最終判断は9月2日 市選管で
ワゴン車に投票箱を積んで自宅前まで出向くオンデマンド型移動期日前投票について、つくば市は10月の市長選・市議選での導入を目指し、8月に市全域で実証実験となる模擬投票を実施する方針を25日開かれた市議会総務文教委員会(木村修寿委員長)で明らかにした。オンデマンド移動期日前投票に対してはこれまで市選挙管理委員会が2度も「時期尚早」だとする見解を出している(5月30日付、6月3日付)。25日の委員会では「(市は)どうやっても突き進むのか」など懸念の声が相次いだ。10月の選挙で実施するか否かの最終判断は、9月2日開催の市選挙管理委員会で出される。
五十嵐立青市長は2021年5月、内閣府の国家戦略特区ワーキンググループに「3年後(2024年)の市長、市議会議員選挙で、必ずネット投票を導入したい」とアピールし、市は22年4月、インターネット投票を看板事業に、国からスーパーシティ型国家戦略特区の認定を受けた(22年8月3日付)。一方、投票の秘密を守る環境の確保や、買収や強要の懸念などネット投票に対する課題が解決されず、今年10月の選挙では導入することができない。これに対し五十嵐市長は、ネット投票導入につながるステップだと位置づけ、オンデマンド移動期日前投票を10月の選挙で実施したい意向だ。今年1月には市北部の筑波と臼井地区で実証実験を実施した(1月26日付)。
7月1日から2000人超に案内を発送
市政策イノベーション部によると、8月の実証実験に向けて7月1日から、自力で歩くことが難しい市全域の要介護度3や4などの対象者2000人から2500人にダイレクトメールで、管理番号を記載した案内を送る。7月4日から18日に電話または市ホームページの電子申請により事前申請を受け付け、併せて市職員が申請者宅に行き、ワゴン車が自宅敷地内に入れるか、自宅からワゴン車までの介助の有無や動線、ニーズなどを確認する。
さらに7月22日~8月2日まで模擬投票の予約を受け付け、8月6~9日までの4日間、ワゴン車2台が北部と南部に分かれてそれぞれ申請者宅を巡回し模擬投票を実施する予定だ。ワゴン車はリフト付きで、申請者は車椅子のまま乗り込み、車内で投票する。
ワゴン車が自宅に駐車できない場合などは、近くの駐車スペースにワゴン車を駐車し、介護タクシーが自宅から送迎などする。申請者は100人程度を想定している。市全域での検証結果や対策を8月中にまとめ。市選管の判断を仰ぐ。
これに対し25日の委員会では委員から「選挙は、失敗は許されない。かなりタイトな日程で、9月2日の1回の選管で協議して判断できるか疑問というか大変」という意見や、「実証実験は周知期間がほとんど無いが、本番は全国に報道されると思うので申込者はもっと増えると思う。実証できても実装できるとは限らない。コストをどこまでかけるか考えた時、このやり方は無理がある。タクシー券を配るので、自力でタクシーに乗れない人は介護福祉タクシーに手伝ってもらって期日前投票所に行くのはどうか。通常の選挙でもミス無くやるのは難しいことは実証されている。選管本来の業務にほころびが出ないか」など、ほぼ全員の委員から懸念が出された。
1月の実証実験は9000万円
さらに実証実験の予算について、今年1月26日に市北部の筑波地区と臼井地区で実施されたオンデマンド型移動期日前投票の実証実験では、予約システムと運行ルートの最適化システムの構築や、影響評価などに計約9000万円の国の事業費をかけていたことが明らかとなった。
8月の実証実験の予算について市は、10月の選挙と一体のものとして、当初予算で計上されている市長選・市議選の予算の中で実施するとし、8月の実証実験に関する予算を別途計上し市議会に諮るべきだとする委員との間で議論になる場面もあった。8月の実証実験にいくらかかるかは委員会で明らかにされなかった。市は当初予算として市長・市議選オンデマンド型移動期日前投票事業に約1300万円を計上している。(鈴木宏子)