【コラム・浅井和幸】茨城新聞クロスアイに「茨城県内いじめ2万件 過去最多 17年度、小学校6割増加」という記事がありました。文部科学省のサイト「平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」もご覧ください。
この事実はとても残念で悲しいことです。しかし、嘆き悲しむだけでなく、事実には事実として対処していくことが大切です。その時、短絡的に、いじめた児童生徒の厳罰化が求められがちです。大まかには、私は厳罰化には反対です。
いじめの解決に、下手な監視の強化と厳罰は、問題が見えないところで行われるなど、いじめが巧みになっていく構図は、私たち大人の世界と変わりません。今回は取り上げませんが、その組織で対応できないほどの大問題であるなどを除き、排除することも反対です。
厳罰化のデメリットを考えてみます。浅井流ではありますが、いじめの発生システムの3要素を次のように考えています。①閉鎖的な空間と②上下(強弱)関係がある場で③ストレスをかけるという―3つです。(2つ目の上下関係は、腕力、地位、言葉、人数など、様々な要素が考えられます)
厳罰は、この3要素をさらに強めることになります。つまり、その場、もしくは別に場を移して、いじめの起こりやすい場を作り出す一助にすらなってしまうと私は考えます。
余談ですが、私の知っているいくつかのケースで、厳然とした対処で家族ごと犯罪者の取り調べのような対応をされ、毎日のように反省文を書いてはダメ出しをされては反省文を書くという連続で疲れ切ってしまい、いじめた生徒には精神的な症状まで出ているというものもありました。
いじめをしないほうが得
話を戻し、3要素を緩和することを考えてほしいというのが、私の提案です。学校の外部との交流をすることで、開放的な空間にする。良好なコミュニケーションが取れる場にして、違う立場や意見を尊重しあえるようにする。個々のストレスは、各々の力量により対応が出来るようなストレスに調整する。
「あいつぶん殴ってやりてぇ」なんて児童生徒がいったら、「そんなこと言っちゃダメでしょ」と言ったり、思ったりするだけでダメだと叱り、苦しさを心の中に抑圧させるような教育、指導はしていないでしょうか?そのくせ大人は、あんな職場辞めてやると居酒屋で大声を出し、しれっと次の月曜日には職場に向かっていませんか?
もう一つ付け加えると、いじめをしないほうが得であることを、「罰を受けない」ではないことで考えることです。小さなことでも達成する喜び、喜びを分かち合う喜びを感じられる環境。人の役に立つことの喜びを経験することです。
それでも、今の多くの「社会正義」は、悪いことをしたやつに罰を与えることなのでしょう。家族ごとひっくるめて、いじめをした児童生徒を、社会がいじめることで問題解決と手を打つことになりかねない事実に、これからも直面し続けるのだろうと、今回は、わざとネガティブに文章を閉じたいと思います。(精神保健福祉士)