
昨年10月のつくば市議選で初当選した榊原アリーゼ市議(29)=緑粋会=が、2018年と20年につくば市内で、当時大学生だった女性にけがを負わせた事件の示談金支払いが遅延した問題をめぐって、女性の父親(62)が、遅延理由の説明や少額訴訟手付金の支払いなどを求める陳情書を、同市議会6月定例会議に出していることが分かった。
父親は千葉県流山市の会社経営者。当時娘は大学生でつくば市内で一人暮らしをしていた。榊原市議と知り合い、付き合うようになったという。
陳情書などによると、榊原市議は市議になる前の2018年に、女性の顔などを殴り約2週間の安静加療を要するけがを負わせた。20年には同市内のアパートで、女性の顔や胸などを殴り約1週間の安静加療を要するけがを負わせた。20年当時、刑事事件になったが、裁判の途中、示談し、女性側が告訴と被害届を取り下げた。
取り下げた理由について父親は、当時、榊原市議はローンを組んで車を購入することができなかったことから、娘が身代わりとなって娘名義でローンを組み、約300万円の車を購入して榊原市議が乗っていた。任意保険に加入しておらず、事故を起こされた場合、娘に責任が及ぶのを避けたかったなどとしている。
示談内容は、榊原市議は2018年と20年に娘に多大な肉体的、精神的苦痛を負わせたことを深く謝罪する、今後娘には一切連絡をとらない、娘名義の車を引き渡す、示談金として100万円を21年2月までに分割で5~20万円ずつ支払うなど。
父親によると、車のローンは榊原市議が毎月娘に渡していた。示談後、車は引き渡されたが、ローンが200何十万円残っていた。父親はすぐに車を売却したが150万円ほどでしか売れず、100万円以上を負担などした。
示談金の支払いについては、最初の20万円はすぐに振り込まれたが、21年9月に7万円が振り込まれ、その後は月に数千円から数万円が振り込まれただけだった。21年9月から23年3月までに延べ17回計15万7000円が支払われ、以降は振り込みが途切れた。
つくば市議に当選したことを知った父親は今年に入り、榊原市議に対し弁護士を通じて、今年3月末を期限に示談金の残金の支払いを再度催促した。たびたびの催促により今年1月21日、40万円が振り込まれた。
さらに残金について、期限とした今年3月末まで待ったが、榊原市議からは振り込みも説明もなかった。4月に入って父親は、少額訴訟を起こそうと弁護士に16万5000円の手付金を払って訴状の作成などを依頼した。簡易裁判所に訴えを起こす直前の5月17日、榊原市議から遅延延滞金も含めた残金の約40万円が振り込まれた。示談書の支払い期限から4年3カ月、市議になってから半年が経過していた。
父親は「もう時すでに遅し。この間、かすみがうら市や柏市、取手市の市議選に立候補しており、供託金30万円を出すお金や(立候補する市町村に居住するための)引っ越し費用はあったはず。人間として、議員として、責任を果たしてほしい」と語る。
榊原市議はNEWSつくばの取材に対し「お話することは何もありません」としている。
陳情は市議会への要望やお願いで、同市の場合、紹介議員がいる請願とは異なり、常任委員会などで審議されたり採決されることはない。陳情書は議員全員に配布され、ホームページなどで公開される。(鈴木宏子)