つくば市と土浦市を中心に事業を展開する塚崎雅之さんは面白い人だ。電気設備・空調設備工事会社、雅(みやび)電設(本社土浦市中)を経営しながら、土浦市内に飲食店2つと飲食街ビル1つを所有し、つくば市内ではハム・ソーセージ製造工房を買い取った。飲食店舗の新しい展開があるのか? 電設工事と飲食店舗がどうつながっているのか? いろいろと聞き出した。
つくば学園の森 薫製手造り工房
塚崎さんは5年前、つくば市沼崎にあったハム製造事業をM&Aで継承し、「つくば手造りハム」を立ち上げた。ここが軌道に乗ったことから、その拠点を同市西大橋に移し、今夏、「つくば学園の森 薫製手造り工房」をオープンする。1200坪(4000平方メートル)の森林を切り開き、製造体験もできるハム工房を建て、庭に飲食コーナーも設ける。
商品冊子のタイトルは「薔薇乃ベーコンBARANO BACON」。茨城産のローズポーク(県ブランド豚肉)を使った、ベーコン、ハム、ソーセージのほか、薫製のチーズやチキンも作る。
土浦市内の展開も意欲的だ。4年前、土浦駅から徒歩3分の飲み屋街に、18の小店舗が出店できる飲食街ビル「つちうら横町」(桜町)を建てた。現在、おでん、ホルモン焼、カラオケ、スナックなど16の店が入っている。この中の一つ、パスタと牛タンの店「伊酒や・佐京」は塚崎さんが自ら経営。そのほか、駅近くの裏町通りにあった店を買い取り、うなぎ蒲焼き店「浦」(桜町)も開いた。
飲食ビルの設計思想と計算違い
飲食系の店を次々手掛けたのは、大中小の建物の電気工事に携わる過程で、出店場所や店舗設計の成功例と失敗例を数多く知り、「兄と一緒にやってみよう」と思うようになったからという。本業の電気工事をしながら、飲食商売の知見を蓄えていたわけだ。
面白いのは、その知恵を自分の店舗展開だけでなく、「まちづくり」に生かそうと考えていることだ。2階建て「つちうら横町」の1区画は5坪(17平方メートル)から7坪(23平方メートル)と小さい。「飲食店の内装工事には普通1000万円ぐらいかかるが、サイズを小さくすれば300万円ぐらいに抑えられる。若い人にもチャレンジしてもらいたくて、小さめの区画にした」。電気工事屋さんらしいアイデアだ。
この飲食街ビル建設には計算違いもあった。土浦市の中心市街地活性化基本計画の1プロジェクトとして立案。「国から補助が受けられると思っていたら、落選してしまった。多少の誤算はありながらも、その後、皆さんの支援のおかげで、『つちうら横町』を無事オープンすることができた」そうだ。
【つかざき・まさゆき】1987年、常総学院高校卒。電気専門学校卒後、つくば市内の電気工事会社入社。2001年に独立、有限会社雅電気を設立。05年、雅電設に改め株式会社に。年商12億円、従業員39人(本社26,東京5,ベトナム8)。青年会議所(JC)活動を経て、現在、新治商工会副会長、土浦商工会議所会員。1970年、新治村(現土浦市)生まれ。つくば市在住。
【インタビュー後記】独立後はワンボックスカーに資材と工具を積んで走り回った。今では商業施設の電気工事を引き受ける中堅会社に。飲食分野に手を広げ、土浦のまちづくりにも貢献。つくば市に保有する中層の「イエロービル」もそうだが、土浦・つくば地区では何かと気になる人だ。(経済ジャーナリスト・坂本栄)