牛久沼に流入する谷田川から今夏、突然ハスが消えた。ハス消滅は全国各地で起きている。地元、つくば市森の里団地住民の間で謎が深まっている。
つくば市長高野の田園地帯から南下する谷田川は、左岸の住宅団地森の里の前を過ぎて牛久沼の北側に流入する一級河川(全長35.2㎞)。森の里団地に面して築かれた堤防は地域住民の格好の散歩コースで、7~8月には対岸に自生したハスがピンク色の花を咲かせて目を楽しませた。
ところが今夏は風景が一変。花は一輪も見当たらず、ハスは突然姿を消した。
一昨年の2015年7月は水辺に涼し気に花を咲かせた。ハスの群生は広がり森の里団地近くまで伸びてきた。当時同団地自治会長だった倉本茂樹さんは「大量の雨が降った場合、水面をハスで覆われたことで水の行き場がなくなり、堤防を越えて団地内に流出しないか」と不安を覚えたほどだった。
そこで谷田川を管理している県竜ケ崎工事事務所にハスの駆除を要望した。同事務所はこのままでは安全上問題があると判断。同年7月下旬から8月上旬にかけて駆除作業を行った。全駆除ではなく、およそ200mの川幅の中央部から森の里団地に向かって広がったハスを取り除いた。
16年初夏、駆除されなかった対岸のハスは葉を水上に出したが、開花は例年に比べて少なかった。そして今夏。葉一枚すら見当たらなかった。
水面を覆っていたハスが突然姿を消す事態は日本各地で起きているという。京都市の淀城跡公園や福岡県の舞鶴公園、佐賀県の佐賀城公園ではいずれも堀に生育していたハスが激減したり全滅している。極めつけは13haものハスの群生地として有名な滋賀県琵琶湖畔のハスが、昨年こつぜんと消えた。
森の里団地では「ミシシッピーアカミミガメ(ミドリガメ)や鳥のオオバンが新芽を食べたせいではないか」などが、ハス消滅の原因ではないかと取り沙汰され、謎は深まるばかり。
原因は何なのか。理学博士で県霞ケ浦環境科学センター嘱託職員の沼澤篤さんによると、考えられる要因として①出水の時にハスの生育に適した泥が流されて川底が砂地に変化した②アメリカザリガニやミシシッピーアカミミガメまたはジャンボタニシが新芽や若葉を食べてしまった③ハス特有のウイルスや線虫、菌などの病原体に感染した④泥中の有機物が多くなり、分解するときにメタンガスが発生して酸素が欠乏し、呼吸困難で枯死した、の4つが挙がった。
全国では現地調査が行われた所もあるが「要因が重なっていることも考えられ、谷田川も含めて原因は特定できない」と沼澤さんはいう。また「地球温暖化で水温が高くなって酸欠状態になる。これもハスが激減したり全滅する原因になっているのではないか」と言い添えた。
森の里在住で谷田川の白鳥を撮り続けている富樫次夫さんは「水辺に咲く花は夏の風物詩だったし、冬枯れの風景もよかった。非常に残念だ」と話す。(橋立多美)