広島市の高校生が描いた原爆の絵や写真パネルを展示し、戦争の悲惨さと核兵器根絶を訴える「原爆と人間展」が、8月4日から土浦駅前、ウララビル5階の県県南生涯学習センターで催される。
同展は市民団体「土浦平和の会」が主催する。展示する絵は、広島市の高校生が被爆体験者らの証言をもとに描きあげたもの。この取り組みは1997年から行われ、昨年までに182点の絵が完成し、広島平和記念資料館が保存している。同展ではそれらの中から広島市立基町高校美術部の生徒が制作した絵の複製画40点と写真パネル40点を展示する。
土浦での展示は2005年から始まった。2021年はコロナ禍の影響で中止し、今年で18回目の開催となる。
「土浦平和の会」事務局長の近藤輝男さん(82)は「描かれた絵は、いずれも写真にも増して原爆の非人道性をリアルに描写している。被爆体験者が高齢化する中、原爆の実相を後世にどう伝えていくかが課題となっているが、被爆体験者と高校生の共同制作は次世代と描く原爆の絵として高く評価されている」と話す。
広島に原爆が投下されて78年目となる会期中の6日には、県南生涯学習センター5階の講座室で、ドキュメンタリー映画「封印された原爆報告書」と「声をあげる高校生たち」を上映する。また、土浦市が毎年広島市に派遣している平和使節団の中学生が、体験を通じて感じたことを報告する。
「封印された原爆報告書」は米国立公文書館に所蔵されている原爆被害の実態を調べた報告書がどのようなものであったか、戦後日本が被爆にどう向き合って来たのかに迫った2010年制作の作品。「声を上げる高校生たち」は、核兵器禁止条約への参加を求めて核兵器廃絶の署名活動に取り組む高校生を記録した映画で、今年完成したばかり。
近藤さんは、5月に広島で開かれたG7サミットで出された「核軍縮に関するG7広島ビジョン」に触れ、「(同ビジョンは)ロシアの核威嚇や核使用は許されないとしているが、核兵器は防衛目的の役割を果たしているとして核抑止論を正当化している。日本は唯一の被爆国で、世界に向け核廃絶の先頭に立つべき立場にありながら『核の傘』に固執し核兵器禁止条約には背を向け批准も署名もしていない」と話す。
「展示をご覧になって、核兵器の非人道性や、人類の平和と安全のためには核廃絶こそ唯一の道であることを認識し、平和な世界への思いを共有していただければ幸いです」と呼び掛ける。(田中めぐみ)
◆「2023原爆と人間展」は8月4日(金)から8日(火)まで。7日(月)は休館日。開場は午前10時から午後5時まで。入場無料。