【コラム・入沢弘子】前回の「お米を極める旅 in柏崎 ① 」(11月6日掲載)に続き、番外編として、10月に参加した「対話型体験」プログラムについて記します。靄(もや)が黄金色に変わり、門出(かどい)の朝が浮かび上がってきました。朝は「お米を知る特別講座」から。米の歴史、お祭りとの関係、米の品種と産地、柏崎の米の品種、分類と活用に至るまでを学びました。
続いての鍋敷き作りは、農業指導士の鈴木貴良さんにご指導をいただきます。Uターンで門出に戻ってから農業一筋35年。耕作放棄地の景観保全を目的に、「門出総合農場」を設立。合鴨(アイガモ)、マガモ農法での米作りをはじめ、大豆栽培と加工品製造、特産品の「じょんのび鶏」飼育、米作依存脱却のための小麦栽培と加工―など、従来の農業に加え、新たな可能性に挑戦している方です。
鍋敷きは、ドーナツ状の藁(わら)、芯に柔らかくした藁を、手でこすり合わせながら巻いていきます。撚(よ)る、繰(く)る、綯(な)うの繰り返し。次に綯う藁が識別できずにいると、「そういうときは、撚りを戻せばいいんです」と鈴木さん。語源を実感したひと時でした。
昼は、柏崎市中心部の割烹ささ川で、巻き寿司づくり体験です。店主の笹川隆司さんの地元の食材にこだわった料理は定評があります。コツを教わりながら、卵焼き、胡瓜(きゅうり)、海老(えび)、干瓢(かんぴょう)、椎茸(しいたけ)、ひじき、桜でんぶ、甘く煮た胡桃(くるみ)を入れた、太巻きずしを作ります。巻いたお寿司(すし)は各自の昼食に。
お米の活用法を五感で体験
続いて、老舗菓子店・新野屋の新野良子専務による米菓・網代(あじろ)焼についての講義。日本最古の工業米菓の網代焼は、柏崎の米と海老を使用したお煎餅(せんべい)。他県に勝つために立ち上げた米菓研究所、職人の確保、独自商品流通ルートの開発―など、百年以上メイン商品として製造を続ける努力が感じられ、感銘を受けました。講義の後は、生地を実際に焼き、チョコペンでの絵付け体験。米菓がより身近に感じられました。
夜は、再び割烹ささ川へ。前菜から食後のお茶まで全ての料理に米を使った「米フルコース」をいただきます。京都の料亭・菊乃井の開発したレシピに笹川さんがアレンジを加え、地酒と料理のペアリングを楽しみます。笹川さんの獲った魚や海藻、鈴木さんの育てた米や鶏、市内4つの酒蔵のお酒。料理素材から調味料、嗜好(しこう)品に至るまでを、半径10キロ以内で調達できる柏崎。ここでしか体験できないもてなしに贅沢(ぜいたく)な気分に浸り、夜はふけていきました。
最終日は原酒造の見学。創業2百年以上の老舗は、関東地区でも「越の誉」が有名です。早くから東京営業所を構え、販路拡大を続けてきた賜物(たまもの)でしょう。
今回の「お米を極める旅in柏崎」では、新潟で一番早く米が収穫される柏崎で“お米”の活用法を五感で体験したのは大きな学び。長い年月、地域の活性化につながる活動をしてきたキーマンたちとの対話も非常に印象的でした。数年がかりで取材を続け、その地ならではの魅力を発掘し、対話型プログラムを創る大羽さんにも感服。今後、全国で展開されるプログラムにも注目していきたいです。(広報コンサルタント)