2015年9月の鬼怒川水害で、住民が甚大な浸水被害に遭ったのは国交省の河川管理に落ち度があったためだとして常総市などの住民が国を相手取って損害賠償を求めた裁判で、原告住民21人が4日、一審の水戸地裁判決を不服として、控訴した。
7月22日に水戸地裁で出された一審判決(7月22日付)は、常総市若宮戸地区の鬼怒川河川敷で、砂丘林による自然堤防が掘削され太陽光発電パネルが設置された場所から水があふれ出たことに対し、国が砂丘林を河川区域に指定することを怠ったのは、国の河川管理の落ち度だと認定し、住民側の主張を認め、同地区住民10人の家屋や家財などの被害に対し約3900万円の損害賠償を認めた。
一方、堤防が決壊した下流の同市上三坂地区については、堤防の高さが他地区に比べて低かったことは認めたものの、他地区に優先して堤防を改修しなかったことは、国の改修計画が格別不合理だとはいえないなどとして、国の落ち度を認めず、住民22人の損害賠償を認めなかった。
4日は、原告住民32人のうち21人が、約2億3300万円の損害賠償を求めて控訴した。
原告団共同代表の片倉一美さん(69)は控訴状提出後、水戸市内で記者会見し「(一審は)一部勝訴だったが、国を擁護する裁判所の体質は全く変わってない。水害は現実として堤防の低いところから水が浸水して決壊する。(上三坂地区で国の落ち度を認めない理由とされた堤防の計算方法の)スライドダウンは架空の経済的評価であり、まだまだ意見を言いたい」と控訴理由を話した。さらに「原告からは、水に色が付いている訳ではないので、若宮戸からの水による被害と、上三坂の決壊による被害がそれぞれどの程度だったか分からないという声がある」とし、「市民として国民として常識的に考えておかしいでしょう、ということを訴えていきたい。水害訴訟は日本全国で起きており、国の非常識を皆で訴えることで司法の考え方が変わっていけばと思っている」と語った。
国も同日、控訴した。控訴審は東京高裁で行われる。(鈴木宏子)