日曜日, 5月 12, 2024
ホームつくば「花火の原理がわかる手持ち花火」販売 火薬研究の第一人者が開発

「花火の原理がわかる手持ち花火」販売 火薬研究の第一人者が開発

発光の原理学び興味持って

火薬研究の第一人者で、つくば市在住の松永猛裕さん(62)が、手持ち花火と分光シートをセットにした「花火の原理がわかる手持ち花火Ⅰ 色火剤(いろびざい)」を開発した。分光シートをスマートフォンのカメラに貼り撮影することで、花火がどのような光を発しているか分解して観察できる。夏休みの自由研究や科学実験での活用を想定しているという。7月1日から販売を開始する。

「花火の原理がわかる手持ち花火Ⅰ 色火剤」のセット内容(松永さん提供)

松永さんは産業技術総合研究所の元研究者で、現在も招聘(しょうへい)研究員として研究を続けている。2011年1月に花火研究のベンチャー企業「グリーン・パイロラント」をつくば市東の産総研内に設立した。火薬研究の第一人者としての知見を生かし、同社ではテーマパークで用いる安全性の高い花火の受注開発や、火薬を扱うメーカーでの事故の現象解明などを手掛けてきた。コロナ禍でテーマパークからの注文が減ったことから、一般向けの手持ち花火の開発を始めた。分光シートと花火を組み合わせて観察できるようにした商品は他になく、特許庁に実用新案登録を受けている。

「手持ち花火Ⅰ 色火剤」は、黄、赤、緑、青、紫、ピンクの6色と炎色反応がある元素を入れない花火を加えた7本組が2セット(合計14本)と、分光シート、解説書が入っている。色火剤は、火炎に色を付ける金属化合物のこと。花火には基本的にナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、銅(Cu)が使われ、それらが炎色反応によって黄、赤、緑、青の4色に発光する。他の色はこの4色を混ぜ合わせて作り出している。

分光シートで観察すると、ナトリウムを使った黄色の花火は一つの波長の光しか出ない。ストロンチウムやバリウム、銅の炎色反応では複数の光が観測され、すべての花火でナトリウムに由来する黄色の波長が観測される。いろいろな物質の中にナトリウムが微量に混入しているためだという。

スマホで観察する様子(左)と、観察できるスペクトル(松永さん提供)

火薬の研究、危険と敬遠

現在は、ナトリウムと、ストロンチウムやバリウム、銅の炎色反応の原理の違いについて、大学院レベルでも学ぶことがなく、知る人が少なくなっていると松永さんは話す。研究者も火薬の研究は危険と敬遠しがちで、知識を持つ人が少なくなっている現状があるという。「高校生くらいの方に使ってほしい。花火にはいろんな原理が詰め込まれている。原理を知って花火を見ると、見る目が変わってくる。ワクワク感を大切にしてほしい」と松永さん。手持ち花火で発光の原理を学び、興味を持ってほしいと、教育現場での活用も見込んでいる。

今回発売するのはシリーズ第1弾で、商品名を「手持ち花火Ⅰ」とした。第2弾、第3弾の構想もある。第2弾は花火の輝きを観察するセットで、中に入れる金属粉をアルミ、チタンなど変化させ、その違いを見る。第3弾は酸化剤を変えた花火でどのくらい見え方が変わるか観察するセットだという。

松永さんは1960年、静岡県浜松市生まれ。中学生の頃、東京の大気汚染を目の当たりにし、光化学スモッグの研究をしたいと志を立て、東京大学工学部の反応化学科に入った。しかし、当時研究室に入った3人のうち、光化学スモッグについて研究できるのは1人だけ。1枠を賭けてじゃんけんをしたところ負けてしまい、火薬の研究をすることになった。この研究室は伝統ある火薬研究室で、教えを受けながら爆発性物質の研究を続け、1988年に通産省工業技術院化学技術研究所(現在の産総研)に入所した。高校時代に化学を教わった恩師が旧日本軍の研究所で火薬と毒ガス弾の研究をしており、2000年頃には、毒ガス弾の安全な処理方法の開発研究にも携わったことから、火薬や爆発の研究は導かれた天命と思うようになったという。火薬などの安全研究に携わる国内で数少ない専門家で、著書に『火薬のはなし』(講談社ブルーバックス)などがある。

◆「花火の原理がわかる手持ち花火Ⅰ 色火剤(いろびざい)」はインターネットで販売。価格は2980円(消費税込)。グリーン・パイロラントの公式オンラインストアはこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

2 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

700種2000株のバラ栽培 つくばローズガーデン 一般公開始まる

つくばローズガーデン(つくば市古来)のバラが開花を迎え、11日一般公開が始まった。初日の朝から多くの人が園を訪れ、バラの写真を撮ったり、香りをかいだりしながら、花を話題に会話を弾ませていた。園主の藤沢仁子(まさこ)さんによると現在は一分咲きで、見ごろを迎えるのは18日ごろから25日のあたりまで。6月上旬まで開花を楽しめるという。 SNSの口コミで若者の来園増 約3000平方メートルの園内に、約700品種、2000株のバラを植えて育てている。一般公開はブログやインスタグラムで告知しているだけだが、昨年はシーズン中に約3000人が来園した。園主の仁子さんによると、SNSが普及し始めてから、来園者が園内の写真を投稿して広まるようになり、近年は20代、30代の若い来園者が多く訪れているという。 園は元つくば市長の藤沢順一さん(84)が作り、2005年から一般公開している。藤沢さんは入浴施設つくばユーワールド(同市下原)の代表。施設の風呂にバラの花びらを入れるというアイデアを聞き、「それなら自分がバラを作ってやるよと芝生広場に育て始めた」と話す。雑誌などで情報収集し、イギリスやフランスのバラ、オールドローズなど多品種を集めた。東京農大で農業を学んだ知識を生かして栽培に取り組み、今も毎日2時間程度せん定などの作業を行っているが「バラの手入れを大変と思ったことは一度もない」とのこと。中国で発見されたというつる性のバラ「リージャンロードクライマー」がお薦めと紹介する。 バラと宿根草の組み合わせでデザイン 園主の仁子さん(45)はピンク系の多いバラが引き立つよう、白や寒色系のクレマチスなど宿根草約140種類を栽培。立体感のある、絵画のような彩りのガーデンを作り上げた。お薦めは大輪の「ピエールドロンサール」。昨年は夏の酷暑で多くのバラと宿根草が枯れてしまい、植え替えを行った。今年に入ってからも気温の上がり下がりはあったものの、例年通りの花付きで、来週末には最盛期を迎える。「バラが満開になるとまた全く違った光景となる。宿根草とバラの組み合わせをぜひ見ていただきたい」と来園を呼び掛ける。 市内から訪れた男性は「バラが好きで毎年ここに見に来ている。自宅でも鉢で育てていて、冬の手入れは花もないしトゲはあるしで大変だが、花を咲かせてくれると大変さも忘れる」と話し、白いバラの苗を新たに購入していた。(田中めぐみ) ◆園内では18日(土)につくば市在住のピアニスト永田ジョージさんによるジャズライブ、25日(土)には県南で活動するビッグジャズバンド「スターライトオーケストラ」によるライブが開催される予定。また17日(金)からはつくば市や土浦市でヨガ教室を開く新井昌子さんが教えるガーデンヨガも開催される。 ◆つくばローズガーデンは、つくば市古来458。今年の一般公開は5月7日(日)~6月2日(日)までの予定。開園時間は午前9時~午後5時(入園は午後4時半まで)。入園料は一般300円~500円(開花状況により変動)、小学生以下無料。同園のホームページはこちら。 https://youtu.be/HR_TeEhAT1s

庭の巣箱にやって来たシジュウカラ《続・平熱日記》157

【コラム・斉藤裕之】廃材で作った巣箱を庭のカツラの木にかけたのは冬のこと。母屋からの距離わずか3メートルのところ。居間の掃き出しのガラス窓からは手の届きそうな位置だ。 4月初旬。春眠暁を覚えず、処々に啼鳥(ていちょう)を聞く。「ツピッ、ツピッ」という鳴き声はシジュウカラだ。巣箱をのぞいている。シジュウカラはたいてい夫婦でやってくる。「どう?」「うーん、いいかもしんない!」と会話をしているようにさえずっている。 まあ、よくご覧になってお決めください。もしかしてと思ってググると、ゴジュウカラというのもいるそうで、してみるとサンジュウカラやロクジュウカラはいるのかと思いきや、これがいないらしい。 しばらくしてまたやってきた。同じ夫婦なのかどうかはわからない。よく見ると、1羽が何か巣の材料になるようなものをくわえているのが見えた。どうやら本格的に巣作りを始めたようだ。本能とはいえ、とても甲斐甲斐(かいがい)しく巣に戻っては飛び立っていく姿はとてもかわいらしい。それにしても実に器用に5百円玉ほどの穴から出入りする。 四季豊かなこの国では… ところで、茨城県の鳥はひばりだそうで、確かにこの家を建てたころは周りが野原で、ひばりがホバリングして鳴いているのを見ると、春が来たという実感があったのを思い出す。 だけど、住宅が隙間なく立ち並んだ今、気が付けばひばりの声はしない。それから、先日孫と井の頭公園に行ったらインコが電線にとまっていて、やっぱり違和感あったな。「電線にスズメが3羽とまって…」という歌もあったが、最近都会でスズメが減っているとか。 以前スペイン語を習っていた時に先生をしていたコスタリカの女性によると、彼の地では鳥は鳥であって、特にシジュウカラだのひばりだのという種類は気にしないらしい。ついでに、食卓の魚も魚であってアジとかサンマといったことも言わないという。 そこへいくと、四季豊かなこの国では「花鳥風月」といったいわゆる風流な感性が古(いにしえ)より受け継がれている。とはいえ、このところの調子っぱずれな気候や、バエるだのインバウンドだので、風情などといったものを感じることもままならない。 連休中に遊びに来た孫は… さて、シジュウカラ家の巣箱のほぼ正面の軒下、いわばお向かいさんというところには山鳩が巣をかけている。こちらはドタバタ、クルクルと重量感があって騒がしい。その壁一枚隔てた家の中には、パクがすやすやと寝ている。 もうすぐ愛鳥週間なんだそうだ。ほかに愛〇週間なんて聞かないことを考えると、やはり鳥は人の暮らしに近い生き物なんだろう。連休中に遊びに来た孫も、飽きずに巣箱に出入りするシジュカラを眺めていた。(画家)

コロナ禍乗り越え鉄道人気の復活に 撮影会に「撮り鉄」集まる 土浦

「ドレミファソラシド~」と発車時に独特のメロディーを奏でたJR常磐線E501系15両編成が17年ぶりに土浦に姿を現し、11日、同市の真鍋跨線橋下で撮影会が行われた。北海道や大阪など県内外から集まった60人余りの鉄道ファンからは、熱いシャッター音とともに「懐かしい」「貴重だ」などの声が上がった。 2万円チケットが3分で完売 今回のイベントは、発売開始3分で2万円のチケットが売り切れた。この日の列車を準備したひたちなか市にあるJR東日本勝田車両センターに勤務する大楽寿樹さん(34)は「E501系を見たいというお客様からのアンケート結果が以前から届いていた。15両編成の501系といえば、土浦がメッカ。土浦で実現できてよかった」と笑顔を浮かべる。 E501系は、東京への通勤圏の拡大を背景に、東京・上野と土浦を結ぶ通勤車両として1995年12月から運行が始まった。通勤形電車としては国内初となる交流・直流両用の車両だった。採用した機器の関係で、当初は発車・停車時に音階のような独特の音色を奏でるのが特徴だった。2007年3月のダイヤ改正後は、土浦以北で10両、5両編成のみが運用され、上野ー土浦間を走行していた15両編成を見る機会はなくなった。今回は07年以来、17年ぶりの15両編成の復活となった。 撮影会を企画したJR水戸支社では他にも、現役を退いた電気機関車や、特急として利用される車両を限定カラーも含めて全色並べるなどした撮影会を、主に勝田車両センターで開催してきた。数万円するチケットは毎回、発売開始とほぼ同時に完売すると、同社広報室の波見彰三さんは話す。 コロナ禍で乗客減少、イベントで人気回復を 波見さんによると、今回の企画を含めてJR水戸支社内では、アンケートなどを通じて利用者からの声を集めると共に、従業員が積極的にイベント企画を出し合い実現化させているという。昨年11月には勝田駅前で地元企業やパン店と協力して県内の栗を用いたパンを商品化し販売した。同社の運転士からの発案だった。また今年4月には「いわき駅ナイトサウンドツアー」と題して、最終列車終了後のJRいわき駅構内で、駅のアナウンスや発車メロディー、列車の自動放送、チャイム音などを聞くイベントを開催した。全国から「音鉄」と呼ばれる鉄道や周辺環境の音を聞いて楽しみ分析研究する鉄道ファンが多数集まった。 波見さんによると、鉄道ファンに向けたイベントを活発に開くようになったのは新型コロナがきっかけだった。コロナ禍で鉄道利用者が減少する中、再び鉄道に目を向けてもらうためにも社内で自由にアイデアを出し合い、実現化する動きが活発になったと話す。 E501系の撮影会は、勝田車両センターで過去に2度、5両と10両編成の車両を用いて行われた。「15両も是非」という過去を懐かしむファンの声を実現させたのが、今回の開催だった。 大阪から前泊して訪れたという石山裕隆さん(31)は「出身が千葉なので、子どもの時に(E501系を)見ていた。行き先が表示される字幕が現在は使われていない『黒幕』だったり、車両下部の『スカート』に当時の形状のものが使われていたりなど、とても懐かしかった」と語った。千葉県松戸市から参加した永野智大さん(29)は「子供の時に乗っていた懐かしい車両。発車する時のメロディーが好きすぎて、上野ー土浦間での運行がなくなった後も、千葉から茨城に乗りに来ていた。今日は本当に楽しめた」と喜びを語った。 勝田車両センターの大楽さんは「今回の企画は列車を懐かしんだり、見るのを楽しみにされるお客様の声が元になった。私も学生時代に乗っていた懐かしい車両で、企画を実現できてホッとしている。是非、これからも多くの方に鉄道を楽しんでもらえたら」と思いを語った。(柴田大輔)

JRひたち野うしく駅周辺のにぎわい《遊民通信》87

【コラム・田口哲郎】 前略 JRひたち野うしく駅前の西友ひたち野うしく店の第3駐車場の半分が閉鎖され、店舗らしきものが建ち始めたのが冬ごろでした。何ができるのだろうとワクワクしていたのですが、先日看板が取りつけられていました。看板にはAUTOBACSとあります。大手カー用品チェーンのオートバックスの店舗になるようです。 ひたち野うしくにはイエローハットがありますが、カー用品専門店はほかにないので、2店目になります。 茨城県は自動車社会です。県南ですと鉄道で東京都心まで1時間程度で行けますが、地域で暮らすとなると車が必須です。以前書きましたが、関東は町のひとつひとつが大きく、生活便利施設が町のなかに点在しているので、車移動が必要になります。 車が多ければ、メンテナンス用品の需要も増す。カー用品店が必要になるという流れですね。 もはや都会、ひたち野うしく これも前に書きましたが、ひたち野うしく駅周辺は生活便利施設が密集しており、茨城県南のみならず、関東圏でも指折りの便利さを誇ると思われます。 スーパーマーケット、ホームセンター、家電量販店、ドラッグストア、100円ショップ、靴屋、紳士服店、スポーツ用品店、リサイクルショップ、書店、ペットサロン、カフェ、飲食店、ラーメン店、コーヒーショップ、ガソリンスタンド、整骨院、スポーツジム、洋菓子店、煎餅(せんべい)屋、パン屋、そしてカー用品店と、郊外生活をするのに何不自由ない環境になっています。 そういえばガソリンスタンドに併設される形で話題のチョコザップもオープンしました。 こんなに恵まれているのにまだ不満があるのかと言われそうですが、ひたち野うしく駅前にあったらいいなというお店があります。 それは和菓子屋さん、ブックオフ、マクドナルドです。欲を言えば、100円ショップもダイソー、セリアがあるので、ワッツとキャンドゥーがあれば完璧になりますね。サイゼリアとベローチェがあれば、カフェのバリエーションが増えてより楽しめそうです。 こんなにお店があるのに贅沢(ぜいたく)な話ですが、逆にいうとそれだけ買い物客が集まるということですから、街のにぎわいを象徴していることにもなります。 もはや都会と言ったほうがよいひたち野うしくのますますの発展が楽しみです。ごきげんよう。 草々 (散歩好きの文明批評家)