次世代の移動手段として注目される「空飛ぶクルマ」の技術実証をするテストフィールドが、つくば市上境のつくばヘリポートに開設された。21日には関係者を招きテープカットの後、県内では初公開となる電動自律型無人航空機のデモフライトが行われた。
施設は次世代エアモビリティーのインフラ構築をめざすAirX(エアーエックス、東京都千代田区、手塚究社長)がヘリポート運営のつくば航空(つくば市上境、中田俊之社長)と共同で設置した。無人航空機「EH216-S」は中国の旅客ドローンメーカーEHang(イーハン、コナー・ヤンCFO)による機体で、中国で型式認証を得ている。同ヘリポートに駐機して、国内での商用運行に向け操縦や修理などの技術開発が進められる。
機体は約4メートル四方のサイズで重さ約400キロのドローンの一種。8対16枚の回転翼により最大220キロの貨物を積んで運べる。人が乗り込めるよう座席はついているが、操縦はできない。運転は外部からのコントロールとオートパイロット機能による。
AirX社の手塚社長によれば、「空飛ぶクルマ」は都市域を超えた形での流通や生活を支えていくインフラとなるはずで、テストフィールドは飛行安全の検証、操縦や整備技術者の育成などに役立てる拠点を目指す。当面は1機のみの運用だが25年あたりから順次新機体を投入する予定という。
つくばヘリポートは県の防災ヘリコプター「つくば」の基地になっており、施設自体は22年に県営からつくば航空に譲渡された。敷地面積約3.1ヘクタールの中に長さ35メートル、幅30メートルの滑走路と大型機、小型機の2バースが備わっており、施設全体がテストフィールドとなる。
AirX社では、VTOL機と呼ばれる垂直離着陸機能を有する航空機の発着や地上移動のための区域である「パーティポート」として整備、空飛ぶクルマの関東地域の拠点と位置付ける。つくば航空では、機体整備の基盤を整えつつ、ライセンス取得に向けたスクールの開設もめざしたいとしている。
セレモニーに出席した五十風市長は「市はサイエンスシティーに取り組んでいるものの、市民の間では依然『科学の街』の実感に乏しい。ヘリポートから機体の発着する姿が日常化すれば、社会実装が市民の目に見える形になってくる」と歓迎した。(相澤冬樹)