【コラム・坂本栄】これまでもクレオ跡地問題を何度か扱いましたが、冠木さんのコラム(映画探偵団11回)に刺激され、今回もこの問題を取り上げます。というのは、つくば市が行ったクレオ再生調査について、冠木さんは「すでに方向性は決定したとの印象を与えかねない、見事な誘導テクニックだ」と指摘しているからです。
つまり、8月前半に実施されたアンケート調査には、何か不自然さが感じられるというわけです。私も市が配った「クレオに関する検討状況について」というタイトルの発表文を一読して、同じことを感じました。何か変というより、調査のテイをなしていません。
期間はわずか2週間。しかも、無作為抽出で市民の考えを聴く形ではなく、意見のある人だけ、Web上で回答して欲しいというやり方です。さらに、判断に必要な材料が与えられていませんから、情報が少ないWeb弱者はどうしたらよいでしょう。
西武百貨店・イオン跡地を「市に何とかしてもらいたい」と思っている一部市民を対象にした、説得力に乏しい調査と言えないでしょうか。その結果は、①サンプル数1,242件②「商業施設」「公共施設」を望んでいる市民が多い③8割が市の関与を望んでいる―というものだったそうです。
拙速調査で方向誘導?
ここまで書いてきたら、市長の五十嵐さんが、クレオ跡を市が関与する形で買い取る構想を議会に示したとの情報が入ってきました。やはり、8月調査は誘導のテクニックだったかと納得すると同時に、やっと決断したかと思ったものです。
五十嵐さんの行政スタイルは、何事も市民の考え方をよく聞いて進める、首長の判断でドンドン進めるのは控える―というものです。前市長の市原さんの失敗(土浦市との合併予備交渉でも総合運動公園案件でも市長主導で進め、結果、市民の理解を得られなかった)を教訓に、組み立てているようです。
このスタイルは研究学園の知的な雰囲気に合っており、スマートだと思います。だとすれば、調査はきちんと行う必要があります。「つくばの怪人」(と私が呼んでいる)冠木さんに「誘導テクニックだ」と言われるようでは、五十嵐スタイルは見せ掛けになってしまうからです。
実は私、市原スタイルが間違っているとは思いません。というのは、首相でも市長でも社長でも、トップには判断に必要な情報がたくさん集まるからです。問題は、豊富な情報に基づいて合理的な決断ができるか、その決断を国民・市民・社員に説得できるか、です(できなければトップ失格です)。
自治体がデベロッパーもやるという決断が合理的とは思いません。経営のリスクを抱えた構想を市民が支持するかどうかも分かりません。でも、その是非は別にして、決断モードに入ったことは評価しています。(経済ジャーナリスト)