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《土着通信部》29 春の御座替祭から六所大祭へ 神の山の4月

【コラム・相沢冬樹】4月1日は筑波山神社の春の御座替(おざがわり)祭、昨年は11月1日の秋の御座替を前に宮司の解任騒ぎが広がる中での開催となったが、今回はどうか。本稿を書いている時点で、辞任した宮司の後任は決まっていない。 春と秋の御座替祭は筑波山最大のお祭りで、本宮と里宮との間で御神体を交換する。この春でいえば、男体山と女体山の本殿で神衣(かむい)を新しいものと取り替える衣替え神事の「神衣祭(かんみそさい)」が朝9時30分から始まり、神衣を乗せた神輿(みこし)が山を下り中腹の拝殿まで行列を組んで渡御する「神幸祭(じんこうさい)」が午後2時過ぎに行われる段取りである。 山登りの隊列は平安調の山吹色の装束に彩られ、神官や巫女(みこ)の立ち居振る舞いも古式ゆかしい、と言いたいところだが、この形式が定まったのはそんな昔のことではない。かつては夏至と冬至に行われたといい、明治の初めには里宮は別の神社にあった。 筑波山南麓の山中、つくば市臼井にある六所皇大神宮。今は神社ではない。山の斜面に沿う石段に2基の鳥居を構えているが、社殿はなく、神社跡地を整備した霊跡地ということである。かつてこの地に所在した六所神社は、神武天皇4年(紀元前657年!)創建と伝わる。 しかし、六所神社は明治政府の小社合祀(ごうし)の政策により廃社の憂き目にあった。やはり山麓の神郡地区にある蚕影(こかげ)神社に合祀となり、氏子の大半は筑波神社に編入され、明治の末には社殿などが壊された。霊跡縁起には「輪換の美を極めたる社殿を始め寶庫(ほうこ)随神門及び其他を破壊し遂に此畏(ここかしこ)き霊跡は荒廃に帰したり」と書かれている。 この惨状を見かねたのが大正時代、峰行(ほうぎょう)で筑波山を訪れた高木福太郎氏。立ち上げた宗教法人、奣照(おうしょう)修徳会で、霊跡地としての復興を提唱、整備保存活動を行うようになった。 復興整備は大正4年(1915)までに成就し、翌年から地元の六所集落と合同で春の例祭「六所大祭」が始まった。地元区長らは「受け入れがたい明治の廃社だったが、40戸ほどの集落ではどうにもならなかった。復興して100年続けてこれたのは修徳会のおかげと思っている」と感謝を述べる。今年も4月10日に六所大祭が行われ、全国から信者が集まる。翌11日、東京・田端の修徳会本部で行われるのが「神御衣祭(かんみそさい)」。御座替祭の原型がここにたどりついたというわけだ。 六所のいわれに二つの説 山自体が御神体の筑波山には神社が多い。筑波山神社の摂社になっている安座常(あざとこ)神社、小原木神社、渡神社、稲村神社の4柱に、男体山の筑波男大神、女体山の筑波女大神の2柱を加え、6柱を祭ったのが六所神社とされるが、これには異論もある。 六所大祭を執り行う青木宗道氏によれば、「大化改新のころ、ここに国府を置こうとしたことがあった。久慈、那珂、多賀、茨城、新治、筑波の6郡を治めることから、六所の名がついた」そうだ。とかく神様の山の人事は難しい。 ➡相沢冬樹氏の過去のコラムはこちら

移動投票車で高齢者が模擬投票 ロボットが立会人に つくば市

投票箱を積んだワゴン車が高齢者や障害者などの自宅前まで出向いて、住民に車内で模擬投票をしてもらう実証実験が23日から27日までの5日間、高齢化率が高い筑波山麓のつくば市筑波地区と臼井地区で実施されている。ワゴン車は実際の選挙で「移動期日前投票所」となる。市は今年秋の市長選・市議選で導入を目指している。 今回の実証実験は、内閣府の先端的サービスの開発・構築に関する調査事業に採択された。市は東京海上日動火災保険、KDDIなどと共に、今年秋の選挙での実現に向け技術的検証に取り組む。 26日は、同市臼井・六所地区区長の柳原敏明さん(68)の自宅前に移動投票車のワゴン車が来て、柳原さんは車内で模擬投票を行った。車内には投票箱が設置され、公職選挙法で定められた投票立会人については、1人が立ち会ったほか、分身ロボット「オリヒメ」が立会人に加わった。オリヒメは本投票所とつながっていて、カメラを通じて遠隔から投票の様子を見守る。また移動投票車は、車いすの障害者や高齢者が後方ドアから車内に入ることが可能なつくりになっている。 両地区住民には今月9日、封書が届き、模擬投票の参加者はそれぞれ、スマートフォンや電話で予約をしていた。①自宅まで移動投票車が来るサービスと➁自宅から移動投票所までの送迎するサービスと2つの実証実験が用意され、車が駐車できるスペースがある住民の自宅前にはワゴン車が出向いた。自宅前に車が停められない人には送迎車が準備され、送迎車を利用しての模擬投票も行われた。 柳原さんらの模擬投票に先立って26日は、記者向け説明会が実施された。五十嵐立青市長があいさつした後、市政策イノベーション部科学技術戦略課の前島吉亮課長が概略を説明。運営にあたるスパイラルの甲木空さん、KDDIの阿部英孝さんが詳細を説明した。国家戦略特区のスーパーシティを担当する内閣府地方創生推進事務局の菅原晋也参事官と、東京都荒川区の選挙管理委員会も視察に訪れていた。 市科学技術戦略課の前島課長は「スーパーサイエンスシティ構想の中に、インターネット投票というのがあり、本来はそれを目指したいが、まだ実現に至っていない。今回、住民サービスの一環として、誰一人取り残さない社会の実現を目指しており、市内でも人口減少が続き、高齢化率の高い筑波・臼井地区での実証を行うことになった」と話した。 模擬投票をした区長の柳原さんは「高齢化が進む地域なので新しい試みは歓迎したい。ただスマートフォンなど高齢者はあまり慣れていなかったりするので、参加の方法はもっと検討してもらいたい」と述べた。送迎車を使った模擬投票に参加した臼井地区の木村嘉一郎さん(94)は「選挙には家族に送迎してもらって行っていたが、自宅まで来てもらえればありがたい。秋の選挙には使えるようになれば良い」と語った。 同市は、2024年の市長選・市議選でインターネット投票を導入することを看板に掲げ、22年にスーパーシティに認定された。しかしネット投票に対しては、なりすましや強要などの課題が指摘される中、今年秋の選挙では実施できない。代わって市は、ネット投票導入につながるステップだと位置づけ、秋の選挙で移動期日前投票所を導入したい意向だ。これに対し公職選挙法を所管する総務省は、昨年7月の国家戦略特区ワーキンググループのヒヤリングで、今回の実証実験について「(ネット投票と)切り離して議論していく必要がある」という認識を示している。(榎田智司)

ゲンジとヘイケ一緒に 筑波山南麓にホタル舞う

筑波山南麓のつくば市神郡、細草川沿いや周辺では6月下旬、ゲンジボタルとヘイケボタルが同時に飛び交う姿が見られる。5月下旬からはゲンジボタル、6月半ばからはヘイケボタルが加わり、6月下旬には30匹ほどが乱舞する姿が見られた。 ルールを守った観賞を 今の時期、筑波山麓でホタルが見られるのはつくば市神郡、臼井、沼田、国松などの沢沿い。NPOつくば環境フォーラム(つくば市要、永谷真一代表)理事の大塚太郎さん(53)によると「6月中旬は、ゲンジボタルとヘイケボタルが交差する時期、農薬を使わない水田にはヘイケボタル、きれいな沢にはゲンジボタルが見られる。7月に入るとヘイケボタルが主流になる」と説明する。 細草川周辺は、筑波山や里山の環境保全に取り組む同フォーラムや、知的障害者と共同生活をしながら有機農業に取り組むNPO自然生クラブ(つくば市臼井、柳瀬幸子代表)らが農薬を使わずコメ作りをしている。筑波山本体の南部に位置しており、民家がなく、谷津田が広がり街灯もないなどの昔ながらの自然が残されており、ホタルが生息しやすい環境となっている。15年前ぐらいから、同フォーラムの「すそみの森」など、農薬を使わない米作りが広がってからホタルの数が増えていった。 コロナ前は6月に入ると、地元の小学校の児童やボーイスカウト、環境団体などがホタル観賞に訪れていた。地域の元PTA役員が中心となって出来た「田井エンジョイクラブ」が地域の子供たちを集めて、10年以上ホタル観賞会を続けてきた(2019年6月16日付)が、コロナ禍で途絶え、2020年以降は団体でのホタル狩りは少なくなった。行動制限がなくなった今年は家族や友人同士で訪れている姿が見られる。 六所地区にある「ホタルの里」の石碑は、2008年頃近くの工事をしていた建設業者がホタルがたくさんいることに感動、地域への感謝の気持ちをこめて寄付したものだそう。 23日、つくば市谷田部から訪れた男性(48)は「昨年知人から教えられ、この地区でホタルを観賞するようになった。市内にも豊かな自然が残されている場所があるのは感動でした。環境を守り、いつまでもホタルが見られるようにしていきたい」と述べた。 六所地区の元区長でホタルパトロールなどを提唱していた森田源美さん(87)は「ホタルを見に来る人は歓迎したい。六所地区には六所大仏の前に市営駐車場があるので、そこから歩いて私有地などには入らずに、ルールを守った観賞会を実施して欲しい」と語る。 大塚さんは「ホタルに興味を持ち自然とふれあうことは良いことだが、ルールを守らない観賞者もいる。ホタルを持ち帰ったり、狭い道の中まで車が入ってきて、車のライトでホタルの『こんかつ』を邪魔したり、貴重な水生動物をネットオークションで売ったりする人もいる。『すそみの田んぼとその周辺の森』という環境フォーラムの活動拠点には絶対に無断で入らないで欲しい」と訴える。 「すそみの田んぼ」(環境省のページ)は生物多様性保全上重要な里地里山に選定されている。(榎田智司)

今村ことよさん 夏にワイナリーをオープン 筑波山麓

市内4カ所目、ツアーも準備 筑波山南麓のつくば市臼井(六所)で、ワイン用のブドウ畑(ヴィンヤーズ)を手掛けてきたビーズニーズヴィンヤーズ(つくば市神郡、今村ことよ代表)が今夏、ワイナリー(醸造所)をオープンさせる。市内4カ所目になる。 「ワイナリー設立はさらに良い品質のワインを作るための新たなスタート地点。訪れるお客様に、隣接するブドウ畑を見ながらワインを味わってもらうための場所として、ワイナリーツアーなどの準備をしっかりとやりたい」と今村さんは今年の抱負を語る。 約600平方メートルの敷地に、建築面積約150平方メートルのワイナリーを建設、販売所も併設する。これまで醸造は牛久市の「麦と葡萄牛久醸造場」で行っていたが、完成後は、栽培から醸造、販売までを一手に行う。 今村さんは守谷市出身。筑波大学で生物学を学び、2001年に博士号を取得した。第一三共(東京)の研究・開発部門を経て、13年に退職し、ワイン農家を目指した。長野県東御(とうみ)市のワイナリーに研修生として入り、栽培や醸造法を学んで、2年後の15年、つくば市臼井に農地を借りてブドウ栽培に着手した。 研究者時代からワインスクールに通った学究肌。筑波山から沢が流れる山麓の土壌は、花崗岩(かこうがん)のミネラルを豊富に含み、ワインに好適のブドウが出来そうだと目を付けた。ただし県南は気候がブドウにとって暑過ぎる。栽培可能な品種を選び、筑波山の風土に合ったワインを醸したい、と考えている。 つくば市が「つくばワイン・フルーツ酒特区」に認定された17年、初出荷を行ったが、自前で醸造が出来ず、「つくばワイン」を名乗ることができなかった。21年に法人となり、22年事業再構築補助金の採択を受け、ワイナリー建設に踏み切った。 ワイナリーが出来ることにより、醸造から瓶詰め、販売までの作業の流れがスムーズになり、さらに購入者との交流機会が増えると考えている。 現在ブドウ畑は沼田と臼井にあり、白ブドウのシャルドネ、セミヨン、ヴィオニエ、ヴェルデーリョと、黒ブドウのシラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルド、タナなど多品種を栽培している。ほとんどは一人で管理しているが、収穫時などには仲間やSNSで興味を持ってくれた人たちが駆け付ける。 臼井地区に住んで7年になり、地域に溶け込み、草刈りや排水機場の清掃、芝焼きなど、地域のボランティア活動にも積極的に参加している。地域住民は「耕作放棄地がブドウ畑になって景色が良くなった、六所地区はNPO団体が多く活動する。地域は高齢化が進み過疎化が進む一方だが、一筋の光が見えてきたような気がする」と話す。 市内のワイナリーは、つくばワイナリー(北条、19年9月17日付)、つくばヴィンヤード(栗原、20年10月16日、平沢・漆所地区にヴィンヤーズをもつル・ボワ・ダジュール(上横場)の3カ所がある。(榎田智司) ➡ワインに関する過去記事はこちら ➡今村ことよさんに関する過去記事はこちら

筑波山頂 深まる秋の御座替 神幸祭は春を待って

筑波山神社(つくば市筑波、上野貞茂宮司)で1日、恒例の御座替(おざがわり)が行われた。行動制限のない秋の観光シーズンを迎え、神輿(みこし)を担いで神社拝殿を目指す「神幸祭(じんこうさい)」の開催が期待されたが、今回も完全実施は見送り。筑波山頂での「神衣祭(かんみそさい)」と筑波山神社(拝殿)での「奉幣祭(ほうべいさい)」、2つの祭事の開催にとどまった。 神幸祭の開催見合わせは、コロナ禍に見舞われた2020年春から6回連続となる。奉幣祭も19年までは毎回約200人を招待して社殿にあげていたが、今回は100人に制限されている。記者は山頂まで登って、神衣祭の写真を撮ることになった。 中腹の神社は拝殿で、筑波山神社の本殿は男体・女体2つの山頂にある。親子の神が夏と冬に、本殿と拝殿で神坐を入れ替えることから御座替といい、毎年4月1日と11月1日に行われてきた。 神社の神職らが午前9時30分に男体山、10時30分には女体山の本殿に参り、神衣(かんみそ)を取り替える儀式が神衣祭だ。この日の気温は10℃、標高877メートルの女体山、さえぎるもののない山頂では寒さが身にしみる。 しかし、紅葉シーズンを迎え山頂には朝から登山客の姿があり、珍しい儀式に遭遇する形で、神の衣が入れ替わる瞬間を興味深く眺めていた。登山客の一人は「なんにも知らないで登山をしたが、貴重な神事に立ち会えて有難い気持ちがした」と語る。 神衣が納められたお神輿を担いで山から下りてきた一行は、神橋を渡って神社拝殿に向かう。神幸祭ではさらに中腹の集落を巡って拝殿を目指す長丁場の行程となる。メーンイベント格の神幸祭を含め、通常の形で3つの祭りが実施されるのは、神社によれば23年春の祭礼からになりそうということだ。 地元の総代の中山光昭さん(67)は「総代や神官は男体山、女体山と山道の全行程を歩いていくので大変だ。それでも明治の頃はふもとの六所神社(つくば市臼井、現在は廃社)から全行程を歩くのでさらに大変な行事だったと聞く。今はケーブルカーも使うし、だいぶ楽になった」と語る。(榎田智司)

10月1日発車 筑波地区支線型バス「つくばね号」

つくば市の筑波地区支線型バス「つくばね号」が10月1日から運行を開始する。同市北条の筑波中央病院から臼井の筑波ふれあいの里入口まで延長18キロ弱の運行ルートには、新しい標識を設置した34の停留所が整備され、運行開始日を待っている。 200円均一、1日16便運行 「つくばね号」は、筑波山の山裾の集落をめぐり、中腹の観光スポットに至る地区を走行する。ワゴン車サイズで、乗客8人乗り。運行事業は新栄タクシー(つくば市篠崎)が行う。 概ね午前8時から午後6時まで、年末年始を除く毎日、1日16便(上下線各8便)運行する。筑波山の紅葉シーズンなどは、渋滞の影響を大きく受ける区間において、部分運休を行うという。運賃は200円均一(税込み、乗車時に先払い)。65歳以上を対象に、申請すれば高齢者割引もある。 2022年3月までの3年間、3つのコースで実施した「筑波地区支線型バス実証実験」の結果などを踏まえ、市の公共交通活性化協議会で同ルートが採用された。実証実験時のふれあいの里~筑波交流センターの1便当たり利用者数は、平日約0.8人、休日約0.5人で、他の2コースと比較して利用者数が多かった。沿線には、病院や学校、スーパーのほか、平沢官衙(かんが)遺跡、六所神社跡、筑波山神社、筑波ふれあいの里、宿泊施設などがあり、観光路線としての乗客増が見込めるとされた。 さらに、沿線の区長や民生委員たちと意見交換会を行い、住民に身近に感じてもらえるようなコースを新たに決定し、運行開始の運びとなった。筑波中央病院行きが17.5キロ、筑波ふれあいの里入口(つくば湯)行き17.7キロ。それぞれ53分、54分の所要時間を想定している。 「つくばね号」の愛称は、沿線の秀峰筑波義務教育学校の児童生徒から募集し、同協議会で審議して決定した。 六所地区区長、柳原敏明さん(66)は「これから超高齢化社会で車を手放す人も増えてくる、地域住民の足となってくれれば良い。乗客数はそんなに多くならないだろうけれど、筑波山の観光客に利用してもらえばなんとかなるのでは」と語った。(榎田智司)

滝のほとりで28日に例祭 忘れられかけた筑波山中の神社

筑波山の白滝神社(つくば市臼井)で28日に例祭が行われる。付近には、つくばねの峰より落つる「白滝」があって、かつては観光名所でもあった。今は忘れられかけた山中の神社に、隣接の神社の総代たちが年に一度、清掃と除草を兼ねて集まり、筑波山神社の神官によるお祓いを受ける。 信仰の山、筑波山には古く、修験道(しゅげんどう)の時代から多くの登山道があり、要所要所に神社があった。臼井の飯名(いいな)神社、蔵王神社、沼田の月水石(がっすいせき)神社、さらに廃社となった六所(ろくしょ)神社、蚕影(こかげ)神社などが南麓に点在する。 白滝神社もそのひとつで、祭神は日本武尊(ヤマトタケルノミコト)、建立年は不明だが、由緒書きによれば「山に迷い込んだ時にこの地に白い鳥が現れ案内をしてくれた」とあり、別名「白鳥神社」と呼ばれていたそうだ。 毎年8月28日に行われる祭礼は、宮司と飯名神社の総代8人だけの参列で、一般の参加者、見物客はいない。あたりは、巨石と急斜面が多いが、催事の行えるぐらいの空間があり、そこに全員が集まる。足場の悪い小さな神社があり、宮司が五穀豊穣を願い祝詞(のりと)をあげ、一人ひとりが二礼二拍手一礼、参拝をする。 白滝神社は「茨城県神社誌」(県神社庁、1973年)には氏子150戸と記載されるが、一個人に管理が任されていて荒廃し、継続が困難になったため、同じ臼井地区にある飯名神社が奉仕するようになったらしい。 かつての登山道は、六所方面から白滝林道を通り、白滝、桜ケ丘キャンプ場、つつじが丘までまっすぐ登るルート、そこから女体山山頂を目指した。山すそから歩いて登るこのルートは人気で、戦後しばらくまで大いに賑わった。 白滝は南中腹「筑波ふれあいの里」のほぼ真上にあり、標高は300メートルぐらい。修験者が滝に打たれ行(ぎょう)をする場所でもあったらしい。鬱蒼(うっそう)とした空間に、巨岩がひしめき、そこから蛇行するように沢が流れ、いくつもの小さな滝が落ちている。竹で出来た人工物からも滝は落ち、最大で10メートルぐらい。かなりの水量があったというが、最近はかなり枯れ気味のようだ。登山道の一つとして賑わったころは、茶店などもあったが、現在はガイドブックにも載っていない。 つくば市臼井の六所地区の元区長、木村嘉一郎さん(93)さんに話を聞くと、1965年、筑波スカイラインが完成、つつじが丘まで車で行けるようになったあたりから、徒歩での登山客がすっかり減ってしまった。翌66年、女体山側の中腹で土石流が発生、白滝一帯が飲み込まれた。けが人を多数出した災害で、復旧までかなりの時間がかかったという。木村さんは、当時「山津波」と呼ばれた土石流の体験者だった。 今はこのルートを使う人も少なく、かつての登山道はヤブとなっている。木村さんは「もっと白滝について知ってもらいたい。魅力的な場所なので登山道としても復活してもらえばうれしい」と語った。(榎田智司)

夏蚕が繭になる茅葺き小屋 筑波山麓の真綿づくり佳境に

初夏にクワ(桑)の葉を与えて育てたカイコ「夏蚕(なつご)」が繭となる時期を迎えた。筑波山麓、つくば市臼井の六所地区にある茅葺(かやぶ)きの農作業小屋では、カイコを育てて真綿をつくる「ノラオコつくば」の活動が本格的になっている。 ノラオコつくばは、同市の木村美希さん、北野裕子さんら女性3人のグループ。各自が家で飼えるだけの数のカイコを、2019年から毎年育てている。繭になったカイコは、茅葺き小屋に持ち込まれ、日を決めて真綿にする作業「真綿かけ」が行われる。繭から絹(生糸)をつむぐのではなく、真綿をつくる。どういうことなのだろう。 2010年に筑波山麓で始まった「わた部」の活動がきっかけ。「わた部」は木綿わたを栽培しながら、針仕事ではんてんをつくるワークショップだったが、3人はクワを植えてカイコを育て真綿をつくる活動に取り組んだ。 隣の神郡地区には養蚕をまつる「蚕影(こかげ)神社」があり、周辺にクワの木も点在している土地柄だが、今も残る養蚕農家は無い。グループは、2012年に農地を借り、餌となるクワの葉の栽培から始めた。実際に養蚕業を営んでいた地域のお年寄りから話を聞くなどして、養蚕農家に挑戦した。畑の除草や葉の摘み取りなど、暑さの中でのハードワークになったそう。 カイコは1頭、2頭と数える。3人で飼うのは約1200頭。万頭の単位で飼う養蚕農家の規模からすれば桁違いの少なさだが、「自宅で飼い、管理できる桑畑もまだまだ小さいため、現状はこれが手一杯」(木村さん)なのだとか。カイコは、かすみがうら市で養蚕農家を営む田崎さんを介し蚕種店から購入したという。 カイコが蛹(さなぎ)から繭となると、冷凍庫で2日ほど冷凍してから天日で数日乾燥する。「真綿かけ」は干した繭を煮て、ぬるま湯の中で袋状に広げ綿にする作業で、なかなかに習熟を要する(大規模な養蚕業の場合は別のやり方になる)。今年は24日に茅葺き小屋に集まって作業し、出来た真綿ははんてん、腰掛けなどの材料にする。 木村さんは「全国的に少なくなった養蚕や真綿の文化を伝えるために、まずは養蚕技術を習得したい」と語っている。(榎田智司)

【気分爽快 りんりんロード】1 「自分の世界広がる」髙山了さん

秋はサイクリングシーズン。コロナ禍で、密にならない身近な野外レジャーが注目されている折、「つくば霞ケ浦りんりんロード」をさっそうと走れば気分もリフレッシュできそう。昨年ナショナルサイクルルートに指定され、モデルコースは充実、レンタサイクルもある。日々、りんりんロードと周辺を走る地元の自転車愛好家に、魅力を聞いた。 ポタリングがおもしろい 【田中めぐみ】土浦市在住の髙山了(さとる)さん(73)は、「普段の足慣らし」として日常的にりんりんロードを走っている。 定年退職後、60歳から10年かけて、奈良からローマまでのシルクロード約2万キロを自転車で横断した経験がある。以前から日本の歴史や文化のルーツをたどりたいと考え、定年になり、シルクロードを自転車旅行する愛好サークル「シルクロード雑学大学」(事務局・東京)に所属し、仲間と共に走破した。 次の新たな目標は、日本の海岸線を一周すること。自らを「鉄っちゃん(鉄道ファン)でもある」という髙山さんは、自転車と鉄道を組み合わせて一周する計画を立てている。 日頃走る、りんりんロードの魅力について「りんりんロードを軸に、気ままに脇道に入ってポタリングするのがおもしろい」と話す。「ポタリング」は、目的地を特に定めることなく自転車でめぐる散歩のこと。気ままにサイクリングすると、思いもよらぬ発見があるという。 例えば、土浦に前方後円墳があることを知っているだろうか。りんりんロードの虫掛休憩所からほど近い「常名天神山古墳」(土浦市常名)で、なんと全長約70メートルの前方後円墳が見られる。 りんりんロードを外れ、筑波山麓方面に足を延ばすと行き当たる「六所皇大神宮霊跡」(つくば市臼井)も、髙山さんには発見したばかりの興味深いスポットだ。かつて筑波山神社の里宮とされ、現在は廃社となっている。往時どのような人たちがどのように神様を拝んでいたのか、時の流れに思いをはせるという。 「平沢官衙(かんが)遺跡」(同市平沢)で立ち止まってみるのも気持ちがいい。広々とした開放感を満喫できる。北条から筑波山への参詣道である「つくば道」は日本の道百選にも選出されており、古の情緒を感じるスポットだ。 都内から訪れた人を髙山さんが案内すると「こんなところがあったとは」と皆一様に感動し、必ず喜んでくれるそうだ。 りんりんロードを霞ケ浦湖岸沿いに下り美浦村まで足を伸ばせば、初めて日本人の手によって発掘調査が行われ「日本考古学の原点」とされる「陸平(おかだいら)貝塚」がある。史跡・文化に興味ある人におすすめのスポットが満載だ。 人も歩けば望に当たる 地元の人との交流も髙山さんの楽しみのひとつになっている。田植えの季節には農作業する人に声を掛け、田植え機に詳しくなったそう。土浦出身だが「地元でも知らないところがまだまだたくさんあり、りんりんロードは何度走っても飽きることがない」という。 「犬も歩けば棒に当たる」をもじり、「人も歩けば望に当たる」と笑う。望とは新しい希望という意味だ。地域の魅力を再発見することで、自分の世界が広がっていくのを感じると話す。髙山さんの言うように、風の向くまま気の向くままに自転車で行けば、新しい希望を見つけられそうだ。 初心者はすぐ買わない 「りんりんロードはよく整備されていて、都内の有名サイクリングロードと比べても格段に走りやすい」という。比較的空いているため初心者にも安全だが、いくつか注意点があるそうだ。 まず、自転車を始めるからと言ってすぐに買わないこと。自転車には様々な種類があり重さや値段もピンキリ。自分がどのように自転車に乗るのか、スタイルが定まらないうちは中古車を買って試したり、レンタサイクルを活用したりして様子を見ることが大事だ。 走り方のスタイルが定まったら、経験者や自転車屋さんに相談しながらどのような自転車が合うか吟味するとよい。 自宅に駐車スペースがない場合は折りたためる小径車もおすすめだ。また、けが防止のためにヘルメットを着用し、服装は長袖長ズボンとし、肌を出さないこと。ハンドルの滑り止め用の手袋をはめることも必要だ。 忘れがちなのが保険加入。対人事故の可能性も考え、自転車保険に入っておくことも忘れずに。サドルの高さ調整やペダルを踏む際ひざを平行に保つこと、ブレーキのかけ方などにもコツがある。初心者はけがにつながらないようよく勉強してから始めたい。髙山さんは「自転車の楽しみ方はいろいろ。人それぞれ見つけてほしい」と話した。(続く)

半世紀前「山津波」が襲った… 筑波山麓で地元団体が防災訓練

【相澤冬樹】猛威をふるう自然災害のニュースが各地から伝わる中、土砂災害警戒区域に指定されている筑波山麓の集落で「里の防災訓練」と銘打ったイベントが6日、地元民間団体の手によって催された。半世紀以上前に起こった「山津波」の現場を見学、被災の様子を経験者から聞いて、今後の防災に役立てようと筑波山麓グリーンツーリズム推進協議会が事務局となり、広く参加を呼び掛けた。 つくば市臼井の筑波山南麓にある里、六所集落が訓練の舞台。同協議会が管理するかやぶき小屋に約30人の参加者が集まって、自前の炊き出しをはさんで、被害体験や防災講義を聞いた。 最後の頼りは「共助」 同所は1966年7月2日未明、突如として起こった山津波に集落の一部が飲み込まれ、8戸が土砂に埋まる被害に遭った。今でいう土石流で、筑波山スカイライン管理事務所下で民間の開発業者が造成していたダムが折からの豪雨で決壊、一気に山を沢伝いに押し流した。人災として開発業者との賠償問題にも発展した事案だった。 当時の経験を語ったのは同集落の元区長、木村嘉一郎さん(91)と小美玉市在住の田村(旧姓・松崎)直子さん(63)。木村さんは、発生時刻とされる2日午前0時10分ごろ、講屋(ごや)と呼ばれる集会所にいたが、次第に大きくなる音で、真っ先に異変に気づき、仲間たちを起こし、自宅や周囲に避難を呼び掛ける役を担った。 「田植えが終わった後、皆で労をねぎらう『さなぶり』の宴席があった。15、6人集まっていたが、雨で翌日の作業もないから、酔っ払って寝入ってしまう者もいた。酒を飲めない自分は、酔い潰れることはなく、話し相手になっていたから、0時を過ぎて大きくなるごう音に気づいた。後で新聞記者に聞かれて、米軍爆撃機の『B29みたいだった』と言ったら、そのまま記事になった。時間にして3~5分ぐらいだったろうか。真っ暗で何も見えない中を逃げ出した。3時ごろになって辺りが白んできて、戻ってみると講屋は泥に埋まっていた」 この山津波で死者は1人も出なかったが、寝込んだところを襲われ、自宅で泥流に巻き込まれたのが当時小学生の田村さんだ。唯一の重傷者として被災者リストに載った。「一緒に寝ていた母親は川に流され、救助されたのだけど、私は蚊帳にくるまってしまっていた。2カ月間入院し、ショックから目が見えなくなる症状まで出て大変な思いをした」という。家はかやぶき屋根と柱が残っただけだった。 木村さんによれば、当時の筑波町役場は被災者救済に熱心で、補償交渉の仲介にも入っていたが、ある時を境に急速に手を引いてしまったという。「復旧というか、復興事業を考えたら、人災というのはまずい。国の支援が遠のいてしまうと町は考えた。なので被災者は微々たる補償で納得するしかなかった」と証言する。「公助、自助、共助というが、最後に頼りになるのは共助しかない」と普段付き合いの中での防災意識の共有が大切と結んだ。 そうした経緯から整備されたのが、集落の北東を流れる沢にある「六所の滝」上流に出来た砂防ダム。この日の防災訓練では、土木技術専門家、大塚太郎さん(49)を招き、現状を見て回るなどした。大塚さんは「洪水被害を除けば、茨城県は災害の少ないところ。そのことが逆に防災への備えを甘くしているところがある。筑波山の山津波は数十年に一度は起こっていることだし、小さな山崩れはたびたびあるようだ。警戒を忘れてはならない」とアドバイスした。 ➡筑波山麓、六所地区の過去記事はこちら

お手柄! 湧水を嗅ぎ当てる 筑波山の水脈を守る会の四国犬

【相澤冬樹】ここ掘れとばかり、愛犬がかき出した地面から水が湧き出した。やがて水が澄んでくると、地中から自噴しているのが分かる。愛犬の名をとって「リリーの泉(仮)」と名付けたのは、「筑波山の水脈を守る会」(つくば市臼井)で事務局を務める茅根紀子さん。同会の活動を1月から始め、4月に作業に入った土地から、6月に来たばかりの四国犬が掘り当てた、最初のお手柄だった。 同会は、筑波山の「水脈」をたずねて、滞ってしまった水の流れを復活させようという取り組みを始めた団体=4月6日付け=で、筑波山南麓の六所集落にある宮山を主に活動している。専門家の指導を受けながら、ワークショップ形式で山に入り下草を刈ったり、沢の河道をふさぐ枝葉を取り除くなどの活動を行っている。 東京生まれの茅根さんは中世ヨーロッパ美術の研究家。2014年、長女の出産を機にドイツ人の夫と地縁も血縁もないつくばにやってきた。筑波山の文化や環境を気に入っての移住だったが、一歩山に入ると森は荒廃し、土壌は硬く、山津波などの災害リスクが高まっているのが分かった。危機感をもつ六所集落の有志らと同会を立ち上げた。 水脈整備の作業を始めてから、四国犬の子犬を飼うようになった。6月に来たときは生後3カ月、娘がリリーと名付けた。「お手もお座りもしない、いたずら好き」(茅根さん)のメス犬だった。 ところが8月末、散歩で4月のワークショップで手を入れた場所に向かうと、リリーは突然駆け出し、杉木立の根元を嗅ぎ出した。直後、勢いをつけて掘り出し、小さな穴を鋭角的に掘りはじめたという。 穴を広げてみると、これが湧水だと分かった。付近は沢筋で、河道が途切れたところでも斜面を掘ると伏流水が姿を現す場所だが、ここは水底から砂粒を巻き上げるように自噴しているのが見て取れた。手を入れると冷たく、伏流水の水温とは異なる。六所集落には「ヒヤミズ」と呼ばれる湧き水があるが、今日ほとんど涸れかかっており、作業に入って初めて見つけた湧水ポイントだった。 お手柄のリリーは同会のマスコット的存在になった。茅根さんによれば「四国犬は日本犬のなかでも最もオオカミに近い犬種。嗅覚と聴覚に優れているとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった」そうだ。専門家の意見を聞いて泉の保全を考えていく。 今月は28日が活動日 同会の9月の活動は、28日午前9時、六所皇大神宮霊跡地境内集合で行う。昼食後、随時解散。自然土木が専門の今西友起さんを講師に招く。参加は汚れていい服装(黒系統は避ける)で、水筒はじめノコ鎌や移植ゴテ持参で。昼食代として一人300円(未就学児100円)のカンパを求めている。詳細は同会ブログ。

【亥年折り返し】㊦ 昨季イノシシ500頭を捕獲 つくば市、国道125号をめぐる攻防

【相澤冬樹】つくば市では2018年1月、沼田のつくばりんりんロードで、地元住民がイノシシに襲われケガをする事件があり、4月には金田のさくら運動公園、桜中学校付近で目撃情報がもたらされ、緊張が走った。ここまでくると、学園地区とは目と鼻の距離である。 同市が、イノシシを対象とする鳥獣害被害防止計画を作成したのは2017年度。担当は農業政策課だが、猟友会などと連携した捕獲対策は環境保全課が所管する。19年度までの3カ年、毎年160頭から210頭の捕獲を計画していた。 18年前半の事故と目撃情報から、筑波山ろくの地区長を中心に駆除の要望が高まった。イノシシは11月から翌年3月までが猟期で、銃器とワナによる捕獲体制が強化された。市内には猟友会支部が3地区にあり、協力を呼びかける一方、市も山林上空にドローンを飛ばすなどして生息分布を探り、ワナの適正配置に役立つよう情報を流した。 結果、18年度の捕獲頭数は一気に500頭、計画頭数の倍以上に達した。市環境保全課は「地元にお願いした自助努力の成果が表れた」と胸を張った。筑波山ろくに並行して小田、北条を走る国道125号を越えての目撃情報もぱたり途絶えており、筑波山域への封じ込めには成功しているとみている。地元からも「被害も減っているようだ」(六所地区)と好感されている。 しかし、同課は「手放しでは喜べない」としている。農研機構のイノシシ研究者、仲谷淳さんが指摘していた「捕獲数が多い地域ほど被害も多くなる」状況の可能性を否定できないからだ。500頭もの捕獲がこの先の状況をどう変化させていくか、動向を見守りつづける必要がある。20年度からの鳥獣害被害防止計画の作成に向け、被害情報の収集、狩猟免許取得者の拡大などに取り組んでいる。 仲谷さんによると、イノシシは元来平地を好む生き物なので、山に追い込み、正面から防御すると脇から遠回りに漏れ出す生態がある。筑波山ろくの防御線は土浦市に入ると、旧新治村を通る県道つくば千代田線に変わる。しかし旧土浦市の今泉地区あたりまで侵入跡がみられることから、平地への越境はすでに始まっているようにもみえる。さらに同市東部、市街化が進むおおつ野地区でも出没したとの情報がある。 耕作放棄地や放棄果樹園などを足場に、市街地へ侵入してくると市民生活への影響も懸念される。「市街地では発砲もできず、わなも仕掛けられない。交通事故や安全対策など被害は農地や農作物にとどまらなくなる」(仲谷さん)。 土浦市農林水産課では、「筑波山域には実際、どれほどの生息数がいるのか、実態を計れないところが悩み」という。同市の防止計画はかすみがうら市と共同で19年度に策定。イノシシについては18年度の被害額439万円を21年度に307万円まで減らす目標を立てた。捕獲数の目標は年間150頭。同課によれば、15年以降、直接的な予算は年間250万円ほどで、毎年100頭前後を捕獲してきた。生息実態がつかめないため、これらの計画数値が適正かの判定もできかねているのが実情のようだ。

筑波山の水脈再生に着手 「守る会」が参加呼び掛け

【相澤冬樹】筑波山の「水脈」をたずねて、滞ってしまった水の流れを復活させようという試みが近く始まる。山麓の住民らで立ち上げた「筑波山の水脈を守る会」(松崎崇代表)が広く参加を呼び掛けているもので、つくば市臼井、六所の里から分け入る宮山の西の谷筋を舞台に、専門家の指導を受けながら水脈の再生、整備に取り組む。13日のワークショップを皮切りに、今年あと3回の作業を予定している。 山全体が御神体という筑波山にあって、信仰あつい山麓の人々は古くから、小グループの結(ゆい)をつくって山を守る作業を受け継いできた。しかし人手が入りにくくなった今日、森は荒れ、土壌も硬化し、山津波などの災害リスクが高まっている。一部が土砂災害警戒区域に指定されている筑波山南麓の六所集落では危機感を募らせ、各地の環境再生に実績のある造園家の高田宏臣さん(高田造園設計事務所主宰、NPO 法人地球守代表)を招き、現地を見てもらい講演を聞いた。その上で、守る会結成を決めた。 まずは「ヒヤミズ」の詰まりを解消 同会は、水脈を保全することで、命の源である山を敬い、人と人、人と自然とのつながりを取り戻すことを目的に掲げる。筑波山水脈の大動脈は、女体山・男体山の間に位置する御幸ケ原(直下に男女川の源流がある)から東に大きく振れていると考えられ、その裾野にあたる宮山、お宝山辺りが要の地形となっていた。 宮山の西の谷筋には、六所集落で唯一の湧き水「ヒヤミズ」がある。明治時代、廃社になった六所神宮(今の六所皇大神宮霊跡地)の御神水というが、今は落ち葉や泥が詰まってほとんど水の流れはない「湿地」の状態。やぶに覆われた森は「動脈硬化のように水脈の詰まりがたくさんできている」そうで、まずはこの水脈の再生、保全をめざす。 高田さんの指導で実地に水脈整備を行うワークショップは、13日に第1回を開く。「水脈の詰まりは、人の力で、スコップ一つから解消していける」と集落外にも参加を呼び掛けている。 同会は、この試みが長期にわたるものと見ている。高田さんを招いての年4回の活動のほか、月に1度、ワークショップの資材を自作する活動もあり、こちらも地元の協力者を募っている。 ◆13日(土)の第1回ワークショップの作業は午前9時から午後4時ごろの予定。参加費(ランチ付)は同市筑波地区在住1000円、それ以外2500円、高校生以下500円、就学前幼児無料。参加希望は10日まで、メール(tsukubanomizu@gmail.com)により受け付ける。 ◆守る会への入退会は自由、年会費無料。詳細は同会ブログ(https://tsukubanomizu.hatenablog.com)。

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