つくば市長を3期12年やった市原健一さん(71)が市長を退いてから6年。市原さんが経営している総合病院のところ(つくば市大曽根)で何やら工事が始まっているのに気付き、何を建設しているのか聞きに行った。ついでに、手広く医療・福祉施設を展開する市原グループの現状、市原市政の後の五十嵐市政への評価についても話してもらった。
新病院棟を建設し現棟と連結
東大通りに面している「いちはらメディカルグループ」施設を道路側から見ると、左に老人保健施設(リハビリセンター)、中央に病院棟、右に有料老人ホームが並んでいる(写真)。工事現場は、病院棟の手前(東大通り寄り)で、駐車場に使われていた場所だ。
「現在の病院棟(3階)を建ててから34年たつ。老朽化してきたし、新しい医療に対応するためにも、病院棟を新設することにした。今の建物は壊さないで、レントゲンや検査室、給食用厨房、院内薬剤業務、歯科医療の充実などに使う。現棟と新棟(4階)とつなげ、新旧が一体化した病院になる」
1階が外来診療区画、2~3階が病床室、4階が手術(オペ)区画になるという。「今は年に約1000件のオペをこなしているが、年々増えている。手術室を新棟の4階に移し、増加に対応したい。完成は来年10月になる」。病床数は現在と同じ199だが、急性期79+回復期120の現構成を、急性期79+回復期100+慢性期20に変える計画。
全17の医療・福祉施設を運営
医療・福祉法人トップの市原さんの話を聞き、「いちはらグループ」の全体像を初めて知った。医療法人「健佑会」(市原さんが理事長)が病院や老健など6施設を運営。社会福祉法人「健誠会」(奥様が理事長)が特別養護老人施設など10施設を運営。ほかに有限会社が有料老人ホームを1施設運営。職員は3法人合わせて約900人という。
全17施設のうち、13施設は病院がある場所とその周辺に配されているが、4施設は東京都内の一等地にある。身体障害者施設(港区六本木)、特別養護老人施設(杉並区永福)、同(港区南麻布)、身体障害者支援施設(同)だ。
運動公園用地売却は悔いが残る
インタビューの半分は、現在の五十嵐市政の感想を聞く時間に充てた。予想通り、自分が市長時代に計画したものの、現市長らの反対運動で白紙に戻さざるを得なかった総合運動公園計画の後日談(46ヘクタールの用地を倉庫業者へ一括売却)については厳しかった。
「あの土地を売らないで、市有地として確保しておけば、いつでも体育館や陸上競技場を建てられたのに、それを売り払ってしまうとは…。つくば市だけでなく、県南地域にも悔いが残る所業だ」
市長時代、市原さんは、用地取得と施設建設のために二百数十億円を投資、公式競技ができる体育館(5000人収容できる水戸市営体育館クラス)、公式記録が取れる陸上競技場(ひたちなか市にある県営笠松運動公園の陸上競技場クラス=第2種、五十嵐市長が廃校跡に造ろうとしている陸上競技場は第4種)、プロチームを呼べるサッカー兼ラグビー場の3施設から成る総合運動公園を、10年ぐらいの時間をかけて、順次、建設する計画を立てた。しかし、住民運動での反対に遭い、断念した。
高規格の運動施設が県南に必要
「総合運動公園のような施設は、つくばだけでなく、県南に必要と考えた。茨城県では、ちゃんとした施設が水戸地区に集中している。つくばは東京に近いし、(TXや圏央道も通る)交通の要所。市内に総合運動施設を造れば、県南の活性化に役立つからだ」「あの用地のように、土地の形、周辺の環境、アクセスの便に優れた、まとまった土地は北関東にはもうない」
【いちはら・けんいち】1979年、北里大医学部卒、東京女子医大病院整形外科入局。1988年、つくば市に市原病院を開設、院長に就任。茨城県議(4期連続当選)を経て、2004~2016年、つくば市長。現在、「いちはらメディカルグループ」最高経営責任者。2017年から県教育委員。1951年、つくば市大曽根生まれ。同市竹園在住。
【インタビュー後記】市原さんはいつも細身のズボンをはいている。大体イタリア製という。とてもオシャレだ。インタビュー数日前、「あみプレミアム・アウトレット」に行き、ブランドのゴルフ用ズボンを3本、まとめて安く買ったと喜んでいた。私は大体ユニクロで済ませている。(経済ジャーナリスト・坂本栄)