【コラム・坂本栄】つくば市は11月、県営洞峰公園の市営化問題についてアンケート調査を実施しました。問題のキモは県営⇒市営の是非にあるはずですが、市が考える公園の形に関する質問を中ほどに配し、市営化の是非は最後に聞く流れでした。これは市民の判断を「是」に誘導する手法であり、市民の声をきちんと聞く調査とは言えません。
回答者を誘導する質問の流れ
洞峰公園問題は県の公園運営コンセプトに市が異を唱えたことが始まりです。園内に民営のグランピング施設を設け、その収益で公園を管理したい県。そういった施設に反対し、現在の姿形の延長で公園を管理したい市。この対立を収める策として、県が公園を無償で市に譲渡し、市が自らのコンセプトで運営するという基本合意ができました。
ということは、市営化に伴う市の財政負担と市が考える公園の形を市民に説明し、市営化の是非をズバリ問うのが正しい手順です。ところが質問の流れは、①~⑤回答者の属性や公園の利用法、⑥~⑨市が考える公園の形の是非、⑩肝心の公園市営化の是非、⑪自由記述スペース―と、回答者を市案(下欄参考「ケチ・ボロ」計画で解説)賛成に誘導する構成でした。
調査の体を成していない調査
調査の欠陥は質問の順番だけではありません。この種の調査は回答者1000~2000人を無作為抽出(ランダムサンプリング)して聞くのが正しい手法です。ところが、希望者だけに回答用紙を回収箱に入れてもらう+市のホームページ(HP)に書き込んでもらう方式ですから、作為的な動員によって「是」「非」を操作できます。市民の賛否を正確に把握し、市政運営の参考にするのが調査の目的であるのに、これでは調査の体を成していません。
現市長には、シロをクロに塗り替える市政運営で前科があります。運動公園用地売却について市民の意見を聞くパブコメは、寄せられた回答を都合よく分類し、賛成はたった3%だったのに、賛成多数という結論をひねり出しました。前市長の運動公園計画を住民投票で撤回させた現市長は、市民の声を大切にする理念を忘れてしまったようです。
執行部に甘く見られた市議会
この調査の変な点をもう一つ挙げると、市のHPに「…本アンケートは無償譲渡への賛否の多寡を主眼とせず…」と書かれていたことです。これでは、市案を前提にした調査であると宣言しているようなもので、上の方のパラグラフで指摘した「回答者誘導」&「作為的手法」どころか、最初から「結論ありき」の調査になります。
12月議会に上程される洞峰公園市営化条例案、同公園管理予算案の取り扱いに悩んでいる市議さんは、ずいぶん甘く見られたものです。市執行部は条例案と予算案が議会で問題なく承認されことを前提に、行政プロセスを進めているのですから。(経済ジャーナリスト)
<参考>
▽ケチ・ボロ計画:コラム「つくば市の洞峰公園『劣化容認』計画」(11月20日掲載 )
▽変なアンケート:記事「洞峰公園問題で市民アンケート開始…」(11月15日掲載)
▽無作為抽出調査:コラム「洞峰公園の市営化、住民投票が必要?」(3月20日掲載)
▽運動公園パブコメ:コラム「…ダメでしょ『…市の行政手順』」(22年9月19日掲載)