【鈴木宏子】2015年9月に発生した鬼怒川水害で、住民が甚大な浸水被害を受けたのは、同河川を管理する国交省の管理に瑕疵(かし)があったためだとして、住宅や家財、車などに浸水被害を受けた常総市の住民ら30人が7日、国交省を相手取って、計約3億5000万円の損害賠償を求める国家賠償訴訟を水戸地裁下妻支部に起こした。
訴えたのは同市若宮戸、上三坂、水海道地区などに住む19世帯と1法人の30人。国家賠償法の時効となる2018年9月を前にした提訴となった。
訴えによると、越水した同市若宮戸地区は、堤防がなく砂丘林が堤防の役割を果たしていたが、国が河川区域に指定しなかったことから規制が及ばず、自然堤防が削られたとしている。さらに14年3月ごろからソーラーパネルが設置され、砂丘林の高さと幅がさらに小さくなり被害を拡大させたなどと強調している。
堤防が決壊した上三坂地区は、法令が定める堤防の高さと幅を大幅に下回っていたと指摘。国は毎年、堤防の高さを測量し、地盤沈下を繰り返して低くなっている事実を把握しながら、かさ上げすることなく放置したとしている。
市中心部の水海道地区は、排水河川である八間堀川排水機場の運転が停止されたなどから水位が急上昇し、水海道市街地に第1波の洪水が押し寄せた。その後も排水機場の運転再開が遅れ、同河川の堤防が決壊して第2波の洪水が発生。排水機場の操作規則に違反して運転再開が遅れたことが被害を拡大させたなどと主張している。
住宅2件が浸水被害を受けた原告団共同代表の片倉一美さん(65)は「これまで国交省との話し合いに参加してきたが、役人は何を言ってもろくな返事をしてくれなかった。なぜこんな被害を受けなくてはならなかったのか、裁判を通して原因を知りたい」と話した。弁護団の只野靖弁護士は「鬼怒川水害は河川管理をしている国の責任が甚大で、人災である可能性がひじょうに強い。全国でいろいろな水害が起きている。そういう人たちを勇気付けられる裁判にし、全国の治水の在り方を見直すきっかけになれば」と語った。