8月4日、ノバホール
日本を代表するリコーダー奏者で、つくば市在住の辺保(へんぼ)陽一さん(44)が同市吾妻のノバホール・ホワイエで8月4日、リサイタルを開く。リコーダー曲を中心に17世紀イギリスの音楽を奏でる。
リコーダーはバロック中期までは花形の楽器だったが、楽器の持つ音量が他の楽器に比べて小さいなどの特徴から、次第にメーンから外れていった。それでも古楽を演奏するにはなくてはならない楽器だ。小中学生の頃、だれもが吹いた経験があることから、愛好家も多い。
辺保さんは筑波大出身。現在、演奏活動のほか、茗渓学園非常勤講師を務め、リコーダー教室を開いている。
「コロナ禍ではコンサートが出来なかったばかりか、人との交流ができずにつらかった。今回、自分の育ったつくばで音楽の交流が出来る機会ができ、大変うれしい」と話し、「ルネサンス期という時代は音楽的にはとても面白い時代で、日本ではあまり有名でない作曲家の名曲がたくさんある。それらの隠れた名曲をバロック以前の音楽を得意とするリコーダーで是非とも味わってほしい」と語る。

辺保さんは宮崎県日南市出身。9歳の時、父親の仕事で茨城県に移り住み、高校まで鹿嶋市で育った。中学、高校は清真学園管弦楽団に所属しトランペットを吹いた。祖父が物理学者だった影響で、筑波大学自然学類に入学。入学当時から吹奏楽団とリコーダー愛好者団体のブロックフレーテ同好会に所属し、物理学と音楽の二刀流生活が始まった。
筑波大吹奏楽団は団員が多く、人気のトランペットではなかなかレギュラーになれなかったこともあり、リコーダーの方が自分に向いているのではないかと、独学でリコーダーの猛練習を半年続けた。リコーダーは練習すればするほどうまくなれる楽器だった。大学2年からは月に2~3回、都内に通い、正式にレッスンを受けた。物理学の実験、音楽、アルバイトと、ハードな学生生活だったという。
大学卒業後は音楽の道を選択。プロの音楽家になるため、自分が演奏した曲を著名な演奏者の元に送るなどした。
その後、スペイン・バルセロナ市のカタルーニャ高等音楽院に留学し、尊敬する世界的リコーダー奏者ペドロ・メメルスドルフに師事した。しかし音楽大学の大学院を修了した人が学ぶレベルだったため、語学を含め大変な苦労をしたと振り返る。厳しい師の無理難題をこなし、3年目にようやく実力を認められた。
卒業後はさらに、スイス政府の奨学生としてチューリッヒ芸術大学大学院に入学、リコーダー奏者のケース・ブッケの指導を受け、最優秀の成績で卒業し、本格的な演奏活動を始めた。現在ソロ演奏のCDを2枚発売している。
辺保さんはリコーダーの魅力を「圧倒的に音色」だという。「透き通った芯のある暖かい音は命の音色」だと語る。
「私にとってリコーダーはあくまで媒体。リコーダーそのものというより、ヨーロッパの古い音楽や、深い文化の素晴らしさを伝えたい。私は他の人が演奏していないような、知られざる傑作と生涯どれだけ出合えて、聴衆の皆さんと共有できるかといつも考える。外国の人が日本の尺八を演奏するように私はヨーロッパの古い音楽を演奏するわけだが、私にとってヨーロッパの音楽はとても肌に合い、呼吸をするように自然にわかるものに感じている。音楽、広く芸術はその人の姿をありのままに映すものであり、人間の命の輝きをそのまま投影するものだと思っている。深く思考し、常に探求し、それを体現していく。『人生死ぬ以外はかすり傷』をモットーに常に走り続けていきたい」と話す。
8月4日のリサイタルは「17世紀イギリス音楽、ルネサンスリコーダーの復古と革新」をテーマに演奏する。9月15日には世界を代表するリコーダー四重奏団、オリーブコンソートと辺保さんが競演する「つくば国際リコーダー音楽祭2023・特別オープニングコンサート」を開催する。(榎田智司)
◆辺保陽一リコーダーリサイタルは、8月4日(金)午後6時30分開場、7時開演。会場はノバホール・ホワイエ。チケットは一般3000円、大学生以下2000円。チケット申し込みはhttps://tiget.net。 問い合わせはhttp//www.o-arches.comへ。
◆つくば国際リコーダー音楽祭2023特別オープニングコンサートは、9月15日(金)午後6時30分開場、7時開演。会場はノバホール・ホワイエ。チケットは一般4000円(当日4500円)、大学生以下2500円(当日3000円)。チケット申し込みはhttps://tiget.net。問い合わせは電話029-859-5136(ナカルリコーダー教室)またはメールnakal@hotmail.co.jpへ。