイト教授ばりに宣言した。後で、参加者から感激したとの声をいただいた。うーん、このレ一スは、まだまだ続きそうだ。サイコドン ハ トコヤン サノセ。(脚本家)

つくばの伝説の謎を解き明かす 舞台「金色姫伝説旅行記」上演

11月3日から3日間 つくば市に伝わる「金色姫(こんじきひめ)伝説」などをテーマに、ドラマ映像や朗読、ダンス、歌などを上演する舞台「金色姫伝説旅行記つくばシルクロード2023」が11月3日から5日まで3日間、つくば市神郡、大谷石造りの「石蔵Shiten」で上演される。構成、演出は市内在住の脚本家、冠木新市さん(71)が手掛ける。主催は市民団体「スマイルアップ推進委員会」(冠木代表)。 舞台は、つくば市神郡の蚕影山(こかげさん)神社に養蚕信仰の一つとして伝わる「金色姫伝説」と、「常陸国のうつろ舟」伝承がテーマ。金色姫伝説は5世紀後半、舟で流れ着いた日本に養蚕技術を伝えたとされる天竺(インド)の金色姫の伝説。うつろ舟奇談は、江戸時代、茨城県の海岸にUFO(未確認飛行物体)のような鉄でできた丸い形の舟が漂着し、中に異国の女性が乗っていたという伝承で、滝沢馬琴の「兎園小説」など、複数の古文書に記されている。 冠木さんは、二つの伝説から着想を得てストーリーを作った。金色姫とうつろ舟に乗っていた女性は共に異国の女性であることなどから、舞台の中で二つの伝説がどのように結びつくのか、また滝沢馬琴が「南総里見八犬伝」に金色姫をどのように描いているかを独自に解釈し、その謎を解き明かしていく。 出演するのは舞踊家でスリランカ出身のナディーシャ・ニルミニさん(45)、つくば市出身のダンサー楓さん(16)、シンガーソングライターの宮田まゆみさんら。楓さんはつくば市出身の高校2年生。5歳からバイオリンを習い始め2020年からストリートダンスを始めた。舞台第3章の「瓦版・うつろ舟事件」で踊るダンスの振り付けを自ら行った。「物語と曲をマッチさせた振りを作るのに苦労した。最初曲に合わせて振り付けを作ったが、冠木さんからもっと自由に踊っていいと言われ、曲調を超えるようなダンスにした」と話す。 ほかに牛久市出身のソプラノ歌手、大川晴加さんが5日に出演し「筑波恋古道」などを歌う。筑波恋古道は冠木さんが作詞し、つくばの地名を散りばめた曲で、大川さんが歌うことで壮大な印象になるという。 衣装を担当する渡辺和子さんは「金色姫の優雅な姫らしい雰囲気を出そうとこだわった。ニルミニさんの美しい自前の衣装を見て、全体的に豪華で派手な衣装になった」と話す。渡辺さんは茨城弁で語り部を務める。 冠木さんは舞台上で、ほぼ一直線につながる洞峰公園からつくばセンタービル、北条のつくば古道入口、蚕影神社、臼井の坂道、筑波山を、養蚕信仰の伝説にちなんで「つくばシルクロード」と名付ける。「舞踊と音楽で、眠っているつくばの歴史と文化を呼び起こしたい」とし「新しい『金色姫伝説』を世界にアピールしたい。若い人にぜひ見に来てほしい」と呼び掛ける。(田中めぐみ) ◆公演「つくつくつくばの七不思議シアター『金色姫伝説旅行記 つくばシルクロード2023』」は11月3日(金)、4日(土)、5日(日)の3日間開催。いずれも開場は正午、開演は午後0時30分。入場料は2000円(消費税込)。定員は各回30人(要予約)。問い合わせは電話090-5579-5726(冠木さん)。

金色姫伝説 謎解きツアー《映画探偵団》69

【コラム・冠木新市】「同級生3人でつくばへ遊びに行きたいので案内してくれますか?」と、今は40歳となった女子大生の教え子から突然電話が来た。つくばがテレビで話題になっているらしい。ちょうど『世界のつくばで子守唄』の準備で忙しい時だったけれど、母親になった彼女たちが、つくばでどんな反応を見せるか興味があり、引き受けた。 3人は「サザコ一ヒ一をつくばで飲みたい」「フ一フ一スパゲッティを食べたい」「おいしいパンを買いたい」と、特に食べ物への関心が強かった。つくばを1日で回るのは無理なため、①つくばセンター地区とその周辺、②研究学園と筑波山、③つくば古道と金色姫伝説めぐり―の3コ一スを作成し、選ばせた。すると、うれしいことに③を選んできた。 6月11日(日) 9時、つくばセンターのサザに集合し、モ一ニングコ一ヒ一を飲んだあと、ホテル日航つくばの「つくたび」開発者2人を加えて計7名、車2台で「金色姫伝説モニターツアー」に出発した。 つくば古道に向かう車中、緑の木々を見て3人が「癒やされるう〜」と同時に声を上げた。シン・旧住民の私には見慣れた景色だが、外から来た彼女たちにとっては新鮮な光景に映ったようだ。緑の木々も観光資源になるのだと改めて感じさせられた。 まんじゅう販売したら売れる 始めに訪れたのは、「つくば古道」入口の北条にある国登録有形文化財・宮清大蔵だ。店主の宮本清さんが、元醤油醸造所の仕組みを説明、蔵で記録映画を上映してくれた。終了後、子宝に恵まれる妊婦の形をした「はら宿りの木」を皆でなでる。3人の子持ちの1人は触らなかったが…。 次に平沢官衙遺跡に移動し、散策した後、すぐ近くにあるつくばワイナリーで担当者からブドウ畑の説明を受け、ワインの試飲。早速、3人はワインを購入した。 それから神郡・蚕影山(こかげさん)神社に向かい、ここで、私が金色姫伝説の由来を語った。200段はある階段を登リ下ったあと、1人が「ここでまんじゅう販売したら売れますよね」と言った。階段をのぼったあとには甘い物が欲しくなる、確かにそうだなと思った。 続いて知り合いの屋敷を訪ね、離れにある茶室で額に入った山岡鉄舟の書を見せていただき、神郡の話をうかがった。かなり高齢化が進み、あちこち跡継ぎ問題があるとのこと。皆な神妙な面持ちで聞いていた。 そして中心拠点、神秘的な雰囲気が漂う場所、石蔵Shitenを見学した。ここで、11月3日(金)、4日(土)、5日(日)に、『金色姫伝説旅行記』のイベントをやると説明したら、元アイドルグループの1人は「私も出演したい! 」と言ってきた。そのとき、私はある作品を思い出した。 ソフィア・ロ一レン主演『アラベスク』 アラビア風の唐草模様を意味するタイトル、スタンリー・ド一ネン監督、グレゴリー・ペック、ソフィア・ロ一レン主演の『アラベスク』(1966)。この作品は、人間関係と話が複雑でわかりにくいのだが、それでいて面白く見られる仕上がりなのだ。 大学教授ポロックが、謎の男から、古代アラビアの象形文字の解読を強引に依頼される。手のひらに収まる紙片に描かれた象形文字。この紙片をめぐり争奪戦が繰り広げられる。だから観客は、象形文字の謎解きが重要なのだと思い込む。ところが、実はそうではないドンデン返しがラスト近くで判明するのである。 今度のイベントも、「金色姫伝説」と「うつろ舟事件」の謎解きが目的と思わせておいて、ドンデン返しを仕掛けたいと思った。 夕方、彼女たちは目的を達し大満足で帰っていった。どうやら、つくばと「金色姫伝説」はダシで、実はただ小旅行と買い物と食事を楽しみたかっただけなのかもしれない。サイコドン ハ トコヤン サノセ。(脚本家)

金色姫伝説 謎解きツアー《映画探偵団》69

【コラム・冠木新市】「同級生3人でつくばへ遊びに行きたいので案内してくれますか?」と、今は40歳となった女子大生の教え子から突然電話が来た。つくばがテレビで話題になっているらしい。ちょうど『世界のつくばで子守唄』の準備で忙しい時だったけれど、母親になった彼女たちが、つくばでどんな反応を見せるか興味があり、引き受けた。 3人は「サザコ一ヒ一をつくばで飲みたい」「フ一フ一スパゲッティを食べたい」「おいしいパンを買いたい」と、特に食べ物への関心が強かった。つくばを1日で回るのは無理なため、①つくばセンター地区とその周辺、②研究学園と筑波山、③つくば古道と金色姫伝説めぐり―の3コ一スを作成し、選ばせた。すると、うれしいことに③を選んできた。 6月11日(日) 9時、つくばセンターのサザに集合し、モ一ニングコ一ヒ一を飲んだあと、ホテル日航つくばの「つくたび」開発者2人を加えて計7名、車2台で「金色姫伝説モニターツアー」に出発した。 つくば古道に向かう車中、緑の木々を見て3人が「癒やされるう〜」と同時に声を上げた。シン・旧住民の私には見慣れた景色だが、外から来た彼女たちにとっては新鮮な光景に映ったようだ。緑の木々も観光資源になるのだと改めて感じさせられた。 まんじゅう販売したら売れる 始めに訪れたのは、「つくば古道」入口の北条にある国登録有形文化財・宮清大蔵だ。店主の宮本清さんが、元醤油醸造所の仕組みを説明、蔵で記録映画を上映してくれた。終了後、子宝に恵まれる妊婦の形をした「はら宿りの木」を皆でなでる。3人の子持ちの1人は触らなかったが…。 次に平沢官衙遺跡に移動し、散策した後、すぐ近くにあるつくばワイナリーで担当者からブドウ畑の説明を受け、ワインの試飲。早速、3人はワインを購入した。 それから神郡・蚕影山(こかげさん)神社に向かい、ここで、私が金色姫伝説の由来を語った。200段はある階段を登リ下ったあと、1人が「ここでまんじゅう販売したら売れますよね」と言った。階段を登ったあとには甘い物が欲しくなる、確かにそうだなと思った。 続いて知り合いの屋敷を訪ね、離れにある茶室で額に入った山岡鉄舟の書を見せていただき、神郡の話をうかがった。かなり高齢化が進み、あちこち跡継ぎ問題があるとのこと。皆、神妙な面持ちで聞いていた。 そして中心拠点、神秘的な雰囲気が漂う場所、石蔵Shitenを見学した。ここで、11月3日(金)、4日(土)、5日(日)に、『金色姫伝説旅行記』のイベントをやると説明したら、元アイドルグループの1人は「私も出演したい! 」言ってきた。そのとき、私はある作品を思い出した。 ソフィア・ロ一レン主演『アラベスク』 アラビア風の唐草模様を意味するタイトル、スタンリー・ド一ネン監督、グレゴリー・ペック、ソフィア・ロ一レン主演の『アラベスク』(1966)。この作品は、人間関係と話が複雑でわかりにくいのだが、それでいて面白く見られる仕上がりなのだ。 大学教授ポロックが、謎の男から、古代アラビアの象形文字の解読を強引に依頼される。手のひらに収まる紙片に描かれた象形文字。この紙片をめぐり争奪戦が繰り広げられる。だから観客は、象形文字の謎解きが重要なのだと思い込む。ところが、実はそうではないドンデン返しがラスト近くで判明するのである。 今度のイベントも、「金色姫伝説」と「うつろ舟事件」の謎解きが目的と思わせておいて、ドンデン返しを仕掛けたいと思った。 夕方、彼女たちは目的を達し大満足で帰っていった。どうやら、つくばと「金色姫伝説」はダシで、実はただ小旅行と買い物と食事を楽しみたかっただけなのかもしれない。サイコドン ハ トコヤン サノセ。(脚本家)

『金色姫伝説旅行記』を準備中《映画探偵団》68

【コラム・冠木新市】今から220年前の享和3年(1803)。常陸国の海岸で不思議な事件が起きた。球体の舟に乗った髪の長い異国の女性が漂着したからだ。舟には奇妙な記号が描かれており、女性は謎の玉手箱を手にしていた。この出来事は当時、瓦版となり「うつろ舟事件」として江戸中で話題になったという。 その後、この事件は、インドから流れて来て養蚕を伝えたという筑波・神郡の『金色姫伝説』と結びつき、現代ではUFO遭遇事件として知られている(コラム21=2021年7月14日掲載=参照)。 現在『金色姫伝説旅行記/つくばシルクロード2023』のア一トイベントを準備中である。不思議大好きな私は、15年程前から「金色姫伝説」と「うつろ舟事件」に興味を持ち、なぜ二つの出来事が一つに結びついたのだろうかと探ってきた。 すると「うつろ舟事件」を『兎園小説』で紹介した読本作家・滝沢馬琴の存在が浮かび上がり、馬琴作の『南総里見八犬伝』とも関連してくることが分かったのである。 実は「金色姫伝説」を知る以前、アヘン戦争時に日本人は何を考えていたかを立体紙芝居『北斗七星伝』として、葛飾北斎、滝沢馬琴、二宮尊徳などを取り上げたことがある。日本科学未来館や慶應大学や浅草のシアターなどで公演したが、そのときは「金色姫伝説」と結びついてくるとは予想だにしなかった。 ポランスキー監督の『チャイナタウン』 数年前、それを知ったとき、公開から50年近く経ち、古典として輝きを増しているロマン・ポランスキー監督『チャイナタウン』(1974)を思い出した。 時は1930年代後半。所は米カリフォルニア州ロサンゼルス。元警官で今は探偵事務所を経営するギティス(ジャック・ニコルソン)は、浮気調査を依頼される。調査を進めるうちに、水道局長が殺され事件に巻き込まれていく。ギティスは警官時代にチャイナタウンで過ごした。 劇中、度々チャイナタウンの話題が出てくる。けれども、画面上にチャイナタウンが出てくるのはラストシーンだけである。しかし 執事や庭師などに中国人の役者を配し、全篇にチャイナタウンの怪しい雰囲気が漂う。 さらに、街のダム建設話から、水利権をめぐる行政と警察と経営者との癒着問題が浮かび上がる。そして、殺人事件と水問題をめぐる複雑な人間関係の象徴がチャイナタウンであると徐々に分かってくる。 イベントなどで「金色姫伝説」と「うつろ舟」を同時に取り上げることは意外に少ない。民俗学的な伝説とSF的なUFOとを同じ舞台で語るのには、まだまだ抵抗があるのかもしれない。いや、そんなことよりも、「金色姫伝説」を探っていくと、映画『チャイナタウン』みたいな世界へとつながるのではと妄想してしまう。私の「金色姫伝説」の旅は続く。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

『金色姫伝説旅行記』を準備中《映画探偵団》68

【コラム・冠木新市】今から220年前の享和3年(1803)。常陸国の海岸で不思議な事件が起きた。球体の舟に乗った髪の長い異国の女性が漂着したからだ。舟には奇妙な記号が描かれており、女性は謎の玉手箱を手にしていた。この出来事は当時、瓦版となり「うつろ舟事件」として江戸中で話題になったという。 その後、この事件は、インドから流れて来て養蚕を伝えたという筑波・神郡の『金色姫伝説』と結びつき、現代ではUFO遭遇事件として知られている(コラム21=2021年7月14日掲載=参照)。 現在『金色姫伝説旅行記/つくばシルクロード2023』のア一トイベントを準備中である。不思議大好きな私は、15年程前から「金色姫伝説」と「うつろ舟事件」に興味を持ち、なぜ二つの出来事が一つに結びついたのだろうかと探ってきた。 すると「うつろ舟事件」を『兎園小説』で紹介した読本作家・滝沢馬琴の存在が浮かび上がり、馬琴作の『南総里見八犬伝』とも関連してくることが分かったのである。 実は「金色姫伝説」を知る以前、アヘン戦争時に日本人は何を考えていたかを立体紙芝居『北斗七星伝』として、葛飾北斎、滝沢馬琴、二宮尊徳などを取り上げたことがある。日本科学未来館や慶應大学や浅草のシアターなどで公演したが、そのときは「金色姫伝説」と結びついてくるとは予想だにしなかった。 ポランスキー監督の『チャイナタウン』 数年前、それを知ったとき、公開から50年近く経ち、古典として輝きを増しているロマン・ポランスキー監督『チャイナタウン』(1974)を思い出した。 時は1930年代後半。所は米カリフォルニア州ロサンゼルス。元警官で今は探偵事務所を経営するギティス(ジャック・ニコルソン)は、浮気調査を依頼される。調査を進めるうちに、水道局長が殺され事件に巻き込まれていく。ギティスは警官時代にチャイナタウンで過ごした。 劇中、度々チャイナタウンの話題が出てくる。けれども、画面上にチャイナタウンが出てくるのはラストシーンだけである。しかし 執事や庭師などに中国人の役者を配し、全篇にチャイナタウンの怪しい雰囲気が漂う。 さらに、街のダム建設話から、水利権をめぐる行政と警察と経営者との癒着問題が浮かび上がる。そして、殺人事件と水問題をめぐる複雑な人間関係の象徴がチャイナタウンであると徐々に分かってくる。 イベントなどで「金色姫伝説」と「うつろ舟」を同時に取り上げることは意外に少ない。民俗学的な伝説とSF的なUFOとを同じ舞台で語るのには、まだまだ抵抗があるのかもしれない。いや、そんなことよりも、「金色姫伝説」を探っていくと、映画『チャイナタウン』みたいな世界へとつながるのではと妄想してしまう。私の「金色姫伝説」の旅は続く。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》21 桜川流域の「金色姫伝説」と宇宙人

【コラム・冠木新市】桜川流域に残る「金色姫伝説」を10数年前に知った。アートイベントの題材に最高だと思った。しかし当時、伝説の地元であるつくば市神郡では、紙芝居作りなどの活動中だったので、遠慮することにした。その後の様子を観察していると、いまひとつ盛り上がらない印象を受けた。ある日地元の画家と会話し、私と同じ思いだと分かった。 伝説は、蚕影山(こかげさん)吉祥院桑林寺(そうりんじ)縁起『戒言(かいこ)』に出てくる。天竺仲国(てんじくは今のインド)霖夷(りんい)大王の娘、金色姫は、継母から残酷な仕打ちを受ける。1度目は悪獣のいる獅子吼山へ、2度目は鷹の群がる鷹群山へ、3度目は絶海の孤島で草木も生えない海巌山へと流され、4度目には内裏(だいり)の庭の深い穴へと落とされる。 けれども不思議と金色姫は生き延びる。姫の身を案じた大王は「仏法繁盛の国へ行き衆生(しゅじょう)を済度(さいど)せよ」と、丸木で作られたうつぼ舟に乗せ、海へと送り出す。姫は常陸の国へと流れ着き、権太夫夫婦に助けられる。だが姫は長旅の疲れから病気になり、すぐ亡くなってしまう。その後、権太夫は夢のお告げを聞き、遺体を納めた唐櫃(からびつ)を開けると、姫は小さな蚕と化していた。 これが養蚕発祥の地に残る伝説なのだが、昭和の貸本屋文化で育った私には、これもでかこれでもかと継母の虐待に耐えたインドでの金色姫に興味が湧く。神郡に舞台が移り、姫があっけなく死んでしまうのは尻つぼみではないか。神郡のアピール度が不足気味の伝説だ。しかし、「金色姫伝説」はその後、変容の道をたどる。 伝説はSF映画の世界へ 享和三年(1803)、うつろ舟に乗った髪の長い美女が玉手箱を抱かえて、常陸の海辺に漂着する。これが江戸の瓦版で報道され話題となる。また22年後、読本作家の滝沢馬琴が『兎園小説』で「うつろ舟の蛮女」として紹介する。さらに2年後、馬琴は星福寺(茨城県神栖市)から、蚕神である衣笠明神錦絵の画賛の依頼を受ける(寺の本尊は金色姫)。 錦絵は江戸で人気を呼ぶ。いつしか「金色姫伝説」と「うつろ舟事件」がゆるやかに結びついてくるわけだが、伝説の変容はまだまだ終わらない。平成に入ると、謎の美女が乗ったうつろ舟が球体でUFOの形に似ているところから、美女は地球外から飛来してきたとなる。つまり、金色姫は宇宙人となり、伝説はSF映画の世界へと広がるのだ。 2014年、私は『つくつくつくばの七不思議サイコドン』(ACCS)で、「金色姫伝説」をテーマに映像実験を試みた。若者が縁結びの石を探して、つくばを旅するお話である。 若者は平沢官衙で突然謎の光に包まれ、昭和13年(1938)の満州にタイムスリップする。そこで、筑波小田出身の満州映画協会筆頭理事、根岸寛一と出会う。若者は、根岸から満映の新人スター李香蘭主演で『金色姫伝説』の映画化計画を聞かされる。最終回は、現代に戻った若者が、つくばセンター広場でUFOに乗った金色姫と出会うシーンで終わる。 インドから日本そして宇宙。「金色姫伝説」は桜川文化圏で一番スケールの大きな物語だと思う。サイコドン ハ トコヤンセ。(脚本家) ➡冠木新市さんの過去のコラムはこちら

金色姫がつなぐ日印の糸 著者迎え、つくばで交流の朗読会

【相澤冬樹】つくば市神郡の蚕影(こかげ)神社に伝わる伝説に材をとった土浦市在住の作家、佐賀純一さんの著作「金色姫と蚕の物語」の朗読会が6日、つくば市吉瀬のつくば文化郷で開かれた。日印女子フォーラム、茨城県郷土文化振興財団などが実行委員会をつくっての開催。会場には佐賀さん自身が駆けつけ、金色姫伝説の背景にあった日本とインドの近しさを語るなどした。 金色姫伝説は日本に養蚕が伝わった起源をたどる物語。天竺(インド)で受難にあった金色姫は、海に逃れて常陸国筑波の豊浦に漂着、権太夫という漁師に助けられる。やがて亡くなると、自らの骸(むくろ)をもって桑の葉を食うカイコとなり、糸をつむいで絹をつくるまでを権太夫夫妻に伝授する。姫への感謝から建てられたのが蚕影神社だ。 佐賀さんはこれを翻案し小説化、『筑波山愛ものがたり』(2006年、常陽新聞新社刊)に収めた。日印女子フォーラムの大場多美子代表の朗読で、筑波山はじめ、県内に3カ所残る養蚕にまつわる神社やインドで撮られた写真のスライドショーともども上演された。 ガンディー生誕150周年のSDGs事業 朗読後、大場代表はこの企画がインド独立の父、マハトマ・ガンディー(1869 - 1948年)の生誕150周年にちなむことを強調した。インドでは今日、カシミヤやシルク、ガディなどの織物が各地でさかんに作られているが、英国の植民地時代、圧政で取り上げられた糸車を探しだし、技術を伝えたガンディーの偉業抜きに考えられないそうだ。 これを受け継ぐ形で同フォーラムは、生活困窮者や女性の自立のためにハンドメイドの生地づくり事業を支援している。「糸をつむぎ織り上げることを通じて、SDGs(持続可能な開発目標)達成をめざしている」といい、金色姫を縁につくばでの展開も考えている。同事業で日印をつなぐ活動をしているIRAKOI(イラコイ)社代表のシウリ・ロイさんが、現地で織られたさまざまな素材を持ち込んで紹介した。 催事の締めくくりで佐賀さんは「日本とインドの間には今、すごい距離感があるが、空海の時代までさかのぼると、インドはもっと身近で、当時の仏教にも濃密な影響を残していた。か細い糸をたぐって、本当は近くにあるインドを見つけ出したい」と語った。

世界のつくばで子守唄を終えて《映画探偵団》66

【コラム・冠木新市】7月1日、『世界のつくばで子守唄/海のシルクロード・ツアー2023』をホテル日航つくばで開催した。2日前から参加希望者が急に増え、満員のため30名ほどお断りした。外国人は67名でその子どもたちも含めると80名近くになった。参加者は計200名だった。17カ国の人が参加し民族衣装がカラフルで美しかった。 予想以上の反響で戸惑った。中でも「ただの子守唄コンサ一トだと思って来たら違っていた」「アジアを旅する気分になった」という声が多く聞かれた。多分、アジアの子守唄の合間に『金色姫伝説』を入れたからだと思う。 つくば市神郡(かんごおり)に残された『金色姫伝説』は「金色姫が天竺で4度にわたり継母から殺されそうになった話」と「金色姫がたどり着いた神郡で病死し蚕となる話」で構成されている。途中の「金色姫航海の話」が欠けている伝説なのだ。この金色姫の航海を子守唄でまがりなりにも再現したので予想と異なっていたのだと思う。 森繁久弥主演の「社長シリーズ」 東宝映画の森繁久弥主演の「社長シリーズ」は『へそくり社長』(1956)に始まり『続・社長学ABC』(1970)まで14年間続き33本作られた。ただし1963年頃からは植木等の「日本一シリーズ」に人気が移り始めていた。私は植木等の世代なので社長シリーズはあまり見ていなかった。社長シリーズには、いつも芸者役が出てくるため、「芸者文化史/銀幕の芸者たち」の社会人講座をするためまとめて見た。そこには高度成長期における日本人の仕事ぶりが面白おかしく描かれていた。 毎回設定が異なる社長シリーズは「正篇」「続篇」2本で1つの物語になっていて、日本の観光地や香港やハワイなどの海外が出てくる観光映画となっている。 森繁久弥が演じる社長はバリバリ働くが、芸者やバーのマダムにほれる浮気ぐせがある。秘書役の小林桂樹は真面目で社長に尽くすが、夜の宴会まで付き合わされるので、自分の時間が奪われボヤキ気味である。加東大介の部長は堅物で社長もいささかもて余し気味だ。同じく部長の三木のり平は「パッといきましょう!」が口ぐせで会社の費用でお酒を飲むのが楽しみの宴会部長。そして英語混じりで変な日本語を話す日系2世役のフランキー堺はいつも突飛(とっぴ)な行動を見せる。 5人が宴会でやる余興場面がこの作品の見世場となっている。それぞれ主演級の役者が丁々発止と演じる様は、裏読みすると役者同士の演技合戦にも見え、実にスリリングである。しかし全体のシ一ンの意味を心得た上での演技なので、抑制も効いていて気持ちがよい。 終始笑いに満ちた実行委員会 今回のイベントを終え、思い出したのがこの社長シリーズだった。実行委員の皆さんが、こちらが細かいことを言わなくても動いてくれるため、いつの間にか外遊する森繁久弥演じる社長の気分にさせられた。終始笑いに満ちた実行委員会だった。 イベントは、金色姫が筑波・神郡についたところで、「つづく」と締めくくった。社長シリーズは「正」「続」2本で1つの話。だから次は『金色姫伝説』の筑波篇を予定している。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

世界のつくばで子守唄を終えて《映画探偵団》66

【コラム・冠木新市】7月1日、『世界のつくばで子守唄/海のシルクロード・ツアー2023』をホテル日航つくばで開催した。2日前から参加希望者が急に増え、満員のため30名ほどお断りした。外国人は67名でその子どもたちも含めると80名近くになった。参加者は計200名だった。17カ国の人が参加し民族衣装がカラフルで美しかった。 予想以上の反響で戸惑った。中でも「ただの子守唄コンサ一トだと思って来たら違っていた」「アジアを旅する気分になった」という声が多く聞かれた。多分、アジアの子守唄の合間に『金色姫伝説』を入れたからだと思う。 つくば市神郡(かんごおり)に残された『金色姫伝説』は「金色姫が天竺で4度にわたり継母から殺されそうになった話」と「金色姫がたどり着いた神郡で病死し蚕となる話」で構成されている。途中の「金色姫航海の話」が欠けている伝説なのだ。この金色姫の航海を子守唄でまがりなりにも再現したので予想と異なっていたのだと思う。 森繁久弥主演の「社長シリーズ」 東宝映画の森繁久弥主演の「社長シリーズ」は『へそくり社長』(1956)に始まり『続・社長学ABC』(1970)まで14年間続き33本作られた。ただし1963年頃からは植木等の「日本一シリーズ」に人気が移り始めていた。私は植木等の世代なので社長シリーズはあまり見ていなかった。社長シリーズには、いつも芸者役が出てくるため、「芸者文化史/銀幕の芸者たち」の社会人講座をするためまとめて見た。そこには高度成長期における日本人の仕事ぶりが面白おかしく描かれていた。 毎回設定が異なる社長シリーズは「正篇」「続篇」2本で1つの物語になっていて、日本の観光地や香港やハワイなどの海外が出てくる観光映画となっている。 森繁久弥が演じる社長はバリバリ働くが、芸者やバーのマダムにほれる浮気ぐせがある。秘書役の小林桂樹は真面目で社長に尽くすが、夜の宴会まで付き合わされるので、自分の時間が奪われボヤキ気味である。加東大介の部長は堅物で社長もいささかもて余し気味だ。同じく部長の三木のり平は「パッといきましょう!」が口ぐせで会社の費用でお酒を飲むのが楽しみの宴会部長。そして英語混じりで変な日本語を話す日系2世役のフランキー堺はいつも突飛(とっぴ)な行動を見せる。 5人が宴会でやる余興場面がこの作品の見世場となっている。それぞれ主演級の役者が丁々発止と演じる様は、裏読みすると役者同士の演技合戦にも見え、実にスリリングである。しかし全体のシ一ンの意味を心得た上での演技なので、抑制も効いていて気持ちがよい。 終始笑いに満ちた実行委員会 今回のイベントを終え、思い出したのがこの社長シリーズだった。実行委員の皆さんが、こちらが細かいことを言わなくても動いてくれるため、いつの間にか外遊する森繁久弥演じる社長の気分にさせられた。終始笑いに満ちた実行委員会だった。 イベントは、金色姫が筑波・神郡についたところで、「つづく」と締めくくった。社長シリーズは「正」「続」2本で1つの話。だから次は『金色姫伝説』の筑波篇を予定している。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

子守唄で境界線が解けていく《映画探偵団》65

【コラム・冠木新市】「第1回 世界のつくばで子守唄/海のシルクロード・ツアー2023」(7月1日)まであと2週間となった。初めは「子守唄コンサート亅が目的だったが、その後、「子守唄を通じて世界の人々との交流する場をつくる」に変わった。 実行委員会には外国人が必ず参加し、交流を深めた。さらに、外国人の歌い手同士の交流もいつの間にか始まっていた。マレーシア、インドネシア、ミャンマー、中国、台湾など人。国を超えた交流は、「アジアが一つ」に見えてわくわくさせられる。 定員を30名増やし160名にしたが、残りは10席を切った。関係者に遠慮してもらい、いろんな人に参加してもらおうと思っている。当初、参加者は日本人と外国人半分ずつと考えていた。だが、帰化した人や日本人と外国人の間に生まれた子どもをどちらに入れるか判断がつかなくなった。 コッポラ監督の『コットンクラブ』 日本人と外国人と分ける発想自体が古いのだと肌で実感できた。いや、この感覚を以前に映画で味わったことがある。フランシス・フォ一ド・コッポラ監督の『コットンクラブ』(1984)でだ。 1928年に始まるこのドラマの主人公は2人いる。白人のトランペット吹きデキシ一(リチャード・ギア)と黒人タップダンサーのサンドマン(グレゴリー・ハインズ)だ。しかし、2人は顔見知り程度で、最後まで直接交流するシ一ンは無いに等しい。そして、2人の恋愛や兄弟間のいざこざを描く舞台になるのが「コットンクラブ」である。 黒人のショ一を見せ、白人の客だけのクラブには、2人に関係する人物や、暗黒街のボスたち、実在した映画スタアのグロリア・スワンソン、チャ一リ一・チャップリンらが続々と集まってくる。つまり、1軒のクラブに主人公の知人と他人、無名人と有名人、黒人と白人、芸人と経営者などなど、この現実世界の人間関係をぎゅっと詰め込んでいる。 では、監督コッポラは、そうした混沌(こんとん)とした人間関係と舞台を使って何を、描こうとしたのか。それが分かるのは長いラストシーンを迎えてからである。タップダンス・シーンと暗黒街のボスを暗殺するマシンガンのカットバックの後、結婚式を終えたサンドマンたちが教会の階段をドッと降りてくる。 また、暗殺されたボスの棺おけが運ばれていく場面。デキシ一が駅で母親に別れをつげたあと、列車が待つホ一厶で恋人と再会する場面。以上の明暗重なる場面に、コットンクラブのステージショ一がカットバックされる複雑なフィナ一レ。 現実のドラマの部分とステージショ一の部分をたたみ込む演出で、あら不思議、ドラマとステージショ一の境界線が消滅し、白人と黒人の世界が融合してしまうのだ。現実の人生と虚構の舞台は微妙に結びついているというコッポラ監督のメッセ一ジも伝わってくる。 英語と正調茨城弁で進行 当日は会場を海に、16テ一ブルを島に見立て、金色姫が乗ったうつろ舟が回っていく。ナビゲーターは、英語と正調茨城弁で進行する。もちろん歌は外国語である。歌い手は全員客席に座る。どんな雰囲気になるのか全く予想がつかない。ちなみに、偉い人の挨拶はない。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

子守唄で境界線が解けていく《映画探偵団》65

【コラム・冠木新市】「第1回 世界のつくばで子守唄/海のシルクロード・ツアー2023」(7月1日)まであと2週間となった。初めは「子守唄コンサート亅が目的だったが、その後、「子守唄を通じて世界の人々との交流する場をつくる」に変わった。 実行委員会には外国人が必ず参加し、交流を深めた。さらに、外国人の歌い手同士の交流もいつの間にか始まっていた。マレーシア、インドネシア、ミャンマー、中国、台湾など人。国を超えた交流は、「アジアが一つ」に見えてわくわくさせられる。 定員を30名増やし160名にしたが、残りは10席を切った。関係者に遠慮してもらい、いろんな人に参加してもらおうと思っている。当初、参加者は日本人と外国人半分ずつと考えていた。だが、帰化した人や日本人と外国人の間に生まれた子どもをどちらに入れるか判断がつかなくなった。 コッポラ監督の『コットンクラブ』 日本人と外国人と分ける発想自体が古いのだと肌で実感できた。いや、この感覚を以前に映画で味わったことがある。フランシス・フォ一ド・コッポラ監督の『コットンクラブ』(1984)でだ。 1928年に始まるこのドラマの主人公は2人いる。白人のトランペット吹きデキシ一(リチャード・ギア)と黒人タップダンサーのサンドマン(グレゴリー・ハインズ)だ。しかし、2人は顔見知り程度で、最後まで直接交流するシ一ンは無いに等しい。そして、2人の恋愛や兄弟間のいざこざを描く舞台になるのが「コットンクラブ」である。 黒人のショ一を見せ、白人の客だけのクラブには、2人に関係する人物や、暗黒街のボスたち、実在した映画スタアのグロリア・スワンソン、チャ一リ一・チャップリンらが続々と集まってくる。つまり、1軒のクラブに主人公の知人と他人、無名人と有名人、黒人と白人、芸人と経営者などなど、この現実世界の人間関係をぎゅっと詰め込んでいる。 では、監督コッポラは、そうした混沌(こんとん)とした人間関係と舞台を使って何を、描こうとしたのか。それが分かるのは長いラストシーンを迎えてからである。タップダンス・シーンと暗黒街のボスを暗殺するマシンガンのカットバックの後、結婚式を終えたサンドマンたちが教会の階段をドッと降りてくる。 また、暗殺されたボスの棺おけが運ばれていく場面。デキシ一が駅で母親に別れをつげたあと、列車が待つホ一厶で恋人と再会する場面。以上の明暗重なる場面に、コットンクラブのステージショ一がカットバックされる複雑なフィナ一レ。 現実のドラマの部分とステージショ一の部分をたたみ込む演出で、あら不思議、ドラマとステージショ一の境界線が消滅し、白人と黒人の世界が融合してしまうのだ。現実の人生と虚構の舞台は微妙に結びついているというコッポラ監督のメッセ一ジも伝わってくる。 英語と正調茨城弁で進行 当日は会場を海に、16テ一ブルを島に見立て、金色姫が乗ったうつろ舟が回っていく。ナビゲーターは、英語と正調茨城弁で進行する。もちろん歌は外国語である。歌い手は全員客席に座る。どんな雰囲気になるのか全く予想がつかない。ちなみに、偉い人の挨拶はない。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

世界のつくばで子守唄の旅 《映画探偵団》63

【コラム・冠木新市】『木枯し紋次郎』は、マカロニウェスタンに刺激を受けた作家、笹沢左保が1971年に股旅(またたび)小説として発表。翌1972年、アメリカのニューシネマ調の股旅時代劇を構想中だった映画監督、市川崑によって映像化され、フジレビで放映が始まった。  峠道を三度笠(さんどがさ)姿の旅人が、画面奥から黙々とこちらに向かって歩いてくる。フォ一ク調の主題歌「だれかが風の中で」が流れ、旅暮らしの日々が短く挿入されるタイトルバック。それまでの股旅時代劇を一変する演出に、多くの視聴者がくぎ付けになった。 つくばセンタービルは間もなく40周年を迎える。ラテン語で新星を意味するノバホ一ルと、水の広場との関係が新生児(赤ちゃん)を象徴していると考え、『世界のつくばで子守唄/海のシルクロード・ツアー 2023』というコンサートを企画した。 ①インド②スリランカ③バングラディシュ④ミャンマー⑤タイ⑥マレーシア⑦シンガポール⑧ベトナム⑨中国⑩香港⑪台湾⑫日本(沖縄)⑬筑波(つくば筑波山麓)には、インドの金色姫が継母の迫害にあい、うつろ舟に乗り筑波に流れついて、養蚕を伝えた伝説が残されている。 金色姫の航海ルート、海のシルクロード地域の子守唄を現地の言葉で歌ったら、世界とつくばを結ぶのにふさわしい企画かと思えた。 外国人と一般市民との交流の場がない 140カ国、約1万人の外国人がつくばで暮らしている。多角的に活動している実行委員が集まれば、歌い手はすぐ見つかるだろうと思ったが、それが間違いだと気付かされた。世界のつくばだから、外国人と交流しているグループがあると思ったが、これもはずれだった。 結局、歌い手探しの旅が始まる。ツテをたどって実行委員と1人ずつ当たるしか方法はなかつた。 つくばの森にあるインターナショナルスクールの先生。下妻市の外国人支援組織の代表。日本に帰化したタイ人が経営するお店。筑波大学出身者を中心にしたスリランカ人が集うお正月まつり。野口雨情の歌を愛する中国人のカフェマスターなどなど。 そうした人たちとの出会いを重ねるうちに、つくば市には外国人と一般市民との交流の場がほとんどないことを知った。つくばに住んで30年。私はもっと交流があるものだと勝手に思いこんでいた。実行委員の1人は、外国人の「いっぱい知っているから紹介してあげるよ」との言葉から、何度もカレーを食べに行ったが、結果にはつながらなかった。 外国人に会いに出かけるときには、『木枯し紋次郎』の主題歌が思い起こされた。「どこかで だれかが きっと 待って いて くれる」「きっと おまえは 風の中で 待って いる」 初めは、紋次郎になった気分でいたが、今では、つくばに暮らす外国人が、金色姫であり、紋次郎だと思えるようになった。私は歌い手よりも、金色姫と紋次郎を探していたのかもしれない。歌い手はあと一地域残すのみとなった。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

世界のつくばで子守唄の旅 《映画探偵団》63

【コラム・冠木新市】『木枯し紋次郎』は、マカロニウェスタンに刺激を受けた作家、笹沢左保が1971年に股旅(またたび)小説として発表。翌1972年、アメリカのニューシネマ調の股旅時代劇を構想中だった映画監督、市川崑によって映像化され、フジレビで放映が始まった。 峠道を三度笠(さんどがさ)姿の旅人が、画面奥から黙々とこちらに向かって歩いてくる。フォ一ク調の主題歌「だれかが風の中で」が流れ、旅暮らしの日々が短く挿入されるタイトルバック。それまでの股旅時代劇を一変する演出に、多くの視聴者がくぎ付けになった。 つくばセンタービルは間もなく40周年を迎える。ラテン語で新星を意味するノバホ一ルと、水の広場との関係が新生児(赤ちゃん)を象徴していると考え、『世界のつくばで子守唄/海のシルクロード・ツアー 2023』というコンサートを企画した。 ①インド②スリランカ③バングラディシュ④ミャンマー⑤タイ⑥マレーシア⑦シンガポール⑧ベトナム⑨中国⑩香港⑪台湾⑫日本(沖縄)⑬筑波(つくば筑波山麓)には、インドの金色姫が継母の迫害にあい、うつろ舟に乗り筑波に流れついて、養蚕を伝えた伝説が残されている。 金色姫の航海ルート、海のシルクロード地域の子守唄を現地の言葉で歌ったら、世界とつくばを結ぶのにふさわしい企画かと思えた。 外国人と一般市民との交流の場がない 140カ国、約1万人の外国人がつくばで暮らしている。多角的に活動している実行委員が集まれば、歌い手はすぐ見つかるだろうと思ったが、それが間違いだと気付かされた。世界のつくばだから、外国人と交流しているグループがあると思ったが、これもはずれだった。 結局、歌い手探しの旅が始まる。ツテをたどって実行委員と1人ずつ当たるしか方法はなかつた。 つくばの森にあるインターナショナルスクールの先生。下妻市の外国人支援組織の代表。日本に帰化したタイ人が経営するお店。筑波大学出身者を中心にしたスリランカ人が集うお正月まつり。野口雨情の歌を愛する中国人のカフェマスターなどなど。 そうした人たちとの出会いを重ねるうちに、つくば市には外国人と一般市民との交流の場がほとんどないことを知った。つくばに住んで30年。私はもっと交流があるものだと勝手に思いこんでいた。実行委員の1人は、外国人の「いっぱい知っているから紹介してあげるよ」との言葉から、何度もカレーを食べに行ったが、結果にはつながらなかった。 外国人に会いに出かけるときには、『木枯し紋次郎』の主題歌が思い起こされた。「どこかで だれかが きっと 待って いて くれる」「きっと おまえは 風の中で 待って いる」 初めは、紋次郎になった気分でいたが、今では、つくばに暮らす外国人が、金色姫であり、紋次郎だと思えるようになった。私は歌い手よりも、金色姫と紋次郎を探していたのかもしれない。歌い手はあと一地域残すのみとなった。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

筑波懐古から始まるおカイコライブ 18日に農研機構冬の一般公開

農研機構(本部・つくば市観音台)の「冬の一般公開2023」は18日、昨秋に続きオンライン開催で行われる。「​光るシルクを生み出す家畜!? おカイコ」がテーマだが、最先端の研究現場をのぞく前に、ちょっと道草して古い縁起からひもとく趣向がある。ウィズコロナ時代のオンラインコミュニケーションに、少しだけ懐古趣味、地元回帰の要素を盛り込んだ。 今回の一般公開を担当するのは、生物機能利用研究部門の絹糸昆虫高度利用研究領域カイコ基盤技術開発グループ。笠嶋めぐみ上級研究員ら4人が進行役を務め、プログラムの冒頭は茨城県に伝わる養蚕伝承「金色姫」の話から始めるという。 同研究部門は、つくばに移転してきた1980年時点では蚕糸(さんし)試験場といい、88年の改組で蚕糸・昆虫機能研究所となり、2001年の独立行政法人化で農業生物資源研究所に改編されるまで「蚕糸研」と呼ばれた。絹を生み出すカイコの交配や生態解明を遺伝子レベルから研究してきた。 この経緯から、筑波山麓の同市神郡にある、養蚕をまつる蚕影(こかげ)神社を訪れる研究者が少なくなかった。所長を務めた木村滋さん(2022年死去)らだ。神社に伝わるのが「金色姫」の縁起で、天竺(インド)での受難劇、UFOを思わせるうつろ舟での漂着などの物語が作家や民俗学者らを引き寄せてきた。同様の伝承は県内の神栖市、日立市の神社にもある。 蚕影神社じたいは無住で荒廃久しいが、筑波山神社が春・秋に例祭を催しており、地域の女性たちが繭や真綿の手工芸品を作って奉納に訪れるなど、根強い信奉が見られる。 農研機構によれば、「養蚕の歴史が奈良時代からある茨城県で、新しいカイコ研究を行っている研究所というイントロダクションを用意した」そうで、御物法隆寺錦(正倉院御物)で聖徳太子の妃である膳妃(かしわでのきさき)の帯と伝わる蜀江錦の織物なども紹介するという。 オンライン公開は「ニコニコ生放送」とのコラボで18日午後1時から生中継。番組では普段見る機会のない実験室の様子、デモンストレーション実験などが公開される。クラゲやサンゴなどの蛍光タンパク質の遺伝子を利用して「光る糸を作るカイコ」をはじめ、新たな産業として期待されている研究が紹介される。 また、午前11時からは「ニコニコサイエンス」で「飼育観察ライブ」を配信する。午後5時までかけて、カイコの幼虫が繭を作る様子や繭から羽化する様子の観察する配信が行われるそうだ。(相澤冬樹) ◆農研機構「冬の一般公開 2023」特設ウェブページはこちら

つくばシルクロード 《映画探偵団》60

【コラム・冠木新市】映画史に燦然(さんぜん)と輝く『マッドマックス』シリーズ。来年には、第5作『マッドマックス ザ・ウエイストランド』が公開される。 第1作『マッドマックス』(1979)はオ一ストラリア映画として低予算で製作され、世界中で大ヒットした。その当時、私はポスターのイラストがチ一プだったため、警官と暴走族が争う、ただのカ一アクション映画かと思い見なかった。 ところが、第2作『マッドマックス2』(1981)を見て仰天する。核戦争後の石油不足の近未来が舞台で、元警官マックスと暴走族ヒューマンガス一味とのガソリンをめぐる戦いが斬新に描かれていたからだ。近未来なのに古代神話を思わせる不思議な作りで、なぜか懐かしい思いにとらわれた。この感じはどこかで体験したことがある。それが映画PR用の新聞記事で謎が解けた。 映画プロデューサー・ケネディ、脚本家・ヘイズ、悪役を演じたウェルズが子ども時代に夢中になった日本のテレビ番組があった。タイトルは『SAMURAI』。1960年代に、日本の少年たちに忍者ブー厶を起こしたテレビ時代劇『隠密剣士』である。公儀隠密・秋草新太郎と忍者との戦い。『マッドマックス』には忍者の要素が入っていたわけだ( 監督ジョ一ジ・ミラーは無声映画バスター・キートン作品をイメージ) 。 第3作『マッドマックス サンダードーム』(1985)では、マックスが、女ボスの支配する物々交換バ一タータウンと伝説の救世主を待ちこがれる少年少女たちの世界に巻き込まれる。映画はどんどん昔の文化へと戻っていく。 第4作『マッドマックス』の世界 前作から30年後の第4作『マッドマックス 怒りのデス・ロ一ド』(2015)では、主人公マックスがメル・ギブソンからトム・ハ一デイに代わり発表された。 ここでは核戦争45年後が舞台。人間の毛髪や、ありとあらゆるスクラップの再利用が行われ、何ひとつ無駄にしない暮らしが描かれる。しかし、そうした世界をコントロールするのは「砦」の独裁者イモータン・ジョーで、放射能に汚染されていない水を支配している。この「砦」の暴君から逃げ出す女性が、フュリオサと5人の子産み女。この追跡にマックスが巻き込まれる。 フュリオサたちは「緑の国」をめざすが、マックスは逃亡してきた「砦」には水も野菜もあり、そこが目指すべき「故郷」だと引き返すことを提案する。フュリオサは納得し、マックスと協力して独裁者と戦うため引き返すことに決める。 洞峰公園のベンチで考えた 世界の状況はだんだん映画『マッドマックス』シリーズに近づいて来ているのではないか。私には洞峰公園の野球場の青いベンチで未来を想像する習慣がある。 「洞峰公園」「つくばセンター」「北条つくば古道入口」「神郡(かんごおり)・蚕影(こかげ)神社」「臼井の坂道」「筑波山」は、ほぼ1直線につながっている。この道を養蚕発祥の「金色姫伝説」にちなみ、「つくばシルクロード」と名付けている。 「スマートシティ」「ス一パ一シティ」の近未来が進めば進むほど、古い歴史・文化が眠る「つくばシルクロード」が目立ってくると信じているのだが、いかがであろうか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

つくばシルクロード 《映画探偵団》60

【コラム・冠木新市】映画史に燦然(さんぜん)と輝く『マッドマックス』シリーズ。来年には、第5作『マッドマックス ザ・ウエイストランド』が公開される。 第1作『マッドマックス』(1979)はオ一ストラリア映画として低予算で製作され、世界中で大ヒットした。その当時、私はポスターのイラストがチ一プだったため、警官と暴走族が争う、ただのカ一アクション映画かと思い見なかった。 ところが、第2作『マッドマックス2』(1981)を見て仰天する。核戦争後の石油不足の近未来が舞台で、元警官マックスと暴走族ヒューマンガス一味とのガソリンをめぐる戦いが斬新に描かれていたからだ。近未来なのに古代神話を思わせる不思議な作りで、なぜか懐かしい思いにとらわれた。この感じはどこかで体験したことがある。それが映画PR用の新聞記事で謎が解けた。 映画プロデューサー・ケネディ、脚本家・ヘイズ、悪役を演じたウェルズが子ども時代に夢中になった日本のテレビ番組があった。タイトルは『SAMURAI』。1960年代に、日本の少年たちに忍者ブー厶を起こしたテレビ時代劇『隠密剣士』である。公儀隠密・秋草新太郎と忍者との戦い。『マッドマックス』には忍者の要素が入っていたわけだ( 監督ジョ一ジ・ミラーは無声映画バスター・キートン作品をイメージ) 。 第3作『マッドマックス サンダードーム』(1985)では、マックスが、女ボスの支配する物々交換バ一タータウンと伝説の救世主を待ちこがれる少年少女たちの世界に巻き込まれる。映画はどんどん昔の文化へと戻っていく。 第4作『マッドマックス』の世界 前作から30年後の第4作『マッドマックス 怒りのデス・ロ一ド』(2015)では、主人公マックスがメル・ギブソンからトム・ハ一デイに代わり発表された。 ここでは核戦争45年後が舞台。人間の毛髪や、ありとあらゆるスクラップの再利用が行われ、何ひとつ無駄にしない暮らしが描かれる。しかし、そうした世界をコントロールするのは「砦」の独裁者イモータン・ジョーで、放射能に汚染されていない水を支配している。この「砦」の暴君から逃げ出す女性が、フュリオサと5人の子産み女。この追跡にマックスが巻き込まれる。 フュリオサたちは「緑の国」をめざすが、マックスは逃亡してきた「砦」には水も野菜もあり、そこが目指すべき「故郷」だと引き返すことを提案する。フュリオサは納得し、マックスと協力して独裁者と戦うため引き返すことに決める。 洞峰公園のベンチで考えた 世界の状況はだんだん映画『マッドマックス』シリーズに近づいて来ているのではないか。私には洞峰公園の野球場の青いベンチで未来を想像する習慣がある。 「洞峰公園」「つくばセンター」「北条つくば古道入口」「神郡(かんごおり)・蚕影(こかげ)神社」「臼井の坂道」「筑波山」は、ほぼ1直線につながっている。この道を養蚕発祥の「金色姫伝説」にちなみ、「つくばシルクロード」と名付けている。 「スマートシティ」「ス一パ一シティ」の近未来が進めば進むほど、古い歴史・文化が眠る「つくばシルクロード」が目立ってくると信じているのだが、いかがであろうか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

令和版「かがい」を演出 20日、筑波山神社で百人きもの

筑波山に着物で集うイベント「百人きもの」(筑波山華やぎプロジェクト実行委員会主催)が20日、筑波山神社をメーン会場に催される。4回目となる今年は「KAGAI(かがい)~雅」をテーマに、古代、求愛のため筑波山に男女が集まって歌の掛け合いをしたり踊ったとされる風習「嬥歌(かがい)」の令和版を演出する。13日まで参加申し込みを受け付けている。 オープニングでは、飛鳥時代の歌人、額田王(ぬかたのおおきみ)がよみがえると銘打ち、オリジナルの歌曲「万葉集」を筑波山神社本殿前で披露する。つくば市出身の若手作曲家、門田和峻さんが「万葉集」に曲をつけ、ソプラノ歌手の大森彩加さんが歌う。さらに同市在住の万葉集研究家、布浦万代(ふうら・まよ)さんの講演もある。 嬥歌は歌垣(うたがき)とも言われ、奈良時代に編さんされた常陸国風土記や万葉集に記されている。令和版として催される「かがい」は、男女間の出会いばかりでなく、多様な人間の出会いを演出する。万葉ラブレター、公開プロポーズなど、現代版の求婚イベントも行われる。筑波山神社での挙式料が1組にプレゼントされる公開プロポーズの出場者はWEBで募集中だ。着物のベストドレッサー表彰も行われる。 山麓の神郡(かんごおり)地区には養蚕をまつる蚕影山(こかげさん)神社があり、インドからやってきたお姫様が蚕(かいこ)になるという「金色姫(こんじきひめ)伝説」が伝わっている。今回のイベントではさらに、蚕影山神社宮司が伝説の秘話を語り、絵本作家小林由李さんが金色姫伝説を模したペイントの即興ライブを行う。これを受け「金色姫物語—ダンスによる再創造」と題し、筑波大学と同大学院生7人による創作ダンスが披露される。 同プロジェクトは、旅館、筑波山江戸屋女将の吉岡鞠子さんを代表に5人の女性で2018年にスタートした。今年までに若いメンバーが増え9人の実行委員体制になった。 今年のイベントは、ポストコロナにおける新たな観光スタイルを応援する、いばらき観光キャンペーン推進協議会の新観光プロジェクト応援事業に採択されている。 実行委員の浅野弘美さんは「いばらき観光キャンペーン推進協議会は茨城デスティネーションキャンペーン(茨城DC)に力を入れている。茨城DC事業は来年が本番。今年なんとか成功させて、来年につなぎたい。筑波山に観光客がたくさん戻り、宿泊者が増えることが成功だと思っている」と語っている。(榎田智司) ◆百人きもの KAGAI~雅~ in 2022 10月20日(木)正午~午後6時、メーン会場の筑波山神社とサテライト会場の筑波山江戸屋で開催。ドレスコートは着物。定員200人。参加費4000円(税込み、事前振込)。申し込みは13日まで同実行委員会ホームページへ。

かがいの舞台を再現 27日、筑波山で「百人きもの」

【山崎実】筑波山に着物で集うイベント「百人きもの」(筑波山華やぎプロジェクト主催)が27日、つくば市の筑波山神社と、中腹の旅館、筑波山江戸屋で催される。 奈良時代の「常陸国風土記」にみる、男女が集い恋愛の歌を読み合う嬥歌(かがい)の舞台を再現する。にぎわいと華やぎをもたらすため、日本文化の象徴、着物で集い、歴史や伝統を学びながら、筑波山ファンのネットワークを構築するのが狙い。 筑波山系には、養蚕の創始にまつわる縁起「金色姫(こんじきひめ)伝説」が伝承される蚕影(こかげ)神社がある。筑波山神社の春と秋の祭り、御座替祭(おざがわりさい)の行事、神衣祭(かんみそさい)と神幸祭(じんこうさい)では、絹で織った神衣を神が乗り移るものだとしている。 筑波山周辺にはさらに、常陸紬(結城紬)、絹川(鬼怒川)、蚕飼川(小貝川)、糸繰川(糸魚川)など、いずれも養蚕に関わる地名などがあり、万葉集でも多く歌われている。これらのことから同実行委員会は「養蚕の創始、筑波山神社『御座替祭』の神衣であり、茨城の織物から見る筑波山の着物の淵源(えんげん)をテーマにした」という。 イベントの主な内容は、トークライブ「万葉集から令和を読み解く」布浦万代(万葉集研究家)、ライブ&朗読「金色姫伝説~篠笛にのせて」篠笛奏者YUJI&鈴木もえみ、つくばきものコレクション、きもの男子トーク、ランチ会議―など。参加費は8000円(事前振込)。 問い合わせは同実行委員会(電話090-8722-5697 筑波山江戸屋内) ➡金色姫に関連する記事・コラムはこちら

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