日曜日, 1月 26, 2025
ホームコラム町の「光」を観る《デザインを考える》7

町の「光」を観る《デザインを考える》7

【コラム・三橋俊雄】1988年、私が所属する研究室に、新潟県のS町から「観光開発基本計画」の依頼がありました。S町は大小48の集落が河川流域と海岸線に沿って分布し、約1万人の人びとが居住している高齢化・過疎化の進む町でした。

私たちは、本計画案策定にあたり、「観光」の本来の捉え方を、古代中国・周時代の『易経』にならい、「町の光を観(み)る」ことに置きました。はじめに、半年をかけて「町の光」の総点検を行うことにしました。その「光」のいくつかを、写真とあわせて紹介しましょう。

焼き畑の女たち

S町の焼き畑は8月お盆にかけて行われ、主人公は女たちです。この町特有の「ボシ」と呼ばれる頭巾(ずきん)をかぶり、ナタやクワを手にして、焼き畑の左右の縁に陣取ります。深夜零時に火入れ、その後、枯れ草に火を移しながら、山の上部から下部へ向かって順に広げていきます。

火は次第に燃え広がり、隣接しているスギ林や夜空までをも鮮やかに浮き出させます。飛び火や延焼から火を守る女たちの堂々とした姿は、めらめらと燃え盛る炎に照らされて、エロティシズムさえ感じさせるほどです。明朝、灰の熱いうちに赤カブの種をまきます。

コド漁

サケの上る道を推定して川底の砂をかき取り、「スジ」と呼ばれる魚道を作ります。その魚道の脇に、流れと直角に雑木の柵を打ち込み、その上に笹をかぶせます。川を上ってきたサケが、笹の下のよどみで一休みしているところを、長い竿(さお)の先にある「カギ」で素早くかき取ります。この伝統的な漁は9月から12月まで行われます。

シナ布(左)、奉納相撲

八幡様の奉納相撲

筥堅(はこがた)八幡宮のある集落では、氏子たちが中心となり秋季例大祭が催されます。小中学生が担ぐ子ども神輿(みこし)には大人たちが大きな声でゲキをとばしたり、神輿の方向を直したり、あれこれ世話を焼き、女子高生とお母さんたちは、そろいの浴衣姿で「勝木小唄」や「佐渡おけさ」などを踊りながら、集落を練り歩きます。また、境内では庄内・越後の対抗奉納相撲がおこなわれます。

シナ布

シナ布は、北日本に多く自生するシナの木を原料とする、麻に似た感触の織物です。その工程のほとんどが昔ながらの手仕事で、豪雪地帯における冬場の家内仕事として細々と受け継がれてきました。Kさんは、その「シナ織」の技術を用いてバッグなどの製品化を試み、郷土工芸の一つとして、町の欠かせない物産となっています。

内発的な地域づくり

このような事例から、人びとの「町の光を消してはならぬ」との強い思いを見てとることができます。「観光」とは、日常の暮らしの中に「光」を発見し、それらを地域の「誇り」や「喜び」として再確認し、守り、磨き、町内外に「知らしめ」「分かち合う」ことであり、それが「町の光を観る」という、内発的な地域づくりの姿勢であると強く感じました。(ソーシャルデザイナー)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

27日運行開始 公共ライドシェア つくば、土浦など4市

一般ドライバー76人が送迎 バスやタクシーなどの移動手段を確保することが困難な交通空白地で、自治体が運行主体となり、一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を送迎する「公共ライドシェア」が27日から、つくば、土浦、下妻、牛久4市の4エリアで運行を開始する。運行期間は2027年3月末までの約2年2カ月間(24年5月29日付、24年10月1日付)。 今月7日までに応募があった一般ドライバーは、20代から70代の計76人。昨年12月半ば時点より2人増え目標の76人を達成した(24年12月24日付)。76人は順次、送迎の際の接遇や送迎アプリの使い方などについてそれぞれ講習を受講し、今月14日から26日までは運行会社の関係者などを実際に乗せて各運行エリアを走るプレ運行を実施している。 ドライバーの一人、土浦市のパート、女性(51)は23日夕方、つくば市桜ニュータウンや隣接の土浦市天川団地から、つくば市並木ショッピングセンターやつくば駅など「つくば・土浦エリア」をプレ運行した。女性はタクシーなどの運転ができる2種免許がある。「免許を生かすことができ、自分の時間で働ける仕事なので応募した」と話し「パートの仕事を終えてから、部活動をしている高校生の次男を迎えに行くまでの間の午後5時ごろから6時ごろまで運転できる。(運行ルートは)走り慣れている道なので、人を乗せて運転することに抵抗はない。将来、自分が運転できなくなる年齢になった時に(公共交通が)どうなるか不安があるので、お手伝いできれば」と話す。 「つくば・土浦市エリア」のほか、筑波山中腹の「筑波山エリア」、下妻市南側の「下妻エリア」、常磐線沿線を除く牛久市全域の「牛久エリア」の4エリアで、公共交通の運行がない時間帯などに運行する。 送迎アプリを開発するコミュニティ・モビリティ社(東京都中央区)に4市が運行を委託し、関東鉄道が運行管理者となる。登録ドライバーはつくば・土浦エリアが41人、筑波山エリアが15人、下妻エリアが3人、牛久エリアが17人。各エリアとも定員いっぱいとなり応募を締め切っている。 乗車方法は、各エリアとも1週間前からインターネットの特設ページなどから予約を受け付けている。運行会社によるとスタート時点の予約状況はまだ余裕があるという。利用料金は各エリアで異なる。(鈴木宏子) ◆4市の公共ライドシェアの利用方法はこちら

体感しよう「土浦八景」「垂松亭八景」《文京町便り》36

【コラム・原田博夫】昨年12月、今私が会長を務めている土浦ロータリークラブ(RC)が、市内に2つの案内板「体感しよう、土浦八景」「体感しよう、垂松亭(すいしょうてい)八景」を設置しました。場所は、土浦駅西口のエクセル前、小松二十三夜尊(にじゅうさんやそん)境内です。「…土浦八景」は市に寄贈し、その式を2月5日、市役所で行います。 案内板設置の着想は、土浦市立博物館の第38回特別展(2017年3月)の際にまとめられた冊子『土浦八景~よみがえる情景へのまなざし』に由来します。 私は高校まで土浦で過ごしたにもかかわらず、そういった歴史をほとんど知りませんでした。この特別展で、複数の「土浦八景」が江戸時代から選定されていたこと、その中のいくつかは自宅付近の馴染(なじ)みある風景だったことを知り、子供時代の思い出がよみがえりました。 そこで、案内板設置を、土浦RCの地区(国際RCの茨城県域)補助事業として申請し、土浦市民や市来訪者が周遊する際の目印としてはどうかと考え、「体感しよう、垂松亭八景」と「体感しよう、土浦八景」の案内板を設けることにしました。 江戸時代の藩主と町人が選定 垂松亭八景は、第4代土浦藩主・土屋篤直(あつなお)が在藩の折、小松台地に庵(いおり)・垂松亭を建て、そこからの藩内の景色を家臣たちと愛(め)でたことに始まるそうです。近年確認された巻子一巻「垂松亭八景詩巻」によると、宝暦2年(1751)のことです。この詩巻は市立博物館に所蔵されています。 土浦八景は、その約100年後の江戸時代後期、文芸を好む町人たちが選定した八景です。それをまとめた一冊(慶應2年<1866>刊)は早稲田大学図書館に収蔵されています。 2023年12月、土浦は歴史的風致維持向上計画に認定されており、市民や市来訪者の皆さんには、2つの案内板を参考にして、土浦の江戸時代以来の変遷と第2次世界大戦後・21世紀の変貌を味わいながら、市内を回遊してもらいたいものです。(専修大学名誉教授)

スタバの協力で「ふらっとカフェ」《けんがくひろば》14

【コラム・椎名清代】私たちは2023年秋から「けんがく ふらっと カフェ」を始めました。商業施設イーアスつくば(つくば市研究学園)内のスターバックスコーヒー店で、月1回開いています。だれもがフラットな立場、進行役もいない、テーマもない、決まりもない―そんな集まりです。毎回、20人近くの人が集まり、おしゃべり、笑顔があふれる空間になっています。 最初はイーアス内 研究学園エリアは2万余の人が暮らす大きな街になりました。でも、自由に利用できる交流センターのような公的な集会施設がありません。どこか借りられるところはないかと、3人の民生委員で考え、チェックアウトからチェックインまでの時間、ホテルの一角を貸してもらえないか聞いたこともありました。 そんなとき、テレビで見た町田市のスターバックスで開かれている認知症カフェのことを思い出し、町田市役所に問い合わせました。市から当時の店長さんを紹介してもらい、スターバックスは社会貢献を社の方針としており、つくばでもサロン活動を実現できることを知りました。 しかし私たちは、お店の方に「利用させてください」と話すことができませんでした。そんな状況を社会福祉協議会の生活支援コーディネーターに話したところ、市の地域包括支援センターにつないでもらい、サロンを実現することができました。スターバックスは従業員と地域とのつながりを大切にしており、席の設定や他のお客への配慮など、とても感謝しています。 学園の森や大学内にも誕生 参加者は研究学園エリアのシニアの女性が中心で、その多くが県外や他市町村から移って来た人たちです。ここでは、新たなつながりが生まれたり、意外な発見があったりします。多世代にも広がったらと思いながら活動しているうち、「がくもり ふらっと カフェ」(スターバックス学園の森の店、つくば市学園の森3丁目)も誕生しました。 子育て現役世代の情報交換の場になればと思っており、小さなお子様連れも大歓迎です。小さな子を連れてカフェに行くのは気が引けてしまうママたちの憩いの場になったらと思っています。もちろん年齢層は幅広く、70代の先輩ママもご参加しています。男性も数名いらしています。 私たちの活動は、「つくばセンター ふらっと カフェ」(つくば市吾妻、トナリエキュート内)、「キャンパス ふらっと カフェ」(つくば市天王台、筑波大学中央図書館内)へと、市内にある他のスターバックスにも広がっています。 民間会社の方たちに集会の場を提供してもらい、これからも「ふらっと カフェ」活動を広げられると希望を感じています。でも、そもそもの始まりは「研究学園には公的な集会施設がない。交流センターが欲しい」でした。こういった市の施設の実現はこれからの課題です。(ふらっとカフェ実行委員)

免許証失効したまま車通勤 つくば市職員 公用車運転も

つくば市は24日、市立保育所に勤務する市職員が、昨年12月15日から今年1月23日まで約1カ月間、運転免許証を失効した状態で、自家用車で通勤していたほか、1月20日には研修のため公用車を運転し保育所から市内の公立施設まで往復したと発表した。 市幼児保育課によると、職員の運転免許証の有効期限は昨年12月14日だった。今年1月23日、職員が自分の免許証を確認したところ、失効に気付き、所属長の保育所長に報告した。職員は翌24日、家族の送迎で運転免許センターに行き、免許証の更新手続きを行った。道路交通法に基づく罰則などはなかった。 失効した理由について職員は、うっかりして失念してしまったなどと話しているという。 再発防止策として市は、全職員に対し運転免許証の有効期限を確認するよう注意喚起し再発防止に努めるとしている。