つくば市長選・市議選が10月に行われるのを前に、立候補者全員の経歴や政見を記載した「選挙公報」の各戸配布と紙面拡大を検討し予算措置を審議することを求める請願がつくば市議会6月定例会議に出され、20日開かれた市議会総務文教委員会(木村修寿委員長)で採択された。最終日の28日開かれる本会議で改めて審議される。市内に住む元大学教授の酒井泉さんが3日、請願した。
公職選挙法で選挙公報は、有権者の各世帯に投票日の2日前までに配布しなければならないと定められ、各戸配布が困難な特別の事情があるときは、新聞折り込みや市役所に備え置くなどができると定められている。選挙公報を新聞折り込みで配布している自治体が多い中、新聞購読世帯が年々減少し、どのように各戸配布するかが全国で悩みの種になっている。
同市は4年前の市長選・市議選で約5万9000世帯に新聞折り込みで配布した。4年前の世帯数は約10万8000世帯で、約55%に配布されたとみられる。費用は印刷費用が市長選・市議選各9万部で約270万円、配布費用は約5万9000世帯で約78万円の計約350万円だった。一方、今年4月1日時点の同市の世帯数は4年前より約2万世帯増えて約12万世帯、酒井さんが市内の各新聞販売店に聞き取りをしたところ、現在の新聞購読世帯は5万世帯を割り込んでいるとみられ、今年の市長選・市議選は4割程度の世帯にしか選挙公報が各戸配布されないとみられる。
20日の委員会で酒井さんは、複数の印刷会社やポスティング会社、郵便局などに独自に調査をして、ポスティング、郵便、区会配布などを組み合わせた複数の配布方法を提案した。印刷と配布費用については、紙面を大幅に拡大した場合、中心市街地やTX沿線など住宅集積地区をポスティング業者に委託し、旧町村部を区会にお願いすれば1220万円程度、区会に依頼せずポスティング会社と郵便局などに委託した場合、最大で2570万円かかるなどの試算を示した。
これに対し委員からは「新聞購読世帯が40%と低く(請願の)趣旨は分かる。多くの人に選挙公報がいって、多くの人に見ていただきたいが、区会にお願いすることは難しいのではないか」「趣旨は賛同するが実現可能かどうか、選管は大変な状況にあり、新たなプレッシャーをかけるのではないか」「請願は『検討』と言っており、検討は有意義」などの意見が出た。
採決では最初、趣旨採択の提案があったが賛成少数で否決となり、その後、請願そのものについて全会一致で採択となった。
市選管は「新聞購読世帯は毎年減っており、選挙管理委員会の委員からも(選挙公報の配布について)意見が出ている。予算をどれくらい掛ければいいのか、何%まで配ればOKかなどの指標はないので、選管でも議論をしたい」とした。(鈴木宏子)