グッドマンJが森林伐採を開始
市民の声を無視し、議会の議決を経ることなく、つくば市がグッドマンジャパンに売却した高エネ研南側に位置する用地(46ヘクタール)について、この物流倉庫開発企業の関連会社から地元住民に対し、取得用地の森林伐採を行う旨の通知があり、12月上旬から実際に伐採工事が開始されました。
私たちは、グッドマンへの市有地売却を差し止めるよう、住民訴訟を起こしています。11月30日に東京高裁で第1回控訴審が行なわれ、来年1月25日には高裁の判決が出る予定です。それが期待外れであれば、最高裁で闘うつもりです。しかし、裁判で訴えが通り、高エネ研南用地が市に返還されても、樹齢70年以上の自然林が伐採されてしまえば、市民は貴重な自然資源を失うことになります。
市長に文書で差し止めを要請
以上の経過を踏まえ、森林伐採を差し止めるよう要請する文書(11月8日付)を五十嵐市長に提出しました。
その中で、「高エネ研南用地の売買契約が未定な状態での工事着工は契約違反」「議会の議決を経ない契約について住民訴訟が進行中」「日本が民主主義国家であれば、つくば市は敗訴して高エネ研南用地は市に返還される」「市による市民無視の施策が覆され、高エネ研南用地が返還された場合、つくば市民に取り返しのつかない損失になる」と指摘しました。
伐採差し止め要請に対し、市の担当課から「現在係争中の事案に関する要望であることから回答は差し控える」旨の回答メール(11月25日付)がありました。
これに対し、市長に「自然林の伐採は、当該地の自然環境に回復不可能なダメージを与えます。係争の結果が出るまで当該地の自然環境を保全することは、売却の契約者(つくば市とグッドマンジャパン)のいずれか、あるいは双方の、市民に対する責務のはずです」(11月27日付文書)と、森林伐採について市民に説明するよう要求しています。
用地は副市長や市長のモノ?
ここで、進行中の「高エネルギー研究所南側未利用地売却差止等請求住民訴訟」について、私たちが主張する論点を簡単に整理しておきます。
つくば市は議会の採決を回避した理由について「土地は土地開発公社の所有でつくば市の所有ではない」と言い張っています。しかし、この公社の理事長は飯野副市長であり、理事には五十嵐市長や市幹部職員が名を連ねています。彼らの言い分は「土地開発公社が市(民)の債務保証で買った土地は市民のモノではなく、俺たち(市長と副市長)のモノだ」と言っているのと同じです。
市は「土地開発公社とつくば市は別組織である」と言って、高エネ研南用地はUR都市機構から買った市有地であるにもかかわらず、実態を無視した暴論(裁判のための形式論)を主張しているのです。市民の常識からは考えられません。
ところが、水戸地裁は「土地開発公社はつくば市であると見ることは相当ではない」と、実態無視の判決を出しました。権威主義的な政治は形式論で市民を統治しますが、民主主義国は実質論で議論して政策を決めます。市が主張しているような詭弁(きべん)と形式論が司法の場で認められ、法の網の目をかいくぐって、地方公共団体の財務会計行為が民主的なコントロールからすり抜けるなら、日本は民主国家ではありません。
訴訟結果に備える市民のリスク対策
五十嵐市長への森林伐採差し止め要請は、裁判の結果、土地売却が差し止めになった場合に市民が必要とする自然環境保全のためです。裁判の結果に備える市民のリスク対策であって、裁判中の事案に対する要請ではありません。(元高エネルギー加速器研究機構准教授、元福井大学教授、つくば市在住)
<参考>この問題についての報告書(PDF版3ページ)はこちら